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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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遍く美しき世界

(ヒルまも+α)
※30000HIT御礼企画作品
※ヒルまも一家『ようこそ、我が世界へ』の設定を引いてます

+ + + + + + + + + +
黒木の調子が悪いと最初に気が付いたのは戸叶や十文字ではなく、セナだった。
「黒木くん、調子悪い?」
「ハ?」
「ハァ?」
不審そうな戸叶と十文字を余所に、黒木はちょっと笑った。
ちょっと、というところがポイントだ。
「・・・最近、寝不足で。夜、女が上に乗ってくるんだよォ」
少々の沈黙が落ちる。
次いで戸叶がジャンプで、十文字が教科書でそれぞれ黒木の後頭部を叩いた。
「いってぇえええ!」
「ふざけんな、ノロケか」
「どこで引っかけた女だ?」
じとっとした視線を受けて黒木は不思議そうに首を傾げ、それから言わんとする事を理解して目を見開いた。
「違っげーよォ! あのな、俺の上に女が!!」
「そりゃ聞いた! だったら下にしてヤれ!」
「そーだそーだ、女ばっかり疲れさせるな!」
三人のシモネタ満載の会話についていけないセナが困ったように首を傾げる。
「女の人が乗ってくるの?」
「そうだよォ。なんで俺の所に化けて出てくるか知らねぇし」
「ハ? 化けて?」
「ハァ? ・・・幽霊?」
「この一週間、夜寝てると俺の上に透けた女が覆い被さってるんだよォ!」
最初夢かと思ったけど、毎晩だし本当に困る、という黒木の説明を聞いて、セナと十文字、戸叶の三人は顔を見合わせる。
「それ、誰だか判らないの?」
「見た事はあるような気がするんだけどよォ」
「お? どうしたよみんな」
「フゴ?」
そして通りかかったモン太と小結がそこに顔を出し。どうしようかと相談していたら、そこに瀧も現れた。
「アハーハー! だったらムッシューヒル魔に聞いてみたらどうだい?!」
「・・・そうしよっか」
他に具体的な解決策を見いだせなかった一年生たちは、揃って部室へと足を向けた。
テスト期間中につき部活停止期間なのだが、相変わらずヒル魔は部室に入り浸っていた。
そこに一年生たちが雁首揃えてやってくる。
わあわあと要領を得ない説明をいきなり聞かされて、ヒル魔は噛みついた。
「なんで俺の所にそういう話を持って来やがる!」
「ヒル魔さんなら悪魔的な何かで解決・・・スミマセンゴメンナサイ!!」
ガチャリ、と目の前に銃口を出されてセナは首をすくめる。
黒木は憔悴したような顔で黙りこくっていた。
その様子は確かにおかしい。
しかしヒル魔は少し眸を眇めて見ただけで、それなら糞デブに話を持っていくべきだろう、と言った。
「あ、そうか」
「栗田さんはご自宅お寺ですもんね!」
わいわいと活路を見いだす一年生たちに、ヒル魔は鼻を鳴らす。
「話が決まったならさっさと出て行け!」
その後一年生たちは夥しい銃弾に見舞われ、揃って部室を後にした。
「幽霊か・・・」
ヒル魔と同様に部室にいたまもりがコーヒーを片手にヒル魔の傍らにやってくる。
「ヒル魔くん、何か心当たりあるんじゃないの?」
「ア?」
何を根拠に、と言うヒル魔に、まもりは瞳を瞬かせる。
「だって普段なら『そんなの気のせいだ』って言うでしょ。あとは病院に行け、かな」
それなのに、ヒル魔は栗田への相談を促した。
それは黒木の周囲に不穏な空気を読み取ったからではないか。
「ね、調べてみない?」
「アァ?」
胡乱げな顔をしたヒル魔に、まもりは笑みを深める。
「どうせ今週はテスト期間で練習できないんだし。ヒル魔くん、わざわざテスト勉強なんてしないでしょ?」
「オヤオヤ、ドウナサイマシタ、糞優等生?」
「たまにはいいじゃない?」
にこにこと笑うまもりに、ヒル魔は少々考えてからおもむろににやりと笑った。
「報酬はなんだ?」
「え? 黒木君の安眠よ。ひいてはライン組の戦力低下防止」
「個人的な報酬がなけりゃやる気出ねぇナァ」
ケケケと笑うヒル魔に、まもりは私の依頼でもないのにと膨れたが、少ししてからふいに笑った。
「いいわ。じゃあテスト期間中、お弁当作って来てあげるっていうのはどう?」
「ア・・・?」
「ヒル魔くん、部活がないとろくなもの食べそうにないんだもの」
「なんだその偏見は」
「料理の腕にはちょっと自信があるの」
だからそれで手を打たない? と笑いかけられ、ヒル魔は少し考えたが黙って右手を挙げた。
「交渉成立ね!」
ぱちん、とそれに己の手を打ち合わせ、まもりは嬉しそうに笑った。

