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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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欺瞞と真実

(ヒルまも)



+ + + + + + + + + +
まもりは早朝の部室に到着し、扉に手を掛ける。
鍵は開いていた。
扉を開くと、そこには金髪の悪魔の姿。
「おはよう。早いのね」
「おー」
部室に入り込んだまもりはふと嗅ぎ慣れない匂いに足を止めた。
女物の香水の匂い。
「どうした?」
それにまもりは笑みを浮かべ、首を振る。
「なんでもないわ」
「ホー?」
にやにやと笑うヒル魔の襟元、注意深く見ればそこに深い紅の跡。
まもりはそれを見ても特に何も言わず、表情も変えずに自らの着替えに向かってしまう。
それを見送ったヒル魔は、途端に興味が失せたように笑みを消し、ふん、と鼻を鳴らした。
ヒル魔とまもりは付き合っている。
ただしその関係はキスまでという非常に清らかなものだ。
付き合い始めてから結構な日数が過ぎていたが、一向に進展しない。
何しろキスから先に進もうとするたびにまもりは怯えて逃げるのだ。
ヒル魔の機嫌が日々悪くなっていくのを誰もが戦々恐々として見守っていたが、ある日を境にヒル魔の機嫌は持ち直した。
ああ、喧嘩してたのが仲直りしたのかな、という程度の周囲の認識は甘かった。
事態はより一層こじれていたからだ。
ヒル魔は手近なところで性欲処理をして気を紛らわせているだけなのだ。
そしてまもりはそれを黙認している。
「見えるわよ」
「ア?」
「キスマーク。ユニフォーム着たらばっちりね」
はい、と渡される絆創膏。それにヒル魔は舌打ちして立ち上がる。
「隠さないの?」
「必要ねぇ」
「そう」
素っ気ない返答。まもりは朝練前に救急箱の中身を整理している。
「キスマークって怪我なんですって」
「ホー」
「自分の身体を大事にしたら?」
冷たいとも取れる発言にヒル魔は眉を寄せてまもりを見つめる。
まもりは全く動じず、黙々と作業している。
ヒル魔の視線には気づいているだろうに、顔を上げもしない。
「お堅い糞マネのありがたいご忠告ですが聞き入れられませんネェ」
「そう」
まもりはぱくん、と救急箱を閉じた。
「部活に支障のないようにね」
「それこそ余計な心配だな」
他の部員がいたら、その冴え冴えと冷たい会話に発言すら出来ないだろう、というくらい不穏な空気。
けれどこれがこのところの二人の日常会話だった。

こじれた二人の仲に気づいたのは意外な事に栗田だった。
「ねえ、ヒル魔」
「ア?」
休み時間、いつもの通りパソコンをいじっているヒル魔に栗田が声を掛ける。
「姉崎さんと喧嘩したの?」
「ベツニ」
それに栗田はちらりと廊下にいるまもりを見る。どこか疲れたような、愁いを帯びた表情の彼女。
ヒル魔はそれと見せかけないようにしているが、かなり煮詰まっているように見えるのだ。
「二人とも変だよ。ちょっと前まではあんなに仲良かったのに」
それにヒル魔はピンと片眉を上げる。
「そんなこと言う奴はテメェだけだ」
「そうかな? だってヒル魔だって何か考え込んでるじゃない」
それにヒル魔はケ、と短く笑う。
「元に戻っただけだろ」
啀み合うだけだった当初の頃に。
いや、それよりも質が悪いかも知れない。
「最初の頃だってこんなに変じゃなかったよ」
含みを持たず、ただ真っ直ぐに相手を見抜く栗田相手ではヒル魔の誤魔化しもあまり通用しない。
けれどそれ以上の会話を続けることなく授業開始のチャイムが鳴る。
「それよりも糞デブ、テメェ次の数学、テストで赤点取ったら補修だってナァ?」
「う、うん」
「だったら人の心配する前に自分の成績心配すんだな」
栗田は渋々と机から数学のテキストとノートを取り出し、ヒル魔は再びパソコンを開いた。

