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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ラプラスの悪魔(中)

+ + + + + + + + + +
「じゃあ行こうか」
先ほどまでの人を食ったような喋り方とはがらりと変わった彼に私は目を瞬かせる。
促されるままに私は歩き出す。並んでみて判ったけど、二人とも背が高い。
女の子は私よりちょっと大きい。私170センチはあるから、結構高い方だと思うんだけど。
男の子はさらに頭一つ大きい。190センチ以上あるかも。
パパとどっちが大きいかな・・・。
そしてよく見たら二人とも制服を着ていた。ってことは、高校生なのかな?
とりあえず疑問を解くべく、口を開いてみる。
「あの、ウチの父とお知り合い、ですか」
「んー、直接には喋った事・・・あるかな?」
「一度ある」
「でも相当前だね」
やっぱりさっきの口調とはがらりと変わった彼女にも、私は戸惑うしかない。
「そうだ、自己紹介まだだったね。俺は蛭魔妖介、高校二年。こっちは姉のアヤ、年子で同学年」
それに私はぺこりと頭を下げた。
「筧杏奈、です。高校一年です。杏って呼んでください」
知られてたけど、改めてご挨拶。妖介くんはにこっと笑った。
「杏ちゃんね。じゃあ俺のことは妖介って呼んで。あっちはアヤでいいよ」
「え、でも」
年上だし初対面だし、と戸惑うけど彼はからからと笑う。
「俺たち高校に入るまでアメリカで生活しててさー、あんまり人の事名字で呼ぶの好きじゃないんだよ」
「じゃあ・・・妖介くんにアヤちゃん、でいい?」
「ええ」
「もちろん!」
頷くアヤちゃんと笑顔の妖介くんに私もほっと息をついた。
程なく閑静な住宅街の一件にたどり着く。
表札には『蛭魔』とあった。珍しい字、書くんだなあ。
「ただいまー」
「タダイマ」
その声にぱたぱたと足音がして、お母さんとおぼしき人が出てきた。
「お帰りなさい、遅かったわね」
その声は、先ほどの電話にでたアヤちゃんとまるで同じで。
瞳がすごく綺麗なブルー。髪の毛は茶色で、外国の人みたい。それに何より、若い!
うちのパパもママも結構若いと思うけど、この人もすごく若くて綺麗だ。
思わず見惚れちゃった。
「あら? どちらさま?」
「筧さんの娘さん。駅で会って、乗り過ごして帰れないっていうから連れて来ちゃった」
「筧くんの? きゃー、随分大きくなったのね! 上がって上がって!」
「お邪魔します」
にこにこと笑って上がるよう促してくれる。優しそうなお母さんだ。
「あ、ウチに来た事連絡しなくて大丈夫?」
「説明しておいた」
「俺とアヤでね」
それに彼女は眉を寄せた。
「・・・またヒル魔くんと私のフリしたわね? もう!」
「だって筧さん凄い剣幕だったんだもの。駅前物騒だし、手っ取り早くすませたかったし」
「そのまま置いて来られない」
「す、すみません・・・」
恐縮するしかない私に、お母さんは笑顔を見せた。
「いいのよ、ええと・・・」
「杏奈ちゃん。通称杏ちゃん」
「杏ちゃん、我が家はこう見えても子供四人の大所帯だから、今更一人増えてもどうってことないわ」
「っ!」
それに思わず私は吹き出してしまう。本当にアヤちゃんが言ったとおりの事言ってる!
小首を傾げるお母さんに、笑いを必死に堪えて私はどうにか頭を下げた。
「・・・は、はい! よろしくお願いします」
「部屋はアヤと一緒でいいかしら」
「ええ」
「じゃあ俺たち着替えてくる。父さんは?」
「今お風呂。すぐ出てくるわよ」
私は階段を上りながら妖介くんに尋ねる。
「ねえ、お母さんのお名前なんていうの?」
「母さん? まもりだけど」
「なんかね、おばさんって呼ぶのは申し訳ない気がして・・・」
「そう、ありがとう」
にこ、と笑われて私も笑い返してしまう。
そうか、彼は雰囲気がまもりさんに似てるんだ。
顔は多分お父さんなんだろうけど。
アヤちゃんの顔はまもりさん似、かな。ちょっと違う気もするけど。
「お父さんは?」
「あー、父さんは悪魔」
「はっ?!」
意外な言葉に私は驚いてしまう。けどそれに構わず妖介くんはしれっと続けた。
「おじさんって呼べばいいよ。母さんみたいに名前にさん付けで呼ぶような人じゃないから」
「はあ・・・」
私は訳がわからず、首を傾げてしまった。

