旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
目が覚めたら、アヤちゃんは宣言通りいなかった。
私が寝たのも結構遅い時間だったのだけれど、眠くないんだろうか。
時計を見れば八時をちょっと過ぎたくらいだった。
昨日着ていた制服を探したけれど見つからず、私はパジャマのまま恐る恐る下に降りる。
「おはよう、杏ちゃん。もう起きたの?」
「はい! ありがとうございました」
本当はまだ眠いけど、自分の家でもないのに二度寝は出来ない。
「制服ね、洗濯しちゃったから乾くまでアヤの服着てて」
はい、と渡される服に私は戸惑ったけど、いつまでもパジャマじゃまずいし、とありがたく着替えた。
それはシンプルなワンピース。
大柄な私に誂えたようにぴったり・・・と言いたかったけど、胸は少々緩かった。
そういえばアヤちゃん、すごくスタイルも良かった・・・。
あんなに美人でスタイルもいいなんて、いいなあ。
ついでに洗面台も借り、私は居間に顔を出した。
そこには昨日と同じく髪を立てた金髪悪魔、じゃなかった、おじさんと、昨日ちょっとだけ挨拶した護くんがいた。
「おはようございます」
「よく寝たか」
「はい! ありがとうございました」
「ケケケ」
特徴的な笑い方だなー、と思ってると護くんがコーヒーを持ってきてくれた。
「おはよう。コーヒーどうぞ」
「ミルクとお砂糖、あります?」
「入れておいたよ。一つずつだよね」
にこにこと笑顔で渡されて、私も笑顔になる。
・・・あれ、私ミルクと砂糖の数言ってなかったよね?
「杏奈さんって呼んでいい?」
「杏でいいわよ」
「じゃあ杏ちゃんでいい?」
「もちろん!」
そう言うと護くんはにこーっと笑った。かわいいなあ、こんな弟欲しいなあ。
ばさ、と新聞を広げて読むおじさんを見ていてふと気づいた。
「あれ、金髪って地毛なんですか?」
その疑問には護くんが答えてくれた。
「違うよ。お父さんとお兄ちゃんとお姉ちゃんは染めてるの。僕とお母さんと妹は地毛」
「へえ・・・」
似合ってるから地毛かと思った。
アヤちゃんとまもりさんの目は青いし、言われなければ判らないなあ。
「そろそろお兄ちゃんたちも帰ってくるよ」
「どこか行ってるの?」
「うん、ランニング」
「だって、二人とも昨日遅かったのに・・・」
それに朝食の用意をしていたまもりさんが微笑んだ。
「あの二人と夫は睡眠時間短いのよ。それで充分なんですって」
「へえ」
私は絶対無理だ。今だってがんばって起きてるけど、結構眠いもん。
「ただいまー」
妖介くんの声が響く。
「タダイマ」
その少し後にアヤちゃんの声。
やがて朝食の席に全員が揃うと、それはもう壮観だった。
昨日は疲れていたし緊張もあったのであんまりじっくり見られなかったけれど、今朝は少し慣れたからか見渡す余裕があった。
まもりさんやアヤちゃんは言わずもがな、おじさんと妖介くんの顔つきだって整ってるし、護くんもかわいい。
あかりちゃんはまだ小さいけど、おめめぱっちりな赤ちゃんだ。瞳の色はブルー。
きっと大きくなったらまもりさんみたいに美人になるんだろうなあ。
・・・なんだろう、この美形家族。
うちのパパママも負けてないと思いたいけど、なんだかこう、派手なんだよね、ヒル魔さん家って。
私は改めて気圧されながら朝食に箸を付けた。
食後の食器洗いを手伝っていたら、玄関のチャイムが鳴った。
ぱたぱたとまもりさんと護くんが出て行く。
程なくして護くんが戻ってきて、私を呼んだ。
「杏ちゃん、お父さんが迎えに来てるよ」
「ホント?!」
まさか迎えに来てくれるなんて思わなくて、私は驚く。
