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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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干渉を阻止せよ(上)

(狐の嫁入りシリーズ)

※30000HITお礼企画作品
※6/6アップ『朱炎』の続きです

+ + + + + + + + + +
※帝黒アレキサンダースの小泉花梨がとんでもなく酷い目に遭います。嫌な方はご遠慮ください。


まもりの元に『西』の天使の刺客が送られてきたという話は、妖怪たちが住む村に動揺をもたらした。
ヒル魔がどこぞへと出掛けた後、屋敷の庭には見慣れた面々が次々と顔を出した。
「まままもりさん! いざとなったら俺が助けうわぎゃ!!」
「てめぇに何ができるんだよ! 護衛は俺たちがやる!」
「そうだそうだ!」
「ぼ、僕も・・・」
話を聞くなりかけ付けたモン太の後に鎌鼬三兄弟、更にセナと続く。
この勢いでは他の面々も勢いづいて来てしまう。収拾がつかなくなる。
「ちょ、みんな、落ち着いて・・・」
おろおろするまもりに、雪光が立ちふさがった。
「はいはい皆さん、あまり勢いづいてこちらに来ると、身のためになりませんよ?」
笑顔の雪光ははっきり言ってくせ者なのだと誰もが知っているため、皆がたじろぐ。
「うっ」
「な、なんだよ身のためって!」
それでもわいわいと騒ぐ面子の一人、黒木が雨戸に手を掛けた。途端。
「ぐわっ!」
勢いよく雨戸が外側に開いて黒木を弾き飛ばしたのだ。
そんな風に開く形状ではないはずなのに。
「僕がこの屋敷にいる限り、外敵の侵入は許しませんから」
にっこりと笑う雪光に皆で顔を見合わせる。お倉坊主にそんな力があるなど聞いた事がない。
「ヒル魔さんがそういう風にこの屋敷を造ったんですよ」
だから雪光は住人に冨と名声をもたらすという効用の他に、屋敷全般を司るという能力を得ているのである。
「ハァ・・・じゃあ外からの攻撃は屋敷内にまもりさんがいる限りは問題ないんだな?」
「ええ。ただし、それでも僕では防ぎきれない時があります」
「え?」
「まもりさんの血に干渉されたときです。前回はヒル魔さん本人がすぐ原因を突き止めたので大事には至りませんでしたが」
雪光が瞳を眇める。
「まもりさん自身が血の干渉で外へと出てしまったりしたら、完全な防御は難しいでしょう」
「じゃあ、僕たちは屋敷周辺を警備したらいいんですね?」
セナの発言に、雪光は再び笑顔を浮かべて頷いた。
「そうです。相手側の目的はヒル魔さんが調べていますから、皆さんは陸・空の両方を十分に警戒してくださいね」
「はーい!」
「フゴ!」
「へいへい」
雪光の声に皆がすっと姿を消していく。その中を抜けて鈴音がまもりの近くに寄ってきた。
「やー? 大丈夫? まも姐」
「ええ」
昨日まもりは干渉を受けたが、それは一時的なものだったし、痣は程なく消えた。
雪光が言うには、敵はそう力の強い者ではなかったらしい。
もし力があればまもりが眠りで無防備になるのを待たなくてもよかったのだと。
逆に言えば敵が一人目の刺客を退けた事に警戒して、もっと強い刺客を送り込んでくるのは目に見えているということだ。
「まもりさん、ケルベロスを出してもらえますか?」
「え?」
まもりは首を傾げながらケルベロスを出した。ケルベロスはまもりの傍らにすり寄る。
「ケルベロス、ちょっとごめんね」
雪光が手にしていた紐を首に巻く。と。
「?!」
「やー?! ケルベロス、ちっちゃい!!」
ぼふんという効果音の後、まもりが見上げる程の大きさだったケルベロスは、まもりの両手に乗る程の大きさになっていた。
「まもりさん、普段はこのケルベロスを肩に載せておいてください」
「な、なんで?」
「普段ケルベロスはその筒に入ってますよね」
「ええ」
「でも、そのままだと気配が微弱すぎて追いづらいんです」
「へえ・・・」
「かといって外に出たままになっていると、ケルベロス自身の体力も弱まってしまいますし、大きくて敵にも警戒されますよね」
まもりは手のひらにケルベロスを招き入れる。小さなその姿でもケルベロスはそのままで、以前はこの子に銜えられたこともあったのに、と思うと不思議な感じだ。
「こういう形なら伝達役としても役立つでしょう」
「ごめんね、ケルベロス。落ち着くまでこうやっていてね」
まもりが語りかけると、ケルベロスはケン、と鳴いてまもりの肩に飛び乗った。毛玉が載るみたいでかわいい。
「一応全員にちゃんと警備の話をしておきましょうね。ここは『東』ですから、生半可なことじゃみんな負けはしないはずですけど・・・」
「やー! 私、みんなに伝えてくるよ!」
「じゃあお願いしようかな」
雪光が簡単なメモを渡して鈴音に伝言を頼んだ。
「鈴音ちゃん、ごめんね?」
「やー? なんで謝るの?」
「え・・・」
と、背後に慣れた気配。
「するなら感謝だろ」
ヒル魔の腕に抱かれて、まもりは一度瞬く。それから鈴音の顔を見て、まもりは笑った。
「ありがとう、鈴音ちゃん」
「やー!」
鈴音は嬉しげに二人を見て、すっと中空に姿を消した。