部活が終了した後もマネージャー業と主務業は終わりが見えない。
勝ち進めば勝ち進む程、対戦校のデータは重要になる。
その分析と資料整理だけでも相当な量になる。
他の部員達が全員帰った後も、ヒル魔とまもりは延々と作業していた。
「おい糞マネ、そろそろ帰れ」
時計は9時を回っていた。
まもりは顔を上げたが、手元の作業の区切りが悪いため再び作業を始める。
「おい」
「あとこれだけだから」
「それやった後に片づけ諸々含めると10時回るぞ。やめろ」
その言葉にまもりはヒル魔を見る。
「平気よ。私を襲うような物好きはいないわ」
「ホー」
それにヒル魔の眉がピンと上がる。
「どこからその自信が来るんデスカネ」
「だってそんな魅力ないもの、私」
それにヒル魔はじろりと彼女を睨め付ける。
まもりは頓着せず、視線を書類に戻してペンを走らせている。
「どうしてそう思うんだ?」
「それはヒル魔くんが一番良く知ってるでしょ?」
まもりの口元が歪む。微笑みとは遠い、自嘲の笑み。
「それはそれは。随分な仰りようデスネ」
剣呑なヒル魔の声にもまもりの嘲笑は消えない。
「だからもういいかと思って」
「何が」
「別れましょ」
あっさりと別れの言葉を吐き出して、せいせいした、という風にまもりは嘆息した。
「ヒル魔くんだって私なんかより他の子がいいでしょ」
「その心は?」
「それも言わせるの?」
まもりはペンをしまい、ノートを閉じる。
「ヤれないって判った途端、まるで手のひら返したようだったわよ。ごめんなさいね、お相手出来なくて」
机の上を片づけ、黙々と帰り支度をするまもりは押し黙ったままのヒル魔を一瞥して立ち上がる。
「さよなら」
帰宅以外の意味を込めた言葉を置き去りに、扉に手を掛けようとしたまもりの背後に、音もなくヒル魔が立つ。
ダン、と音を立ててまもりの頭の隣に手が叩きつけられた。
ヒル魔に背を向けたまま、まもりは身体を震わせる。
「・・・何よ、脅すつもり?」
幽かに怯えを滲ませた声に、ヒル魔は嘆息した。
深く、深く。
「惚れた女を抱けないっつーのは拷問だ」
その声にまもりはそう、と素っ気ない言葉を返す。
「その上避けられて怯えられて逃げられてナァ」
ぎり、と指に力が入る。扉ががたりと音を立てた。
「そんな状態で二人きりになってみろ。襲いたくなるだろうが」
だから気晴らしに他の女を抱いたのだ。
それにまもりはおず、と背後を伺った。
「でも、そんな・・・ヒル魔くん、性欲薄そうだし」
「何を根拠に言うか」
ヒル魔とて健全な男子高校生である。まもりの印象は甚だ心外と言えよう。
ましてや自分たちは付き合っているのに、だ。
「他の女抱けば嫉妬するかと思えば、全く逆方向に走りやがるし。全く糞面倒な女だな」
ったく、と舌打ちするのを聞いて、まもりはいたたまれず鞄を持ち直して扉を開き、飛び出そうとするが。
「やっ!」
がっしりと背後から抱きしめられ、まもりは鞄を取り落とし、短い悲鳴を上げて藻掻く。
けれどそれ以上何もしない雰囲気なのを感じ取って、まもりはゆるゆると力を抜く。
そのまま二人は床に座り込んだ。
「惚れてなきゃ、テメェの意志も何も関係なくとっくに押し倒しただろうよ」
「え・・・」
「少しは自惚れやがれ」
まるで大型犬に懐かれたような心地になって、まもりは腕を伸ばすと、ヒル魔の頭を撫でてみた。
途端にぎゅう、と抱きしめる腕の力が強くなる。
それがヒル魔の甘えのようで、後押しされる形でまもりは怯えて逃げた理由をようやく口にする。
「私、その、初めてだから・・・どうしても怖くて」
「だったらそう言え」
覚悟決めるまで無理強いしねぇよ、と囁いてヒル魔は唇に笑みを掃く。
「テメェが糞面倒な女だって判っててこっちは付き合ってんだからな」
ケケケ、と笑うヒル魔の腕の中で、まもりは久しぶりに作り物ではない本物の笑みを浮かべた。

***
桃花様リクエスト『まもりに妬いて欲しくて他の女に手を出すヒル魔』でした。
これは超スピードで書き上がりました! 書いていて非常に楽しかったです♪ 最近甘い物ばかり続いたので新鮮でした。これくらいの糖度の方が早いのかしら。
リクエストありがとうございましたー!!

桃花様のみお持ち帰り可。
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