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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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妖精、逃げる。

(ヒルまも一家)
※アヤ・妖介の高校入学一日目。

+ + + + + + + + + +
入学前に校長室に呼び出され、新入生総代を仰せつかったアヤは、話を聞いた途端に眉間に皺を三本出した。 これはあれだ、絶対やりたくないという表現。じゃなければ普通にOK出すだけだもん。面倒だから。
おどおどした風情の校長はアヤの顔を見て怯んだ。美人が怒ると怖いよね、うんうん判る。
「だ、だめかな」
アヤは無言で校長を見下す。俺は苦笑して助け船を出した。
「すみません。姉は衆人観衆の前に晒されるのが好きじゃないんですよ。代わりに俺がやりましょうか?」
入試の点数、手に入れた情報によるとアヤが一番、俺は僅差で二番だったはずだ。
「そうかね。やってもらえるかい?」
校長はほっとしたように俺の申し出に飛びついた。
「はい」
俺は父さん似だけど髪も耳も違っていて、父親を知っている人でも俺にはあまり警戒心を抱くことはない。
アヤは誰の目も引くから警戒とかそれ以前の問題だ。総代なんてやった日には注目の的だろう。
それは俺も避けたい。アヤが変に絡まれて生活しづらいなんて可哀想だし。
まーコーチとして父さんも学校に顔を出すっていうからそんな命知らず、あんまりいないだろうけどね。
「じゃあこれが入学式の手順。挨拶はこれ。原稿は当日まで持っていていいよ」
隣に立っていた教頭が手順と挨拶の原稿を渡してきた。俺は一度目を通してそのまま返す。
「覚えました。お返しします」
こんな単純な内容、わざわざ持って帰って挨拶するまでもない。
「え? いや、その」
「じゃあ当日、よろしくお願いします。アヤ、行こう」
こくんと頷いたアヤを連れ、俺はぺこりと二人に挨拶して校長室を辞した。

で、入学式当日。
俺たちは校長室に招かれたときとは大分変わった風貌で校門をくぐることになった。
周囲の視線が痛い。
そりゃそうだ。身長180越えた金髪で目つきの悪い男と、同じく身長は高いけど金髪で青い目でどうみても日本人離れした美女とが一緒に登校してきたなら。しかも一年生だろ、なんて名前だろう、というひそひそ声があちこちから聞こえてくる。髪の色は自由だから校則違反ではないんだけど。
「やっぱり悪目立ちするよね、金髪」
アメリカじゃ目立たないんだけどなあ。そうぼやく俺とは違ってアヤは気にした風情もなくすたすたと歩いていく。両親が通っていた頃から変わっていないという、有り体に言えばダサイ緑色の制服でさえアヤが着ると他の人のとは全然違うように見えるから不思議だ。
「アヤは目も青いし、日本人だとは思われないかもね」
「面倒」
「まあまあ。俺たちは同じクラスだからフォローするって」
そう。双子ではないけれど同じ学年の俺たちは、別のクラスにすると保護者関係のことで色々面倒だから同じクラスにしてもらうよう取りはからって貰っている。
その辺は父さんの手帳が幅を利かせているかどうかは定かではない。
クラス分けの掲示板を見ると一年二組とあった。校内の配置は校長室に呼び出されたときにぐるっと回っておいたからもう頭に入っている。
「とりあえずちゃっちゃと入学式やって、その後すぐに部室に顔出そうよ。父さんも来るだろうし」
「ええ」
部活勧誘の在校生たちも俺たちのことを遠巻きに見ているだけで、非常に歩きやすかった。
俺たちは誰にも邪魔されることなく校舎の中に入り、真新しい上履きに履き替えて進んでいく。
モーセが葦の海を渡るときってこんな感じだったのかな、そんなことを考えながら。

