旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
鈴音が事前に聞いていた部屋の番号を押してインターホンを鳴らすと、少しして応答があった。
『はい』
「やー! まも姐、来たよ!」
聞き慣れた声に来訪を告げると、向こうから楽しげな声が応じる。
『いらっしゃい! 今、開けるわね』
言葉と同時に自動ドアが開く。
鈴音は鼻歌を歌いながらエレベーターに乗り、目的の部屋がある階のボタンを押した。
まもりが卒業後、ヒル魔と同棲を始めたと聞いたとき、それはもう驚いたけれど、その一方でいかにも妖兄らしい、と納得したりもした。そして一年経った今でも同棲は継続している。
『遊びに来てね』
そう手紙をくれたまも姐に、鈴音は春休みを利用して会いに来たのだ。
彼氏であるセナは今年入学する大学のアメフト部への練習に参加するためそちらに出向いてしまったので、鈴音一人で。
改めてドアベルを鳴らすと、すぐに扉が開いた。
「久しぶり、鈴音ちゃん! さあ、上がって上がって!」
にこにこと笑うまもりは相変わらず綺麗で、鈴音は手みやげのケーキを渡しながら遠慮無くお邪魔した。
「おじゃましまーす! あれ、妖兄は?」
「大学に用事があるみたいで出てるわ。そのうち帰ってくるから、その前にこれ食べちゃいましょ!」
リビングに通され、手早く紅茶とケーキを饗される。手際の良さは相変わらずだ。
「ヒル魔くんは私が甘いモノ食べてると、嫌そうな顔しかしないからあんまり家じゃ食べられないのよね」
嬉しそうにケーキを頬張るまもりに、鈴音は苦笑する。
「そうだろうねー。目に浮かぶなあ」
美味しい紅茶に目を細めながら、鈴音はこの部屋のもう一人の主の姿を思い浮かべた。
シュークリームを食べる横で嫌そうにコーヒーを飲んでいる姿が詳細に思い描ける。
「ね、ね、妖兄って普段どんな感じなの?」
「え? 普段って?」
「やー、だって高校の時って妖兄のプライベートなんて全然判らなくて、今でも普段何食べて何着て何喋るのか想像つかないんだもん」
「そうねえ」
まもりはくるりと青い瞳を天に向けた。
「まず食事は私が作るけど、和食より洋食が好きみたい。魚より肉だけど野菜も結構食べるわ」
「妖兄が野菜! なんか意外~」
「それと辛いモノが好きみたいね。でも私が作ったのだと物足りないみたいで、時々自分で作ったりしてるわ」
「妖兄って料理できるんだ!」
「美味しいわよ。たまに辛すぎて私は食べられないけど」
ふんふん、と目を輝かせて聞く鈴音にまもりは苦笑するばかり。
「甘くても果物は割と食べるかな。お菓子とかの甘いモノは論外ね。お酒はあんまり飲まないけど好きみたい」
「ふうん」
「着る物は高校の時の私服とそんなに変わらないわよ。大体黒だし」
「ああ、そうなんだ」
「あと喋る事・・・大体大学か授業のことかな」
「えー?」
不満げな鈴音にまもりは肩をすくめる。
「だってヒル魔くんと私で趣味が合う訳じゃないし、テレビを一緒に見る事もあんまりないし、共通の話題って言ったら大学か授業の事でしょ」
「むー、そうなの?」
「そうよ。それより鈴音ちゃん」
「何?」
「セナとはうまくいってる?」
「やー?!」
突然の話題転換に、鈴音はぽん、と赤くなった。その変わりようにまもりは満足げに笑う。
「大学の勧誘もすごかったみたいだし、色々回りは煩かったでしょ?」
関東勢二連覇という偉業を達成させたセナは一年の時に出会った頃とは比べようもなく逞しく強くなった。
当然それに伴ってセナを追いかける人の数はとんでもなく増えた。
