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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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妖精確保

(ヒルまも一家)
アヤ・妖介高校一年の文化祭にて。

+ + + + + + + + + +
泥門高校は毎年文化祭と体育祭を交互に行っている。
文化祭をやった翌年は体育祭、その次がまた文化祭、というように。
それで、今年は文化祭の年だった。
現在秋大会の地方予選真っ最中のアメフト部は、正直言って参加する暇がない。
が、この文化祭で模擬店等を出すと、その売上金の経費を差し引いた分が部費として還元されるのだ。
これをコーチであるヒル魔が見逃さない訳がない。
「参加するぞ!」
提示された文化祭への参加要項を見ると、軽食の模擬店か、空き教室のスペースを使って展示をやるか、ステージで出し物をするかのいずれかになっている。
「模擬店なら喫茶、展示ならお化け屋敷、出し物なら演劇ってとこですね。一番多いのは軽食みたいですよ」
主務の猪野匡貴が過去のデータを見て説明する。
「喫茶でアヤちゃんにメイドさんやってもらうとか・・・スミマセンゴメンナサイ」
アヤの冷たい視線に、部長の沢村英人が肩をすくめる。
その他の部員たちも同じような事を考えていたようで、苦笑いしか浮かばない。
「軽食は飲み物中心にしたら実入りはいいんで、部費稼ぎにはうってつけなんですけどね」
猪野の発言に皆僅かばかりの期待を込めてコーチへ視線を向ける。アヤが制服以外でスカートを着ているところを見た事がない部員たちは、もしかしたら彼女の華やかな姿が見られるかも、と思ったのだ。
ヒル魔はそんな部員たちと要項を見て、それから何か閃いたようだ。
「・・・何、考えてるんですか」
嫌な予感がする、と顔に書いて妖介が尋ねる。ヒル魔はにたあ、と笑った。


文化祭当日。
配られたしおりのアメフト部の項目には、『妖精確保』というタイトルと、勝者には豪華賞品あり、詳しくはアメフト部部室前にて説明とだけ明記されている。
興味を引かれた者たちが部室前に向かうと、そこには受付カウンターに座る主務と、マネージャーが説明係として内容を明記した看板を片手に立っていた。
「『妖精確保』についてはこちらの看板を御覧下さーい!」
内容は単純明快。妖精こと蛭魔綾を捕まえた者が優勝という鬼ごっこ。
ただしその行動範囲は学校内全域という広さ。制限時間は一時間、トイレや鍵の掛かる場所には立ち入らない。そして彼女は常に護衛一人と共に動いているが、護衛をかわして彼女を捕まえられたらその時点で終了となる。ただし蛭魔綾も抵抗するので注意する事、と説明は締めくくられていた。
「なお、賞品は蛭魔綾さんの生写真です! しかもプライベートの物多数アリとのことです!」
賞品を告げた途端、在校生たちが一斉に色めきだった。
アヤの写真は出回らない。
まず校舎内でカメラを向けた段階で間違いなく妖介に奪い取られるかアヤ自身に投げ飛ばされるかのどちらかで、部活中の写真を撮ろうとするとヒル魔の銃弾の餌食になる。
また、校外でもアヤのガードは半端じゃなく厳しいのでまず彼女の写真を得る事はできないのだ。そして彼女のプライベートは大部分が謎に包まれているため、まさしくレアと呼べる一品と言えた。
「参加費は千円、受付をした方はリストバンドを受け取ってくださーい! このリストバンドをされてない方が捕まえても無効でーす!」
人員整理係の部員たちが手際よく客を捌き、主務が受付をしていく。開始時刻は午後二時。妖精と護衛の姿についての説明が載ったチラシを受け取って、参加者たちは開始時刻までばらばらと散っていった。

