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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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日常茶飯事

(狐の嫁入りシリーズ脇役一同)

※旧拍手の再録です。

+ + + + + + + + + +

三人の中で一人毛色の違う自分。
「俺もお前らみたいなきんいろがよかったぁ」
「は?」
「はぁ?」
きんいろの二人は顔を見合わせて、それから俺を見た。
俺はまっくろ。二人の色とは全然違う。
三人で一つなのに、なんで俺だけ。
「別にいいじゃねぇか」
「お前はその色が似合ってるぜ」
そう言われれば言われるほど、きんいろになりたくなってきた。
「イヤだ! ヒル魔にきんいろにしてくれって言ってくる!」
「ちょっ」
「黒木!」
おもいたったら吉日だ。俺は二人の言葉を聞かず一足でヒル魔のところにたどり着く。
「なぁなぁなぁ! 俺もきんいろになりたい!」
「ア?」
「どうしたの、黒木くん」
ヒル魔と姐さんはきょとんとこちらを見ている。
俺が一生懸命説明すると、ヒル魔はあっさりと俺をきんいろにしてくれた。
「戻すなら明日の朝以降にしろよ」
「え、なんでぇ?」
なんできんいろになったばかりなのに、戻すことの話をするのか。
そう思ってたらヒル魔がにやりと笑った。
「俺たちはこれから取り込み中」
「キャーちょっとヒル魔くん帯引っ張らないでー!!」
きんいろになった俺を放っておいて、二人がいちゃつき始めたので、俺はさっさと退散する。
戻ったところで二人と顔を合わせた。
「ハ?」
「ハァ?」
二人は俺を見て怪訝そうな顔をして、それからおもむろに鏡を持ってきた。
「「見ろ」」
えーなんでぇ、と言いながら俺はそれを覗き込む。
そこにはきんいろになった俺がいた。
でも…なんか違う。
「なんか違うよぉ」
「そりゃそうだろ」
元からきんいろの二人とは違って、きんいろになった俺は鏡の中でひどく居心地が悪そうだ。
二人のぴかぴかなきんいろと俺のきんいろは同じ色のようで全然違うように見えた。
同じなのに違う。まっくろな俺の方が二人と同じように見えてたなんて。
「あのな、お前黒髪の方がいいよ」
「そうそう。黒髪の方が似合ってる」
言われて俺は痒くもない頬を掻く。
「そっか。…俺はきんいろ、似合わねえなあ」
明日になったら戻して貰おう。
二人がいいと言ってくれたまっくろな俺に。

(01: 似合わねえなあ/鎌鼬三兄弟・黒木)


師匠は大きくて強くて、憧れの妖怪だ。
だから常に側にいて、ずっとずっと見ていたい。
そう思ってしがみつく様を、他の海妖たちにズルイと詰られたりする。
自分がそう言われるのは別に構わないけれど、師匠が悪く言われるのは我慢ならない。
「フゴ!」
「ん? どうして? 修行ならここでもできるでしょ」
「フフゴ、フゴ!」
「いいじゃない、ここにいれば。僕は一緒にいられる方が嬉しいよ」
「フゴ…」
「うんうん」
…そうやって師匠に言って貰いたい自分が、一番ズルイかもしれない。

(02: ズルイ/海小坊主・小結)


アハーハー!
僕は猫又の夏彦さ!
僕の妹も猫又なんだ! 兄妹の猫又なんて珍しいだろ?
生まれたときにはもう少し多かった兄弟も、いつのまにか僕たち二人になった。
僕も妹も旅をして生き延びて、気が付いたら尾が割れていたのさ! 素敵だろ?
妹はずっと人の生活に憧れていて、人に化けられるようになった時にはすぐに町に出たりしてた。
でも、今は僕と一緒に妖怪たちが暮らす場所へ来た。
人と僕たちの時の流れは違うからね!
猫だったとき人は随分長生きすると思っていたけれど、妖怪になったら人はとても短命だ。
それに気がつかない妹ではないよ! 彼女はやさしくてかわいい、僕の自慢の妹だからね!
見たくない現実に傷ついて帰ってきた彼女を僕は笑って出迎える。
アハーハー!
僕は君の味方だ、最後のひとりになっても。

だから鈴音、君は何も心配しなくていいんだよ。

(03: 僕は君の味方だ、最後のひとりになっても/猫又・夏彦)


最初に目覚めたとき、僕はなにも覚えていなかった。
呆然と道ばたに立ちつくしていた僕の前に、突然金色の狐が現れた。
「テメーはお倉坊主だな。座敷童とも呼ばれるが、童っつー見た目でもねぇだろ」
「はぁ…」
僕は狐に案内されるがままに、ある屋敷へと連れて行かれた。
「ここだ」
「うわ…」
そこには山のような本。こんなにたくさんの本は見たことがない。
ずっと昔からこんな風に本が読みたかった。
……ずっと? 昔?
それは、いつから?
考えかけた僕の手に、分厚い本が何冊か乗せられた。
「そこは考えねぇでいいだろ。テメーはここに籠もって本読んで、ついでにここの管理しておけ」
「はい!」
「ああでも、お倉坊主っつーのは名前じゃねえから…そうだな、テメーの名前は雪光だ」
「ゆきみつ?」
「ああ」
この人はなんで僕に名前を与えて、本を読ませるのだろう。
よく判らないけれど、居場所があるのはいいことだ。
僕は腰を落ち着けて、じっくりと本を読み出した。

