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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ラプラスの悪魔(上)

(ヒルまも一家)

※アヤ・妖介高校二年の秋大会前

+ + + + + + + + + +
私は今、チアリーディングに嵌ってる。
練習は厳しいけれど、出来なかった技が出来るようになったり、何よりみんなとの一体感がたまらない。
本当は男の子と同じようにスポーツがやりたかった。
具体的に言えば、アメフトを。
でも女の子だから危ないスポーツはダメ、ってパパに言われちゃって。
だから私、女の子でも唯一同じフィールドに立てるチアリーディングを選んだんだ。
マネージャーでもいいけど、そういう細かい事、私には向いてないしね。

その人たちと出会ったのは偶然だった。
チアリーディングに嵌った私は大会が近い事もあって、日々練習を欠かさない。
その日も遅くまで練習していた。
電車通学の私は終電近くまで練習に熱中しちゃって、慌てて電車に駆け込んで、そう混んでない車内で座ってたら、猛烈に眠気に襲われた。
あ、だめだ、と思ったのは一瞬で。
『泥門前駅~泥門前駅~』
車内アナウンスにはっと気が付いて慌てて降りたときにはもう遅かった。
「・・・どうしよう」
気が付けば全然知らない駅に来てしまった。
今降りた電車で最後、反対方面はもうとっくに終わっている時刻。
私は方向音痴だし、タクシーに乗るにもお金がないし、大体どれくらい遠いのか判らないし。
「すみません、もう改札閉めますから」
容赦なく駅員さんに改札から追い出されてしまい、私は途方に暮れる。
ママはともかく、パパには怒られるなあ、と思いながらとりあえず連絡しようと携帯を取り出そうとしたとき。
「君見ない制服だね、どこのコ?」
「ねえねえ、俺たちと遊ぼうよ」
いかにも軽い、っていう感じの男の人たちに絡まれてしまった。
「結構です!」
「結構ってことは、いいってことだよね~」
「ねえ行こうよ~、この先面白いトコあるんだよ~」
ニヤニヤと笑われながら腕を取られてしまい、私は踏ん張ったけど男の人には勝てなくて。
「きゃ・・・」
引きずられそうになって、泣きそうになったとき。
「何やってんだ」
頭上から落ちてきた声に、私は目を見開いた。
絡む男の人たちより頭一つ上で、金髪の男の人がこっちを見ていた。
鋭い眼光に思わず私まで身体が竦む。
「何だよテメー」
「そりゃこっちの台詞だ。嫌がってるだろ、放せよ」
威嚇をあっさりといなされて腹を立てた男が殴りかかったけれど。
「っこの・・・!」
「なんだそりゃ、殴るつもりか?」
せせら笑う、というのがぴったりの顔で、彼は殴りかかってきた男を避け、掌底でどん、と突き飛ばす。
逞しい腕は軽薄そうな男を簡単に吹っ飛ばした。
「ぎゃっ!」
「こ、この・・・来い!」
「やっ・・・」
勢いよく仲間が転がされたのを見たもう一人が、私を人質にしようとでもいうのか、強引に引き寄せようとして。
「放せ」
「え・・・」
隣から聞こえたのは、女の人の声。
不意に腕が放されたと思ったら、もう一人の男がぐるんと回転して地に落ちた。
「がっ!」
驚いて見た先には、見事な金髪を腰あたりまで延ばし、三つ編みに結ったすごい美少女。
瞳が綺麗なブルーで、思わず見とれてしまう。
そんなたおやかな外見なのに、ふん、と鼻を鳴らして冷徹に転がった二人を見下ろすのがまたすごい迫力。
「う、わぁああ!」
「ひぇええ!」
男達は泡を食って逃げ出してしまった。
「大丈夫? もう怖くないよ」
先ほどまでの眼光が嘘のように金髪の彼ににっこりと笑いかけられ、私は緊張が解けてぼろっと涙を零してしまった。
「ふ、ええ・・・」
「わ! 大丈夫だよ、俺何もしないって!」
安心感から泣いてしまったのだけれど、彼は慌てて私にハンカチを渡してくれた。
「女泣かせ」
「それ意味違うから、アヤ!」
随分親しげだけど、どういう関係の二人なんだろう。
兄妹かな、似てないけど。
ぐす、と鼻を啜った私の制服を見た女の子が不思議そうな顔をする。