居間に行くと、パパが居心地悪そうにソファに座っていた。
向かいにはおじさんが座ってニヤニヤしている。その隣にはまもりさんもあかりちゃんを抱いて座っていた。
「ウチの娘がご迷惑をおかけしました」
ぺこ、と頭を下げる隣に私も慌てて行って、私も頭を下げる。
「いいえ、迷惑なんて掛かってないわよ」
「熱中すると周りが見えねぇのは父親譲りだナァ」
ケケケ、と笑うおじさんにパパは顰めっ面だ。
「テメェの練習はどうした?」
「今日は休みだ。明日から遠征だしな」
パパは現役のアメフト選手。パパの試合を私がチアリーディングで応援するのが夢なんだ。
「相変わらずアメフトバカだなァ」
ニヤニヤと笑うおじさんはすごく楽しそうだ。
「パパ、おじさんとはお友達なの?」
それにパパは少し間をおいて口を開いた。
「・・・昔なじみ、だ」
「高校の時に大会で対戦したのよ」
まもりさんが補足してくれた。そうなんだ、おじさんもアメフトやってたんだなあ。
あ、だから私の事知ってたのか。
「こんにちは、筧さん」
妖介くんがコーヒーを持ってきた。その顔を見てパパは目を見開いている。
「・・・ここまでそっくりだとは・・・」
「やだなあ、俺のどこがこの悪魔と似てるんですか?」
笑顔で妖介くんはおじさんをこき下ろしているし。
「いー度胸だナァ糞息子」
がしゃん、とおじさんはどこから出したのか銃を妖介くんに突きつけている。
・・・銃? 本物!? でも誰もそれに突っ込まないんだけど・・・なんで?
「俺はラインなんです。LBやってます」
「へえ。てっきりヒル魔の息子だからQBかと思ったのに」
「QBは姉です」
「・・・姉?」
「え、アヤちゃん選手なの?!」
噂のアヤちゃんもやって来て、パパにすっと頭を下げた。
パパはまた驚いてる。そりゃ驚くよね、私だって驚いた。
だって見るからにそんなスポーツやってます、っていう感じじゃないんだもん。
・・・あ、でもなんか武道はやってそうだった。昨日、男の人投げてたし。
「なんで娘までアメフトなんてやらせてるんだ?」
「男女は関係ねぇだろ。自分からやりたいっつったからやらせてんだよ」
「だから杏ちゃんもやってるのかと思ってたんですけどね」
妖介くんが呟くと、それにパパは間髪入れず反論する。
「ウチは娘にそんな危険な事はさせられない」
「ケケケ、相変わらず糞マジメなこった」
ところで、と妖介くんがパパに声を掛ける。
「筧さんのハンドテク、すごいですよね。ちょっと教えて欲しい事があるんですけど、いいですか?」
妖介くんが笑顔で尋ねるのに、パパはちょっと複雑そうな表情で頷いた。
アメフトの話題でひとしきり盛り上がった後、私はまもりさんお手製のケーキをお土産に、ヒル魔さん家を後にした。
借りたワンピースを返しにまた行こう。なんなら試合を見に行った先で返してもいいかな。
「すごいお家だったよ。でも楽しかった!」
はしゃぐ私に車を運転するパパの顔は晴れない。
「どうしたの?」
「・・・不気味だった・・・」
どうやら妖介くんの存在がすごく違和感あったらしい。
パパ曰く、若い頃のおじさんそっくりすぎて表情やら雰囲気やらが気になって落ち着かなかったとか。
でもおじさんとは全然違う気がしたけどなあ。
「みんな優しかったよ」
それにパパはちら、と私を見てため息をつく。
「な、なんでため息つくの?」
「・・・あの家でお前、自分の事説明しなかったのに色々知られてなかったか?」
「え?」
「俺は高校卒業してから二人の結婚式以来、個人的にヒル魔と連絡取ったことはない」
「・・・ええっ?!」
てっきりパパの友達だから知ってるんだと思ってたのに、違うの!?