入学式、俺は恙なく新入生総代の挨拶をした。
ごく普通に喋ってただけなのに目の前の校長は青ざめてだらだらと汗を流している。
俺、名前も特に変えてないし、隠してたつもりないんだけど・・・やっぱり判ってなかったんだな。
父さんの代から変わってないという校長。私立高校だからそれもありなんだろう。
それが今回は仇になったというか、なんというか。
俺はそんなに引っかき回すつもりはないですよ、と言おうかと思ったけど、余計なことは言わなくてもいいや。
クラスに戻って自己紹介。
アメリカでずっと生活してたから、日本の学校の特徴っていうのがよく判らない。
けど、その辺はなんとかなるだろう。席順は男女混合の名前順。当然アヤが前、俺が後ろになる。
「蛭魔綾」
よろしくもなにもなく、さらっと名前だけ言って綾はすとんと席に着く。
周囲が呆然としている。するよね、そりゃ。
「蛭魔妖介です。目の前のアヤとは双子じゃなくて年子、アヤが姉で俺が弟。ややこしいんで名字では呼ばないで下の名前で呼んでください。一年間よろしく!」
へらっと笑って挨拶すると、今度は周囲がほっとしたような雰囲気になった。
うわ、本当に空気を読むって感じだね。独特だー。
今日はSHRの後は部活動の説明会があるという。体育館で催されるというそれにアヤは面倒そうに参加していた。俺たちはもう部活決めてるけど周囲はまだまだ決めてない奴らが多いんだし、そんな顔しないで、と宥めながら体育館へ進んだ。

部活勧誘の説明会は、思ったより面白かった。
アメフト部についてだけはなんだか聞き覚えのある声がしたけど、この際無視しておく。
アヤはどれにも興味がないので眠気覚ましにひたすらガム噛んでたけど。
なんでブラックガムとか噛めるんだろう。俺、甘いヤツじゃなきゃ口に入れた途端吐き出すよ。
アヤはとにかく背も高いし、周囲から完全に浮いてた。新入生だしましてやアメリカからの帰国子女だから知り合いなんていないし、表情も他人が見たら乏しいから余計に声かけづらいんだろうなあ。
 
で。
ようやく放課後。本当なら合格してれば入学前から部活やってもよかったんだけど、何を企んでるんだか父さんに部活参加を止められてた俺たちはやっとアメフトがやれる、と浮き足立ってた。特にアヤはもう煩わしいこと一切なしでアメフトの練習をしたがってたから、俺はアヤに靴を履き替えて昇降口で待ってるように言ったんだ。教室に戻って荷物取ってくるだけなら、俺だけでもいいし、ってね。
「ちょっと待ってて。荷物持ってくるから」
こくりと頷いたアヤを置いて、俺は教室に早足で行った。
走らなかったのかって? だって廊下は走っちゃいけないよ。母さんに言われてます。 

・・・俺、自分の金髪頭がそんなに威圧感あるんだって知らなかったんだよ。
髪の毛立ててる訳じゃないし、ピアスしてるわけでもないし。
アヤに声を掛けたいけど、俺が常に側にいたから声が掛けられなかった、っていう連中が思いの外多かったんだってことはこの後知った。

「あの。君、一年生だよね」
アヤが暇つぶしに携帯をいじって妖介を待っていると、そう声を掛けてきた男がいた。
視線を向けると、そこには男が数名。
学年章を見れば在校生であることはすぐ知れた。アヤはそのまま視線を携帯に戻す。
「ねえ、まさか外国人とか? 日本語判る?」
「バッカ、テメェガイジンで日本語判らなきゃさすがに入試通らねぇだろ?!」
「どこの部活にはいるの? テニス部なんだけど、興味ない?」
「いやいやバスケ部だよ! なんなら男子のマネージャーでも!」
「マネージャーなら陸上部にだって欲しいな~」
「美術部どう!? モデルやって欲しい!」
「被服部でコスチューム作らせて欲しい!」
「金髪で目も青くて、色も白くて・・・まるで妖精みたいだよね!!」
「テメェ触ろうとするんじゃねぇよ!」
わいわいと周囲で騒がれても、アヤは取り合わない。ぷう、と風船を膨らませて携帯を覗き込み、完全無視。
次第に周囲の空気はアヤを一人残し白熱し、勝手に悪化していく。
あまりの騒々しさに、アヤは早く妖介が戻ってこないかと周囲を伺った。
しかし一年生の教室は上の階であるため、妖介はなかなか戻ってこない。
仕方なく、アヤは顔を上げた。ぴた、と周囲の喧噪が止む。
何を言うのだろうか、と言葉を待つ一同の前で、アヤは視線を外に向け、ふと顔をほころばせた。
皆一斉にそちらに何があるのか、と視線を向けた瞬間。