アヤは自らの姿を見下ろして嘆息した。
ヒラヒラと頼りない真っ白なワンピースと白いサンダルが今回の衣装だ。
これだけで部員たちの志気がとんでもなく上がったのだが、それはアヤにとってどうでもいいことだ。
「アヤ、準備できた?」
「ええ」
妖介が控え室として使っているロッカールームへと滑り込む。今回の護衛役は彼だ。
黒のTシャツと黒のパンツに黒い幅広の鉢巻と、黒で全身統一している。アヤと対なのだ。
「今回は他の部員たちも敵だから頑張って逃げようね」
「せめて運動靴にして欲しかった」
「あー・・・ワンピースにそりゃないよ」
ヒールがないタイプとはいえ、これでアヤの速度は大幅ダウンだ。
いざとなったら脱ぎ捨てようとこっそり考えながら、アヤは手元に用意されたリストを見る。
そこには今回の参加者名が連なっていた。
時間ギリギリまで受付を行うので、最終受付の物を二人が見る事は出来ないのだが、大まかな人数と参加者を把握する。
「男子生徒はほとんど参加するんじゃないの?」
「迷惑」
妖介が呆れる程の人数がそこに連なっている。
後半部分になると噂を聞きつけた他校生も混じっていて、相当な人数に膨れあがっていた。
「いざとなったら俺が抱えて逃げるよ」
「そうね」
肩をすくめるアヤの耳に、外から開始時刻を告げるマネージャーの声が掛かった。


「スタート!!」
やけにリアルな銃声と共に、ゲームスタートがヒル魔によって宣言された。
やや離れたところでスタートしたアヤと妖介にあっという間に黒い人波が押し寄せる。
それを器用に捌きながら二人は勢いよく逃げ出した。


さて時は少しばかり遡る。
「お姉ちゃんたち何やるのかな?」
「さあ、教えて貰えなかったから判らないわね」
「アメフト部・・・『妖精確保』だって」
泥門高校の敷地内に、かつては天使とあだ名された女性が子供を伴って現れた。
彼女の名前は蛭魔まもり、そして子供の名前は蛭魔護。
姉兄の文化祭に顔を出したのだ。
「ヒル魔くんも教えてくれないし、なんなのかしら。またあくどい事かも・・・」
「でもお姉ちゃんとお兄ちゃんもいるんだよ?」
「そうねえ」
訝るまもりと護は二人して部室の前に向かう。
最終締め切り時刻が迫っているようで、お早めにお申し込み下さい、と主務が声を掛けている。
看板の説明書を読んだ護が声を上げる。
「お母さん、これってお姉ちゃんを捕まえるゲームみたいだよ」
「こんな格好するのね。あ、だからあのサンダルが欲しいって言ったの・・・。なぁんだ」
アヤは先日突然購入したサンダルを履いているらしい。
かかとが低く、走りやすいなんて言っていたが実際はデートでもするのかと思って楽しみにしていたのに、とんだ肩すかしだ。まあ、デート用ならヒル魔や妖介が黙ってないだろうとは思っていたのだけれど。
自分の考えに気を取られていたまもりは、護がしっかりゲームへの申込みをしているのに気が付かなかった。


しっかりとアヤを守りながら、妖介は器用にたち回った。
アヤもその後をついて逃げ、時折逆に人混みに飛び込んで大混乱を巻き起こしたりしながら周囲を煙に巻く。
「やっぱりかなり多いねー」
「人数制限すべきだろうに」
「むしり取るだけむしり取るのが父さんだよ」
「違いない」
やがて校庭の隅に追いつめられた二人を参加者たちが取り囲む。
しかしアヤは不敵に笑い、妖介に向かって、飛んだ。
「せいっ!」
「なっ・・・」
妖介が組んだ腕の力とタイミングを合わせ、なんと二階の開いていた窓まで飛び上がって校舎内へと入った。
「追えー!!」
よもやまさかの縦移動に全員泡を食って一斉にそちらに向かう。
やがて窓や扉から一通り人が校舎内に入ったのを見計らって、アヤは再びグラウンドへ飛び降りた。
「単純な連中が多くて助かるよ」
妖介はそう笑ってアヤを受け止め、再びグラウンドを突っ切った。

