旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
客席では笑顔でパソコンをいじる護の姿があった。ムサシを見つけると、手を振る。
「こんにちは、ムサシさん」
「ああ。今日は一人か」
「はい。母は妹がまだ小さいですから、母の実家で待ってます」
「そうか」
護はパソコン操作をしながら選手の入場に沸き立つグラウンドに視線を向ける。
そこには金髪を靡かせて悪魔の顔で笑うアヤが立っている。
魔女のQBとして有名な彼女には多くのファンがついているのだ。
その右腕に仰々しく包帯が巻かれているのを見て、ムサシは眉を寄せた。
「え?」
「なに、あの包帯?」
「やーん、アヤ様が怪我されたの!?」
「おいおい、怪我してんのに出るのかよ!」
客席がざわざわとどよめくのを聞いても、護は平然としている。
「おい、心配じゃないのか?」
「パスは平気ですよ」
妖介と同じ口調で言われ、ムサシは一体どういう事だ、とグラウンドを見下ろす。
後半開始のキック、キャッチしたRBは中央まで進んだところで倒された。
『さあ、どう出るか、泥門デビルバッツの攻撃です!』
実況の言葉が終わるか否か、というあたりでアヤの声が響く。
「SET!」
右腕の包帯を見た連中が走を潰そうと前のめりになっている。
遠目からは確認できないが、きっと怪我人のQB相手なら楽勝だ、とほくそ笑んでいるのだろう、と思っただけでムサシの気分が悪くなる。
あからさまなQB潰しを心配する彼の前で、ボールがスナップされる。
アヤはそれを受け取り、そしてにたりと笑みを浮かべた。
「YA―――――HA――――――!!」
その手がボールを構え、凄まじい勢いで放たれる。
「なーっ?!」
「ええええっ?!」
レーザーの如く放たれるそれに敵は反応できず、味方のWRだけが見事にキャッチした。
あっという間にファーストダウンを取り、更に攻め込む。
走だけに注意を払っていた面々は完全に裏をかかれていた。
『な、なんということでしょう! ヒル魔選手、左手でパスを投げましたー!!』
実況が彼女は右利きだったのでは、と解説に尋ねるが解説もそのはずですが、としか返せない。
どよめく客席の中でムサシは隣を見た。
「姉が右利きなんて誰も言ってないですよ」
「だが、パスは今まで全部右だっただろう」
字を書くのだって箸を持つのだって右。左利きだと聞いた事がない。
「姉は両方で投げられるんです」
護はにっこりと笑う。
「ほら、お父さんが昔骨折したときに苦労したじゃないですか。それをふまえて、両方とも使えるようにって前から練習してたんです」
「練習、か・・・」
だから『パスは平気』だったのだ。
「姉は女だし、力だって足だって男よりはどうしたって劣ります。だから自分だけの利点を持つためにも、両方使えるように努力したんです」
護の解説にムサシは頷く。
なるほど、負けず嫌いな両親の血を間違いなく受け継いでいるな、と納得してしまう。
敵陣ゴール前でボールを受け取ったアヤはスクランブル発進し、敵をすり抜けてタッチダウンを決める。
まるで怪我の影響などないと強調するように。
怒濤の攻撃に呆然とする相手の前で、アヤはにたりと笑う。
「テメェらみてぇな糞カス共に、俺がどうこうされるとでも?」
怒りを交えた凄絶な笑みを浮かべたアヤは味方に向き直る。
「100点取って、あいつら纏めてブッ殺すぞ!!」
魔女の宣告にデビルバッツが歓声を上げる。
「Year――――――――!!」
その異様な迫力に飲まれ、有戸キリギリスは精彩を欠き。
アヤの宣言通り、100点取って勝つというとんでもない結果を見せつけたのだった。
試合終了間際、護がムサシにカードを手渡した。
「これは?」
「これは姉のかかりつけの整形外科の診察券です。この後病院に連れて行かないといけないんですが、多分父も兄もミーティングで出られないと思うので」
アヤを連れて行って欲しい、という護の申し出に頷き、ムサシは先ほどヒル魔に渡されていた関係者パスを持ってグラウンドへ続く廊下に向かう。