アヤはその中から走って逃げ出した。

俺は二人分の鞄を持って廊下に出たところで、外から響いた沢山の足音に気づいてそちらに視線を向けた。
「ア・・・アヤ!?」
見れば走って逃げるアヤ、その後を追う男たち。
アメフト部の部室とは逆方向だ。そのまま走るとテニスコート横を通ってグラウンドへ出る。
なんでそんなことになってるんだ。入学早々そりゃないだろう!?
俺は慌てて教室に戻った。 後ろの席のクラスメイトが折良く残っていたので荷物を押しつける。
「福田! 悪い、ちょっとこれ持ってて!!」
「あ、え、ひ、ヒル魔くん?!」
「じゃあよろしく!」
俺はスパイクに履き替えて、窓を開けた。喧噪はもう校舎からグラウンドに向かってる。
階段を走って降りるのはもう間に合わない。
「え、ヒル魔くん!? ちょっと、何やってるの!?」
背後の声を無視し、俺は躊躇いなく窓から飛び降りた。
「ぎゃ――――!!??」
もちろんそのまま落ちちゃ危ないけど、目の前に枝振りの見事な木があるので、ちゃんとそれを使って降りたんだけどね。
俺は無事地面に降りると、一気にアヤの所まで走った。

しつこく追いかけてくる連中に、アヤは内心舌打ちしながら走っていた。
こんなことなら面倒でも妖介と一緒に教室に戻れば良かった。
アヤは鍛えているだけあって女子としては結構な俊足だが、さすがに現役運動部の男子高校生は速い。
とにかくグラウンドまで出ればとりあえず目立つので父親に見つかるだろう、という算段があってそちらに回っていたのだが、グラウンドでは一見してあの天を突く金髪は見つからなかった。
仕方なしに中央部まで足を止めずに突き進む。
こうなれば校舎を一周してアメフト部の部室に向かうまで、だ。
とうとう陸上部のエースがアヤとの距離を詰め始めた。
障害物があったところならいざしらず、開けたグラウンドとなれば制服で動きづらい分、アヤの方の分が悪い。
男の指先がアヤの髪に触れるか否か、というくらいの距離になって。
「なにしてるんだコラァ!!」
という怒号と共に、妖介が突っ込んで来た。
そしてあっという間に二、三人を弾き飛ばしてアヤと男たちの間に立ちはだかった。

