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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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神は気まぐれ(下)(完結)



+ + + + + + + + + +
「じゃあ尋ねるが」
ヒル魔が口を開く。
「『神』はテメェら天使に何か指示を出したか?」
熾天使が守る天空の玉座、神のおわす場所。
そこにいる神は何か告げたか、と。
「いや。神は沈黙している」
熾天使の記憶の中で、神が喋るところはおろか、身動ぐ事も、姿すら確認した事はない。
神はただ存在する、それだけだ。
熾天使以上にただただ遠い至高の存在。
それにヒル魔の口角が上がる。
「なら、まもりのことはテメェら天使が勝手に騒いでるだけだな」
「災厄の火種は消し止めなければならないだろう」
「これは『東』の事情だ。口出しする必要はねぇだろ」
一向に取り合わないヒル魔に焦れたような気配。全てを覆う翼の向こうで低く声がくぐもった。
「俺を怒らせない方がいい」
熾烈な気配はヒル魔の身体にも火花を散らせる。
それさえも一瞥することなくヒル魔は熾天使を見つめた。
「神は『東』への過干渉は禁じたはずだ」
「『東』を守る君の弁とは思えないね」
より威圧を強める熾天使に、ヒル魔は大きく嘆息した。
これ見よがしのそれに、熾天使は気色ばむ。
「何だい、それは」
ヒル魔はがりがりと頭を掻くと、口を開いた。
「随分と記憶力がねぇんだな、『大和』」
「っ!!??」
途端に熾天使が硬直した。気配も何もかもが凍り付く。
「そんなんだから『西』は戦争が絶えねぇんだよ。自分の膝元すらろくに管理出来ねぇくせに余所のことまで口出すんじゃねえ」
「・・・」
驚愕の気配。翼に覆われた身体は身動きすらできない。
誰も知らないはずの熾天使の名前。
なぜ知っているのか、なぜ動けないのか。
「俺がこの世界で最初に造ったのはテメェだったな。その次が座天使の鷹と智天使の花梨だった」
今、彼は何と言った?
俺を、俺たち天使を、『造った』?
そんな、まさか。
彼はただの獣のはずだ。
そして長じて妖怪になり、今『東』を統べる存在になった、それだけのはずだ。
それだけの。
・・・それは、誰が熾天使である彼に教えた事だった?
「テメェらに造らせてみた『人』はまあ良かった。だがどうにもテメェらは余計な誇りが高すぎて人にも色々と制約をしすぎた」
ヒル魔は淡々と続ける。
「自分たちが絶対的な存在として振る舞うための手段が実にくだらなかった。それが俺には気にくわなかったんだよ」
彼は『西』を見つめた。遠く向こうにある大地。
『東』との境目には目には見えないが線がくっきりと刻まれている。互いに干渉をしないための境界線が。
「おかしいと思った事はねぇのか?」
なぜ東西で世界は分断されているのか。
なぜ『西』で全知全能だと崇拝する神の影響が『東』にはないのか。
なぜ『西』に妖怪が、『東』に天使が存在しないのか。
なぜ危険なはずの『パンドラ』が神に制止されることもなく、あっさりと境界線を渡れたのか。
そしてなぜ『神』は未だ何も言わないのか。
いくつもの何故、という言葉が次第に鮮明になっていく。
同時に熾天使の身体が震えだした。
『西』の実質最高権力者の熾天使が、今まで感じた事のない気持ちを抱えて目の前の獣を見る。
この気持ちは何なのか。
「これ以上『東』に干渉しようとするなら、それなりの対処をするぞ」
それは警告。
自らが作り出した天使に鉄槌を下す前の、幽かな慈悲。
動けない熾天使の翼の隙間を難なく抜けて、額にヒル魔の指が触れた。
触れる事はおろか、視界にはいるだけで全てを焼き払う熾天使の翼をすり抜けられる存在は『神』のみ。
「『パンドラ』は『東』にいる限り災厄の火種なんかじゃねぇ。テメェは『西』のことだけ考えればいい」
声はヒル魔のものでありながら、まったく別の音となって直接熾天使の脳裏に響くようだ。
自らを覆うと同時に、周囲も包み隠す翼。
この翼の向こうの彼は、一体どんな姿なのだろうか。
かつて自分は本当にこの手によって生み出されたのだ、という絶対的な確信。
仄かにその腕が金色を帯びているのだけが判った。

熾天使はようやく理解した。
自らが抱いたこの気持ちの名を。



――――――――これは、恐怖だ。






『神』は絶対だ。
何もかもを見通し、全てを整えてその上に立つ。
だから人は『神』に逆らわないよう、逆らえないよう、天使が生み出した。
そんな『西』の世界に飽きて戯れに天使が生み出した人を元にしたものと獣だけで造った『東』。
『東』はそんな人の想像からいつしか現れた『妖怪』や幾多の『神』が入り交じり、多様化していく。
人のそんな想像を奪った『西』ではあり得ない展開。
『東』では『神』はきまぐれだ。
絶対的な存在でもなく、人を好いたり嫌ったり、助けたり見捨てたり、どこか間抜けだったり残酷だったり。
神はたった一人ではなく万物に宿ると考え、全てを慈しむ情の深さを見せつける。
より近しく全てが存在出来る心地よさ。
だからヒル魔は興味を惹かれ、『東』に降りたのだ。
『西』の干渉を避けるために世界を分断して素性や力は隠し、狐の妖怪という存在に変じてまで。
周囲は当然ながらその事実を知らず、彼を妖怪の一人として見るだけだ。
妖怪であるヒル魔は人の世に足を踏み入れてみたり、妖怪と様々な事に興じてみたりと過ごしていて。
そうして、偶然が重なってまもりと出会った。

天使が危惧していた交わりも、『東』と『西』では素地からして違うので、まもりが『東』の誰と交わろうとも生まれる子は災厄を招く事はないのだ。もっとも、ヒル魔は自分以外がまもりに手出しすることなど許さないが。


ヒル魔は一人山頂で眩く輝く朝日を見つめる。
熾天使の記憶を操作し、『西』に帰した。
動かない事が平和の証という天使の大義名分を改めて確認させ、もう『東』へ余計な手出しをしないように。

『西』を見捨てるのですか、神よ。

記憶を操作される直前、恐れと共に呟かれた熾天使の言葉にヒル魔は一人答える。
「見捨てやしねぇよ」
『東』は気に入っているが、『西』とて自らが生み出した世界だ。
自分が造り出した者たちは例えどんなに醜悪であろうと、悪辣であろうと嫌悪する存在ではない。
時折癪に障ったり面倒だったり、色々あるがそれさえも楽しみのうちなのだ。
これでいて、一応ヒル魔は『西』もそれなりに慈しんでいるのだ。
そもそも嫌っていれば『西』を滅ぼすか完全に分離させるかを選んだだろう。
日が昇りきる前にヒル魔は立ち上がる。


さあ、帰ろう。
かつて自らが生み出した『西』の、全ての希望が詰まった『パンドラ』の元に。


***
まっぴ様リクエスト『「鏡像寓話」の続き』でした♪ 上手に予想を裏切れたかが気になるところです。
楽しく書かせて頂きましたwこれと前作の間に鷹と平良を挟もうか、思いましたがそちらは割愛しました。
ヒル魔さんの設定についても機会があればそのうち書く、かも。
狐の嫁入りシリーズはこの後もちまちま書いていこうと思っているのでお付き合い頂けると幸いです。
リクエストありがとうございましたー!!

まっぴ様のみお持ち帰り可。
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