程なく試合を終えた面々が戻ってくる。アヤは誰の支えもなく歩いていたが、ムサシの顔を見た途端、安堵からか足をもつれさせた。
「っ」
それを受け止め、ムサシはほっと息をつく。
やはり相当辛かったのだろう、抱えた身体は試合後だからというだけでない熱を持っていた。
「糞ジジィ、放せ」
最後に入ってきたヒル魔が不機嫌そうに銃を突きつけるが、ムサシは構わずアヤを抱き上げた。
「おい!」
「もう試合も終わったし、病院に連れて行く」
診察券を見せると、ヒル魔は非常に嫌そうな顔をした。
口を開こうとしたとき、控え室から妖介が戻ってくる。
「ムサシさん、これ、アヤの着替えです。ポケットの中に保険証とお金が入ってますから、それ使って下さい」
「妖介!」
「いいじゃない、父さんと俺はこれからミーティングだし、アヤ連れて行ける人、他にいないでしょ」
「姉崎が・・・」
「母さんはあかりがいるし、ここまで来るの待ってたんじゃ結構掛かるし」
苦々しい顔になるヒル魔に、ムサシはアヤを抱えたまま呆れたように告げる。
「俺が連れて行くのに何か問題があるか?」
ヒル魔の眉間に盛大に皺が寄るが、アヤが辛そうに身動いだのを見て渋々頷く。
それにムサシは肩をすくめ、アヤを抱えたまま廊下を歩き出した。
さすがにユニフォーム姿で治療は出来ないので、着替えた後に診察を受ける。
アヤの肩はきちんと嵌っており、あとは固定して冷やして、しばらく動かさないこと、と医師に告げられた。
腕を吊った姿で診察室から出てきたアヤは、怪我からの発熱でほんのり頬を上気させていた。
「ありがとうございます」
にこ、と浮かべる笑みはいつものもので、先ほどの試合中、魔女の如く駆け抜けた姿とは結びつかない。
「あの・・・ムサシさんは、髪を編んだりとか・・・できます?」
おずおずと尋ねられ、ムサシは目を瞬かせる。
見れば髪の毛はまだ試合の時限定で見せる髪型のままで、耳がむき出しになっている。
それを見た他の患者達がじろじろとアヤを見ているのだ。
以前耳をさらけ出していて、まるで妖精のようだ、と勝手に崇拝され、誘拐されかけたり付きまとわれたりして相当苦労したのだとそう言えば以前言っていた。だから普段は耳の見えないような髪型にしているのだとも。
肩を怪我しているのであれば自力で髪を編む事もできず、困ったのだろう。
無遠慮な視線に晒され、居心地の悪そうなアヤの姿にムサシはなぜだか腹立たしくなる。
不意に、アヤをムサシが抱き寄せた。
「えっ」
「生憎と髪を編むのは無理だが、隠すくらいならしてやれる」
傷ついた肩を圧迫しないようにしながら、そっとその頭を抱く。
それにアヤは真っ赤な顔をして、それでも嬉しそうに微笑んでムサシに静かにもたれかかった。
護と妖介、ヒル魔の三人はてくてくと道を歩いていた。
まもりとあかりは祖父母の家にいる。帰りがてら二人を迎えに行くのだ。
ムサシとアヤは病院から帰ってこないし、車はないしかといってわざわざタクシーで帰る距離でもない。
ガシャ、とヒル魔は銃を抱え直した。
「お父さん不機嫌だね」
「アヤ連れてったのがムサシさんだからね」
アヤの恋心を応援する弟たちとしては当然の事なのだが、ヒル魔としては納得したくない相手なのだ。
確かに人としては間違いなくいい男なのだろうが、何せ自分と同じ年だ。
何が楽しくて昔からの親友を義理の息子にしなきゃならないのだろうか。
悶々とするヒル魔の背後で、子供達は呆れるしかない。
「もう諦めればいいのに。なんだかんだであの二人いい雰囲気だし」
「ここ数年どころじゃなくて物心付いてから今までずっと好きなんだから、その熱意は汲むべきだよね」
息子達の意見に、額に青筋を浮かべたヒル魔が振り返る。
「・・・テメェら、自分と同じ年の男とあかりが結婚するっつって連れてきたらどうするんだ」
「「・・・・・・」」
ヒル魔の地を這うような声とその内容に、二人も思わず押し黙る。
今はまだ産まれたばかりの妹が、いずれ母親と同じく美しく成長し、連れてくるのが自分と同じ年の男・・・。
それは確かに、想像したくない。