「遅い」
「悪かったって! でもなんでこんなに追われてんの」
アヤを背後に庇って、俺は目の前の連中を見た。みんななんだか目つきが怖い。アヤ、何をやったんだろう。
多分そっけないアヤが逃げたから追いかけたとかいう単純な話なんだろうけど。
アヤに害を為すなら、俺は容赦しないよ?
アヤ絡みの時だけは口調も目つきも極悪になるという自覚がある。
「彼女の俊足は実に素晴らしい! やはり陸上部に!」
「いやいやだからテニス部だって!」
「バスケ部だって運動能力が問われるよ!」
わあわあ言う連中に俺は何があったか大体察した。アヤの意見も聞かず部活に入れようっていう魂胆か。
しかも見覚えのある連中ばかり。それ以上の下心が見え見えですよ先輩方?
俺は半目になって胸元から手帳を取り出した。
「陸上部キャプテン、坂本雄大。テニス部キャプテン、高田泰成。バスケ部キャプテン、中橋敬一郎」
ぴた、と先を争ってアヤ争奪戦を勝手に繰り広げていた三人が動きを止める。
「テメェらは去年の夏のプール、屋上で女生徒の水着やら下着やら随分盗んだな」
「「「わー! わー!!」」」
慌てて三人が俺の声を遮ろうとする。
一人は俺を黙らせようとこちらに向かって突っ込んで来たけど、足払いで転がしてやった。
「他にもいるな。美術部の青木航平、被服部の星川一之。あとここには来てねぇみたいだが、写真部の西山武弘と三人でどんだけ悪趣味なことやってやがるんだ? 警察にこの写真・・・見せてやろうか?」
「「ひぃいいい!! それだけはっ!!」」
俺の手の中にある写真がどんなもんだか気づいたんだろう。
見られて焦るくらいならこんなもの作るんじゃないよ。悪趣味にも程がある。
「ぎゃあぎゃあわめくんじゃねぇ。テメェら、アヤにこれ以上ちょっかい出してみろ」
俺は口角を上げた。思いっきり。
「・・・地獄への招待状はいつでも発行してやるぜ?」
ケケケと笑ってやると、男たちは凍り付いたように固まってしまった。
と。背後から聞き慣れた銃声。
「テメェら、なにやってやがる!」
怒号に振り返れば、ライフルを手にあからさまに不機嫌な父さんがそこにいた。
もうちょっと早く出てくれたらこんな手帳使わなくて良かったのに。
「ア? なんでテメェら制服のままなんだ」
「この状況見て察してよ」
「まあな」
おもむろに父さんは手にしていたライフルを構え、どこかを狙った。
途端に校舎の屋上で何かが壊れる音がする。誰かひっくり返ってる。・・・あ、あれが西山だ。あんなところでシャッターチャンス狙ってやがったか。自慢のカメラはライフルに打ち抜かれてもう使い物にならないだろう。
「この二人はアメフト部に入ることが決定してる。テメェら、散れ!」
「え、ええ?!」
「アメフト部・・・!?」
愕然とする中、諦めの悪い誰かがアヤに近づこうと俺たちの死角から距離を詰めた。
俺や父さんが諫める前に、そいつはアヤの長い指に捕まって。
そして、思いっきり投げ飛ばされた。 ちなみにアヤは合気道初段。
大の男が数メートル空を飛び、地面に放り出された。
アヤはそれはそれは嫌そうに瞳を眇めて、チッと舌打ちする。
その威力は絶大で。
誰もがそのあまりの迫力に言葉を失い、その後我に返った連中は俺が弾き飛ばしたりアヤが投げたりした奴らを抱え、すごすごとグラウンドを後にする。 それを見送って父さんがフンと鼻を鳴らした。
「おら、来い。さっさと部室に行くぞ」
「あ、先行ってて。荷物持ってくる」
俺は教室の下まで走っていき、窓からこちらを伺っていた福田を呼んで荷物を投げて貰った。
「ありがとー。助かったよ」
「ど、どういたしまして」
俺が礼を言っている背後で、アヤと父さんが話している。
「だからテメェら二人は練習参加させてなかったんだよ」
どうせアヤ狙いの連中が騒いで練習にならなかっただろうしな、と父さんは判っていたように言った。
まあ丁度いいパフォーマンスになったし、当面はアヤの周囲は静かだろうと続ける。アヤは不満そうだ。
「髪が黒いままなら目立たなかった」
「お前、髪の色程度でナンパが減ったか」
「金髪になったら異様に増えた」
「だから妖介もセットなんだろうが。もう少しお前は外見について自覚しろ」
「してる」
「どこがだ」
どう聞いても娘を溺愛する父、って感じだよなあ。
こんな父さんがいて、アヤは無事結婚できるんだろうか。今から心配しちゃうよ。
「お待たせ。ところで父さん、俺たちのポジションは希望通りやれそう?」
「これから入部テスト兼ポジション分けやるから、全部それからだな」
「ふーん」
この父親のことだから、既にいる二年三年に対しても同じようにやるんだろうな。
泥門アメフト部は今のところ強豪とは言い難い面子だし。
「ところで母さんに言われたんだけど、ここは日本なんだから銃は違法だよ」
「俺が法律だ」
「言うと思った! 護がその銃狙ってるから気を付けた方がいいよ」
「お前、俺をなんだと思ってるんだ」
にやりと笑われ、俺が言ってもやっぱり無駄だな、と肩をすくめる。


俺たちの高校生活はまだ始まったばかりだ。 

***
ヒルまも一家熱が妙に高まっていて作りすぎました(苦笑)出てくる名前は適当に作成したものばかりです。
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