旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
幸せそうにおはぎを食べるまもりの隣に、どっかりとヒル魔が座る。
そして甘そうなそれを口いっぱいに頬張るまもりの顔を見て盛大に顔を顰めた。
「零さず食え」
「え、零してないよ」
もぐもぐと口を動かすまもりの頬についているあんこをすくい取る。
「これでか?」
「あ、勿体ない」
まもりは何も考えず、その指を引くとぺろ、と舐めた。
「・・・テメェなあ」
「?」
にこにこと笑顔でおはぎを食べるまもりには、今何を言っても無駄だ、と悟る。
「甘いモンばっか喰ってると糞デブみてぇに丸くなるぞ」
「えぇ?! そうなの!?」
でも、とまもりは囓りかけのおはぎをじっと見つめる。
こんなに美味しいのに我慢するのは無理、でも太る、でも・・・と葛藤するまもりに、ヒル魔は喉の奥で笑う。
「いくら喰っても太らねぇ方法はあるぞ」
「え? どんな方法?」
ぱ、と顔を明るくしたまもりにヒル魔はとりあえずそれ全部喰え、と食べかけのおはぎを指す。
「その後たっぷり教えてやる」
「? そうなの?」
小首を傾げるまもりは久しぶりの甘味に幸せ一杯で、ヒル魔が質の悪い笑みを浮かべて舌なめずりしたのを、幸か不幸か見そびれた。
そうして最後の一口を飲み下した途端、まもりはその腕に引き込まれた。
夜半、まもりが早々に寝付いたのを―――というか相も変わらず激しく責め立て気絶させた―――見計らってヒル魔は屋敷を抜け出す。
一足でたどり着いたのは、この『東』で一番高い山の上。
人はおろか、妖怪も誰も存在出来ない場所。
そこにふわりと大きな翼が過ぎる。
「やあ。君が呼びかけに応じてくれるとはね」
にこやかな声と裏腹の、焼け付くような気配にヒル魔はにやりと口角を上げる。
「テメェが出てくることの方がオオゴトだと思うがナァ」
その顔も身体も、ほとんどを巨大な翼に覆い隠した存在。
熾天使。『西』の中で最も強大な力を持つ天使。
「俺はほとんど『存在するだけ』だから」
「そりゃ熾天使サマともなれば、魔王討伐でもしねぇかぎりは動かネェだろうな」
「そうさ、俺はただの重り。動かない事が平和の証、立派な仕事だからね」
もしこの光景を誰かが見る事が出来たら、驚愕しただろう。
なぜ『西』と『東』の実質最も上に立つ者が顔を合わせているのだろうか、と。
それも険悪な雰囲気など微塵もなく、ただ普通に会話をしているなんて。
「それにしても、なんで『西』の方から彼女を連れて行ったんだい?」
「気に入ったから」
あっさりと告げるヒル魔に、呆れたように熾天使がため息をつく。
「単純な気まぐれにしては相手が悪い」
「あれが『パンドラ』だからか?」
それに熾天使はますます呆れたような気配を醸した。
「判ってるじゃないか」
『パンドラ』。神々から全てを得て、地上に全ての災厄をもたらすために存在する生き物。
神が自らの手から離れて愛を育もうとした天使と人の間に生まれる子は、人はおろか同族にさえに忌み嫌われるようにと作り出した存在。
そうしなければいけない理由があった。
それは。
熾天使は、厳かに告げた。
「『パンドラ』と『獣』である君との子供は、世界を滅ぼす災厄になるんだから」
神はかつて天使を作り、天使を元に人を造った。
空に天使を、地に人を。
そうして作り上げた地には人より先に造った獣も存在した。
天使よりも脆弱で弱い人は、与えられた知能を用いて数を増やして獣を駆逐、時には飼育し地上を豊かに変貌させていった。
より発展していく人に、永遠不変の存在である天使は興味を惹かれ、交わった。
けれどそれは神にとってある意味想定の範囲内だった。
だからこそその子供達は『パンドラ』として災厄を振りまくように造られていたのだ。
そうして生まれた魔物が人にとっての脅威であり、神の使いである『天使』がそれらと戦う事で存在意義を保てるようにと。
そうやって成り立っているのが『西』の世界なのだ。
「東西が交わることは禁忌だ。知らない君じゃないだろう?」
諭すような熾天使の口調にも一向にヒル魔は動じない。
「神が造り出した天使・人・獣。その全ての混血児が存在したらどんな災厄をもたらすか!」
わざわざ別の存在として造ったモノたちが再び集束する、その禁忌。
それでも『西』において『パンドラ』は生存率が極端に低く、生き長らえないから、『東』と交わる可能性が低いと見なされていた。
よしんば『東』の『人』と交わっても、それは魔物の母体にすらならないから世界にさしたる影響はない、と。
ところがここにきてあり得ないはずの獣との交わりが確認された。
結界に守られていて成長していた『パンドラ』。そしてそれを浚ったのが『東』の『妖怪』であるヒル魔だった。
<続>
そして甘そうなそれを口いっぱいに頬張るまもりの顔を見て盛大に顔を顰めた。
