旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
もうすぐ来る夏休みを指折り数える一学期終盤。
その日、蛭魔妖一は学校を休んだ。
朝、部室でその連絡を受けた面々は目を丸くする。
「珍しいね、ヒル魔さんが休みなの」
「栗田先輩、何か聞いてないっスか?」
「うーん、それがねぇ・・・メールで一応連絡あったんだけど・・・」
ほら、と栗田が見せた画面にあったのは、しばらく休む、という簡潔な一言だけ。
理由も何も書いていない。
「なんでなのか電話したんだけど通じないし、メールも見てるのかどうか・・・」
彼はクリスマスボウルが終わった後も部活に当然のように顔を出していたのに。
「大丈夫かな・・・」
不安そうに呟く面々の前で扉が開いた。
「おはよう。どうしたの?」
笑顔の姉崎まもりがそこにいた。
「姉崎さん、ヒル魔が休みなんだって」
「理由がわからないんスよ!」
「心配で・・・」
わいわいと騒ぐ面々の前で、彼女はにっこりと笑う。
「大丈夫よ。悪魔は殺しても死なないから」
「・・・え?」
さらっと今、物騒な言葉を聞いたような。けれど固まる部員に関知せず、彼女はぱたぱたと動き回り、部活の準備を整えていく。
「ほら、朝練の準備しないと。やらないの?」
「あ、いや、やるよ!」
「準備MAX!」
「フゴ!」
皆も目が覚めたように慌てて準備に取りかかった。まもりはおもむろに部室にあったパソコンを立ち上げる。
「え?」
「まもりさん?」
「え? どうかした?」
まもりはパソコンのパスワードを解除し、データを開く。アナログ人間と豪語するはずの彼女なのに。
「まもり姉ちゃん、パソコン使えたっけ?」
「やだ、練習したのよ。少しは使えるようになったの!」
くすくすと笑われて、セナはそうなのかな、と疑問を抱きつつも準備を整えてグラウンドに向かった。
その時、視界の端で彼女が銃を取り出したように見えたが、きっと気のせいだろう。・・・たぶん。
三年生の教室ではちょっとした騒動になっていた。
ヒル魔が休みな事に関しては誰も今更驚かないが、まもりの様子がおかしい、のだ。
恐る恐る、咲蘭が声を掛ける。
「・・・あの、まも?」
「なあに?」
にっこりと笑うまもりに咲蘭は言葉を返しあぐねる。
まもりはこれまで、どんなに暑くても風紀委員という立場からか、制服を着崩すようなことは一度もなかった。
それが今はリボンを外し、胸元を第二ボタンまで開けている。上から覗き込めば豊かな胸元とその谷間がばっちり見えてしまう。
普段なら下着が透けるから、と気を遣ってキャミソールを着ているはずなのに、今日に限ってそれも着ていない。
スカートも一段階短い気がするし、無造作に後ろで一つに纏めた髪の毛が解れて汗の滲む首筋に掛かるのも色香が漂っていて。
そう、何というか・・・艶めかしいのだ。
それにそこかしこに散る朱色の痣。
「首筋に、その・・・」
品行方正、清廉潔白な風紀委員にはあり得ないと思われる情事の証。
「これ?」
それをまもりはなんだ、という感じで撫でる。
とびっきりに妖艶な笑みを付けて。
途端、教室中の男子が思わず喉を鳴らしたり前屈みになったりと、不自然な動きをする。
「ちょ、調子、悪いの?」
周囲の異様な雰囲気に引くに引けなくなった咲蘭が重ねて尋ねれば、まもりはわざと太ももを見せつけるように脚を組み替えた。
「そう見える?」
「ええと・・・」
どうしよう、もう逃げたい、というのを顔中に貼り付けた咲蘭を助ける者は誰もいない。
