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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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megane.jpg『against the wind』のヤメピさんから30000HITの御祝いにいただきましたー!!目にした瞬間大笑いして椅子から落ちましたよ!! あーはははは!!(まだ笑う)
『もうスゲーやな医者ができました。「どうなさいました?」じゃなくて多分「どうしてほしい?」って聞かれる(ガタブル)「医師としてあるまじきオーラが出てますよ。」って突っ込めるのはまもちゃんだけです。おそらく。
メガネっていうだけのリクエストだったのにえらいお待たせしちゃって申し訳なかったッス。』(メールより)
ということだったんですが、いやもう!メガネっていうアイテムがこんなに邪悪に使用されるなんて夢にも・・・!(笑いすぎて涙) ああんもうヤメピさんありがとうございましたー!! ラヴ!!

このイラストを元にしたSSがありますw『つづきはこちら』からどうぞ!
 

+ + + + + + + + + +
まもりが無事看護師として働き始めて二年が経過した。
やっと最近はちゃんと仕事に着いて行けている、という自覚が芽生えてきた。
それまでは頑張っていても空回っていたり、どうにも経験不足で苛立つ患者やその家族に対応できない事が多々あって、何度も涙を隠れて零したものだ。
今日は新しい医師がやってくるというので、皆浮き足立っている。
まもりがいる病院は、総合病院だが規模としては中くらいと評価される。
それでも外科や内科の他に小児科が強いことで有名なのだ。
まもりが所属するのは小児科。新卒の医者や大学からの天下りの老医師ではなく、なんとわざわざアメリカの最前線で活躍している小児科専門の医師を招くというのだから驚きだ。
まもりは鼻歌を歌いながら出勤した。
かなり時間は早いが、早めに来て余裕を持って準備をして患者と顔を合わせたいという職員が多い。
そういった風潮がある病院なので、自然と出勤時間が早くなる。
まもりは下ろしていた髪を上げ、ピンク色のナース服に着替え、靴を履き替える。
そして夜勤の者たちと交代しようとナースステーションに顔を出し、その異様な雰囲気に飲まれてしまった。
「・・・あの、おはようございます・・・」
「あら、おはよう」
まもりがこっそりと声を掛けたのは、乙姫という二つ年上の先輩看護師だ。
仕事も出来るし優しい笑顔が子供たちにも人気の綺麗な女性である。
「どうかしたんですか? この雰囲気・・・」
「それがねぇ・・・」
乙姫が説明しようとした次の瞬間。
「なんなんですかその格好!? そんな格好じゃ子供の前に出て、泣かれますよ?!」
「格好云々じゃねぇ、腕の話だろ。煩ェぞ糞パピー」
「なっ・・・!」
ナースステーション隣の医局から響いてきたのは筧という医師と聞き慣れないもう一人の声。
もしや彼が新任の医師、だろうか。
「新しい先生がお見えになったの。でも・・・なんていうか・・・ねぇ・・・」
優しいが言いたい事は言う乙姫が珍しく言いよどむ。
「ああもう!」
がらっと引き戸を開いて、怒り心頭な筧が出てくる。
看護師たちが不安そうな視線を向けるが、筧は口を開き掛けて・・・そのまま席を外してしまった。
「あーあ、夜勤明けの引継はちゃんとできたのかしらねぇ?」
「どうでしょうね・・・」
「とりあえずこっちの引継、いい?」
「あっ、はい! お願いします!」
まもりは乙姫から引継され、自分のメモと合わせながら注意事項をチェックしていく。