それも今までは脚のことだけ注目されて部活勧誘の男ばかりだったのに、女性からのアプローチも増えたとはヒル魔情報だ。
「うん。でも、セナが言ってくれたから」
へにゃりと笑み崩れる。幸せそうな鈴音に目を細め、まもりは口を開いた。
「『僕の恋人は鈴音だけだから』ね」
「――――!? ヤー?! な、ななななんで知ってるのー!?」
途端に鈴音の目が見開かれる。二人きりで交わされたはずの言葉を違わず口にされ、更に真っ赤になる鈴音ににっこりと笑って一言。
「イヤね、鈴音ちゃん。私の彼はヒル魔くんよ?」
鈴音は今、ヒル魔の形をした黒い影をまもりの背後に見た。
「あの脅迫手帳は褒められてモノじゃないけど、こういう情報が早いのは楽しいわね」
「まも姐~・・・」
非難じみた声にも、まもりはころころと楽しげに笑う。
それに唇を尖らせながら鈴音は反撃にとっておきの質問を繰り出してみた。
「ね、妖兄ってエッチは上手?」
「ッ?!」
がちゃん、とまもりは手にしたカップを落としてしまう。カップは無事だったが、中身は少々零れた。
「す、す、鈴音ちゃん?!」
「やー。先輩のお話を参考に聞きたいと思って」
きらん、と瞳を輝かせる鈴音に、必死にまもりは首を振る。
「いやいやいやいや! こういうのはね、人に聞かせる話じゃないから!」
「やー? その焦りっぷりが怪しいなあ~」
「ええ?! だ、っそ、あの、ね?」
焦りまくるまもりの姿が可愛くて、鈴音の好奇心がぴんとアンテナを張る。
「だって二人でここに住み始めてもう一年でしょ? ま~さ~か~まも姐、二人はまだ清らかな関係です、なんて通ると思う?」
「そそそそれは!」
「大体ここに」
とん、と鈴音は自分の首筋をつつく。そしてにっこりと笑う。
「キスマークついてるよ」
「嘘ッ?!」
ばっとそこを覆って赤面したならば、もう言ってしまったようなものだ。
「妖兄ってば性欲薄そうだけどそうでもないの?」
「えっ、だから、ね? その・・・」
「やー、でも好きなモノに対しては滅茶苦茶執着するから違うかな。手加減なしなんでしょ?」
「あの、そのっ」
「ねえ、それって気持ちいいの?」
「~~~~~~~ッ」
ねえ? と小首を傾げて見上げてくる鈴音に、まもりは何も言えず半泣きになってしまう。
さすがに言い過ぎたかな、と思って鈴音が口を開こうとしたとき。
「何騒いでるんだ」
声と共にリビングに来たのは話題のヒル魔で。
このタイミングで帰ってきた事を喜ぶべきか悲しむべきか、まもりは真剣に悩む。
「やー。まも姐と妖兄の夜の生活について伺ってました」
「ホー」
それでこの有様か、とヒル魔はあからさまな鈴音の言葉に真っ赤になって俯いているまもりをちらりと眺める。
「人の事気にしてる場合か、糞チア?」
「やー、だから参考に話が聞きたかったの!」
「こういうことで人の話が参考になるか」
ケ、と言い捨てるヒル魔に、鈴音はむっと眉を寄せる。
「ああああのね、私今コーヒー淹れてくるから! 鈴音ちゃんはカフェオレでいい? いいわよね?!」
がたっと音を立てて立ち上がり、まもりは真っ赤な顔でリビングから逃げ出してしまった。
「あーあ」
「あんまりからかうんじゃねぇ」
「だってかわいいんだもん、まも姐」
キスマークついてるってカマかけたらすぐ真っ赤になったよ、と続けるとヒル魔はにやりと笑った。
「テメェ、これ以上アイツをからかうと詳細にアレをばらすぞ」
「え、何? アレって?」
「先週の土曜日の夜7:52の・・・」
「キャー! キャーッ!!」
手帳を捲って詳細に告げられた日時に鈴音は飛び上がって悲鳴を上げた。
なぜ、それこそ誰も知らない事を彼は知っているのだろうか?