誰もがまもりの一挙一動を見逃さないよう目をこらし、一言一句を漏らさないように耳を側立てていた。
「夕べ一晩中離して貰えなかったから、寝不足なの」
「・・・」
「腰は痛いしお腹の中まで筋肉痛だし」
咲蘭は絶句して気絶しそうになる。
まさかまもりの口から昼日中、こんなに大勢の前でそんな赤裸々に前夜の記憶を告白されるなんて。
「喘ぎすぎて喉も痛いしね」
気怠げな視線がまた妖艶で、得も言われぬ色香がまもりから立ち上っているかのようだ。
ガタガタガタッ、と生徒達は完全に浮き足立ち、男子生徒の何人かはトイレへと掛けだしていく。
その様子を、実に楽しげにまもりは眺めていた。
放課後、散々にクラスの男を誘惑したまもりは何喰わぬ顔で部活へ向かおうとしたが、靴箱に入っていた手紙に動きを止めた。
開けばそれはまもりを呼び出すもので。
それを見たまもりはくるりと踵を返し、指定の屋上へと上がっていった。
「あ、あの! 姉崎さん・・・」
声を掛けられ、まもりは視線を向ける。そこには汗だくの太った男。パソコン研究部の部長だ。
「僕、あの、姉崎さん、その・・・」
「なあに?」
笑みを浮かべ、小首を傾げるまもりの姿に彼はますます赤くなって汗を吹き出す。
「ぼぼ、僕、ずっと姉崎さんの事が好きだったのに!!」
「なに!?」
がば、といきなり声を上げた男に、まもりは一歩引いた。
「あああ姉崎さんが誰かに抱かれたなんて! そんな、許せない!!」
その声に合わせてわらわらと屋上のどこかに潜んでいたらしい男達が姿を現す。それにまもりは怯えたように胸元に手を組み、出口へと向かおうとしたが。
「逃がさない! 姉崎さんは僕たちの天使なんだ!」
「あっ!」
出口も塞がれ、まもりは八方塞がりになる。気色悪い、という面々に取り囲まれ、まもりは俯いて更に手を強く握った。
「姉崎さん!!」
そうして飛びかかってきた男にまもりは顔を上げた。
「あなたみたいなキモい男なんてお断りよ」
にっこりと天使の顔で笑い、そしてその手にあるのはデザートイーグル。
ぴたりと全員の動きが止まった。
「ふうん、パソコン部と模型部、写真部に漫研か・・・文化系オタクそろい踏みね」
じろじろと全員の顔を見るまもりに、一人が恐る恐る近づく。
まさかまもりが銃を持ってるはずがない。あの悪魔のような男ではあるまいし、と。
しかしまもりの目はその動きをしっかりと捕らえ、すかさず銃を構える。
短く弾けるような音と共にコンクリートに銃弾がめり込んだ。
男達はざざっと後ずさりする。それを見ながらまもりはころころと笑った。
「冗談は顔だけにしておいたら?」
笑顔も仕草もまるで天使なのに。
「女一人にこれだけ頭数揃えて、レイプすることしか考えない男なんて虫けら以下だと思うの」
声も特に変調せず、笑みさえ浮かんでいるのに。
「そんなんだから童貞なのよ。右手が嫌なら金貯めて風俗行って尻の毛までむしられればいいわ」
可憐な唇から零れるのは完全に見下した台詞で。
まもりを美化していた男達がへなへなとその場に崩れ落ちる。
「そんな・・・姉崎さんがそんなこと言うなんて・・・」
「あら。私だって天使じゃなくて人間の女だしね」
だからね、とまもりは小首を傾げて殊更に清らかな笑みを浮かべる。
「あなたたちみたいな芯から腐った人なんて、死ねばいいと思うの」
そこでまもりの携帯が鳴る。それを見てまもりは更に嬉しそうに笑った。
「あ、ヒル魔くんだわ」
「?!」
「もしもし?」
嬉しそうに笑顔を浮かべて歩きながら電話に出る彼女を、全員為す術なく見送る。
「うん、そう。まだ学校」