「あいつのそういうところが苦手なんだ」
高校は制服で判るにしても、まもりさん以外には特に説明しなくてもみんな私の名前や、チアリーディングやってたりすること知ってた。
その度にうやむやにしてたけど、考えれば考える程おかしな事ばかり。
でも、パパは青ざめた私の頭を撫でてくれて、ちょっと笑った。
「お前には優しかったんなら別にいいんだがな」
「・・・うん!」
私は気を取り直して、笑顔で頷いた。
その後の秋大会、私は自分の高校の試合がない日に、練習が休みのパパと泥門高校の試合を見に行った。
泥門デビルバッツ、というんだ。悪魔の蝙蝠か・・・確かにおじさんは悪魔っぽかったけどね。
私の視線の先で、赤いユニフォームの選手達が出てきた。
その中に一人女の子。あれがアヤちゃんだ。
「あ、あれアヤ・・・」
私の声は途中で止まってしまった。
髪が解かれ、一部髪の毛が逆立っている。
その目つきは鋭く、にやり、と歪んだ口元はおじさんそっくりだ。
その後ろから出てきた妖介くんの髪の毛もこれまた逆立っていて、顔つきから何からおじさんにすんごく似てた。
はっきり言って怖い。
あんな二人の側だったら絶対寄らない!!
なのにパパは一人納得して頷いている。
「あれなら違和感ないな」
「え?! いや、だって妖介くんもアヤちゃんも普段はあんなんじゃないよ?!」
「ヒル魔の子供だったらあれくらいだろうって思ってたからな。かえって納得だ」
パパの台詞に私はむっとして反論しようとしたけれど。
試合開始の声と共に歓声が上がったから、私は口をつぐみ、試合に集中する。
アヤちゃんたちの瞳みたいな真っ青な空に、ボールが高く蹴り上げられた。
***
雨様リクエスト『他校生から見たヒルまも一家の子供達』でした。この他校生がヒルまも世代の他校生なのか、それともアヤ・妖介世代の他校生なのかが判断出来ず、じゃあ両方出せばいいじゃない!(閃いた) と発想して書かせて頂きました。・・・長っ! でも、すっごく楽しく書かせて頂きました♪
リクエストありがとうございましたー!!
雨様のみお持ち帰り可。
ちなみに、なんで筧さんの子にしたのか、という理由を知りたい方は以下を反転してお読みください。
まずヒルまも二人の結婚が早かったので、同学年の子というのはかろうじて護と似た年齢の子がいるくらいで、ほとんどは護とあかりの間に生まれた子が多いのです。
というわけで、アヤと妖介の二人に近い年の子を出すなら多分『できちゃった婚』で生まれた子くらいだろうなあ、と。
そうなると『ヒルまも二人に面識がある』人で、『できちゃった婚をしそうにない』(しそうだったら面白くない)『アメフトを続けていそう』な人を選んだらなんとなく筧さんになったんです。
ほら、良くも悪くも思いこみが強くてうっかりしてそうなキャラなんでいいかな、と。
ヒルまもとの接点もほとんどない(結婚式で顔合わせたくらい)し、後は手紙やりとりがあるかないかくらいの人という点もばっちりだったし。久しぶりに見る人の子ってでかくなってるもんですよね~。
ルイメグでもよかったのですが、そうなるともっと前から知り合いでいそうだし、ウチのルイさんは割と後になってから所帯を持つ印象なので、子供は護より年下です。
高若もヒルまもよりは結婚が遅いので、子供はやっぱり護より年下です。こっちを出す話もあるんですが、それはまた先の話で。
二次創作もここまで来るともう完全にオリジナルですが、楽しく書かせて頂いてます。
またこの先もぽちぽち書くと思うので、お付き合い頂ければ嬉しいです♪