「これに懲りたら下手なことは口に出すんじゃねぇぞ」
ケケケと笑って振られる、今も健在の黒い手帳を恨めしげに睨みつけ、鈴音は両手を上げる。
「・・・不安だから色々聞きたかったのに」
ぽつんと呟かれた言葉に、ヒル魔の片眉がぴんと上がる。
「これからどうしたらいいのかなって・・・体験談、聞きたかったの」
軽口は不安の裏返し。
ついついまもりの反応が可愛くてからかってしまったけれど、聞きたかったのは本当なのだ。
「くだらねぇ」
すっぱりと切って捨てられ、鈴音がきっとヒル魔を睨む。
「それとも、テメェは詳細に××が××で××が××でどのタイミングで××が××だとか情報が必要か」
「うっ・・・」
「まあ×××の×××についちゃ人それぞれだから×××か×××かは見てみねぇと判らねぇし」
実に淡々と、それでいてリアルにヒル魔から発せられる単語に鈴音が青くなる。
「××が××で××だったら×××が×ってて××から×××しねぇと××だとか×××が××・・・」
「うわあああん! ごめんなさい! もう言わないで!! 本当にごめんなさいいぃい!!」
更に畳みかけるような放送禁止用語満載の言葉に鈴音は半分泣きそうになりながら謝った。生々しすぎる。
それみろ、とヒル魔は飄々としたまま肩をすくめる。
「聞いたところで参考になんざならねぇんだよ。なるようになる」
「・・・それは経験則?」
耳まで真っ赤になりながらも、鈴音は尋ねる。ヒル魔はにやりと笑った。
「だから今がある」
なによりも雄弁な一言に、鈴音は神妙な顔をして頷いた。
「なるほど」
「・・・あの、そろそろそっちに行ってもいい・・・?」
か細い声に振り返れば、キッチンからまもりが真っ赤な顔をしながらお盆を持ってこちらを伺っていた。
二人の元に泊まった鈴音は翌日、今度はセナと一緒に来るね、という言葉を残して元気いっぱいに帰った。
あのヒル魔の発言が後々トラウマにならなければいいんだけれど、と心配するまもりにヒル魔は呆れる。
見送りをすませて自室に戻る道すがら、ヒル魔は口を開いた。
「妄想が先走ってろくな事にならねぇのはテメェが自分でよく知ってるだろうが」
「う」
「あいつらはあいつらでいいんだよ」
その言葉にまもりは目を細める。
「・・・ヒル魔くん、優しいね」
「何をオッシャイマスカ。俺はいつでも優しいデスヨ?」
ケケケと笑って流す彼に、相変わらず素直に褒められない人ね、とまもりは苦笑するばかり。
「そういえば」
部屋に戻り、ふと思い出したようにまもりが口にする。
「×××って何?」
それにヒル魔はぴんと片眉を上げ、次いでにまあ、と人の悪い笑みを浮かべた。
「実地で教えてやろう」
「・・・いえ、なんか悪い予感がするのでいいです」
「まあまあご遠慮ナサラズ」
「いやー! 何その手つき!! イヤー!!」
悲鳴を上げるまもりを、彼女にばかりは優しい腕が、持ち主の思惑とは裏腹に柔らかく捕らえたのだった。
***
ままま様リクエスト『鈴音とまもりが互いの恋愛話(のろけ)をする』でした。・・・惚気てないよ・・・!!
むしろ攻撃し合ってしまったのでタイトルもそうしてみました。
お互いの惚気話を書くつもりが、ヒル魔さんが出張ってしまってすみません。でも楽しかったです♪
×××には適当な言葉を思い浮かべて当てはめてください(笑)表では到底書けない言葉ばかりです。
リクエストありがとうございましたー!!