雪光は書庫へと戻り、二人は向かい合って湯飲みを傾けていた。
「なんで、私が狙われてるのかな・・・」
「調べてみた」
ヒル魔は『西』へと足を運んだらしい。また勝手に危険な事を、とまもりが怒ったが、そこはあっさりと流す。
「天使は人間との子を成す事はない、それが通説だな」
「ええ」
「ところがお前みたいなヤツは過去にもいた。それも相当数」
「そうなの?!」
「ああ。かなり昔、東西が別れる前の話だ」
「そ、そんなに昔? ヒル魔くんは知ってるの?」
「さすがに俺もその時は生まれてねぇよ」
御年千年を越えるヒル魔ならありそうだが、それよりももっともっと昔ならいつなのだろう。
「その時は混血種は女だけじゃなく男もいた。つまり、つがいが出来た」
「つがい・・・」
「そしてやがてそいつらの間にも子が出来た。・・・だが」
続くヒル魔の話を聞いて、まもりの顔が段々と強ばっていった。

遙か昔。
世界が東西に分かたれる前、世界には知的生物が天使と人と二種類しかなかった。
そして天と地に別れて生きていた彼らはそのままなら接点などないはずだった。
しかしどこにも好奇心旺盛な者がいて、互いに違う姿なのに手を伸ばしあってしまった。
異種族が少なく、禁忌などが今程になかった世界で、互いの血が混ざった混血種は天使程ではなくとも人間よりも賢く美しかった。しかしその血が周囲に与える影響が強いのはその当時からだったらしく、混血種は混血種だけの村を形成した。やがてその村で女が混血種同士の子を身ごもるのも、自然の流れだった。
だが。
その間に生まれた子は、ことごとく残忍な存在となった。
母親からの出産を待たず這い出ようとする赤子たちは、母親の腹を引き裂いて血の海に自ら落ちる。
産み育て、慈しむはずの子は母の血を啜り、その肉を食み、そして恐れを成して逃げまどう父であるはずの男たちに対しても強大な力をあからさまに示して次々と補食した。
それはまさに地獄絵図。むせかえる血の臭いと死の中で、子供たちは残酷に笑った。
そう。
その赤子たちこそが、魔物の始祖。全ての悪を凝縮したと言われる存在だった。
天使にとって混血種は魔物を生み出す温床でしかないというのがその時に初めて認識されたのだ。
以来天使は自らの血が混ざった魔物たちとの戦いを長く続けるようになる。
そうして疲弊した世界は、突然巻き起こった天変地異によって二つに分かたれる事になる。
それは大地震であったとも、大洪水であったとも、様々に言われているが定かではない。
ただ一つ、東西を分断する不可思議な力の線があり、そこを境にそれぞれの生まれた土地以外では力を発揮できないという制約がまといついたのだけが事実として今も残っている。
東側にはどういう訳か天使の力は介在せず、そこに元よりいた人間や獣、物が年を経て妖怪などに変化したため、東西の生命は全く別の存在となった。

