旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
屋上に呼び出されたまもりは、内心ため息をついて目の前の男を見た。
寒いので早くすませて欲しいな、と思うけれど口には出さない。
顔は知っているが名前は知らない。いや、先ほど名乗られて知ったが覚える気はない。
「僕は―――」
こんな場面は何度も繰り返している。
それこそ面倒なのでここに登ってくる前に断ればいいのだけれど、うまくいかなくても想いを告げたいという青少年の熱意をそぐのはよろしくないわ、と心優しい泥門の天使の名にふさわしく微笑んでみる。
それに、これはこれで結構いいこともあるのだ。
「僕は、姉崎さんのことが好きで、ずっと」
「ソコマデ」
声と共に飛んできたのは銃弾。さすがに突発的なそれは判っているまもりでもぎょっとする。
非難がましい顔になってしまうのは仕方ないだろう。
内心で己への執着を確認できて喜んでいたとしても。
「ひっ、ヒル・・・ヒル魔?!」
「ウチのに何のご用事デスカ?」
銃を担いだ状態でニヤニヤと笑いながら近寄ってくる悪魔の姿に、まもりを呼び出した男は青ざめて何事か謝罪を叫びながら走り去った。
轟音を立てて閉じられたドアにまたぎょっとして、それから今度は遠慮無くため息。
「無駄に威嚇しないでよ」
「助けてやったんだろうが」
「別に困ってなかったもの」
屋上から見えるグラウンドには生徒の姿はまばらだ。
冬休みが明けたまだまだ寒い昼休みのこの時間、本来なら立入禁止区域の屋上にいるのは二人きり。
ヒル魔もまもりも呼気は真っ白だ。
「糞寒ィ」
「冬だからね」
「ンな答えは求めちゃいねぇよ」
ぼやくヒル魔の真意をとうに把握しているまもりは肩をすくめる。
少しの間だから、とコートも羽織らず吹きさらしの屋上に立っているのは本気で寒い。
ヒル魔だって大して変わらない格好だ。
「それにしても、こんなに寒いのにまたヒル魔くんてば屋上にいたのね」
ヒル魔が屋上にいるのは、単独行動を好む彼だから珍しい事ではないけれど。
「風邪引くわよ?」
「別に構やしねぇよ」
それにまもりは苦笑を浮かべる。以前なら絶対に口にしない言葉だったから。
「クリスマスボウル、終わったもんね」
そう。彼がそれほど死ぬ程渇望していたクリスマスボウルはつい先月終わった。
そして年が明けて今、目的を達したら消えるとばかり思われていたヒル魔は未だに泥門高校に居座っている。
「ヒル魔くん、自己管理下手だもんね」
「どの口が抜かすか」
「あれだけ私のお弁当食べておいてそんなこと言うの?」
ヒル魔の食事が一人暮らし故にかなりいい加減だという事を知ってから、せめて昼食くらいは、とまもりは先月までお弁当を作ってきていたのだ。彼はそれを文句を言う事もなく黙々と食べていた。
「・・・チッ」
寒さに震える身体をそれでも止め置いて、二人は立ちつくしている。
「ヒル魔くんってば放っておくと食事は適当になるし練習しすぎるし見栄っ張りだしでフォローには困ったわ」
「ソウデスカ」
はあ、と手に息を吹きかけて暖を取ろうとするが、そんなものは気休めだ。
寒そうに縮こまって見せて、まもりはちろりとヒル魔を見上げる。
ヒル魔はそんなまもりを微妙な表情で見下ろしている。他人には判らないだろうけれど、まもりには判る顔で。
この八ヶ月、まもりは誰よりも彼の側にいて彼のフォローをしてきて、彼の機微など一目でわかるようになった。
彼が何をしたいのか、どうしたいのか、とうにまもりは知っている。
判りづらい言葉の端々に滲ませる気持ちだってお見通しだ。
それこそ彼がまもりには気づかれていないと思っている頃から。
ヒル魔だって自己分析の出来る男だ、今ではちゃんとまもりが自分をどう思っているか判っているのだろう。
けれど踏み出さず今まで来た。それはクリスマスボウルを目指すという大義名分があったから。
その大義名分を使って側にいた二人。
今は何もない。部活はまだ引退していないけれど、事実上は同じだ。
これから二人の間には同級生と部活の元仲間というライン以外には接点はない。
その事実がわからないヒル魔ではないはずだから。
「そういえば部室の私物、早めに片づけないとね」
接点の消失を強調するような言葉に、ヒル魔の片眉が上がった。
まもりは小首を傾げて見上げる。
吹き付ける風に本気で寒さが辛くなってきて、まもりは顔を顰めて先ほど閉じたきり誰も上がってこない扉へと脚を進めようとした。
「オイ」
温度のない淡々とした声がまもりを呼ぶ。
「何? もう寒いから戻りたいんだけど」
振り返りもせず扉に向かうまもりの背後に、今度は意を決したような声が聞こえた。
「もういいだろ」
そうして腕。
ヒル魔のそれ幽かに震えているのは、寒さばかりのせいじゃないと判る。
まもりもまた、そうだから。
触れた箇所のあたたかさに安堵しつつ、勝手に赤面する顔のまま言葉を待つ。
さあ、ここまできたら後少し。
悪魔陥落のカウントダウン、開始。
***
冬緒様リクエスト『普通にしていても夫婦っぽい雰囲気の高校生ヒルまも』+すみれ様リクエスト『子猫に告ぐ続編』でした。ちょっとへたれっぽいヒル魔さんが書いていて新鮮でした(笑)珍しくスッキリ書けた一品です。
リクエストありがとうございましたー!!