ままま様のみお持ち帰り可。
『はい』
「やー! まも姐、来たよ!」
聞き慣れた声に来訪を告げると、向こうから楽しげな声が応じる。
『いらっしゃい! 今、開けるわね』
言葉と同時に自動ドアが開く。
鈴音は鼻歌を歌いながらエレベーターに乗り、目的の部屋がある階のボタンを押した。
まもりが卒業後、ヒル魔と同棲を始めたと聞いたとき、それはもう驚いたけれど、その一方でいかにも妖兄らしい、と納得したりもした。そして一年経った今でも同棲は継続している。
『遊びに来てね』
そう手紙をくれたまも姐に、鈴音は春休みを利用して会いに来たのだ。
彼氏であるセナは今年入学する大学のアメフト部への練習に参加するためそちらに出向いてしまったので、鈴音一人で。
改めてドアベルを鳴らすと、すぐに扉が開いた。
「久しぶり、鈴音ちゃん! さあ、上がって上がって!」
にこにこと笑うまもりは相変わらず綺麗で、鈴音は手みやげのケーキを渡しながら遠慮無くお邪魔した。
「おじゃましまーす! あれ、妖兄は?」
「大学に用事があるみたいで出てるわ。そのうち帰ってくるから、その前にこれ食べちゃいましょ!」
リビングに通され、手早く紅茶とケーキを饗される。手際の良さは相変わらずだ。
「ヒル魔くんは私が甘いモノ食べてると、嫌そうな顔しかしないからあんまり家じゃ食べられないのよね」
嬉しそうにケーキを頬張るまもりに、鈴音は苦笑する。
「そうだろうねー。目に浮かぶなあ」
美味しい紅茶に目を細めながら、鈴音はこの部屋のもう一人の主の姿を思い浮かべた。
シュークリームを食べる横で嫌そうにコーヒーを飲んでいる姿が詳細に思い描ける。
「ね、ね、妖兄って普段どんな感じなの?」
「え? 普段って?」
「やー、だって高校の時って妖兄のプライベートなんて全然判らなくて、今でも普段何食べて何着て何喋るのか想像つかないんだもん」
「そうねえ」
まもりはくるりと青い瞳を天に向けた。
「まず食事は私が作るけど、和食より洋食が好きみたい。魚より肉だけど野菜も結構食べるわ」
「妖兄が野菜! なんか意外~」
「それと辛いモノが好きみたいね。でも私が作ったのだと物足りないみたいで、時々自分で作ったりしてるわ」
「妖兄って料理できるんだ!」
「美味しいわよ。たまに辛すぎて私は食べられないけど」
ふんふん、と目を輝かせて聞く鈴音にまもりは苦笑するばかり。
「甘くても果物は割と食べるかな。お菓子とかの甘いモノは論外ね。お酒はあんまり飲まないけど好きみたい」
「ふうん」
「着る物は高校の時の私服とそんなに変わらないわよ。大体黒だし」
「ああ、そうなんだ」
「あと喋る事・・・大体大学か授業のことかな」
「えー?」
不満げな鈴音にまもりは肩をすくめる。
「だってヒル魔くんと私で趣味が合う訳じゃないし、テレビを一緒に見る事もあんまりないし、共通の話題って言ったら大学か授業の事でしょ」
「むー、そうなの?」
「そうよ。それより鈴音ちゃん」
「何?」
「セナとはうまくいってる?」
「やー?!」
突然の話題転換に、鈴音はぽん、と赤くなった。その変わりようにまもりは満足げに笑う。
「大学の勧誘もすごかったみたいだし、色々回りは煩かったでしょ?」
関東勢二連覇という偉業を達成させたセナは一年の時に出会った頃とは比べようもなく逞しく強くなった。
当然それに伴ってセナを追いかける人の数はとんでもなく増えた。
それも今までは脚のことだけ注目されて部活勧誘の男ばかりだったのに、女性からのアプローチも増えたとはヒル魔情報だ。