「さて、詳しい話を黒木君から聞いてみないとね」
改めて話を聞くために携帯を取りだしたまもりにヒル魔はひらひらと手を振る。
「必要ねぇ」
「え?」
ヒル魔は立ち上がり、部室を後にする。
慌ててついて行くまもりの視界に、校門に止まるパトカーの姿。
「何? 何かあったのかしら」
「呼んだ」
「は?」
スタスタと歩み寄り、その後部座席に遠慮無く座るヒル魔に、まもりも引き込まれる。
「ちょ、外聞悪い!!」
「コレが一番早いんだよ。オイ、中央図書館まで」
「ハイ・・・」
間違いなく本物の警察官が引きつりながらタクシーよろしくエンジンを吹かした。

まもりがきゃんきゃん吠えかかるのを無視しながら、ヒル魔は中央図書館のカウンターに向かった。
「一週間前の新聞全紙と去年度の楊木中の卒業アルバム出せ」
「ちょっと! 銃口向けなくてもいいでしょ!」
「はっ、はいぃいいいい!!」
職員が悲鳴を上げてすっ飛んで行く。
程なく目的の新聞は積み上げられ、卒業アルバムは急ぎ用意しますと言われる。
「普通、図書館に卒業アルバムなんてあるの?」
「サアネ」
多分無いはずだが、どういった経路で入手させるのだろう。
・・・愚問か。きっと脅迫手帳が物を言うに決まってる。
「糞マネ、地方の事故欄で糞二男と似通った年の女を探せ」
ヒル魔もパソコンを立ち上げる。
しばしの沈黙の後、まもりは該当しそうな少女の名を三人挙げた。
書き出されたそれと、届いた楊木中の卒業アルバムとを照らし合わせる。
「・・・あ! いた!!」
その中で一人だけ名前が合致した子がいた。交通事故で重傷とある。
岡安美優という子。線の細い、大人しそうな子だ。
「ほら、ヒル魔くん、この子!」
「ホー?」
ヒル魔はその情報を元にネットから目的の情報を探し出す。それは程なく見つかった。
「よし、糞デブのところで糞二男拾って病院に行くぞ」
「は? 病院?」
「そいつ、まだ死んでねぇ。市立病院に入院してる」
「じゃあ、そこに黒木くん連れて行けば解決するのね!?」
「サアネ」
そりゃ判らん、と肩をすくめつつ、ヒル魔はスタスタと歩いていく。
まもりは借りた資料を全てカウンターにちゃんと戻し、引きつる職員に頭を下げて彼の後を追った。

