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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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黒は悪魔色

(ヒルまも)
※30000HIT御礼企画作品
※5/26アップ『適正価格』の続きにあたります

+ + + + + + + + + +
大学の文化祭は高校と違い、色々なものが出店していて面白い、とまもりは笑顔で屋台を見て回る。
「まも、それ全部食べるの?」
「? ええ、そうよ」
「信じられない、その腹のどこにこれだけ入るのよ?」
その手には綿飴りんご飴焼きそばにたこ焼きにお好み焼きにベビーカステラに・・・と食べ物ばかりがある。
引きつる友人達の前で、まもりはにこりと笑った。
「大丈夫、多分食べきれるわよ」
「それで太らないんだから神様って不公平だわ!」
友達はわいわいと言っていたけれど、一人が彼氏から呼び出されたのを気に、次々と別れていく。
「・・・ごめん、まも! 私も彼が来るの」
最後に二人だけ残った子が、申し訳なさそうな顔でまもりに謝る。
まもりは気にしないで、と笑顔で彼女を送り出した。
と、それを見計らったようにまもりの背後に人影。
「スゲェ量だな」
「あ、ヒル魔くん!」
ぱっと明るい顔になるまもりと対照的に、ヒル魔は渋い顔をする。
何しろまもりの持つ食べ物はとんでもない量だから。
コレ全部食べる気か、というヒル魔の無言の視線に、まもりは苦笑する。
「まさか。ヒル魔くんも食べるでしょ?」
「人の胃袋をアテにすんな」
「だって全部少しずつ食べてみたいんだもの」
ぷう、と膨れるまもりに、ヒル魔は舌打ちしながらもいくつか包みを持った。
「屋上行くぞ」
「うん」
その様子を周囲は固唾を呑んで見守っていた。
皆の憧れ姉崎まもりさんがよりにもよって蛭魔妖一に絡まれている! 助けなければ、と正義感+下心と自らの保身で突入しようかどうしようかを悩む男連中と、まもりのことを心配した数人の女友達と。
けれど結局誰も何も出来ずにただ見送るしかない。
「まも・・・なんで逆らわないんだろう」
「弱み、握られてるとか」
「そうなのかなあ、やっぱり」
「姉崎さんを助けたら彼氏になれるかな?」
「それは高望みだぜ? でも声を掛けるチャンスだよな・・・」
ぼそぼそと喋る連中の声はヒル魔の耳にもしっかり届いていて。
「どうしたの? ヒル魔くん」
「・・・テメェなんで俺と付き合ってるって公表しねぇんだよ」
「え? だってみんな知ってるでしょ?」
きょとんとするまもりに、ヒル魔はため息をついた。
・・・当人、隠してるつもりじゃないが怖くて誰も真義を尋ねられないということか。
やっぱり糞天然だな、とまもりを見るが、もう手元の食べ物の事でまもりの頭の中は一杯のようだ。
頭のいい女という設定はどこに消えた、と恨み言の一つも言いたくなる。
が、そんな彼女が気に入っているのもまた事実なのだ。
「・・・やっぱり一度ハッキリ言っておくべきか」
丁度いい出し物が午後にはあるわけだし。
不穏な表情で呟くヒル魔だが、それはまもりの耳には幸いにも届かなかった。

散々屋台の食べ物で腹を満たしてまったりした気分だったまもりは、友人からの電話に飛び上がった。
『ちょっとまもー!? 早くこっちに来てよ!!』
「え?! ちょっと、それは前に断ったじゃない!」
『駄目よ、もう名前出てるんだから!!』
「ええー?!」
それはミスコンの準備会場からで。
嫌だと言ったはずなのだが、エントリーからは外して貰えなかったらしい。
まもりはちらりと目の前でくつろぐヒル魔に視線を向ける。
彼ならきっとまもりをそんなところに晒す事はしないだろうと思ったのだ。
ところがヒル魔はそんなまもりの心情とは裏腹に胡乱な顔を向けた。
「さっさと行ってこい」
「えー?!」
だって衣装はフォーマルドレスとか言われてたけど何も持ってきてないもの、とぐずぐず言うまもりに、ヒル魔は傍らにあった袋を投げつけた。それは大きく嵩高いが重量はさほどでもない。
彼の抜群のコントロールでそれはまもりの腕にすぽんと収まった。
「ちょっと!?」
「ソレ持って早く行け」
まもりはその中身を見て、目を丸くする。中にはドレスなどが全て入っている。
「いつの間に・・・」
「サイズはぴったりのはずだぜ?」
にやりと笑われ、まもりは真っ赤になってそれを手に立ち上がり、一目散に駆け出す。
それを楽しげに見送ってから、ヒル魔も立ち上がった。
さて、久しぶりの大規模害虫駆除だ。