「うん。でも、セナが言ってくれたから」
へにゃりと笑み崩れる。幸せそうな鈴音に目を細め、まもりは口を開いた。
「『僕の恋人は鈴音だけだから』ね」
「――――!? ヤー?! な、ななななんで知ってるのー!?」
途端に鈴音の目が見開かれる。二人きりで交わされたはずの言葉を違わず口にされ、更に真っ赤になる鈴音ににっこりと笑って一言。
「イヤね、鈴音ちゃん。私の彼はヒル魔くんよ?」
鈴音は今、ヒル魔の形をした黒い影をまもりの背後に見た。
「あの脅迫手帳は褒められてモノじゃないけど、こういう情報が早いのは楽しいわね」
「まも姐~・・・」
非難じみた声にも、まもりはころころと楽しげに笑う。
それに唇を尖らせながら鈴音は反撃にとっておきの質問を繰り出してみた。
「ね、妖兄ってエッチは上手?」
「ッ?!」
がちゃん、とまもりは手にしたカップを落としてしまう。カップは無事だったが、中身は少々零れた。
「す、す、鈴音ちゃん?!」
「やー。先輩のお話を参考に聞きたいと思って」
きらん、と瞳を輝かせる鈴音に、必死にまもりは首を振る。
「いやいやいやいや! こういうのはね、人に聞かせる話じゃないから!」
「やー? その焦りっぷりが怪しいなあ~」
「ええ?! だ、っそ、あの、ね?」
焦りまくるまもりの姿が可愛くて、鈴音の好奇心がぴんとアンテナを張る。
「だって二人でここに住み始めてもう一年でしょ? ま~さ~か~まも姐、二人はまだ清らかな関係です、なんて通ると思う?」
「そそそそれは!」
「大体ここに」
とん、と鈴音は自分の首筋をつつく。そしてにっこりと笑う。
「キスマークついてるよ」
「嘘ッ?!」
ばっとそこを覆って赤面したならば、もう言ってしまったようなものだ。
「妖兄ってば性欲薄そうだけどそうでもないの?」
「えっ、だから、ね? その・・・」
「やー、でも好きなモノに対しては滅茶苦茶執着するから違うかな。手加減なしなんでしょ?」
「あの、そのっ」
「ねえ、それって気持ちいいの?」
「~~~~~~~ッ」
ねえ? と小首を傾げて見上げてくる鈴音に、まもりは何も言えず半泣きになってしまう。
さすがに言い過ぎたかな、と思って鈴音が口を開こうとしたとき。
「何騒いでるんだ」
声と共にリビングに来たのは話題のヒル魔で。
このタイミングで帰ってきた事を喜ぶべきか悲しむべきか、まもりは真剣に悩む。
「やー。まも姐と妖兄の夜の生活について伺ってました」
「ホー」
それでこの有様か、とヒル魔はあからさまな鈴音の言葉に真っ赤になって俯いているまもりをちらりと眺める。
「人の事気にしてる場合か、糞チア?」
「やー、だから参考に話が聞きたかったの!」
「こういうことで人の話が参考になるか」
ケ、と言い捨てるヒル魔に、鈴音はむっと眉を寄せる。
「ああああのね、私今コーヒー淹れてくるから! 鈴音ちゃんはカフェオレでいい? いいわよね?!」
がたっと音を立てて立ち上がり、まもりは真っ赤な顔でリビングから逃げ出してしまった。
「あーあ」
「あんまりからかうんじゃねぇ」
「だってかわいいんだもん、まも姐」
キスマークついてるってカマかけたらすぐ真っ赤になったよ、と続けるとヒル魔はにやりと笑った。
「テメェ、これ以上アイツをからかうと詳細にアレをばらすぞ」
「え、何? アレって?」
「先週の土曜日の夜7:52の・・・」
「キャー! キャーッ!!」
手帳を捲って詳細に告げられた日時に鈴音は飛び上がって悲鳴を上げた。
なぜ、それこそ誰も知らない事を彼は知っているのだろうか?