ヒル魔はアヤが噛んだ跡をそっと撫でる。
「ったく!!」
盛大に舌打ちしたヒル魔に、この日初めて息子二人は彼の苦悩をようやっと理解したのだった。
助手席に座るアヤを見て、そういえば、とムサシは口を開いた。
「有戸キリギリスの奴らには何もしなくていいのか?」
実際OBに依頼したのかOBが勝手に動いたのかはわからなかったが、あの様子では有戸キリギリスの連中はアヤが事件に巻き込まれたのを知っていたようだった。スポーツマンシップの風上にも置けない。
「実行犯は父が制裁してたみたいですし、その他は護がやってくれました」
「護が?」
「厳さんの隣でパソコンいじっていませんでしたか?」
ふふ、と笑うアヤの言葉にそういえば、と思い出す。
「ああ、何かやってたな」
「明日の新聞が楽しみです」
その言葉に一体なにをしでかしたのやら、と空恐ろしくなるが、とりあえず自分に害が及ばなければ結構、とムサシは楽観視している。
ヒル魔との付き合いも20年以上になればもう簡単には驚かないようになった。
「腹が減ったな。何か食べていくか?」
「いいんですか?」
ぱっと顔を明るくするアヤにムサシもつられて笑う。
「ああ。いつも飯作ってくれたりするし、たまにはな」
だが大した物は食いに行けないぞ、と言われてアヤは笑顔で首を振る。
「厳さんの側にいられるならどこでもいいです」
それにムサシはそうか、と応じて上機嫌でハンドルを切った。
***
のりちこ様リクエスト『「ヒルまも一家」ムサシとアヤの話』でした! ムサシとアヤというよりは、ヒルまも一家総出演+ムサシくらいの勢いでした(笑)楽しかったです・・・! なんだかんだでアヤといい雰囲気? なムサシだとか複雑なお父さんヒル魔とか、溺愛されてるまもりとあかり、悪巧み護と天然で姉を応援してる妖介とか。子供達の話ならもうホント結構未来まで考えていて一人突っ走りそうで怖いです(苦笑)
リクエストありがとうございましたー!!
のりちこ様のみお持ち帰り可。
「こんにちは、ムサシさん」
「ああ。今日は一人か」
「はい。母は妹がまだ小さいですから、母の実家で待ってます」
「そうか」
護はパソコン操作をしながら選手の入場に沸き立つグラウンドに視線を向ける。
そこには金髪を靡かせて悪魔の顔で笑うアヤが立っている。
魔女のQBとして有名な彼女には多くのファンがついているのだ。
その右腕に仰々しく包帯が巻かれているのを見て、ムサシは眉を寄せた。
「え?」
「なに、あの包帯?」
「やーん、アヤ様が怪我されたの!?」
「おいおい、怪我してんのに出るのかよ!」
客席がざわざわとどよめくのを聞いても、護は平然としている。
「おい、心配じゃないのか?」
「パスは平気ですよ」
妖介と同じ口調で言われ、ムサシは一体どういう事だ、とグラウンドを見下ろす。
後半開始のキック、キャッチしたRBは中央まで進んだところで倒された。
『さあ、どう出るか、泥門デビルバッツの攻撃です!』
実況の言葉が終わるか否か、というあたりでアヤの声が響く。
「SET!」
右腕の包帯を見た連中が走を潰そうと前のめりになっている。
遠目からは確認できないが、きっと怪我人のQB相手なら楽勝だ、とほくそ笑んでいるのだろう、と思っただけでムサシの気分が悪くなる。
あからさまなQB潰しを心配する彼の前で、ボールがスナップされる。
アヤはそれを受け取り、そしてにたりと笑みを浮かべた。
「YA―――――HA――――――!!」
その手がボールを構え、凄まじい勢いで放たれる。
「なーっ?!」
「ええええっ?!」
レーザーの如く放たれるそれに敵は反応できず、味方のWRだけが見事にキャッチした。
あっという間にファーストダウンを取り、更に攻め込む。
走だけに注意を払っていた面々は完全に裏をかかれていた。
『な、なんということでしょう! ヒル魔選手、左手でパスを投げましたー!!』
実況が彼女は右利きだったのでは、と解説に尋ねるが解説もそのはずですが、としか返せない。
どよめく客席の中でムサシは隣を見た。
「姉が右利きなんて誰も言ってないですよ」