「じゃあ新規入院は増えなかったんですね」
「ええ。緊急は昨日三件あったけど、全部様子見で帰せたわ」
自分への引継を終えたとき、ふとまもりは開きっぱなしの医局の扉が気になった。
先ほど筧が出て行ってもその後追うのでもなく戸を閉めることすらせず新任の医師はその場に留まっているのか。どんな風変わりな男なのだろう。
「? どこ行くの?」
「扉、閉めようかと」
まもりは扉を閉めるついでにその顔を見ようと思ったのだ。運が良ければ横顔くらいは見られるだろう、と。
そして引き戸に近づいたまもりは、思わず手に持っていた資料を取り落としてしまった。
「ア?」
その目の前に、男は立っていた。
扉を閉めに来たのか、それとも筧を追うためか。
そのあまりに風変わりな格好に、まもりは筧先生も怒るわそりゃ、と納得もしていた。
何しろ金髪を逆立てて耳にはリングのピアスが二個ずつ、計四つ。更に目も口もつり上がっていて、かけられた眼鏡がより一層近寄りがたい雰囲気を醸し出している。
上下黒一色で、白衣を纏っていなければ間違いなく犯罪者だ。
「・・・丁度いい、テメェコーヒー淹れろ」
「っは?!」
「ここのコーヒーメーカーの使い方が判らねぇんだよ」
「あ、はい」
その声にまもりは何も考えず医局に入ってコーヒーをセットした。
「ここに豆があって、ここの箱にお茶菓子なんかが入ってます。冷蔵庫はナースと共有ですから名前書かないと食べられちゃいます」
「ホー」
「・・・あの、今日からお見えになるヒル魔先生ですか?」
「オー。テメェは姉崎まもりだな」
「!」
まもりは名乗る前に言われて目を見開いた。なんで知っているのだろうか。
「さっき職員録を見た」
種明かしにまもりはほっと息をついた。
「今日の日勤は誰が?」
「私と若菜さん、相内さん、沢井さん、渋谷さんの五人です」
「ほー・・・やっぱり少ねぇな」
ヒル魔はぺらぺらとカルテを捲っている。
使用する机は昨日誰かが掃除していたようだから、彼が来るまでは綺麗だったはずなのだが。
「・・・なんで机がもう埋まってるんでしょうか」
その机は既に様々な書類や資料などで埋没していた。
「ア? 医者の机なんてそんなもんだろ」
「そんなことないです! ホラ、筧先生の机だって!」
綺麗に整頓された机にヒル魔は軽く鼻を鳴らしただけだ。
「だから糞パピーなんだよ」
「パピーって、子犬のことですか?」
「おー」
筧先生は小児科医として既に六年のキャリアがある。
どうみても目の前の彼と同じような年だし、キャリアとしては申し分ない気がするのだが。
「あんな糞甘いんじゃ糞ガキどもに注射の一つもろくにできねぇんだろ」
「そんなことないですってば!」
「とりあえずテメェは今日俺について回れ」
「はぁ?!」
「俺はまだ不案内だからな」
「それだって他の先生、そうよ筧先生とか・・・赤羽先生とかにお聞きになった方が・・・」
医師同士の話だってあるだろうに、と言いつのるまもりにヒル魔はにやりと笑う。
「点滴入れるのでも経過見るのでも医師二人で並んで行くのは糞面倒臭ェ」
「な・・・」
あまりの言いぐさにまもりは呆れてしまう。
けれど逆にここまで自信満々なのなら言うだけの事はあるのだろう。
まもりはそれでも苦々しい表情を浮かべ、頷く。
「でも! 子供には悪い事しないで下さいよ!」
「・・・テメェ、俺が小児科医だと判っていてその台詞か」
舌打ちされ、まもりはそういえばそうだった、と気が付いたのだがもう言葉は取り戻せない。
「じゃ、じゃあ後で伺います!」
慌ててタイミング良く落ち終わったコーヒーを注ぎ、彼に渡してまもりは医局から頭を下げて出て行った。
ヒル魔は受け取ったコーヒーに口を付け、その後にやりと笑った。
 