扉を押さえて呆然としていた男の顔に容赦なく銃を突きつけ、怯んだところで膝を蹴飛ばす。
悲鳴を上げてひっくり返るのを楽しそうにまもりは見下す。
「部活は出なくていいの? だって心配じゃないの? ・・・やだ」
まもりは思わず見惚れてしまいそうなほどの笑顔で屋上にへたり込む男達をぐるりと眺め。
「あれだけやってまだ足りないの? 仕方ないわね・・・」
まもりは携帯を肩と首に挟み、空いた手の親指を立ててすっと首の前を滑らせ、そして。
「今夜も愛し合っちゃいましょ!」
唇で『くたばれ』と無音で告げて親指を地に向けて下げて。
衝撃で石化した男達にとどめを刺し。
そうして派手な音を立てて扉を閉めたのだった。
ヒル魔が自宅代わりにしているホテルへとまもりは鼻歌交じりで向かった。
エレベーターのボタンを押して上がり、ポケットから鍵を取り出して開こうとして。
思い出したかのようにリボンを取り出し、襟元に締める。
スカート丈も直してからまもりは扉を開いた。
「おー、気が付いたか」
彼女にしては尊大で雑な口を利きながら。
「気がついたか、じゃ、ない! なにこれ、なんなのこれ?!」
途端に噛みつくのは金髪を立てる事もせず、裸のままシーツにくるまってるヒル魔。
それをにやにやと楽しげに見下ろしながらまもりはどっかりと一つしかない椅子に座る。
「知らねぇよ。朝目が覚めたらこうなってた、っつーだけの話だ」
「だけ、とかじゃないわよ!」
ほぼ涙目のヒル魔を見ながら、まもりは口を開く。
「俺の顔じゃ泣かれても全然そそられねぇなあ」
「何言ってるのー!!」
ヒル魔がまもりの口調で絶叫した。
とどのつまり。
何が原因かはわからないが、目が覚めたら二人の中身が入れ替わっていたのだ。
目が覚めたのは、見た目はまもりで中身がヒル魔の方が先で。
これは面白い、と身支度をして見た目はヒル魔で中身がまもりを置いて学校に行ってしまったのだ。
次に目が覚めた見た目はヒル魔で中身はまもりは、ヒル魔の裸など直視出来ず、そうなれば着替えすら出来なくて、困って連絡した次第だ。
通話先でまるで自分の如く振る舞って喋る彼に鳥肌を立てたりしながら待っていたのだが、妙に上機嫌な姿を見て不信感が募る。
「私の身体でなにか悪い事しなかったでしょうね?!」
「あー? なんもしてねぇよ、むしろ害虫駆除大成功って感じだな」
「・・・嫌な予感がする! ああもう、どうやったら元に戻るの!?」
早く戻って確かめないと、と見た目はヒル魔で中身がまもりは焦るが、そこに見た目はまもりで中身がヒル魔がのし掛かる。
「何するの!?」
「そりゃー、昨日と同じ事すりゃ戻るんじゃねぇか?」
「そ・・・それって・・・」
「身体が逆だから、普段俺がどんな気分かが楽しめるぜ?」
にやにやと笑う自分の顔に、外見はヒル魔で中身がまもりは青ざめて抵抗しようとするが、自分の身体に乱暴な事もできず、困惑するばかり。
「まあまあ、テメェの身体なら俺の方がよく知ってるから悪いようにはなんねぇよ」
「キャー!!」
獲物を狙うようなまもりの声と、絹を裂くようなヒル魔の悲鳴が、とあるホテルの一室で響き渡った。
「それにしても、目の前にあるのが自分の顔だと盛り上がらねぇなあ」
「だったらやめてよ、バカー!!」
***
ナス子様リクエスト『ヒルまも前提ブラックまも』でしたwご希望は特に入れ替わりネタじゃなかったんですが、ブラックまもちゃんを考えてたらなんとなくこんな話に・・・。オールキャラご希望だったんですがそうでもなくて更に申し訳ありません! ああでも楽しかったです!!
リクエストありがとうございましたー!!