私が寝たのも結構遅い時間だったのだけれど、眠くないんだろうか。
時計を見れば八時をちょっと過ぎたくらいだった。
昨日着ていた制服を探したけれど見つからず、私はパジャマのまま恐る恐る下に降りる。
「おはよう、杏ちゃん。もう起きたの?」
「はい! ありがとうございました」
本当はまだ眠いけど、自分の家でもないのに二度寝は出来ない。
「制服ね、洗濯しちゃったから乾くまでアヤの服着てて」
はい、と渡される服に私は戸惑ったけど、いつまでもパジャマじゃまずいし、とありがたく着替えた。
それはシンプルなワンピース。
大柄な私に誂えたようにぴったり・・・と言いたかったけど、胸は少々緩かった。
そういえばアヤちゃん、すごくスタイルも良かった・・・。
あんなに美人でスタイルもいいなんて、いいなあ。
ついでに洗面台も借り、私は居間に顔を出した。
そこには昨日と同じく髪を立てた金髪悪魔、じゃなかった、おじさんと、昨日ちょっとだけ挨拶した護くんがいた。
「おはようございます」
「よく寝たか」
「はい! ありがとうございました」
「ケケケ」
特徴的な笑い方だなー、と思ってると護くんがコーヒーを持ってきてくれた。
「おはよう。コーヒーどうぞ」
「ミルクとお砂糖、あります?」
「入れておいたよ。一つずつだよね」
にこにこと笑顔で渡されて、私も笑顔になる。
・・・あれ、私ミルクと砂糖の数言ってなかったよね?
「杏奈さんって呼んでいい?」
「杏でいいわよ」
「じゃあ杏ちゃんでいい?」
「もちろん!」
そう言うと護くんはにこーっと笑った。かわいいなあ、こんな弟欲しいなあ。
ばさ、と新聞を広げて読むおじさんを見ていてふと気づいた。
「あれ、金髪って地毛なんですか?」
その疑問には護くんが答えてくれた。
「違うよ。お父さんとお兄ちゃんとお姉ちゃんは染めてるの。僕とお母さんと妹は地毛」
「へえ・・・」
似合ってるから地毛かと思った。
アヤちゃんとまもりさんの目は青いし、言われなければ判らないなあ。
「そろそろお兄ちゃんたちも帰ってくるよ」
「どこか行ってるの?」
「うん、ランニング」
「だって、二人とも昨日遅かったのに・・・」
それに朝食の用意をしていたまもりさんが微笑んだ。
「あの二人と夫は睡眠時間短いのよ。それで充分なんですって」
「へえ」
私は絶対無理だ。今だってがんばって起きてるけど、結構眠いもん。
「ただいまー」
妖介くんの声が響く。
「タダイマ」
その少し後にアヤちゃんの声。
やがて朝食の席に全員が揃うと、それはもう壮観だった。
昨日は疲れていたし緊張もあったのであんまりじっくり見られなかったけれど、今朝は少し慣れたからか見渡す余裕があった。
まもりさんやアヤちゃんは言わずもがな、おじさんと妖介くんの顔つきだって整ってるし、護くんもかわいい。
あかりちゃんはまだ小さいけど、おめめぱっちりな赤ちゃんだ。瞳の色はブルー。
きっと大きくなったらまもりさんみたいに美人になるんだろうなあ。
・・・なんだろう、この美形家族。
うちのパパママも負けてないと思いたいけど、なんだかこう、派手なんだよね、ヒル魔さん家って。
私は改めて気圧されながら朝食に箸を付けた。
食後の食器洗いを手伝っていたら、玄関のチャイムが鳴った。
ぱたぱたとまもりさんと護くんが出て行く。
程なくして護くんが戻ってきて、私を呼んだ。
「杏ちゃん、お父さんが迎えに来てるよ」
「ホント?!」
まさか迎えに来てくれるなんて思わなくて、私は驚く。
居間に行くと、パパが居心地悪そうにソファに座っていた。