冬緒様・すみれ様のみお持ち帰り可。
寒いので早くすませて欲しいな、と思うけれど口には出さない。
顔は知っているが名前は知らない。いや、先ほど名乗られて知ったが覚える気はない。
「僕は―――」
こんな場面は何度も繰り返している。
それこそ面倒なのでここに登ってくる前に断ればいいのだけれど、うまくいかなくても想いを告げたいという青少年の熱意をそぐのはよろしくないわ、と心優しい泥門の天使の名にふさわしく微笑んでみる。
それに、これはこれで結構いいこともあるのだ。
「僕は、姉崎さんのことが好きで、ずっと」
「ソコマデ」
声と共に飛んできたのは銃弾。さすがに突発的なそれは判っているまもりでもぎょっとする。
非難がましい顔になってしまうのは仕方ないだろう。
内心で己への執着を確認できて喜んでいたとしても。
「ひっ、ヒル・・・ヒル魔?!」
「ウチのに何のご用事デスカ?」
銃を担いだ状態でニヤニヤと笑いながら近寄ってくる悪魔の姿に、まもりを呼び出した男は青ざめて何事か謝罪を叫びながら走り去った。
轟音を立てて閉じられたドアにまたぎょっとして、それから今度は遠慮無くため息。
「無駄に威嚇しないでよ」
「助けてやったんだろうが」
「別に困ってなかったもの」
屋上から見えるグラウンドには生徒の姿はまばらだ。
冬休みが明けたまだまだ寒い昼休みのこの時間、本来なら立入禁止区域の屋上にいるのは二人きり。
ヒル魔もまもりも呼気は真っ白だ。
「糞寒ィ」
「冬だからね」
「ンな答えは求めちゃいねぇよ」
ぼやくヒル魔の真意をとうに把握しているまもりは肩をすくめる。
少しの間だから、とコートも羽織らず吹きさらしの屋上に立っているのは本気で寒い。
ヒル魔だって大して変わらない格好だ。
「それにしても、こんなに寒いのにまたヒル魔くんてば屋上にいたのね」
ヒル魔が屋上にいるのは、単独行動を好む彼だから珍しい事ではないけれど。
「風邪引くわよ?」
「別に構やしねぇよ」
それにまもりは苦笑を浮かべる。以前なら絶対に口にしない言葉だったから。
「クリスマスボウル、終わったもんね」
そう。彼がそれほど死ぬ程渇望していたクリスマスボウルはつい先月終わった。
そして年が明けて今、目的を達したら消えるとばかり思われていたヒル魔は未だに泥門高校に居座っている。
「ヒル魔くん、自己管理下手だもんね」
「どの口が抜かすか」
「あれだけ私のお弁当食べておいてそんなこと言うの?」
ヒル魔の食事が一人暮らし故にかなりいい加減だという事を知ってから、せめて昼食くらいは、とまもりは先月までお弁当を作ってきていたのだ。彼はそれを文句を言う事もなく黙々と食べていた。
「・・・チッ」
寒さに震える身体をそれでも止め置いて、二人は立ちつくしている。
「ヒル魔くんってば放っておくと食事は適当になるし練習しすぎるし見栄っ張りだしでフォローには困ったわ」
「ソウデスカ」
はあ、と手に息を吹きかけて暖を取ろうとするが、そんなものは気休めだ。
寒そうに縮こまって見せて、まもりはちろりとヒル魔を見上げる。
ヒル魔はそんなまもりを微妙な表情で見下ろしている。他人には判らないだろうけれど、まもりには判る顔で。
この八ヶ月、まもりは誰よりも彼の側にいて彼のフォローをしてきて、彼の機微など一目でわかるようになった。
彼が何をしたいのか、どうしたいのか、とうにまもりは知っている。
判りづらい言葉の端々に滲ませる気持ちだってお見通しだ。
それこそ彼がまもりには気づかれていないと思っている頃から。
ヒル魔だって自己分析の出来る男だ、今ではちゃんとまもりが自分をどう思っているか判っているのだろう。
けれど踏み出さず今まで来た。それはクリスマスボウルを目指すという大義名分があったから。
その大義名分を使って側にいた二人。
今は何もない。部活はまだ引退していないけれど、事実上は同じだ。
これから二人の間には同級生と部活の元仲間というライン以外には接点はない。
その事実がわからないヒル魔ではないはずだから。
「そういえば部室の私物、早めに片づけないとね」
接点の消失を強調するような言葉に、ヒル魔の片眉が上がった。
まもりは小首を傾げて見上げる。
吹き付ける風に本気で寒さが辛くなってきて、まもりは顔を顰めて先ほど閉じたきり誰も上がってこない扉へと脚を進めようとした。
「オイ」
温度のない淡々とした声がまもりを呼ぶ。
「何? もう寒いから戻りたいんだけど」
振り返りもせず扉に向かうまもりの背後に、今度は意を決したような声が聞こえた。
「もういいだろ」
そうして腕。
ヒル魔のそれ幽かに震えているのは、寒さばかりのせいじゃないと判る。
まもりもまた、そうだから。
触れた箇所のあたたかさに安堵しつつ、勝手に赤面する顔のまま言葉を待つ。
さあ、ここまできたら後少し。
悪魔陥落のカウントダウン、開始。
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冬緒様リクエスト『普通にしていても夫婦っぽい雰囲気の高校生ヒルまも』+すみれ様リクエスト『子猫に告ぐ続編』でした。ちょっとへたれっぽいヒル魔さんが書いていて新鮮でした(笑)珍しくスッキリ書けた一品です。
リクエストありがとうございましたー!!
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鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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