ナス子様のみお持ち帰り可。
その日、蛭魔妖一は学校を休んだ。
朝、部室でその連絡を受けた面々は目を丸くする。
「珍しいね、ヒル魔さんが休みなの」
「栗田先輩、何か聞いてないっスか?」
「うーん、それがねぇ・・・メールで一応連絡あったんだけど・・・」
ほら、と栗田が見せた画面にあったのは、しばらく休む、という簡潔な一言だけ。
理由も何も書いていない。
「なんでなのか電話したんだけど通じないし、メールも見てるのかどうか・・・」
彼はクリスマスボウルが終わった後も部活に当然のように顔を出していたのに。
「大丈夫かな・・・」
不安そうに呟く面々の前で扉が開いた。
「おはよう。どうしたの?」
笑顔の姉崎まもりがそこにいた。
「姉崎さん、ヒル魔が休みなんだって」
「理由がわからないんスよ!」
「心配で・・・」
わいわいと騒ぐ面々の前で、彼女はにっこりと笑う。
「大丈夫よ。悪魔は殺しても死なないから」
「・・・え?」
さらっと今、物騒な言葉を聞いたような。けれど固まる部員に関知せず、彼女はぱたぱたと動き回り、部活の準備を整えていく。
「ほら、朝練の準備しないと。やらないの?」
「あ、いや、やるよ!」
「準備MAX!」
「フゴ!」
皆も目が覚めたように慌てて準備に取りかかった。まもりはおもむろに部室にあったパソコンを立ち上げる。
「え?」
「まもりさん?」
「え? どうかした?」
まもりはパソコンのパスワードを解除し、データを開く。アナログ人間と豪語するはずの彼女なのに。
「まもり姉ちゃん、パソコン使えたっけ?」
「やだ、練習したのよ。少しは使えるようになったの!」
くすくすと笑われて、セナはそうなのかな、と疑問を抱きつつも準備を整えてグラウンドに向かった。
その時、視界の端で彼女が銃を取り出したように見えたが、きっと気のせいだろう。・・・たぶん。
三年生の教室ではちょっとした騒動になっていた。
ヒル魔が休みな事に関しては誰も今更驚かないが、まもりの様子がおかしい、のだ。
恐る恐る、咲蘭が声を掛ける。
「・・・あの、まも?」
「なあに?」
にっこりと笑うまもりに咲蘭は言葉を返しあぐねる。
まもりはこれまで、どんなに暑くても風紀委員という立場からか、制服を着崩すようなことは一度もなかった。
それが今はリボンを外し、胸元を第二ボタンまで開けている。上から覗き込めば豊かな胸元とその谷間がばっちり見えてしまう。
普段なら下着が透けるから、と気を遣ってキャミソールを着ているはずなのに、今日に限ってそれも着ていない。
スカートも一段階短い気がするし、無造作に後ろで一つに纏めた髪の毛が解れて汗の滲む首筋に掛かるのも色香が漂っていて。
そう、何というか・・・艶めかしいのだ。
それにそこかしこに散る朱色の痣。
「首筋に、その・・・」
品行方正、清廉潔白な風紀委員にはあり得ないと思われる情事の証。
「これ?」
それをまもりはなんだ、という感じで撫でる。
とびっきりに妖艶な笑みを付けて。
途端、教室中の男子が思わず喉を鳴らしたり前屈みになったりと、不自然な動きをする。
「ちょ、調子、悪いの?」
周囲の異様な雰囲気に引くに引けなくなった咲蘭が重ねて尋ねれば、まもりはわざと太ももを見せつけるように脚を組み替えた。
「そう見える?」
「ええと・・・」
どうしよう、もう逃げたい、というのを顔中に貼り付けた咲蘭を助ける者は誰もいない。
誰もがまもりの一挙一動を見逃さないよう目をこらし、一言一句を漏らさないように耳を側立てていた。
「夕べ一晩中離して貰えなかったから、寝不足なの」
「・・・」
「腰は痛いしお腹の中まで筋肉痛だし」
咲蘭は絶句して気絶しそうになる。