「・・・というわけで今日からこちらで一緒に働く事になった蛭魔妖一先生だ」
やっぱり奇抜な外見で唖然とする全員を横目に、ヒル魔はにたりと笑って口を開く。
「基本糞ガキどもはさっさと家に帰す方針で動くからな」
挨拶も自己紹介も何もすっ飛ばして第一声がそれ。
まもりは既に一度見たから大して驚かなかったが、他の面々はあんぐりと口を開いてまさに二の句が継げない状態だった。
「~~~ヒル魔先生ッ!! 何言ってるんですかッ?!」
「煩ェって糞パピー」
「誰がパピーですか!!」
噛みつく筧に、思わず皆が苦笑する。
確かにどうかと思う言葉遣いに外見、それに突っ込めるのは生真面目な筧くらいだろう。 

入院患者の朝食が終わった後、雑務を片づけていたらまもりの元にヒル魔がやってくきた。
「おい、姉崎。点滴入れるから着いてこい」
「はい」
「え? 姉崎君がつくのか?」
「はい、先ほどお話しがありましたので」
筧は微妙な顔をしていたが、ヒル魔が早くとせかすので渋々道を譲った。まもりがその後をついて行く。
「これで全部か?」
「半分は赤羽先生が入れられます。先ほど行かれました」
「ホー」
まもりは点滴の乗ったカートを押しながらヒル魔の隣を歩く。背はまもりより一五センチほど差があるだろうか。見た目は普通に歩く彼だが、足音がしないのが妙に気になる。
「あの・・・足音、しないんですね」
「ア? させようと思えばするぞ」
「なんですか、それ」
そんな事を口にしつつ、二人は六人部屋の扉を開いた。
「点滴でーす」
「あーっ、まもりちゃんだ!」
「まもりちゃん、このご本読んで!」
「駄目だよ、先に俺の折り紙折ってくれるんだよな?」
「やーっ、私とお喋りするのーっ!」
わいわいと賑やかな子供たちの群れに、まもりは自然と笑顔になる。
この病室の子たちは退院も間近なだけあって元気な子が多い。
それでもまだ点滴や注射が必要な子もいるので、こうやって回るのだ。
「オラ糞ガキども、さっさとすませるぞ!」
「・・・っ、な、悪魔!?」
「悪魔だーっ!」
「あくま!!」
ヒル魔の姿を見て、子供たちはごく素直に悪魔と叫んだ。
やっぱそう見えるわよね、とまもりも思ったがそれに乗っかる勇気はない。
彼はそう言われても平然とし、むしろにやりと笑って見せた。
「おー、俺は悪魔先生だからナァ? 大人しく点滴させねぇと・・・スゲェ事になるぞ?」
「っ・・・」
子供たちがぴたりと黙りこくる。なんだろう、凄い事って。
その隙にヒル魔がベッドに近寄って顔を覗き込んだ。
「串田伸征な。お前退院までイイコにしてるって母親と約束してんだろ?」
「えっ」
「後少しの我慢なんだから、あんまりワガママ言って困らせんな。男だろ?」
「うん・・・」
「ホレ腕出せ」
手際よくヒル魔は子供に点滴をする。子供はあまり痛がりもせず、きょとんとヒル魔を見上げている。
「よし、やれば出来るな」
ぐしゃぐしゃと頭をなで回し、ヒル魔は次の子へと移動する。
やはり間違えずフルネームとつい昨日聞き取ったばかりの情報を口にして処置をしていく。
それがあまりに手際よかったので、まもりは驚きながらヒル魔の動きをサポートする。
「じゃあまた午後に顔出すからな」
「あっ、せ、先生の名前ってなんて言うの?!」
子供が慌てて問いかける。
確かに名乗ってなかったし悪魔先生ではあんまりだと子供心に思ったのだろうか。
「ヒル魔、だ」
「ヒル魔先生! 覚えた!」
「ヒル魔先生ね!」
