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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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流言飛語(下)(完結)



+ + + + + + + + + +
そして件のホワイトデー。
学校が終わった後、息を切らせて帰ってきた娘に、母はにっこりと笑って出迎えた。
「これから出掛けるんでしょ?」
「う、うん」
白のオフタートルのニットとギンガムチェックのミニスカートに着替え、用意しておいた着替えが入った鞄を手に取る。
と、そこに母がトートバックを持ってやってくる。ずっしりと重い。
「何?」
「一晩お世話になるのに手ぶらじゃねえ。色々作っておいたから、食べなさいな」
「わかったわ、ありがとう! じゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
笑顔で渡されたそれも持ち、まもりはピーコートを羽織って元気よく外に出た。

何度もくぐったヒル魔の部屋の玄関。
それがこれからの事を考えるだけでまるで試練の一つのようだ。
努めていつもの通りチャイムを鳴らし、中に入る。
「ヒル魔くん、これ、うちのママから」
「ホー」
手にとってその中身を見たヒル魔は、にやりと笑う。
「何? 何が入ってたの?」
「テメェは本当に嘘がつけねぇっつーのが判明したな」
「はい?」
ヒル魔が取り出したのはぴっちりとビニールコーティングされた小箱。
チョコレートのパッケージのようなそれを投げられ、受け取る。
「なにこれ?」
ひっくり返して内容を見たまもりは、真っ赤になってそれを放り投げた。
「な、なんで?! ママったら何考えてるのっ?!」
「そりゃあ愛娘の将来だろうナァ」
ケケケ、と笑いながらヒル魔はそれを拾い上げる。
言わずと知れたコンドーム。
「今日の事、ママに言ってないわよ!? 私言ってないから!」
真っ赤になるまもりを抱き寄せて、ヒル魔は喚く唇を塞ぐ。
「とりあえず腹ごしらえだな」
「え、うん! そ、そうよね」
トートバックには二人分のお弁当も入っていた。それもあからさまに男性用と女性用。
なんでママにはこんなに筒抜けなんだろう、とまもりは赤面しつつそれにありがたく箸を付けた。

□■□■□

まもりは差し込む光に気が付いて目を開けた。
ぼんやりと照らされる室内は見慣れた自分のではない。
ここはどこだろう、そんなことを思っていたら背後に灯る熱に気が付く。
そしてやっと思い出す。
そうだ、昨日はヒル魔の家で、彼と・・・。
その瞬間、まもりは勢い良く身体を起こした。
・・・つもりだった。
「~~~~~~~ッ!!!」
腰に突き抜けた鈍い痛みに、まもりは少し身体を起こしただけで再びベッドに撃沈する。
「起きたか」
後ろから掛けられた声にまもりはひゅっと息を呑む。
「お、お・・・オハヨウゴザイマス」
かちかちになっても律儀に挨拶するまもりに、ヒル魔は楽しげに笑う。
「随分と辛そうデスネ」
「そっ・・・」
そりゃそうよ、誰のせいよ、判ってるなら聞かないで、という様々な言葉をまもりは飲み込んだ。
この痛みは誰のせいでもなく二人のせい。自分が望んだことでもあったから。
「まだ寝てろ」
頭を撫でられ、まもりは首をすくめる。
「ん・・・でも、お腹空かない? 大丈夫?」
腰に絡みつく腕にまもりは首を捩って背後の彼を伺う。
「もう少ししたら外に食いに行くぞ」
「え、何か作るわよ?」
「作れるのか? その身体で?」
横になっていても鈍い痛みが消えない状態。
まもりは咄嗟に首肯できなかった。
「無理すんな」
その労りに満ちた言葉と仕草に、まもりは閨の時よりも気恥ずかしくなって顔を覆う。
「何やってんだ」
「・・・うん、やっと判ったの」
「ア?」
訝しげな彼に構わず、まもりは赤面しながら笑みを浮かべる。
確かに噂なんてどうでもいい。
勝手に振りまかれる話題になんてもう振り回されない。

優しい悪魔のこの腕に居られる今が、真実なのだから。



***
有珠様リクエスト『まもりにだけすごくすごく優しいヒル魔』でした! 今まで書いたどのヒル魔さんとも別人になるよう甘く甘く書いてみたらもう途中からいたたまれなくなってなにやら恥ずかしかったです。裏をご希望だったので、前作『ソルティー&スウィート』の補完も兼ねさせて頂き、時季はずれのホワイトデーを取り入れてみました。優しさの意味をはき違えてみるのも一興でしたが、たまにはストレートに。そして撃沈しました・・・。
リクエストありがとうございましたー!!

有珠様のみお持ち帰り可。
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