まさかまもりの口から昼日中、こんなに大勢の前でそんな赤裸々に前夜の記憶を告白されるなんて。
「喘ぎすぎて喉も痛いしね」
気怠げな視線がまた妖艶で、得も言われぬ色香がまもりから立ち上っているかのようだ。
ガタガタガタッ、と生徒達は完全に浮き足立ち、男子生徒の何人かはトイレへと掛けだしていく。
その様子を、実に楽しげにまもりは眺めていた。
放課後、散々にクラスの男を誘惑したまもりは何喰わぬ顔で部活へ向かおうとしたが、靴箱に入っていた手紙に動きを止めた。
開けばそれはまもりを呼び出すもので。
それを見たまもりはくるりと踵を返し、指定の屋上へと上がっていった。
「あ、あの! 姉崎さん・・・」
声を掛けられ、まもりは視線を向ける。そこには汗だくの太った男。パソコン研究部の部長だ。
「僕、あの、姉崎さん、その・・・」
「なあに?」
笑みを浮かべ、小首を傾げるまもりの姿に彼はますます赤くなって汗を吹き出す。
「ぼぼ、僕、ずっと姉崎さんの事が好きだったのに!!」
「なに!?」
がば、といきなり声を上げた男に、まもりは一歩引いた。
「あああ姉崎さんが誰かに抱かれたなんて! そんな、許せない!!」
その声に合わせてわらわらと屋上のどこかに潜んでいたらしい男達が姿を現す。それにまもりは怯えたように胸元に手を組み、出口へと向かおうとしたが。
「逃がさない! 姉崎さんは僕たちの天使なんだ!」
「あっ!」
出口も塞がれ、まもりは八方塞がりになる。気色悪い、という面々に取り囲まれ、まもりは俯いて更に手を強く握った。
「姉崎さん!!」
そうして飛びかかってきた男にまもりは顔を上げた。
「あなたみたいなキモい男なんてお断りよ」
にっこりと天使の顔で笑い、そしてその手にあるのはデザートイーグル。
ぴたりと全員の動きが止まった。
「ふうん、パソコン部と模型部、写真部に漫研か・・・文化系オタクそろい踏みね」
じろじろと全員の顔を見るまもりに、一人が恐る恐る近づく。
まさかまもりが銃を持ってるはずがない。あの悪魔のような男ではあるまいし、と。
しかしまもりの目はその動きをしっかりと捕らえ、すかさず銃を構える。
短く弾けるような音と共にコンクリートに銃弾がめり込んだ。
男達はざざっと後ずさりする。それを見ながらまもりはころころと笑った。
「冗談は顔だけにしておいたら?」
笑顔も仕草もまるで天使なのに。
「女一人にこれだけ頭数揃えて、レイプすることしか考えない男なんて虫けら以下だと思うの」
声も特に変調せず、笑みさえ浮かんでいるのに。
「そんなんだから童貞なのよ。右手が嫌なら金貯めて風俗行って尻の毛までむしられればいいわ」
可憐な唇から零れるのは完全に見下した台詞で。
まもりを美化していた男達がへなへなとその場に崩れ落ちる。
「そんな・・・姉崎さんがそんなこと言うなんて・・・」
「あら。私だって天使じゃなくて人間の女だしね」
だからね、とまもりは小首を傾げて殊更に清らかな笑みを浮かべる。
「あなたたちみたいな芯から腐った人なんて、死ねばいいと思うの」
そこでまもりの携帯が鳴る。それを見てまもりは更に嬉しそうに笑った。
「あ、ヒル魔くんだわ」
「?!」
「もしもし?」
嬉しそうに笑顔を浮かべて歩きながら電話に出る彼女を、全員為す術なく見送る。
「うん、そう。まだ学校」
扉を押さえて呆然としていた男の顔に容赦なく銃を突きつけ、怯んだところで膝を蹴飛ばす。
悲鳴を上げてひっくり返るのを楽しそうにまもりは見下す。
「部活は出なくていいの? だって心配じゃないの? ・・・やだ」
まもりは思わず見惚れてしまいそうなほどの笑顔で屋上にへたり込む男達をぐるりと眺め。
「あれだけやってまだ足りないの? 仕方ないわね・・・」