(本が読みたい)
(家が貧しくて買えなかった)
(病気で僕は死んだ)
(もし生まれ変われたら、思う存分本が読みたい)
ふらふらと彷徨う魂は、偶然にもう一度この世に生を受けた。
屋敷に招けば富と繁栄をもたらす象徴として。
ただし居場所を定める前に過去を思い出せば霧散してしまう不安定さもあって。
それをつなぎ止めたのは、ヒル魔だった。

「まあ、コレはウチにいさせるための報酬みたいなもんだ」
また大量に持ち込まれた本を見て、僕はにこにこと笑う。
「僕がここにいることで、ヒル魔さんのお役に立てるなら本望ですよ」
「どうだか。フラフラ出られたり消えられたりされちゃ損なんでな」

嘯く狐に、雪光はただ笑う。
その後しばらくして雪光は自分の過去も思い出したし、ヒル魔がここに雪光をとどめ置いた理由も理解していた。

魔法はもう解けてるよ。でも、僕はここを出て行こうとは思わないんだ。

(04: 魔法はもう解けてるよ/お倉坊主・雪光)


騒ぐだけ騒いで、いつものように十文字と黒木が眠りに落ちる。
俺は行灯の近くで黄表紙をぺらりと捲った。
二人のいびきが三人だけの空間に響く。
布団をけっ飛ばして豪快に寝る二人の腹に、おもむろに布団をかけ直してやる。
「おやすみ」
「んぁ」
「うぅ」
ぽそりと呟いてみれば、二人が同時に寝言で返事をした。
気心が知れている者たちしか見られない素直さ。
これだから夜更かしはやめられない。

(05: おやすみ/鎌鼬三兄弟・戸叶)


ムサシの屈強な背から生えているのは大きな翼。
それをじーっと眺めていたら、彼は居心地が悪そうに振り返った。
「…何か用か」
用事があるなら口で言え、と彼にこそ口に出して言って欲しい言葉は音にならないままにまもりに届けられた。
「あのね、ムサシくんって私のお父さんと同じような外見なのよ」
「……ああ、父親が天使だったか。あんたには翼はないのか」
「ええ」
まもりの背にはなにもない。長く若く生きるばかりで、その他に自らが使える特殊な能力など何一つないのだ。
「だからね」
まもりはムサシの目をまっすぐ見つめる。
「名前、呼んで欲しいなあって」
ムサシはその目に揺れる光を見て、少しの沈黙の後に彼女の名を呼ぶ。
「まもり」
その音はとても優しくて、顔も名前も知らない、声も判らない父親という人が私を呼んだらこんな感じかしら、という気持ちにさせられる。
思わずぽろっと涙がこぼれる。
彼は困ったように、まもりの頭を躊躇いがちにだが撫でてくれた。
「あんまり泣かれると、俺がヒル魔にどやされる」
「平気よ、ちゃんと説明するわ、だから、だから」
まもりは俯いたまま言葉を続ける。
「ねえ、もう一度だけ、わたしを呼んで」

もう今は生きているのかどうか判らない父親という人に思いを馳せ、まもりはそっと眸を閉じた。

(06: もう一度だけ、わたしを呼んで/天狗・ムサシ)


若菜はお茶を手に高見のところへやってきた。
「はい、高見さん、お茶です」
「ありがとう、若菜くん」
二人が棲むのは森の中の一軒家。薬師という生業上、高見はこの場所をよく留守にする。
「それにしても、いつも一人で申し訳ないよね」
「いえいえ、いいんです。高見さんはいつもお仕事がんばってらっしゃるから、そのお手伝いが出来れば」
ぽ、と頬を染める彼女に高見はつい手を伸ばしたくなるが。
「あ、そろそろ洗濯物を取り込まないと」
ぱたぱたと彼女はその場から走り去ってしまう。
行き場のない中途半端な手が切ない。
「はぁ・・・まるで拷問だよ」
高見の元に住み着いた若菜は、申し分なく優秀な家政婦のように働いていた。
特に雇った覚えもないけれど、ちょこまかと働く彼女にかなり助けられているのも事実。
だから気持ちが恋愛感情に発展したのは、まあ、よくある話で。
けれど若菜は鈍いのかわざとなのか、高見の言葉をことごとく反らしていく。
思いあまって行動で、と思っても今のようにさらりとかわされる。
「まったく・・・可愛い顔して残酷だよ」
「? 何か仰いました?」
「いいや、別に?」
小首を傾げる小さな頭を見送りながら、高見はまあいいさ、と嘯く。
なにせ時間はたっぷりあるんだから、焦らず進んでいけばいい。

(07: 可愛い顔して残酷だよ/妖怪薬師・高見+二口女・若菜)