敷地を一杯に使っての鬼ごっこの様子を、一人双眼鏡で眺めながらヒル魔は予想通りの展開に笑う。
アヤ一人でも逃げ切れただろうが、そこに妖介も加われば間違いなくその辺の連中では捕まえられない。
アメフト部の部員たちも参加しているし、文化祭の最中は部活停止期間となるから、丁度いい練習代わりとなりそうだ。 アヤの格好はまあ、せめてものサービスという事で。
「・・・ア?」
双眼鏡を覗いていたヒル魔は、校舎側の別の人だかりに気が付いた。
しかも人だかりの内訳は学生ではなく教師たちが多いような。
その隙間から覗くのは、見慣れた赤茶。
途端にヒル魔の眸が座る。
「・・・糞ッ」
ヒル魔は舌打ちしつつ内心を押し隠し、悠然とその人だかりへと歩み寄っていった。
「こちらの卒業生なんですか?」
「ええ。しばらくぶりに来ました。懐かしいわ」
「よろしければご案内しましょうか?」
「いいえ、お仕事のお邪魔になりますから」
「遠慮なさらなくても大丈夫ですよ!」
わいわいと声を掛けてくる教師たちはまもりとそう年が変わらない教師たち。
学生も混じっているが、割合としては少ない。
まもりは笑顔で人だかりの相手をしつつ、どこかへと行ってしまった護をそれとなく捜していた。
もう小学生とはいえ六年生、放っておいても大丈夫だろうけれど、心配なものは心配なのだ。
人だかりをかき分けて移動しようかと声を掛けかけた瞬間、さあっとその壁が崩れた。
「あ」
「何やってんだ」
まもりの前に現れたのはヒル魔だった。
相変わらずの黒い服に金髪を逆立てたスタイルはやはり年を経ても恐怖の対象なのだろう。
周囲が固まる中、ヒル魔はすたすたとまもりに近寄った。
「護は?」
「うん、さっきまでいたんだけど・・・はぐれちゃって」
「ホー、じゃあテメェは糞迷子だな」
「なんで私が迷子なの! 護でしょ、この場合!」
「糞迷子じゃなきゃなんだこの状況は」
親しげな会話をする二人を、周囲は脂汗を流しながら見守るしかない。
ヒル魔と言えばアメフト部の悪魔コーチ。
在学中からとんでもない悪行をはたらいていたと専らの噂だが、最近子供が入学したのを機にコーチとして舞い戻ってきたはた迷惑な男。
なぜこんなに綺麗な女性に絡むのかと一人の教師が恐る恐る口を開いた。
「あの・・・お二人は、どのようなご関係、ですか?」
「ア?」
ヒル魔にぎろりと睨まれてその教師はすくみ上がる。隣にいたまもりはその様子を見て苦笑する。
「何威嚇してるの」
「煩ェ」
ケケケと笑うヒル魔に肩をすくめ、まもりは柔らかい笑みを浮かべる。
「すみません、ご挨拶が遅れました。私、彼の妻のまもりと申します」
お世話になっております、とまもりが頭を下げた瞬間、その場にいた者たち全員の膝や腰が砕けた。
へたり込む者たちを前に、ヒル魔はまもりの腰を抱き、見せつけるように連中を見渡して鼻を鳴らした。
・・・まもりは訳がわからずしきりに首を傾げていたけれど。