まもりは携帯を肩と首に挟み、空いた手の親指を立ててすっと首の前を滑らせ、そして。
「今夜も愛し合っちゃいましょ!」
唇で『くたばれ』と無音で告げて親指を地に向けて下げて。
衝撃で石化した男達にとどめを刺し。
そうして派手な音を立てて扉を閉めたのだった。
ヒル魔が自宅代わりにしているホテルへとまもりは鼻歌交じりで向かった。
エレベーターのボタンを押して上がり、ポケットから鍵を取り出して開こうとして。
思い出したかのようにリボンを取り出し、襟元に締める。
スカート丈も直してからまもりは扉を開いた。
「おー、気が付いたか」
彼女にしては尊大で雑な口を利きながら。
「気がついたか、じゃ、ない! なにこれ、なんなのこれ?!」
途端に噛みつくのは金髪を立てる事もせず、裸のままシーツにくるまってるヒル魔。
それをにやにやと楽しげに見下ろしながらまもりはどっかりと一つしかない椅子に座る。
「知らねぇよ。朝目が覚めたらこうなってた、っつーだけの話だ」
「だけ、とかじゃないわよ!」
ほぼ涙目のヒル魔を見ながら、まもりは口を開く。
「俺の顔じゃ泣かれても全然そそられねぇなあ」
「何言ってるのー!!」
ヒル魔がまもりの口調で絶叫した。
とどのつまり。
何が原因かはわからないが、目が覚めたら二人の中身が入れ替わっていたのだ。
目が覚めたのは、見た目はまもりで中身がヒル魔の方が先で。
これは面白い、と身支度をして見た目はヒル魔で中身がまもりを置いて学校に行ってしまったのだ。
次に目が覚めた見た目はヒル魔で中身はまもりは、ヒル魔の裸など直視出来ず、そうなれば着替えすら出来なくて、困って連絡した次第だ。
通話先でまるで自分の如く振る舞って喋る彼に鳥肌を立てたりしながら待っていたのだが、妙に上機嫌な姿を見て不信感が募る。
「私の身体でなにか悪い事しなかったでしょうね?!」
「あー? なんもしてねぇよ、むしろ害虫駆除大成功って感じだな」
「・・・嫌な予感がする! ああもう、どうやったら元に戻るの!?」
早く戻って確かめないと、と見た目はヒル魔で中身がまもりは焦るが、そこに見た目はまもりで中身がヒル魔がのし掛かる。
「何するの!?」
「そりゃー、昨日と同じ事すりゃ戻るんじゃねぇか?」
「そ・・・それって・・・」
「身体が逆だから、普段俺がどんな気分かが楽しめるぜ?」
にやにやと笑う自分の顔に、外見はヒル魔で中身がまもりは青ざめて抵抗しようとするが、自分の身体に乱暴な事もできず、困惑するばかり。
「まあまあ、テメェの身体なら俺の方がよく知ってるから悪いようにはなんねぇよ」
「キャー!!」
獲物を狙うようなまもりの声と、絹を裂くようなヒル魔の悲鳴が、とあるホテルの一室で響き渡った。
「それにしても、目の前にあるのが自分の顔だと盛り上がらねぇなあ」
「だったらやめてよ、バカー!!」
***
ナス子様リクエスト『ヒルまも前提ブラックまも』でしたwご希望は特に入れ替わりネタじゃなかったんですが、ブラックまもちゃんを考えてたらなんとなくこんな話に・・・。オールキャラご希望だったんですがそうでもなくて更に申し訳ありません! ああでも楽しかったです!!
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鳥(とり)
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女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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