人と契って子まで成したのに、約束を破られてしまったあたしは一人この山へと移り住んだ。
そこに後からやって来たのがヒル魔で、だからアイツはあたしの山の間借り人だと言っていい。
とはいえ、一時的だし棲み分けが出来てるから喧嘩なんかにゃならないんだけどね。
煙管盆を引き寄せ、煙管をくわえる。
人との生活で嗜んだこれが、私の性に合う。温度は辛いところだが、やめられない。
「カッ! 煙草くせえぞ、メグ!」
「…また来たのかい」
煙草が嫌いな化蛇(かだ)のルイが遠慮もなくこの場所へ姿を現す。
最初はヒル魔と勝負をしていたらしいが、いつの間にやら喧嘩もせず時折使い走りまでさせられているらしい。
すべてらしい、というのはウチによく遊びに来る鈴音からの情報だ。
一応強い妖怪を気取っているルイ本人にその手の話は聞いたことがない。
「それに寒ィ!」
「文句があるなら来るんじゃないよ」
ふう、と煙を吐き出す。蛇が元のルイにはここは非常に辛い場所だろう。
だがルイはいつもここに来る。
「まったく、酔狂な蛇もいたもんだ」
「あぁ?」
あたしはちらりとルイを見た。
「お前、俺をただの蛇だと思ってんじゃねぇだろうな? カッ、化蛇ルイ様だぞ?」
「へーえ」
「言っておくけどな、俺は強ぇし部下も沢山いるんだぜ!」
「ほーお」
興味のない話を延々する男に、あたしは正直興味がない。
「なあ」
「あぁ?」
「口説くなら、ちゃんとお言いよ」
「っ!!」
一生懸命いつも自分を強く見せようと虚勢を張って、薄着で来る奴の為に冷気を極限まで抑えてやっているのに。
「…だから、俺は」
先ほどまでの勢いとは違う、呟きのような『守ってやるから』という言葉にあたしは笑う。
「だったらまず、ここに来るときにはもっと厚着して来な」

そうしたら、もっと長く話が出来るじゃないか。
額の汗を拭って、あたしは煙管の火を落とした。

(08: 守ってやるから/雪女・メグ+化蛇・ルイ)


鬼と呼ばれる種族の中でも、彼ら四人は目立っていた。
水鬼の水町。
金鬼の大平。
風鬼の大西。
穏形鬼の筧。
皆身の丈6尺7寸ほどもある大鬼軍団なのである。
けれど今は平和であり、特に各々能力を使うこともなく、平穏に暮らしていた。
「ンハッ! なあなあ、ヒル魔の嫁さん綺麗だったなあ」
あまりに大柄な四人に囲まれて、まもりは目を白黒させていたけれど。
「ああ、そうだな」
「胸もデカイし、顔も綺麗だし、ヒル魔が羨ましいぜ」
「大西も早く結婚しろよ。一人だけ独身で変わらずにいやがって」
「そうそう。でも嫁さんは選ばないといけないぜ?」
「俺の所なんて口うるさくてさー」
「俺の方は化粧がなぁ・・・」
「君たち、そんなこと言ってると・・・」
呆れたような大西の声が諫めようとするが、一足遅かった。
「水町くん?」
「大平くん?」
「筧ィ?」
「「「ゲッ」」」
背後から女三人の声。
人魚の乙姫、飛縁魔の浦島、絡新婦の渋谷がそれぞれ仁王立ちになっている。
「あーあ」
三人のそれぞれの嫁さんが夫を引きずっていく様は相変わらず。
これは結婚する前から全く変わってないのだ。
結婚してもしなくてもどっちでもいいか、と思ってしまう原因だ。
「変わらないのはどっちだよ、まったく」

(09: 変わらないのはどっちだよ/巨深ポセイドンメンバー)


俺たちが人間にしかける手順はこうだ。
まず戸叶が転ばせて。
黒木が切って。
俺が薬を塗る。
だから俺は薬を切らすわけにはいかない。
「ちょっと薬草取ってくる」
「ハ? こないだ薬作ってただろ」
「ハァアア? まだいいんじゃね?」
引き留める二人に俺は渋い顔をする。
「ここんところ、この薬を用途外に使うヤツがいてな」
「ようとがい?」
「目的以外に使うこと、だ。じゃあなんだ、誰が?」
「・・・ヒル魔」
「「・・・・ああ・・・」」
俺たちは一様に姐さんの姿を思い浮かべて思わず合掌してしまう。
あの姐さんのおかげで俺たちはヒル魔の暇つぶしに使われたりしなくなったので、大分楽をしているのだ。
「俺たちも行くよぉ」
「一人で行くより三人の方が早いだろ」
「・・・いいのか?」
二人は今までそれなりに自分の楽しみな事をしていたはずで。
黒木は木の玩具を放り出し、戸叶も黄表紙を閉じる。
「いーんだよ。三人で一緒に行こうぜぇ」
「俺たち三人で一つなんだからよ」
「・・・だな」
切っても切れない繋がってる感覚に、幼い頃は苛立ったりしたけれど。
今はその関係が心地よい。

(10: 繋がってる/鎌鼬三兄弟・十文字)


【誰かの言葉になる10題】(提供:ユグドラシル)
 

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同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。

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