着替えを貸してもらって、私は居間で食事を用意して貰った。
遅いしいいです、と恐縮したんだけど、妖介くんとアヤちゃんも食卓に着いたから私も頂くことになった。
実は結構お腹が空いていたので、ありがたく箸を付ける。
それにしても・・・男の子ってすごく食べるんだなあ。
「一応夕飯食べたんでしょ?」
「うん。でもその後また時間大分経ったからお腹空いちゃった」
まもりさんに呆れられながらおかわりを貰って、妖介くんはがつがつと食べる。
「杏ちゃん?」
ぼんやりしてしまっていて、私ははっと我に返った。
慌てて口に運んだご飯は文句なく美味しい。
「疲れてるんでしょ。チアって体力使うからね」
にこにこ、と妖介くんに笑って言われた一言に私はぴたっと動きを止める。
なんで、私がチアリーディングやってるの知ってるんだろう。
私説明したっけ?
「チアかあ・・・。懐かしいなあ」
「まもりさん、チアやったことあるんですか?」
「え? ううん、ないけど・・・」
「ユニフォームを着たことはあったなァ」
唐突に割り込んできた声に、私はひゃ、と小さく悲鳴を上げた。
振り返ればそこには金髪を逆立てた男の人。・・・・・・怖ッ!!
なんで耳尖ってるの?! よく見たら歯、っていうか牙もある!!
っていうか、気配しなかったんですけど! 今、足音もしなかった!
え、この人がお父さん?! ・・・悪魔、って言い過ぎだと思ってたけど・・・。
「糞ツリ目の娘か。デカイな」
さすが、と感心されたように呟かれたけど、私は驚いて言葉もない。
自己紹介してないんだけど、やっぱりわかってる、みたい。
「もう! 女の子にそういう口利いちゃだめでしょ!」
大体その呼び名も筧くんに失礼よ、と言うまもりさんと、それにニヤニヤと笑う・・・えーと、おじさん? が夫婦だなんて信じられない。
「あの・・・筧杏奈です。今晩お世話になります」
「おー」
にや、と笑う顔はさっきの妖介くんにそっくりだった。やっぱり親子、なんだなあ。
ふとアヤちゃんが顔を上げた。小さな子の泣き声だ。
「あかりが泣いてる」
「あかり?」
「妹なんだ。今年生まれたばっか」
程なくして他の足音が聞こえてきた。
降りてきたのは中学生くらいの男の子。腕には泣きべその赤ちゃんが抱かれている。
「あらら、ありがと、護」
まもりさんが赤ちゃんを受け取ってあやす。
「んー・・・」
眠いらしく、護と呼ばれた男の子は目を擦っている。
それでも私を見て彼はにこっと笑った。わ、この子もまもりさんによく似てる。
「こんばんは、筧杏奈さん」
ぴし、と私は固まった。
私、この子と初対面のはずだけど。
それにさっきまで寝てたなら、今来た私のことなんて知らないはずなのに!
「ごめん、すごく眠い・・・」
「いいよ、寝てな。あかりはこっちで見るから」
「おやすみ」
妖介くんとアヤちゃんに言われ、更にぽん、とおじさんに頭を撫でられて護くんは階段を上っていった。
私は似てるのか似てないのかイマイチ判断がつかない家族の中でようやくご飯を食べ終える。
色々考えすぎて疲れてしまった。これは練習以外の疲れも絶対混じってる。
「お風呂先にどうぞ」
妖介くんに促され、私はありがたくお湯を使わせて貰う。
手早く上がると最初に通されたアヤちゃんの部屋に戻った。
「早いな」
ちょっと目を丸くしたアヤちゃんはパソコンをいじっていた。
足音で気づいて顔を出した妖介くんに先に風呂に入れと告げて、アヤちゃんはベッドを指す。
「ここで寝て」
「え、でもアヤちゃんは?」
「こっち」
床に延べられた布団に、私がこちらだろうと思うのだけれど、彼女は首を振って取り合ってくれない。
「いいから」
そっけないだけで優しいんだなあ、と思いながら私はベッドにお邪魔した。
強いミントの匂いが鼻孔を擽る。
「朝、私たちは早いけど、寝ていて貰って構わない」
「そうなの?」
「ええ。・・・さ、寝なさい」
命令口調なのにその声はどこか優しくて。
私は初めてのお家なのに、妙に安心して、すとん、と眠りに落ちた。

<続>
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