向かいにはおじさんが座ってニヤニヤしている。その隣にはまもりさんもあかりちゃんを抱いて座っていた。
「ウチの娘がご迷惑をおかけしました」
ぺこ、と頭を下げる隣に私も慌てて行って、私も頭を下げる。
「いいえ、迷惑なんて掛かってないわよ」
「熱中すると周りが見えねぇのは父親譲りだナァ」
ケケケ、と笑うおじさんにパパは顰めっ面だ。
「テメェの練習はどうした?」
「今日は休みだ。明日から遠征だしな」
パパは現役のアメフト選手。パパの試合を私がチアリーディングで応援するのが夢なんだ。
「相変わらずアメフトバカだなァ」
ニヤニヤと笑うおじさんはすごく楽しそうだ。
「パパ、おじさんとはお友達なの?」
それにパパは少し間をおいて口を開いた。
「・・・昔なじみ、だ」
「高校の時に大会で対戦したのよ」
まもりさんが補足してくれた。そうなんだ、おじさんもアメフトやってたんだなあ。
あ、だから私の事知ってたのか。
「こんにちは、筧さん」
妖介くんがコーヒーを持ってきた。その顔を見てパパは目を見開いている。
「・・・ここまでそっくりだとは・・・」
「やだなあ、俺のどこがこの悪魔と似てるんですか?」
笑顔で妖介くんはおじさんをこき下ろしているし。
「いー度胸だナァ糞息子」
がしゃん、とおじさんはどこから出したのか銃を妖介くんに突きつけている。
・・・銃? 本物!? でも誰もそれに突っ込まないんだけど・・・なんで?
「俺はラインなんです。LBやってます」
「へえ。てっきりヒル魔の息子だからQBかと思ったのに」
「QBは姉です」
「・・・姉?」
「え、アヤちゃん選手なの?!」
噂のアヤちゃんもやって来て、パパにすっと頭を下げた。
パパはまた驚いてる。そりゃ驚くよね、私だって驚いた。
だって見るからにそんなスポーツやってます、っていう感じじゃないんだもん。
・・・あ、でもなんか武道はやってそうだった。昨日、男の人投げてたし。
「なんで娘までアメフトなんてやらせてるんだ?」
「男女は関係ねぇだろ。自分からやりたいっつったからやらせてんだよ」
「だから杏ちゃんもやってるのかと思ってたんですけどね」
妖介くんが呟くと、それにパパは間髪入れず反論する。
「ウチは娘にそんな危険な事はさせられない」
「ケケケ、相変わらず糞マジメなこった」
ところで、と妖介くんがパパに声を掛ける。
「筧さんのハンドテク、すごいですよね。ちょっと教えて欲しい事があるんですけど、いいですか?」
妖介くんが笑顔で尋ねるのに、パパはちょっと複雑そうな表情で頷いた。
アメフトの話題でひとしきり盛り上がった後、私はまもりさんお手製のケーキをお土産に、ヒル魔さん家を後にした。
借りたワンピースを返しにまた行こう。なんなら試合を見に行った先で返してもいいかな。
「すごいお家だったよ。でも楽しかった!」
はしゃぐ私に車を運転するパパの顔は晴れない。
「どうしたの?」
「・・・不気味だった・・・」
どうやら妖介くんの存在がすごく違和感あったらしい。
パパ曰く、若い頃のおじさんそっくりすぎて表情やら雰囲気やらが気になって落ち着かなかったとか。
でもおじさんとは全然違う気がしたけどなあ。
「みんな優しかったよ」
それにパパはちら、と私を見てため息をつく。
「な、なんでため息つくの?」
「・・・あの家でお前、自分の事説明しなかったのに色々知られてなかったか?」
「え?」
「俺は高校卒業してから二人の結婚式以来、個人的にヒル魔と連絡取ったことはない」
「・・・ええっ?!」
てっきりパパの友達だから知ってるんだと思ってたのに、違うの!?
