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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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流言飛語(上)

(ヒルまも)
※『ソルティー&スウィート』の続きです

+ + + + + + + + + +
バレンタインデーの翌日からまもりはどこか浮ついた気持ちで学校に通っていた。
『まもり』
あの低く囁く声を思い出すだけで、まもりの顔は赤くなる。
あんな声は卑怯だ。
その一言だけでまもりの正常な回路は停止してしまい、かろうじて日常をこなす回路だけがぎこちなく動いている、そんな感じ。
夕暮れの海岸でキスされたことも充分赤面する材料になったはずだけど、まもりの頭はそれよりも来るべきXデー、すなわちホワイトデーにどうするか、という事の方が大事だった。

「姉崎」
「っ! な、なに、ヒル魔くん」
足音なく近寄っていたヒル魔を見上げ、まもりは赤い顔でどもりながら応える。
それにヒル魔はぴんと片眉を上げて手を出した。
「何?」
「数Ⅲのノート。テメェ俺の持っていっただろ」
それにまもりは目を瞬かせた。確かに昨日はヒル魔の家で勉強していたけど、持っていった覚えはない。
「え? ちょっと待ってね」
「ケケケ、人の家に上がり込んで俺のモノ持ってくなんざ、結構な悪党っぷりだナァ?」
「なっ! ノート一冊間違えて持っていっただけなのにそんな言い方ないでしょ!」
言い返しながらまもりは鞄を探る。そして見慣れないノートを見つけてぴたりと手を止めた。
「あ」
「ほらな」
ふん、と鼻を鳴らされてまもりは恐縮しながらノートを出す。
「ごめん」
「詫びなら今日、俺の家で聞いてやろう」
「え?! また?」
「こっちの方が集中出来る、とかほざいたのはどっちだったっけナァ?」
「・・・う」
黙り込んだまもりの頭をぐしゃっとかき混ぜ、ヒル魔はにやりと笑って立ち去った。
「もう、失敗しちゃったなあ」
ぼやきながら振り返ったまもりは、教室内の沈黙にここでやっと気が付いた。
クラスメイトはもちろん、咲蘭やアコまでがまもりを唖然とした目で見つめている。
「ど、どうしたの?」
慌てて声を掛けると、誰もかれもがそっと目を逸らす。まるで逃げるように。
「咲蘭? アコ?」
二人もそろって視線を外すので、まもりは不安になるが、ちら、とこちらを見た咲蘭に縋るように近寄る。
「・・・昼休みにね」
「? うん!」
今は四時限目のチャイムが鳴る直前。
一時間後の約束に、そんなに長い話なのかな、とまもりは頷くと先生が口を開く前に席に着いた。