「だが、パスは今まで全部右だっただろう」
字を書くのだって箸を持つのだって右。左利きだと聞いた事がない。
「姉は両方で投げられるんです」
護はにっこりと笑う。
「ほら、お父さんが昔骨折したときに苦労したじゃないですか。それをふまえて、両方とも使えるようにって前から練習してたんです」
「練習、か・・・」
だから『パスは平気』だったのだ。
「姉は女だし、力だって足だって男よりはどうしたって劣ります。だから自分だけの利点を持つためにも、両方使えるように努力したんです」
護の解説にムサシは頷く。
なるほど、負けず嫌いな両親の血を間違いなく受け継いでいるな、と納得してしまう。
敵陣ゴール前でボールを受け取ったアヤはスクランブル発進し、敵をすり抜けてタッチダウンを決める。
まるで怪我の影響などないと強調するように。
怒濤の攻撃に呆然とする相手の前で、アヤはにたりと笑う。
「テメェらみてぇな糞カス共に、俺がどうこうされるとでも?」
怒りを交えた凄絶な笑みを浮かべたアヤは味方に向き直る。
「100点取って、あいつら纏めてブッ殺すぞ!!」
魔女の宣告にデビルバッツが歓声を上げる。
「Year――――――――!!」
その異様な迫力に飲まれ、有戸キリギリスは精彩を欠き。
アヤの宣言通り、100点取って勝つというとんでもない結果を見せつけたのだった。
試合終了間際、護がムサシにカードを手渡した。
「これは?」
「これは姉のかかりつけの整形外科の診察券です。この後病院に連れて行かないといけないんですが、多分父も兄もミーティングで出られないと思うので」
アヤを連れて行って欲しい、という護の申し出に頷き、ムサシは先ほどヒル魔に渡されていた関係者パスを持ってグラウンドへ続く廊下に向かう。
程なく試合を終えた面々が戻ってくる。アヤは誰の支えもなく歩いていたが、ムサシの顔を見た途端、安堵からか足をもつれさせた。
「っ」
それを受け止め、ムサシはほっと息をつく。
やはり相当辛かったのだろう、抱えた身体は試合後だからというだけでない熱を持っていた。
「糞ジジィ、放せ」
最後に入ってきたヒル魔が不機嫌そうに銃を突きつけるが、ムサシは構わずアヤを抱き上げた。
「おい!」
「もう試合も終わったし、病院に連れて行く」
診察券を見せると、ヒル魔は非常に嫌そうな顔をした。
口を開こうとしたとき、控え室から妖介が戻ってくる。
「ムサシさん、これ、アヤの着替えです。ポケットの中に保険証とお金が入ってますから、それ使って下さい」
「妖介!」
「いいじゃない、父さんと俺はこれからミーティングだし、アヤ連れて行ける人、他にいないでしょ」
「姉崎が・・・」
「母さんはあかりがいるし、ここまで来るの待ってたんじゃ結構掛かるし」
苦々しい顔になるヒル魔に、ムサシはアヤを抱えたまま呆れたように告げる。
「俺が連れて行くのに何か問題があるか?」
ヒル魔の眉間に盛大に皺が寄るが、アヤが辛そうに身動いだのを見て渋々頷く。
それにムサシは肩をすくめ、アヤを抱えたまま廊下を歩き出した。
さすがにユニフォーム姿で治療は出来ないので、着替えた後に診察を受ける。
アヤの肩はきちんと嵌っており、あとは固定して冷やして、しばらく動かさないこと、と医師に告げられた。
腕を吊った姿で診察室から出てきたアヤは、怪我からの発熱でほんのり頬を上気させていた。
「ありがとうございます」
にこ、と浮かべる笑みはいつものもので、先ほどの試合中、魔女の如く駆け抜けた姿とは結びつかない。
「あの・・・ムサシさんは、髪を編んだりとか・・・できます?」
おずおずと尋ねられ、ムサシは目を瞬かせる。
見れば髪の毛はまだ試合の時限定で見せる髪型のままで、耳がむき出しになっている。
それを見た他の患者達がじろじろとアヤを見ているのだ。
以前耳をさらけ出していて、まるで妖精のようだ、と勝手に崇拝され、誘拐されかけたり付きまとわれたりして相当苦労したのだとそう言えば以前言っていた。だから普段は耳の見えないような髪型にしているのだとも。
肩を怪我しているのであれば自力で髪を編む事もできず、困ったのだろう。