「零さず食え」
「え、零してないよ」
もぐもぐと口を動かすまもりの頬についているあんこをすくい取る。
「これでか?」
「あ、勿体ない」
まもりは何も考えず、その指を引くとぺろ、と舐めた。
「・・・テメェなあ」
「?」
にこにこと笑顔でおはぎを食べるまもりには、今何を言っても無駄だ、と悟る。
「甘いモンばっか喰ってると糞デブみてぇに丸くなるぞ」
「えぇ?! そうなの!?」
でも、とまもりは囓りかけのおはぎをじっと見つめる。
こんなに美味しいのに我慢するのは無理、でも太る、でも・・・と葛藤するまもりに、ヒル魔は喉の奥で笑う。
「いくら喰っても太らねぇ方法はあるぞ」
「え? どんな方法?」
ぱ、と顔を明るくしたまもりにヒル魔はとりあえずそれ全部喰え、と食べかけのおはぎを指す。
「その後たっぷり教えてやる」
「? そうなの?」
小首を傾げるまもりは久しぶりの甘味に幸せ一杯で、ヒル魔が質の悪い笑みを浮かべて舌なめずりしたのを、幸か不幸か見そびれた。
そうして最後の一口を飲み下した途端、まもりはその腕に引き込まれた。
夜半、まもりが早々に寝付いたのを―――というか相も変わらず激しく責め立て気絶させた―――見計らってヒル魔は屋敷を抜け出す。
一足でたどり着いたのは、この『東』で一番高い山の上。
人はおろか、妖怪も誰も存在出来ない場所。
そこにふわりと大きな翼が過ぎる。
「やあ。君が呼びかけに応じてくれるとはね」
にこやかな声と裏腹の、焼け付くような気配にヒル魔はにやりと口角を上げる。
「テメェが出てくることの方がオオゴトだと思うがナァ」
その顔も身体も、ほとんどを巨大な翼に覆い隠した存在。
熾天使。『西』の中で最も強大な力を持つ天使。
「俺はほとんど『存在するだけ』だから」
「そりゃ熾天使サマともなれば、魔王討伐でもしねぇかぎりは動かネェだろうな」
「そうさ、俺はただの重り。動かない事が平和の証、立派な仕事だからね」
もしこの光景を誰かが見る事が出来たら、驚愕しただろう。
なぜ『西』と『東』の実質最も上に立つ者が顔を合わせているのだろうか、と。
それも険悪な雰囲気など微塵もなく、ただ普通に会話をしているなんて。
「それにしても、なんで『西』の方から彼女を連れて行ったんだい?」
「気に入ったから」
あっさりと告げるヒル魔に、呆れたように熾天使がため息をつく。
「単純な気まぐれにしては相手が悪い」
「あれが『パンドラ』だからか?」
それに熾天使はますます呆れたような気配を醸した。
「判ってるじゃないか」
『パンドラ』。神々から全てを得て、地上に全ての災厄をもたらすために存在する生き物。
神が自らの手から離れて愛を育もうとした天使と人の間に生まれる子は、人はおろか同族にさえに忌み嫌われるようにと作り出した存在。
そうしなければいけない理由があった。
それは。
熾天使は、厳かに告げた。
「『パンドラ』と『獣』である君との子供は、世界を滅ぼす災厄になるんだから」
神はかつて天使を作り、天使を元に人を造った。
空に天使を、地に人を。
そうして作り上げた地には人より先に造った獣も存在した。
天使よりも脆弱で弱い人は、与えられた知能を用いて数を増やして獣を駆逐、時には飼育し地上を豊かに変貌させていった。
より発展していく人に、永遠不変の存在である天使は興味を惹かれ、交わった。
けれどそれは神にとってある意味想定の範囲内だった。
だからこそその子供達は『パンドラ』として災厄を振りまくように造られていたのだ。
そうして生まれた魔物が人にとっての脅威であり、神の使いである『天使』がそれらと戦う事で存在意義を保てるようにと。
そうやって成り立っているのが『西』の世界なのだ。
「東西が交わることは禁忌だ。知らない君じゃないだろう?」
諭すような熾天使の口調にも一向にヒル魔は動じない。
「神が造り出した天使・人・獣。その全ての混血児が存在したらどんな災厄をもたらすか!」
わざわざ別の存在として造ったモノたちが再び集束する、その禁忌。
それでも『西』において『パンドラ』は生存率が極端に低く、生き長らえないから、『東』と交わる可能性が低いと見なされていた。
よしんば『東』の『人』と交わっても、それは魔物の母体にすらならないから世界にさしたる影響はない、と。
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<続>
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ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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