ミスコンの準備会場に現れたまもりを、メイクアップ担当の女子が捕まえる。
「ああもう時間ギリギリ! もっと早く来てよ!!」
「ご、ごめん・・・」
仲の良い子だけに遠慮はない。けれどまもりが用意したドレスを見て、にやりと笑う。
「これ、彼氏からのプレゼントでしょ?」
「え?!」
「だって、全部タグついてる。まも、自分で用意したならこれくらい全部外すでしょ」
「う・・・」
値札は取り去られていたが、タグは無造作につけられたままだ。
まもりは赤い顔をしてそのドレスに身を包む。
「わ!!」
「すっごーい、超ゴージャス!!」
「あ、あんまり見ないで・・・」
焦るまもりに周囲は目を輝かせる。あまり綺麗な子だとそれが鼻につくというか、むかつく、という対象になるのだが、彼女は内面の良さも周囲のよく知るところだったので、皆そんな様子に癒やされる、と言わんばかりだ。
まもりは間違いなく出場者たちの中で一番綺麗だった。染み一つない真っ白い肌を覆うドレスは漆黒。
まもりがあまり身につけない色だが、それは肌の白さを強調するのに一役買っていた。
メイクとヘアメイクを手早く施されると、そこにはどこからどう見ても極上の女性となったまもりがいた。
「うわ~~うわ~~同じ女の子だけど、まもってば可愛すぎるぅうう~」
「もうこれは誰が見ても絶対浚っちゃうよね!!」
「あー、まもがこれで彼氏いないなんて信じられない!!」
「え?」
「ああいたいた姉崎さん! 早くこっちに来て!!」
「えっ、あっ・・・」
「いってらっしゃーい!」
「がんばってねー!!」
周囲で手を取り合ってまもりの完成を喜ぶ友達の漏らした一言を追求しようとしたまもりだったが、それを聞くことなく運営委員の女の子に手を掴まれ、ステージへと連れ去られた。

ミスコンを見ていたヒル魔は、茶番だな、と鼻で笑った。
何しろそれまで互いにどちらが美しいかというのをあからさまに、視線をぶつけて威嚇しあっていた女たちが、まもりが出てきた途端に一斉にその顔を俯かせたのだから。
まもりはそんな低レベルな争いなど遙か彼方で飛び越えた位置からこのステージに降り立ったのだ。
格が違いすぎる。
当然だな、とヒル魔が見ている先で、一応形ばかりの投票結果が出されようとしている。
ヒル魔は何喰わぬ顔でステージへと近づいていった。