「巨深高校の制服か」
「随分遠いね。家、この辺なの?」
「い、いえ・・・乗り過ごし、ちゃって・・・」
ああ・・・と二人は顔を見合わせた。
「ふうん、大変だねえ。今からだと交通手段は車しかないか」
「タクシーで帰る?」
「いいえ、お金がないので・・・迎えに来て貰おうかと思ってたんですが・・・」
あまり遅いとパパとママを心配させてしまう。
「ふうん。・・・ところで」
「な、なんですか?」
じっと彼に見つめられ、私はどぎまぎしてしまう。
「もしかして、筧さんとこの、杏奈(あんな)ちゃん?」
「え?! な、何で私の名前ご存じなんですか?!」
驚き目を見開く私に、女の子は納得したように一つ頷いた。
「ああ、似てるな」
「ねー。娘も巨深って聞いてたし、多分そうじゃないかなあって」
一方的に知られている状況に私は目を白黒させる。
そこで私ははっと思い出した。早く連絡しないと、パパとママに怒られる!
焦って携帯を探す私に、二人は顔を見合わせ、それからこちらを見た。
「もう今夜は遅いし、ウチに泊まればいい」
あっさりと女の子に言われ、私は飛び上がって驚いた。
「はっ!?」
「今から迎えに来て貰っても来るまでにまた変なのに絡まれたら困るでしょ?」
「いや、でも! そんな、見ず知らずの・・・」
「知らない訳じゃない」
あっさりと金髪美少女が言う。いや、私はあなたたち知らないんですけど!
「幸い、明日は休みだし」
それは・・・今から帰る事やパパに迎えに来てもらうのを一人で待つよりはずっとありがたいけど。
でもパパにはなんて説明しよう・・・そう思ってたら携帯が鳴った。私は慌てて出る。
『このバカ娘! お前はどこほっつき歩いてんだ!』
パパの滅多にない怒鳴り声に私は首を引っ込めた。
「きゃっ! ご、ごめんなさい、寝てて乗り過ごしちゃって・・・!」
『なんだと?!』
こんな遅くに女の子一人で! と息巻くパパに私は経緯を説明しようとしたその時。
ひょい、と金髪の彼が私の携帯を取り上げてしまった。
「え・・・」
「おー、久しぶりだな、糞ツリ目」
『・・・?! な、ヒル魔?!』
漏れ聞こえてくるパパの声がすごく驚いてる。知り合い、なのかな。
そういえばさっきも私の事知ってたけど、もしかしてパパの友達? でもそれにしては年が違いすぎる気がするけど・・・。
「ケケケ、テメェの娘、ウチの子供たちが保護したんでナァ。時間も遅いしこのまま我が家で預かるぜ」
『な、ちょ! そんな・・・』
彼はそのまま携帯を金髪美少女に渡した。彼女は一つ間をおいてからにこやかに電話に出る。
「お久しぶりです、筧くん」
『姉崎さん!? ・・・じゃなかった、ええと・・・』
「いいわよ、姉崎で。ヒル魔くんも相変わらずそう呼ぶし。ね、もう遅いし、ここは私に免じて娘さんを預からせてもらっていい?」
『しかし・・・』
「さっきね、変な男に連れられそうになった、ってウチの娘も言ってたのよ。物騒だし、一晩の事だもの」
それとも自宅まで送りましょうか? という申し出にパパは詰まったみたい。
『・・・ちょっと待ってください』
「あの・・・」
まるで別の夫婦を演じているみたいな会話に私は戸惑うけど、二人揃って悪戯っ子みたいな顔でぴんと立てた人差し指を口に当てられる。
少し待って、パパが電話口に戻ってきた。
『・・・妻にも相談しました。すみませんが、お願いできますか』
「もちろんいいわよ。我が家はこう見えても子供四人の大所帯だから、今更一人増えてもどうってことないわ」
『明日迎えに行きます』
「練習忙しいんでしょう? 大丈夫よ、責任持って帰すから」
『はあ・・・』
ころころと笑う彼女はじゃあ娘さんに代わるわね、と言って携帯を渡してくる。
「じゃあ、今夜は・・・」
ええと、と視線を向けると二人の口がヒル魔、と動いた。
「ヒル魔さん家でお世話になるから・・・」
と言ってもまだお家についてないけど。
狐に摘まれたような気持ちでパパに一言二言告げて、電話を切った。

<続>
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