小春日和とはいえ、屋上は少々寒い。
けれど人目があるところでは、と二人に渋られてまもりは昼ご飯を慌てて食べ終えると、ホットココアの缶を持って屋上へとやって来た。
「あ、思ったより暖かい」
給水塔のあるところの裏は風も当たらず、日当たりが良くて快適だ。
そこに腰を押しつけた乙女三人は麗らかな日差しにほっと頬をゆるめる。
「・・・で、なんであんなにみんな沈黙してたの?」
その空気を打ち砕くまもりの声に、二人はぴたりと止まる。
そして胡乱げにまもりを見た。
「な、何なの? さっきから!」
「・・・あのねえ、まも」
「・・・それはこっちが聞きたいわよ」
「え?」
小首を傾げるまもりに、咲蘭とアコは顔を見合わせてため息をつく。
「まもは、ヒル魔とデキてるんでしょ?」
「え、あ・・・うん」
それは隠していることでもないので、まもりは素直に頷く。
「で、まもはこないだバレンタインデーに学校さぼったわよね?」
「うん・・・」
「それで昨日はヒル魔の家に行った、と」
「うん」
「今日も行くのよね?」
「うん」
「「だからよ!」」
交互に咲蘭とアコに言われ、まもりは眉間にしわを寄せて口を開く。
「何が?」
「・・・キャー! もう、信じられない!」
「まも、あんた鈍いにも程があるわよ!!」
「ええ?! だから何が!」
あまりの言われように困惑したまもりにアコが口を開く。
「まもがとうとうヒル魔とヤッちゃった、っていうんでもうそこら中大騒ぎなのよ」
「やっちゃった? 何を?」
「んもう、アレよ、その・・・セックス!」
「ッ!!」
絶句するまもりに、咲蘭もこめかみを押さえる。
「よりにもよってヒル魔と、っていうんで校内じゃその話で持ちきりなのよ」
「こ・・・」
再び絶句するまもりの前で、咲蘭とアコは手を取り合って嘆いている。
「こんなにかわいいまもが悪魔の餌食になったなんて!」
「無理矢理だったのかと思ってたけど、違うみたいでそれもまた微妙!」
「そりゃまもも女の子だもん、いつかは好きな人と、とは思ってもさあ!」
「なんでそれがヒル魔なのよ!」
「聞いてみたいけど聞くとヒル魔に殺されるかもしれないし!」
「そもそもまもが判ってるのか心配だし!」
口を開いたまま言葉もなく見るまもりの前で、漫談のような掛け合いが続いている。
「ねえ、大丈夫?! 酷い事されてない!?」
「無茶な事要求されてない!?」
心配なのかそれとも興味津々なのか、ずいっと寄ってくる二人にまもりは手にしたココアの缶のプルトップを開けることさえ忘れて呆然としてしまった。
と、唐突にそこに声が響いた。
「ホー? 何が無茶なのかお聞きしたいナァ」
「きゃ――――――――――!!!」
「出た――――――――――!!!」
それに驚き飛び上がった咲蘭とアコは一目散に屋上から離脱した。
呆然とするまもりを一人残して。
そうしてその傍らに、ふわりと飛び降りてきたヒル魔の姿。
「・・・ど、どこ、から・・・」
「上」
給水塔の傍らに陣取っていたらしい。高さは二メートルもあるだろうが、彼はそんな高さを一切感じさせず降り立った。
「い、いつからいたの!?」
「テメェらが糞雀の如く日向で一列に丸まってたあたりから」
「最初じゃない!」
「ケケケ、後から来たヤツに言われてもナァ」
「うう!」
真っ赤になるまもりにヒル魔はにやにやと楽しげだ。
「ヒ、ヒル魔くんは知ってたの? その、私と、その・・・」
「セックスしたっつー噂か」
「っ!! そ、そう、それ」
恥ずかしそうに視線を逸らすまもりにヒル魔は口を開く。
「俺が知らない噂はねぇよ」
「そう、よね」
愚問だった。けれどそれだからこそ気になる。
「・・・なんで否定しないの?」
「ア?」
「だってそんな、下世話な話だし、失敬だとか思わない?」
それにヒル魔はぴんと片眉を上げる。やや不機嫌そうな面持ちで。
「付き合ってる女との噂に否定が必要あるか」
「だって、大分誇張というか一人歩きが!」
「噂っつーもんは得てしてそういうモンだろ。いちいちオタオタしてっから余計にそう見えるんだよ」
ふん、と尊大に鼻を鳴らす様に、まもりはそういうものかしら、と小首を傾げる。
「オイ」
「なに・・・」
考え込むまもりに掛けられた声に、顔を上げれば間近に彼の顔。
「ん」
拒む間もなくキスをされ、まもりは小さく喉を鳴らした。
腕に抱き込まれ、晴れとはいえ外にいたため少々冷えていた身体に心地よく熱が染みる。
「こ、こんなところで!」
「誰からも見えねぇよ」
穏やかな日差しはヒル魔の髪の毛を柔らかく輝かせる。
常に人を焼き尽くすような強烈な印象を与える姿でありながら、彼の腕はまもりを脅かす事はない。
彼は無理強いなどした事はないし、そうとは気づかせないかもしれないけど、とても優しいのだ。
それが周囲にはまるで伝わってなくて、まもりは呟く。
「・・・やっぱり噂は嫌ね」
「なら堂々と宣言するか? まだ俺とセックスしてません、ってナァ」
「嫌よ! そこじゃなくて!」
「ア?」
「・・・ヒル魔くんは優しいのに」
それにヒル魔は一瞬目を見開くと、笑みを浮かべる。それは苦笑と呼べる優しい顔で。
「そりゃ、テメェだけが知ってりゃいい事だ」
再び降りてくる唇を、今度は黙って受け入れた。

<続>
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