所変わってここは孟蓮宗。相談を受けた栗田はしゅんとする。
「うーん・・・ごめんね、僕には何もわからないよ」
「・・・そうですか」
眉を寄せて謝る栗田に、一年生たちも目に見えて落ち込んだ。
「フゴ・・・」
「いやいや! 本当は僕でもなんとかできればいいんだけど・・・」
小結と会話する栗田を見ながら、全員どうしようかと頭を付き合わせる。
「何か言いたい事があるから出てきてるとかじゃねぇの?」
「誰だか判らねぇのか、黒木?」
「んー・・・判らねぇ!」
「何か言ってるとか?」
「いーや、何も言わないし上にホント乗ってるだけなんだって」
「うーん・・・」
頼りにならない黒木の台詞に、皆が首を傾げていたら門の外に鳴り響くサイレンの音。
救急車だ。しかもこの門の前に来てぴたりとサイレンが止まる。
「なっ、だ、誰か倒れたの?!」
目を見開く栗田が慌てて入り口に向かうと、そこには悠然と立つヒル魔の姿があった。
「ヒル魔、入院するの!?」
「ア? 違っげぇよ、糞デブ! オイ糞二男、こっちに来い」
「ハァアア?!」
「多分だけど、上に載ってくるっていう女の子の正体がわかったのよ」
ヒル魔の後ろから顔を出したまもりに腕を掴まれる。すると一年生たちも置いていくなとばかり揃って着いてきた。ちなみに栗田は重量オーバーで皆を見送るに留まった。救急車にめいっぱい詰め込まれた体勢の一年生たちはこんな風に救急車に乗るなんて想像つかなかったね、と笑うしかない。
程なく救急車は病院に滑り込んだ。
救急車から降りてくる、患者ではなく高校生の群れに病院のスタッフは皆目を丸くするが、外野には構わずヒル魔はスタスタと歩き、病室へと向かう。
「どの病室か判ってるの?」
「当然」
「どうやってそういうの判るのかしら・・・」
怪しむまもりだが、だがヒル魔だし、という言葉が全ての免罪符になって何となく納得してしまうのも事実。
エレベーターに乗り、五階へ。
「ここだ」
そこにはネームプレートで『岡安』とある。
遠慮無く扉を開くと、そこにいた女性が飛び上がって叫んだ。
「な、なんですかあなた達?!」
おそらく母親だろう。写真と同じように細い線の女の子が横たわっていた。
あちこちから覗く包帯と幾つも垂れ下がる点滴が痛々しい風情だ。
「おい、糞二男。こいつだろ」
「待てよォ。・・・あっ」
遅れてやって来た黒木が顔を覗き込むと、それはまさしく『上に乗ってきている』女だった。
「そうそう、この子! この子だよ!」
「ハ? 中学の同クラの岡安じゃねぇか」
「ハァ? ・・・そういやそうだ」
十文字と戸叶は知っていたようで、三人してまじまじと彼女の顔を見てしまう。
「なんなんですか?! 警察を呼びますよ!?」
無視されて怒る母親に、セナとまもりが慌てて頭を下げる。
「す、すみません! こんなにたくさんで来てしまって!」
「すみません! 彼ら三人は美優さんと同じ中学出身で、入院したって聞いてお見舞いに来たんです!」
「え・・・」
呆然とする母親の前で、ヒル魔が黒木に耳打ちする。
「ハァアア? そんなことで?」
「いいからやれ」
ここは病院ですよお静かに、と騒ぎを聞きつけた看護師がやって来た。
その目の前で、黒木が恐る恐る彼女の手を握る。・・・と。
「・・・え」
彼女がふっと目を覚ました。その様子を見た看護師が慌てふためいて医師を呼びに戻っていく。
母親が驚いてベッドの傍らに近寄った。
「美優!!」
「ママ・・・」
感動の親子再会を目の当たりにして、黒木はそれを間近で見守ってしまい、我に返って慌てて握っていた手を放そうとするが、彼女がぎゅっとそれを握ったため叶わない。
「ありがとう、黒木君・・・」
「お、おう」
にっこりと笑いかけられ、黒木はどもって返事する。
その後、駆けつけた医者たちに取り囲まれる黒木と、説明に苦慮する一年生たちを置いて、ヒル魔とまもりは静かに病室を後にした。