「・・・じゃあ、私・・・」
まもりは己が狙われる理由を知って、愕然とする。単に魔物にはエサとして認識されることや、人間には影響が強すぎて害にしかならない存在、ということだけではなかったのか。
「私・・・生まれて来ちゃ、いけなかったの・・・?」
父と母が愛し合って産まれた自分を、そんな風に言うなんていけないことだ、とずっと言い聞かせていたのに。
まもりの瞳が涙に歪むのを、ヒル魔は抱き寄せ舐め取る。
「テメェは俺の嫁だ。そんなこと言うな」
「だって・・・!」
もし子供が出来たとして。それが愛し慈しめる存在かどうか。
生まれて初めて己が忌まわしい存在なのだと、自分もそういう立場になりうるのだと認識してまもりはがくりと頭を垂れる。だから天使は『東』にまもりがいることを知って始末しに来たのだろう。
「仮に俺たちの間に子供が出来たとして。それが魔物にはならねぇよ」
「・・・可能性としては、高いでしょう」
なぜそんな風に言い切れるのか。まもりは訝しげにヒル魔を腕の中から見上げる。
「忘れたのか? 俺は『東』の狐の妖怪だぞ?」
「それくらいは覚えてます!」
「だから『西』の影響はねぇ」
人間とは契れない身体の混血児。相手は天使か同じ混血児のみに限られていた。
そのどちらでもないヒル魔が相手であれば、それは範疇外だと言い切るのだ。
「何を根拠に?」
「もしテメェから魔物が生まれる危険性があったら、お前は境界線を渡れねぇよ」
基本は互いの干渉を許さないあの東西を分ける境界線。
力のないまもりは自分が拒まれる可能性を考えていなかったが、そういうこともありえたのだ。
「それにここで生活していても『西』の魔物の襲撃はねぇだろ?」
「そう・・・ね・・・」
結界を張っているわけでもない屋敷は、雪光のおかげで警備こそ強固だが、『西』の襲撃はなかった。
まもりを補食したら能力が上がると判っていても、魔物の力が無効化される『東』だから手出しできない。
だからこそ天使はまもりの血に干渉するという面倒な手を使ってきたのだ。
「納得したか?」
「うん」
柔らかくまもりの髪を梳くヒル魔に、まもりはふと呟く。
「・・・私、子供産めるのかな?」
ぴた、とヒル魔の動きが止まった。見上げるとヒル魔がにやにやと笑っている。
「欲しいのか?」
「・・・わからない」
正直にまもりは答える。することはしているのだから、いつ身ごもってもおかしくないとは思うのだけれど。
ヒル魔は喉で笑いながらまもりの頬を舐める。
「まあ、そのうちにな」
その楽しげな響きに、まもりも肩をすくめ、笑って頷いた。

しばらくはまもりの周囲もぴりぴりしていたが、しばらく敵襲もなく、日を追うごとになんとなく警備もおろそかになってきた。
「糞っ、使えねぇ奴らだ」
「そんな・・・もしかしたら前回ので諦めたのかもよ?」
苛立つヒル魔に、まもりは苦笑して宥める。あの一度きりで済んだのなら幸いだと思うだけだ。
「糞甘ェな、まもり」
「っ」
その首筋にヒル魔が鼻先を埋める。
そこに僅かに漂う『西』の気配がどうにも抜けきれないのだとヒル魔は内心舌打ちする。
まもり自身が『西』の出身なので匂い自体が独特なのだが、それを助長するようなものが前回以来残ってしまっている。
それが気にくわない。いずれ次があると警告するようで。
「大丈夫よ」
それこそ根拠のない自信たっぷりの笑顔で、まもりは笑った。
だが。
「――――ヒル魔! 逃げろ!!」
唐突に切羽詰まったムサシの声が響いて、戸板がはじけ飛んだ。
屈強な身体が畳に投げ出され、ぴくりとも動かなくなる。
「ムサシさん!?」
「まもり、こっちに来い!!」
倒れたムサシに駆け寄ろうとしたまもりは、屋敷の外の光景に目を瞠る。
そこには仲間たちが倒れているのだ。そして身じろぎもしない。
呆然として固まるまもりの身体を、ヒル魔が強引に抱き寄せる。
同時に雪光が現れて、どこに隠してあったのか夥しい量の刀を指先一つで操る。
「お逃げ下さい!」
「ちょっ・・・」
まもりを抱えてヒル魔は反対側から外に飛び出す。
雪光が睨みつける先には、たおやかとも表現できそうな美しい女が一人きりで立っていた。
それは穏やかな笑みさえ浮かべ、雪光が操った刃を全て弾き飛ばした。
彼女自身はなにもしないままに。さらりと長い金髪を一つに編んだ姿はたじろぎもしない。
「な―――」
「私には、そないなもの効きまへん」
そして衝撃波。どういった仕組みか知らないが、雪光は咄嗟に立てた畳を壁にして避ける。
「・・・ッ」
「あら、少しは使えはるのね」
西独特の発音に彼女が間違いなく天使なのだと知って、雪光は苦々しい顔になる。
まさかこんな女が来るとは。
肉弾戦を期待していたが、倒れるムサシや他の者たちを見ても外傷はなく、彼女はその手の力で戦いに来たようではない。
せめて多少の時間稼ぎをして、弱点の一つも掴めれば。
再び刀を浮かせた雪光に、彼女はにっこりと笑った。
邪気のない、本当の天使の笑みを。
「でも、もう終わりや?」 

<続>
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