「これに懲りたら下手なことは口に出すんじゃねぇぞ」
ケケケと笑って振られる、今も健在の黒い手帳を恨めしげに睨みつけ、鈴音は両手を上げる。
「・・・不安だから色々聞きたかったのに」
ぽつんと呟かれた言葉に、ヒル魔の片眉がぴんと上がる。
「これからどうしたらいいのかなって・・・体験談、聞きたかったの」
軽口は不安の裏返し。
ついついまもりの反応が可愛くてからかってしまったけれど、聞きたかったのは本当なのだ。
「くだらねぇ」
すっぱりと切って捨てられ、鈴音がきっとヒル魔を睨む。
「それとも、テメェは詳細に××が××で××が××でどのタイミングで××が××だとか情報が必要か」
「うっ・・・」
「まあ×××の×××についちゃ人それぞれだから×××か×××かは見てみねぇと判らねぇし」
実に淡々と、それでいてリアルにヒル魔から発せられる単語に鈴音が青くなる。
「××が××で××だったら×××が×ってて××から×××しねぇと××だとか×××が××・・・」
「うわあああん! ごめんなさい! もう言わないで!! 本当にごめんなさいいぃい!!」
更に畳みかけるような放送禁止用語満載の言葉に鈴音は半分泣きそうになりながら謝った。生々しすぎる。
それみろ、とヒル魔は飄々としたまま肩をすくめる。
「聞いたところで参考になんざならねぇんだよ。なるようになる」
「・・・それは経験則?」
耳まで真っ赤になりながらも、鈴音は尋ねる。ヒル魔はにやりと笑った。
「だから今がある」
なによりも雄弁な一言に、鈴音は神妙な顔をして頷いた。
「なるほど」
「・・・あの、そろそろそっちに行ってもいい・・・?」
か細い声に振り返れば、キッチンからまもりが真っ赤な顔をしながらお盆を持ってこちらを伺っていた。
二人の元に泊まった鈴音は翌日、今度はセナと一緒に来るね、という言葉を残して元気いっぱいに帰った。
あのヒル魔の発言が後々トラウマにならなければいいんだけれど、と心配するまもりにヒル魔は呆れる。
見送りをすませて自室に戻る道すがら、ヒル魔は口を開いた。
「妄想が先走ってろくな事にならねぇのはテメェが自分でよく知ってるだろうが」
「う」
「あいつらはあいつらでいいんだよ」
その言葉にまもりは目を細める。
「・・・ヒル魔くん、優しいね」
「何をオッシャイマスカ。俺はいつでも優しいデスヨ?」
ケケケと笑って流す彼に、相変わらず素直に褒められない人ね、とまもりは苦笑するばかり。
「そういえば」
部屋に戻り、ふと思い出したようにまもりが口にする。
「×××って何?」
それにヒル魔はぴんと片眉を上げ、次いでにまあ、と人の悪い笑みを浮かべた。
「実地で教えてやろう」
「・・・いえ、なんか悪い予感がするのでいいです」
「まあまあご遠慮ナサラズ」
「いやー! 何その手つき!! イヤー!!」
悲鳴を上げるまもりを、彼女にばかりは優しい腕が、持ち主の思惑とは裏腹に柔らかく捕らえたのだった。
***
ままま様リクエスト『鈴音とまもりが互いの恋愛話(のろけ)をする』でした。・・・惚気てないよ・・・!!
むしろ攻撃し合ってしまったのでタイトルもそうしてみました。
お互いの惚気話を書くつもりが、ヒル魔さんが出張ってしまってすみません。でも楽しかったです♪
×××には適当な言葉を思い浮かべて当てはめてください(笑)表では到底書けない言葉ばかりです。
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鳥(とり)
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女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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