帰宅の道すがら、まもりは疑問に思っていたことを口にする。
「なんですぐあの女の子が黒木くんの中学の同級生だって判ったの?」
「ア? 一週間前後で泥門高校の生徒が事故ったっつー話は聞いてねぇ。となれば糞二男と同じような年でヤツも知ってる女となったら同じ中学出身のヤツを調べた方が早いだろ」
「そうかしら」
訝しむまもりに、ヒル魔はにやりと笑うだけだ。
「サァテ明日からしっかり弁当頼みマスヨ、糞マネ?」
「勿論、腕によりを掛けて作らせて頂きます」
むん、と気合いを入れるまもりを横目で見ながらヒル魔は部室で黒木を見たときの事を思い返す。
変なモノを連れてきたな、というのが第一印象だ。
命の色しか見えないはずのこの目が、僅かに発光したそれを見つけた。
だからすぐに生き霊だと判ったが、それを口にはしなかった。顔は判断できなかったが、その感情の色だけがかろうじて見えた。
『逢いたい』と。
たった一つの感情が事故の衝撃ではじけ飛んで彼の元までたどり着いたが、今の黒木には彼女を見るだけの精神的余裕がなかった。何しろ毎日アメフト漬け、その他のプライベートは三兄弟でつるんでいるし、家では家族5人暮らしで兄弟もいる。だから黒木が一人になる夜だけ、そうやって姿を現したのだろう。
『逢いたい』という感情が強烈すぎて戻る事が出来ないままに。
「ヒル魔くん、実は幽霊が見えるの?」
まもりの声で思考が現実に引き戻される。
「ア? んな訳ねぇだろ」
「そうなの?」
「人は死んだらそれまでだろ」
ケ、と短く笑ってやるとまもりは生まれ変わりとか信じないの? とむくれてみせる。
「信じねぇよ」
ヒル魔は真っ直ぐに世界を見る。
どこをどう見てもその一瞬を尊ぶ鮮やかな命の色しか見えないこの世界に、繰り返し生まれ変わる命など、例外などあり得ないと知っている。
同じようでも全て違う色たち。
隣にいるまもりも、ヒル魔の目には鮮やかに光る一つの命だ。
それがほんの少しばかり特別なモノに思えるけれど、それはきっと側にいるからだ。
ただ、ちょっとばかりムサシや栗田とも違った色合いに感じる事があるのだけれど、それはよく判らない。
「・・・私は、生まれ変わってもヒル魔くんにご飯作ってあげたいと思うけどな」
「ア? 何か言ったか?」
本気で聞き逃して、ヒル魔はちらりと隣を見る。
「なんでもないですー」
おどけたように笑うまもりの姿が一際眩しく輝く。
気づけばもうまもりの自宅前だった。
お弁当期待しててね、そう言ってまもりは足取り軽く自宅へと帰っていく。

ヒル魔はそれを見届け、鮮やかに色づく世界に向かって、再び足を向けた。


***
ぐち様リクエスト『事件が起きて、謎解きするようなヒルまも見たいです』+渡り鳥様リクエスト『まもりの事は栗田・ムサシとは違う特別な存在だけど、恋愛感情かどうか定かではない蛭魔と、恋愛感情にしてみせる!と一生懸命なまもり』でした。黒木くんをいじろうと決めたら途端に話が出来ましたw
リクエストありがとうございましたー!!

以下返信です。反転してお読み下さい。
ぐち様>
謎解きという程の話が全然浮かばなかったので、オリキャラ+ヒルまも一家設定まで出してしまいました。
すみません!


渡り鳥様>
うちのまもりちゃんはとりあえずヒル魔さんの胃袋掴んでおけばなんとか恋愛に引きずり込める、と思いこんでいる節があります(苦笑)。餌付けされていつの間にか離れがたくなっていればいいと思います!
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ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。

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閉鎖しました。
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