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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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桜雪奇談12

 


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「随分参ってるみたいだな」
「煩ェ」
からかうようなムサシの口調に、ヒル魔の眉が寄る。
「弟子とくっつくなんざ珍しくもないだろう」
「あんなガキに手出し出来るか」
「今のまもり嬢ちゃん見てそう言う奴はいねえと思うが」
「ガキはガキだ」
どうあっても保護者のスタンスを崩すつもりがないらしい。
そんなヒル魔に、頑固なのは師弟一緒か、とムサシは嘆息する。
「そんな事言ってると他の連中に浚われるぞ」
「浚えるもんならな」
ふん、と鼻で笑うヒル魔にムサシは苦笑するしかない。
ヒル魔があの美しく成長したまもりを殊の外大事にしているのは周知の事実だ。
まもりには本人が知らないうちに幾つも術が掛けられていて、本人の意志なくどこかに浚われたり危害を加えられたりされた場合、相手方に甚大な被害が与えられる。下手をすれば命を脅かす程のそれはそれなりの力を持つ者では一目瞭然なのだ。
「だが大事に育てても、仙人になれないんじゃ、あっという間に年取って死んでしまうだろうに」
そう。この世界は時が止まったように見えるだけで、未だ人のまもりは成長を続けているのだ。
熟した果実が腐り落ちるように、まもりが露と消えるのはそう遠い未来ではない。
長く生きる天空人のムサシや仙人のヒル魔にしてみれば百年もあっという間なのだから。
「だから『合方』にしろってのか?」
ヒル魔が剣呑に吐き捨てる。
仙人は基本的に欲を捨てた生き物だ。けれど欲が完全になくなるわけではない。
その欲が誤った方向に進んだり無節操に異性を求めることのないよう、例外的に傍らに置ける存在がある。
それが『合方』だ。
絶対的な人数が少ない天界では仙人同士が交わる可能性も極端に低い。
相手が天空人ならまだいいが、人だった場合寿命に格段の差がある。
その為、『合方』は仙人と『繋がる』契約を交わし、ほとんど同じ時を生きる存在となれるのだ。
「あんなもんは体のいい奴隷だろうが」
ヒル魔の尖った声にムサシは頭を掻く。
ただ仙人の欲を満たすだけの存在。
そもそも全てにおいて平等を信条とする仙人の定義に反しているとヒル魔は言う。
「だが、まもり嬢ちゃんは・・・」
どうにも仙人としての才能がないような噂を聞いたのだ。
実際弟のセナはもうすぐ仙人として独り立ちしそうなのに、彼女にはそういった様子がない。
このままただヒル魔の世話を日々こなして年老いて死に絶えるのを間近で見なければならないのか、と続ける。
ヒル魔が口を開こうとしたその瞬間。
彼はぴたりと動きを止めて目を見開いた。
「――――――――っ?! まもり!?」
立ち上がり、ヒル魔が外へと飛び出す。
その常にはない焦った様子に、ムサシも驚き後に続く。
庭先で掃除をしていた彼女の元に走って向かう。
浮雲を使う程の距離じゃない。
そうして二人が目前で見たのは。
宙に浮くまもりの姿。
雲に乗っているわけでも、術で浮いているのでもない。
誰かが抱えているかのような、不自然な体勢で。
その下には青年が一人とポヨ。
「まもりちゃん!」
「ヒアー!」
「何であんなところに浮いてるんだ!?」
人型に変じてまもりを助けようとしていたケルベロスにヒル魔が問う。
「知らないよ、急にまもりちゃんが止まったと思ったら宙に浮いたんだよ!」
「まもり!」
まもりは意識がないようで、ケルベロスの声にもヒル魔の声にも反応しない。
浮雲を呼んでまもりの側に寄ろうとしたムサシだが、何かが邪魔をしてどうあっても近づけない。
一体何で、と焦る三人と一匹の前で、ゆっくりとまもりの手が浮き上がった。
まるで引き上げられるかのように。
その指先が崩れる。
ひらひらと、桜の花びらに。
「まもり!!」
彼女に掛けられているいくつもの術は一つも発動せず、まもりの身体はほろほろと崩れていく。
それはこんな非常事態なのに皆の目に酷く美しく映った。
ヒル魔が術を唱えたが、それも全て弾き飛ばされる。
それにヒル魔は目を見開いた。
こんな事が出来るのは一人しかいない。
ヒル魔が思い至るのと同時に、まもりは完全に桜の花びらに変じて空へと消えてしまった。
まるで人魚が泡となって消える物語のように。
「ヒアー! ヒアー!!」
悲痛なポヨの鳴き声が響き渡る。
と、ムサシが乗っていた浮雲が突然消えた。
「うおっ?!」
「大丈夫ですかっ?!」
さほど高くなかったのでどうにか着地できたが、その様子を見てヒル魔は浮雲を呼ぼうとする。
だが全く反応がない。
この場所から移動出来ないように制限が掛けられている。
術全てが出来ない訳ではないのはケルベロスの人型が解けていないところからも明らかだ。
そんな芸当が出来る相手、それは。
ヒル魔はこれ以上ない、というくらい苦々しい顔になって叫んだ。
「っあの、糞神めぇっ!!」



まもりは目を覚ました。
もう何度か見た事がある、真っ白な世界。
一度目は拾われたときの森で、二度目は育ての母の言葉に絶望した夜、三度目は神殿の中。
起き上がり、周囲を見渡す。
どこまでも白く、果てのない世界。
もしかしてこれは夢かな、と思うまもりの目の前に、何かが降りる気配。
『久しいの』
それにまもりは目を見開いた。
「か、神様?!」
まもりの反応に、楽しそうに笑う気配。
『いかにも』
かつて幼い頃一度だけ対面した神との邂逅にまもりは驚き慌てふためく。
「え、でも、私、神殿には行ってないんですけど」
『儂にしてみれば造作もない事よ』
確かに創世の神であればまもり一人連れてくるのは大した労力はないのかもしれない。
でもなんでわざわざ、とまもりは首を傾げる。
『もう少し経ったらまたここに来るがいい、と前に儂は告げたと思うがの』
確かにそう言われた。まもりはおずおずと頷く。
「でも、私・・・神殿に行くのも恥ずかしいくらい才能がなくて、お伺い出来なかったんです」
『そうかの?』
「ええ、術もろくに使えないんです」
落ち込むまもりの前に人影が現れた。
顔は相変わらずよく判らないが、笑っているようだとは判る。
『それは師匠が悪いのう』
「え?! ヒル魔さまは悪くないです、私が・・・」
意外な発言にまもりは飛び上がって驚くが、神の手がまもりの肩を軽く払った。
途端、軽い何かが割れる音が響く。
しゃり。
しゃり。
いくつも崩れていく音に、まもりは自らにそんなものがついていたか、と見回すが見た目には全く判らない。
『独占欲が強すぎるというのも、あやつらしいの』
いかにもおかしい、という声で笑われる。
「あの、独占欲が強いって、ヒル魔さまがですか?」
『いかにも。斯様におぬしに術まで使ってのう』
これは術の残骸よ、とまた一つ払われる。
しゃり、と音が響く。
『術が出来る出来ないと、仙人になれるのとはちと違うんじゃが』
「そうなんですか?」
『それでいくと当初のヒル魔なんぞ何も出来ぬ者じゃった』
「え!」
それでは何故、と瞬くまもりの足下に突然穴が開く。
『見るがいい』
ヒル魔が使う水鏡の術のように、映像がそこに浮かび上がった。

<続>
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