それにしても、とまもりはステージの上を見回した。次々と入賞者が呼ばれて表彰されていく。
可愛い子たちばっかりいるなあ、さすが大学ともなるとみんなお化粧上手だなあ、私も練習したらあれくらい可愛くなれるかな、と他の出場者たちが聞いたら泣かれてしまいそうな程の事を考えてぼんやり立っていた。
まず自分は入賞者として呼ばれないだろうし、そうしたらこの衣装を用意してくれたヒル魔くんに悪いなあ、と思うくらいで、次いで今日の夕飯どうしようかしらという、誰かに聞かれたら貴女はどこの主婦ですか、と突っ込まれそうな事まで考えていて。
『優勝者は・・・姉崎まもりさんです!!』
「え?」
呼ばれて、まもりはきょとんとして自分を指した。
私? 誰かじゃなくて? と左右を見たが、隣り合った女の子たちは諦め気味だったり気圧されたり逆ギレしたような顔で、じっとまもりを見ていた。・・・間違いなさそうだ。
『優勝おめでとうございます!!』
「あ・・・ありがとうございます」
他に言いようがなくて、まもりはそう答えるしかない。しかし私が優勝って、と首を傾げる始末。
『この喜びをどなたに伝えたいですか!?』
テンションの高い司会にまもりは戸惑う。
けれど一応おめでたい事だし、と思い直し、誰にって言ったらそれは、と口にしようとした瞬間。
ひょいとステージに飛び上がった一人の男。
乱入者か、と周囲はざわめいたが、まもりは安堵したように笑って見せた。
「優勝か」
「うん、そうみたい」
場所も状況も構わずごく普通に話す二人に、差し出したままのマイクを手に司会が固まる。
その手からヒル魔は遠慮無くマイクを抜き取った。
そしてちらりと視線を向ける。インカムをつけた青年が、恐る恐る手を挙げた。それににやりとヒル魔は笑う。
『なんか勘違いしてるヤツがいるようだから言っておくが―――』
その声はミスコンの会場のみならず、全校放送として響き渡った。
目を剥くまもりの腰を抱き寄せ、ヒル魔は楽しげに宣言する。
『姉崎まもりはこの俺、蛭魔妖一と付き合ってるんだよ!!』
「げぇえええええええ??!!」
皆が驚愕に顔を歪ませ、絶叫する中、まもりは顔を真っ赤にしてヒル魔に噛みついた。
「ちょっと?! ヒル魔くん、なんで全校放送にしてそんなことわざわざ言うの!?」
そのまもりの顎をヒル魔が捕らえた。
え、とまもりがそれを止める前に、ヒル魔は彼女の唇を奪った。
ばっちり、公衆の面前で。
「どぇえええええええ??!!」
濃厚なソレをかましたヒル魔は、至極楽しそうに声を上げる。
『・・・っつーわけだ! YA――――――HA――――――!!!』
「・・・いやー!? なにするのヒル魔くんてばー!?」
ぽい、とマイクを司会に戻すと、司会は呆然としながらも一つだけ尋ねた。司会の鏡だ。
「あの、本当にヒル魔さんと付き合ってるんですか、姉崎さん・・・」
そうだ、これがヒル魔の悪い冗談なら・・・と一縷の望みを掛けて皆の視線がまもりに集中する。
今のがヒル魔の捏造話なら、彼女を手に入れる望みはまだあるのかもしれない、と。
ヒル魔に噛みついていたまもりは、その声に不思議そうに首を傾げた。
『ええ、そうよ』
何を今更、と言わんばかりの表情で、至極あっさりと言い放ち。
―――今度こそ本気の絶叫が全校のあちこちから噴出した。


その後大学は文化祭どころではなくなり、校内は阿鼻叫喚の地と化した。
「明日も文化祭あるんだけど、どうなるのかしら」
「サアネ」
当然のようにまもりの荷物を持ったヒル魔が肩をすくめる。
これでようやくまもりにまといつく小さな羽虫たちを相手にイライラする必要がなくなった。
「今日の夕飯、何がいい?」
何も気づいていないまもりに、ヒル魔は何でもいい、と言う。
「もう! それが一番面倒なのに!」
「じゃあお前」
「・・・そっ、そんなこと言ってからかうし!!」
再度真っ赤になってヒル魔を叩くまもりに、ヒル魔はにやにやと笑う。
「オヤ? 今日の衣装代を踏み倒すつもりデスカ?」
「えぇ!?」

目を白黒させるまもりの肩を抱いてヒル魔は楽しげに二人で住まう部屋へと帰っていった。


***
海小鳥様リクエスト『大学生(同棲設定)ミスコンに出場させられるまもりちゃんが、あっさり優勝。その場で、自分と付き合ってることを公表するヒル魔くん』でした。楽しく書けました♪
リクエストありがとうございましたー!!

海小鳥様のみお持ち帰り可。

以下返信です。反転してお読み下さい。

まもりならあっさり優勝するだろうけど、自覚があまり無いだろうからヒル魔さんが色々やきもきするんだろうなあ、と考えてたら楽しくてたまりませんでした(笑)以前飲み会に行って自分の物宣言したはずなのに知れていないので今度は全校放送かけちゃったヒル魔さん。まもりちゃんの苦労が忍ばれます(笑)
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