無遠慮な視線に晒され、居心地の悪そうなアヤの姿にムサシはなぜだか腹立たしくなる。
不意に、アヤをムサシが抱き寄せた。
「えっ」
「生憎と髪を編むのは無理だが、隠すくらいならしてやれる」
傷ついた肩を圧迫しないようにしながら、そっとその頭を抱く。
それにアヤは真っ赤な顔をして、それでも嬉しそうに微笑んでムサシに静かにもたれかかった。
護と妖介、ヒル魔の三人はてくてくと道を歩いていた。
まもりとあかりは祖父母の家にいる。帰りがてら二人を迎えに行くのだ。
ムサシとアヤは病院から帰ってこないし、車はないしかといってわざわざタクシーで帰る距離でもない。
ガシャ、とヒル魔は銃を抱え直した。
「お父さん不機嫌だね」
「アヤ連れてったのがムサシさんだからね」
アヤの恋心を応援する弟たちとしては当然の事なのだが、ヒル魔としては納得したくない相手なのだ。
確かに人としては間違いなくいい男なのだろうが、何せ自分と同じ年だ。
何が楽しくて昔からの親友を義理の息子にしなきゃならないのだろうか。
悶々とするヒル魔の背後で、子供達は呆れるしかない。
「もう諦めればいいのに。なんだかんだであの二人いい雰囲気だし」
「ここ数年どころじゃなくて物心付いてから今までずっと好きなんだから、その熱意は汲むべきだよね」
息子達の意見に、額に青筋を浮かべたヒル魔が振り返る。
「・・・テメェら、自分と同じ年の男とあかりが結婚するっつって連れてきたらどうするんだ」
「「・・・・・・」」
ヒル魔の地を這うような声とその内容に、二人も思わず押し黙る。
今はまだ産まれたばかりの妹が、いずれ母親と同じく美しく成長し、連れてくるのが自分と同じ年の男・・・。
それは確かに、想像したくない。
ヒル魔はアヤが噛んだ跡をそっと撫でる。
「ったく!!」
盛大に舌打ちしたヒル魔に、この日初めて息子二人は彼の苦悩をようやっと理解したのだった。
助手席に座るアヤを見て、そういえば、とムサシは口を開いた。
「有戸キリギリスの奴らには何もしなくていいのか?」
実際OBに依頼したのかOBが勝手に動いたのかはわからなかったが、あの様子では有戸キリギリスの連中はアヤが事件に巻き込まれたのを知っていたようだった。スポーツマンシップの風上にも置けない。
「実行犯は父が制裁してたみたいですし、その他は護がやってくれました」
「護が?」
「厳さんの隣でパソコンいじっていませんでしたか?」
ふふ、と笑うアヤの言葉にそういえば、と思い出す。
「ああ、何かやってたな」
「明日の新聞が楽しみです」
その言葉に一体なにをしでかしたのやら、と空恐ろしくなるが、とりあえず自分に害が及ばなければ結構、とムサシは楽観視している。
ヒル魔との付き合いも20年以上になればもう簡単には驚かないようになった。
「腹が減ったな。何か食べていくか?」
「いいんですか?」
ぱっと顔を明るくするアヤにムサシもつられて笑う。
「ああ。いつも飯作ってくれたりするし、たまにはな」
だが大した物は食いに行けないぞ、と言われてアヤは笑顔で首を振る。
「厳さんの側にいられるならどこでもいいです」
それにムサシはそうか、と応じて上機嫌でハンドルを切った。
***
のりちこ様リクエスト『「ヒルまも一家」ムサシとアヤの話』でした! ムサシとアヤというよりは、ヒルまも一家総出演+ムサシくらいの勢いでした(笑)楽しかったです・・・! なんだかんだでアヤといい雰囲気? なムサシだとか複雑なお父さんヒル魔とか、溺愛されてるまもりとあかり、悪巧み護と天然で姉を応援してる妖介とか。子供達の話ならもうホント結構未来まで考えていて一人突っ走りそうで怖いです(苦笑)
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鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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