ヒル魔が愛妻にたかる害虫駆除を成功させている頃。
妖介は払っても払っても湧いて出てくるアヤへの害虫、もといゲーム参加者を振り払っていた。
「あーもう! ちょっと飽きてきたよ、俺!」
「そうね」
今度こそ校舎内に逃げ込んだ二人は、廊下を駆け抜けながら屋上へと向かっていく。
タイムアップが迫っているので、もう時間稼ぎもほぼ終わりと言えるだろうと判断したのだ。
アヤを捕まえるどころか触れる事さえ出来ず、倒れていく連中も多かったが、運動部―――特にアメフト部は根性を見せて二人に追いすがっている。
この粘り、試合でも出るといいなあと妖介が内心思いつつ、階段をひた走っていると。
「お姉ちゃん!」
聞き慣れた声が上から響く。思わず見上げると、そこには護の姿があった。
今日はまもりと一緒に来ているはずだが、はぐれたのだろうかと妖介は訝しむ。
妖介の目には随分と護の色が不可思議に見えるのだ。・・・不安とは、ちょっと違うような。
「護?」
アヤも護の存在に気が付いて目を丸くする。背後から来る連中に追いつかれないように走りながら、なんでこんな所に、と尋ねようとした妖介を尻目に、護がアヤへと飛びついた。
「捕まえたー!」
しっかりその腰にしがみついた護の声に、二人は呆気にとられる。
「え?」
「ア?」
見れば護の腕にはゲーム参加者の証、リストバンド。
「・・・これは予想してなかったな」
「護ならいい」
腰にしがみつかれたまま、アヤは護の頭を撫でる。
やっと追いついてきた連中を前に、妖介は立ちはだかってにやりと笑い、宣言する。
「妖精は確保されました! 勝者はこちらの少年です!!」
途端に悲鳴やうめきを上げて倒れる参加者たちを尻目に、護はアヤと手を繋いで歩き出す。
「お姉ちゃん、その格好可愛いね」
「ん」
ほのぼのする二人の後ろを歩きながら、妖介は護の背を見る。
護はアヤの写真が他人の手に渡るのが許せなかったようだ。先ほどまで入り交じって落ち着かなかった色が、随分と楽しげなものに変化している。
まるで悪魔のしっぽでも生えそうな色を目にして、妖介は、とことんアヤには弱いよなあ俺たちは、とこっそり苦笑した。


ヒル魔がまもりを伴って部室まで戻って間もなく、子供たち三人もそこへと集った。
「ア? 護が勝ったのか」
「うん! ちゃんとお姉ちゃんを捕まえたよ!」
「参加者リストの最終版に載ってたみたいで、見落としたよ」
肩をすくめる妖介にアヤも頷く。
「それより母さんと護が離れてたから驚いたよ。母さん、どこで道に迷ったの」
妖介の発言にまもりがむっとする。ヒル魔は対照的ににやにやと笑った。
「迷ってないわよ。私ここの卒業生よ? よく知ってるんだから」
「教師連中にでもつかまってたんじゃないか」
アヤがぽつんと呟くと、まもりは詰まる。
図星か、と子供たちはそれで察する。
おそらく人だかりでまもりが動けなくなったところにヒル魔が動いたのだろうと簡単に推測できた。
「・・・父さんの害虫駆除が堂に入ってる理由がよく判るよ」
ため息混じりの妖介の言葉に、アヤと護は大きく頷く。
「俺の苦労が判ったか」
「え、私の苦労じゃないの?」
「どこにお前の苦労がある」
「だってヒル魔くんってば無駄に人の事脅すし」
ヒル魔にまもりが反論する。
その論点がやっぱりずれていて、この二人はずっとこうだったんだろうなあ、と思って三人して苦笑したのだった。


ちなみに護が手に入れたアヤの写真は、そのままとある男性へと横流しされた。
アヤがそれを見つけるのはかなり後の事である。 


***
水神龍菜様リクエスト『家族話で妖精逃げるの続編』+サキ様『蛭魔家で文化祭にやってくるまもり母さん』でした。文化祭は常に傍観者の立場だったので、色々妄想して書かせて頂きましたw楽しかったです♪こんなに校内走り回られたら他の模擬店商売上がったりですな(笑)主務と部長の名前は適当に作りました。

水神龍菜様・サキ様のみお持ち帰り可。

以下返信です。反転してお読み下さい。
水神龍菜様>
いえいえ図々しくなんてないですよ~。そのための企画ですからw楽しく書かせて頂けてよかったです♪もう一方の方はもう少々後になると思いますので、気長にお待ち下さいね♪リクエストありがとうございましたーw

サキ様>
二女も出来ましたがそちらは出産予定が遠そうなのでこちらを先に出させて頂きました(笑)美女現る、という表現の前に悪魔襲来で騒げませんでしたが(苦笑)大騒ぎになった、かな? リクエストありがとうございました♪
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同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
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