きゃいきゃいと騒ぐ子供たちは、またねー、と手を振ってヒル魔たちを見送った。
先ほどまでまもりにべったり、という雰囲気だったのにあっという間に子供の心を掴んでしまった。
特に長期入院の子は治療に辟易して協力的ではなく、なかなか処置ができなかったりするのに、ヒル魔はそれさえ鮮やかに進めていく。
「オイ、これで終わりか?」
「え? ・・・はい、点滴はこれで終わりです」
気が付けば普段の三分の二程の時間で処置が終わっていた。
「おー。じゃあ院内の案内しろ」
「わかりました!」
まもりはカートを戻し、ナースステーションに顔を出してヒル魔を案内してくる旨を告げる。
「え? もう処置終わったの?」
「早ッ!」
驚く皆にそうよね、という一言だけ残し、まもりは再びヒル魔の元に戻る。
「病棟の一番上が特別室、その他は病室が続いていて、別棟には・・・」
「あー、いい。そういうことじゃねぇ。食堂の飯の何が旨いか、どこだとさぼれるとかそういったこと教えろ」
「・・・そ、そんなこと?」
「科の配置だとか職員の配置だとかっつーのは資料で覚えた。後は資料にないところが知りたい」
覚えた? 仮にも総合病院で二百人を超すスタッフが働く配置を全部?
「配置を全部?! すごい!」
そう叫んだまもりに、ヒル魔は胡乱げな視線を寄越す。
「あのな、俺は小児科医だ。小児科っつーのはいろんな部署の手助けなしに出来る現場じゃねぇのはテメェだって判るだろうが」
「え、ええ」
「新任だろうがベテランだろうが医者としてここに来た以上最低限の事だ」
「・・・はぁ・・・」
まもりはただ感心というか、呆れるというか、とにかくこの人は―――医者はおおむねそうではあるけど―――見た目通り人外みたいだわ、という認識を新たに彼が望むような情報を告げる。
「あの階段からこの棟の屋上に出られます。煙草吸う人はそちらによく行かれます」
「誰が吸うか、あんな毒物」
「意外、吸いそうなのに」
「吸わねぇよ」
「後、購買は一階にあるけど、品揃えは購買のおばちゃんに一任されているので目新しいモノは入らないわ」
「あー、そんな感じだったな。そりゃどこも一緒だろ」
「食堂は日替わり定食が人気で、うどんも美味しいわ。蕎麦はお勧めできないけど」
「ホー」
まもりは次々と案内するうちに、敬語を忘れていた事に気づく。
「ア? どうした」
「・・・いえ、なんでもありません」
「アァ? なんで急に堅苦しくなってんだよ」
「いやいやいや! なんでって言うかですね、本来は敬語じゃないと! ホラ、患者さんにも示しが・・・」
焦るまもりに、そんなもんかよ、とヒル魔は肩をすくめる。
そういえばこの人はアメリカ帰りで敬語云々はあんまり関係ないところで働いてたのかな、と気づく。
けれどここは日本、あんまり軽率な喋り方はいけないと思うのだ。
一通り案内を終えて、まもりはナースステーションに、ヒル魔は医局に戻る。
「ねえねえ! ヒル魔先生ってどうだった!?」
「処置早かったけど、何? 脅したの!?」
途端まもりを取り囲んだのは相内と渋谷。
二人ともまもりとそう年も変わらず、きらびやかな外見で恋の話が大好きなのだ。
「うーん・・・とりあえず脅しはなかったし、手際も凄くよかったよ」
「へぇ? やっぱりアメリカで働いてただけあるのかな?」
「見た限りではちゃんとカルテも読んでるし、子供ウケも良かったわ」
「ふーん・・・意外だけど、そうなんだ~」
二人が騒ぐのを横目に、まもりはメモを参考に報告書を書きだした。