「あいつのそういうところが苦手なんだ」
高校は制服で判るにしても、まもりさん以外には特に説明しなくてもみんな私の名前や、チアリーディングやってたりすること知ってた。
その度にうやむやにしてたけど、考えれば考える程おかしな事ばかり。
でも、パパは青ざめた私の頭を撫でてくれて、ちょっと笑った。
「お前には優しかったんなら別にいいんだがな」
「・・・うん!」
私は気を取り直して、笑顔で頷いた。
その後の秋大会、私は自分の高校の試合がない日に、練習が休みのパパと泥門高校の試合を見に行った。
泥門デビルバッツ、というんだ。悪魔の蝙蝠か・・・確かにおじさんは悪魔っぽかったけどね。
私の視線の先で、赤いユニフォームの選手達が出てきた。
その中に一人女の子。あれがアヤちゃんだ。
「あ、あれアヤ・・・」
私の声は途中で止まってしまった。
髪が解かれ、一部髪の毛が逆立っている。
その目つきは鋭く、にやり、と歪んだ口元はおじさんそっくりだ。
その後ろから出てきた妖介くんの髪の毛もこれまた逆立っていて、顔つきから何からおじさんにすんごく似てた。
はっきり言って怖い。
あんな二人の側だったら絶対寄らない!!
なのにパパは一人納得して頷いている。
「あれなら違和感ないな」
「え?! いや、だって妖介くんもアヤちゃんも普段はあんなんじゃないよ?!」
「ヒル魔の子供だったらあれくらいだろうって思ってたからな。かえって納得だ」
パパの台詞に私はむっとして反論しようとしたけれど。
試合開始の声と共に歓声が上がったから、私は口をつぐみ、試合に集中する。
アヤちゃんたちの瞳みたいな真っ青な空に、ボールが高く蹴り上げられた。
***
雨様リクエスト『他校生から見たヒルまも一家の子供達』でした。この他校生がヒルまも世代の他校生なのか、それともアヤ・妖介世代の他校生なのかが判断出来ず、じゃあ両方出せばいいじゃない!(閃いた) と発想して書かせて頂きました。・・・長っ! でも、すっごく楽しく書かせて頂きました♪
リクエストありがとうございましたー!!
雨様のみお持ち帰り可。
ちなみに、なんで筧さんの子にしたのか、という理由を知りたい方は以下を反転してお読みください。
まずヒルまも二人の結婚が早かったので、同学年の子というのはかろうじて護と似た年齢の子がいるくらいで、ほとんどは護とあかりの間に生まれた子が多いのです。
というわけで、アヤと妖介の二人に近い年の子を出すなら多分『できちゃった婚』で生まれた子くらいだろうなあ、と。
そうなると『ヒルまも二人に面識がある』人で、『できちゃった婚をしそうにない』(しそうだったら面白くない)『アメフトを続けていそう』な人を選んだらなんとなく筧さんになったんです。
ほら、良くも悪くも思いこみが強くてうっかりしてそうなキャラなんでいいかな、と。
ヒルまもとの接点もほとんどない(結婚式で顔合わせたくらい)し、後は手紙やりとりがあるかないかくらいの人という点もばっちりだったし。久しぶりに見る人の子ってでかくなってるもんですよね~。
ルイメグでもよかったのですが、そうなるともっと前から知り合いでいそうだし、ウチのルイさんは割と後になってから所帯を持つ印象なので、子供は護より年下です。
高若もヒルまもよりは結婚が遅いので、子供はやっぱり護より年下です。こっちを出す話もあるんですが、それはまた先の話で。
二次創作もここまで来るともう完全にオリジナルですが、楽しく書かせて頂いてます。
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鳥(とり)
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女性
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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よろしくお願いいたします。
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