ヒル魔が来てから二週間。
夜勤をこなして日勤に入るという勤務医独特の過酷なタイムスケジュールでも彼は平然と過ごしていた。
「ヒル魔先生、体力あるんですね」
「まーな」
彼は入院患者のリストをこの二週間で五人分減らした。当初の宣言通りである。
それは決して床不足で追い出す形ではなく、ちゃんと経過を見た上での流れだった。
タイミングがあったとはいえ、とんでもない数だと言える。
彼の仕事ぶり、そして子供からの信頼に筧もすっかり口を出せなくなったようだ。
まもりがヒル魔を見つけたのはエレベーターの前だった。
「あら、ヒル魔先生、これからお昼ですか?」
「おー」
まもりも手にしているファイルを総務に返し終えたら昼休みだ。
他の看護師たちとは時間がずれてしまったのでまもりは一人だった。
ご一緒してもいいですか、と問えばヒル魔はドーゾ、と軽く応じる。
看護師の大半は彼の外見と口調を怖がって彼と必要以上に話さないが、まもりは最初から言葉を交わしたせいかあまり気にならない。・・・時折あまりに口汚いので怒る事もあるけれど。
エレベーターに乗って総務と食堂がある二階へ。
「それにしても敬語、糞面倒臭ェな」
「保護者の方には最低限使って下さいよ。私たちには気にしなくていいですけど」
「だったらテメェも俺に使うのはやめろ」
「駄目です! 私はこの格好だと先生にタメ口聞いた駄目ナースなんて言われちゃうんですから!」
「じゃあ・・・」
そこまで言いかけて、二人は廊下に漂う異様な雰囲気に足を止めた。
「来るな! こここコイツを殺すぞ!!」
「止めて下さい!」
見れば総務課の前で中年の男が刃物を持って暴れている。しかもどこぞの階の看護師を人質に取っていた。
「大変ッ!」
焦るまもりを手で制し、ヒル魔はすたすたと刃物男に近寄った。
「なんだテメェ?! 医者か!? そんなナリで!!」
「おー。一応医者だな」
「テメェもあいつらと同じだ!! ろくな治療しやがらねぇで金ばっかり請求しやがる!! 良くなるどころか悪くなる一方で・・・」
ぐい、と看護師の首元に刃物を当てようとする男に、ヒル魔はにやりと笑うだけだ。
「何笑ってやがる!!」
「いや、そのカバーが掛かった刃物で何やるのかと思ってナァ」
「えっ?!」
男が一瞬止まって刃物を確認した隙に、看護師がその緩んだ腕から抜け出して後ずさる。
その場にいた警備員が看護師を助け出したが、男は刃物を自らの首に当てた。
「巫山戯んじゃねぇ!! カバーなんて掛かってねぇじゃねぇか!!」
「アーすまねぇな、この通り目が悪くて」
「馬鹿にしやがって!! どいつもこいつも俺を馬鹿にして!! 死んでやる!!」
興奮状態の男は刃物をしっかりと自分の首の、後少しでも腕が動けば頸動脈を切る位置に据えた。
「ムシケラみてぇな自分が死ぬより、俺みたいな医者を殺した方がいいんじゃねぇのか?」
「ちょ、ヒル魔先生!」
後ろからまもりが声を掛ける。だがヒル魔は振り向かず、男を挑発するばかり。
「テッメェ!!」
怒りに燃えた男の手が首筋からヒル魔へと刃物を向けた。次の瞬間。
「イテーッ!!」
刃物男の頭に何かが豪速で投げられた。
それは眉間に見事ぶつかり、男は刃物を投げ出し、たまらずその場にひっくり返る。
警備員がすかさず男を取り押さえる。
あっという間に三人がかりで取り押さえられた男はまだ痛みに呻いている。
「俺に刃物向けるなんざ百万年早ェ」
「医者としてあるまじきオーラが出てますけど・・・」
ケ、と唇を歪ませるヒル魔に、まもりは思わず突っ込んでしまう。
「何を投げたんですか?」
「コレ」
見ればそれは空の薬瓶。白衣のポケットに仕込んでいたらしい。
小さなそれは当たれば相当痛いだろう。見事なコントロールにまもりは感心していいのか呆れていいのか。
「野球とかやってたんですか?」
「いいや、アメフト」
「アメフト?! へえ、アメフトやってたんですか! 私の弟が高校生でアメフトやってるんです」
「姉崎瀬那、泥門高校で光速のRBっつー大層なあだ名がついてやがるな」
「?! 知って・・・!?」
ケケケと笑うヒル魔は、ファイルを早く戻してこい、昼飯だと言う。
それにまもりは我に返って慌ててファイルを総務課へと渡した。
警察に突き出すのに事情説明を求められるかも、という警備員の言葉に面倒だからお前が捕まえた事にしておけ、と無茶な事を言って立ち去るヒル魔に、まもりは小走りで追いつく。
「ヒル魔先生って何でも知ってるんですね」
「おー」
「あ! そういえば、さっきなんて言おうとなさってたんですか?」
「アー」
ヒル魔はにやりとまもりに笑いかける。何か悪巧みをしているような、そんな顔。
「その格好だと敬語が抜けないっつーなら、私服ならいいわけだな?」
「は?」
「今度の金曜の夜、空けておけよ」
「ええ?!」
驚き止まるまもりを置いて、ヒル魔はさっさと食堂へと向かってしまう。
まもりはしばし固まっていたが、ぐう、と自己主張をする腹の虫に我に返り、慌てて後に続いたのだった。 

腹が減っては戦が出来ぬ。
とりあえず食べられるときに食べなきゃ看護師はやってられないのよ。

***
ヤメピさんリクエスト『医者ヒル魔とナースまもり』でしたw丁度お互い30000HIT&20000HITだったので、ヤメピさんが下さるイラストを見てから浮かんだSSを捧げるというお約束でした。
どの医者という指定がなかったので、ここは思いっきり違和感のある小児科に行ってもらいました(大笑)このイラストを拝見した瞬間から小児科医なのは確定です。中身はなんだか人物説明に終始しているような気もしましたが、すごく楽しく書けました♪
リクエストありがとうございましたー!!

ヤメピ様20000HITおめでとうございますw
このSSはお約束通り20000HIT御祝いとして捧げます♪

なお、管理人は医療現場で働いていませんので、齟齬がありましたら創作という事でご容赦下さいませ。
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