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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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世界を広げるために

(狐の嫁入りシリーズ)

※元拍手5/14アップ『東西声』の続きです。
こちらを読んで頂かないと話が通じないのでご注意下さい。


+ + + + + + + + + +
まもりがこの妖怪たちの住む『東』へやってきて数日が経過した。
着物にも慣れ、違和感も日に日に薄れていた。今もそれを身に纏い、草履を引っかけて外に出てきた。
たまたま歩いていたセナとモン太を捕まえて疑問をぶつけている。
「じゃあ、みんなは食事ってそれぞれ違うの?」
「うん、そうだよ」
「元々食べるっていう事自体しないやつもいるし」
「そうそう」
出自がそれぞれ違うので、食べるものもそれぞれ違う。
例えば鈴音は猫が元の猫又なので猫の食べるものは食べられる。まもりは西とはあまりにも違う環境にとまどいの連続だったが、だったら学べばいいのだと一念発起して皆に色々聞いているのだ。
「僕は食べないね」
「そうだな、セナは喰わないよな」
「モン太は人に近いから、人の食べるものは食べるよね」
「そうなんだ・・・。じゃあヒル魔くんは狐だから狐の食べるものは食べるのよね?」
「そう、かな?」
「多分人と同じようなもの食べるんだろうけど・・・そういえばあんまり食事の印象ないなあ」
「そうなの・・・。引き留めちゃってごめんね。ありがとうね」
「いいえ! こんな話で良かったらいつでもいいですよ」
「そうっす! まもりさんのためならいくらでも・・・」
「ホー?」
と、そこに地を這うような低い声。途端に少年たち二人の体が強ばった。
「「!!」」
「テメェら、こないだの『西』の一件で崩れた屋敷の補修が終わってねぇだろうが! さっさと糞ジジイのとこに行って手伝ってこい!!」
「「はーい!!」」
二人は返事をするやいなやすっと姿を消した。
「あ、れ?」
「大体の妖怪はそうやって移動すんだよ」
少年を威嚇したのは言わずと知れた狐の大妖怪、ヒル魔。彼は面倒そうに言うとまもりの隣に腰を下ろした。
「・・・ヒル魔くんは手伝わないの?」
「あいつらが自分たちでやるっつったから任せた」
「ホントに?」
ケケケ、と笑って応えない彼だが、きっと嘘ではないのだろう。妖怪たちを束ねているらしい彼は他の妖怪たちに大変慕われていた。
「ヒル魔くんって、年幾つなの?」
「ア? 年?」
「そう。妖怪って見た目通りの年じゃないんですってね。鈴音ちゃんの年聞いてびっくりしちゃった」
鈴音はその外見からとても幼いと思っていたのに、彼女は齢五十を越える立派な猫又なのだと言われた。セナも百年は生きていると言っていたし。
「俺は・・・忘れたな」
「忘れた? そんなに長いの?」
「おー。多分千年は越えてるんだろうが、後は数えてねぇからシラネ」
「そ、そうなんだ・・・千年・・・」
「お前は?」
「私? 私は・・・お母さんが死んでからあんまり考えてなかったけど・・・四十年くらい? あれ、五十年?」
「ケケ、ガキだな」
「ガキ・・・」
言うに事欠いて五十くらいではガキという扱いはどうなのだろうか。
「そ、そのガキ扱いの私を、よ、嫁にしておいて・・・!」
「そのくらい噛まねぇで言え」
ケ、と笑われてまもりはむっとしてしまう。確かに年の差は大きすぎて喧嘩にすらならない。
「あれ? でも・・・」
まもりはふと気づいた事実に顔を上げる。
「千年も生きてたらお嫁さんの一人や二人いそうなのに。いなかったの?」
「狐の時はいたけどなぁ・・・」
ヒル魔は遠い目をした。
「俺と同じだけの時を過ごすのは妖怪でもなかなかいなくてな」
「え?」
「大抵先に死ぬ」
「・・・・そうなの」
愛しいと思った相手が、自分を置いて老いてしまう。どれほど引き留めようとも、時の流れだけはどうしようもない。
元が獣でそこから妖怪に変じたなら、尚更それは辛いことかもしれない。ましてや妖怪だからと娶っても、それさえ先に死んでいってしまうなんて。
「まあ、お前なら平気だろ」
「え?」
「まだまだガキだし、長生きしそうだし、悩みなんてなさそうだしナァ」
「・・・とりあえず褒め言葉として受け取っておきます! もう!」
ちょっとしんみりしたこちらがバカだった、とぷりぷりしながらまもりは立ち上がる。
「ああそうだ、テメーに仕事だ」
ぽい、と手に放られたのは手紙だった。
「それを糞雪女のところに持って行け。あいつはこの山のてっぺんにいる」
「ゆきおんな?」
「行けば判る。・・・糞猫!」
「はーい!」
中空からぽん、と音を立てて鈴音が姿を現した。
「糞アマを糞雪女のところに案内しろ」
「はーい。行きましょ、まも姐!」
「え、え・・・あの、その・・・姿を消して行くっていうのは、私には出来ないのかな?」
まもりの質問に、鈴音は首を傾げる。
「えーと・・・どうだろ・・・」
「テメェにゃ出来ねぇよ。人の血が混じってるからな」
「あ、そうなの・・・」
出来たら便利なのにな、と思いつつ、まもりは鈴音と手を繋いで言われたとおり山の頂上を目指して歩き始めた。
 
 
「・・・でね! セナと私は恋仲なの!」
「へえ、そうなの。素敵ね」
「えへへー」
ヒル魔あたりが見たら益体もない話だ、と一蹴されそうな話題で二人は延々と盛り上がる。
「やー! まも姐がヒル兄のお嫁さんになってくれて嬉しいなー」
「ええ!? いや、そんな・・・でも」
「でも?」
「私でいいのかな、って思うことがあるのよ」
「なんで?」
くる、と鈴音は目を上に向けた。そこに写るのは曖昧な表情のまもり。
「だって・・・なんだかヒル魔くんってすごい妖怪なんでしょ? 私『西』の出身だし、なにか出来ることがあるわけじゃないし・・・」
「やー、そんなことないよ!」
鈴音はびっくりして首を振る。
「ヒル兄ってね、すごい妖怪だしみんな尊敬してるけど、いつも一人でね。妖怪って大まかに分けると、年を重ねれば重ねる程強くなるっていう種族と、生まれつき力が決まってる、っていう種族の二種類がいるの」
「へえ、そうなんだ」
「で、私とヒル兄は年を取ると強くなるのね。でも私は猫でしょ、狐とは格が違ってずっと一緒は無理なんだ」
鈴音はまもりの手を取る。触れる指も爪もヒル魔と大して変わらないように見えるのに。
「狐の妖怪って眷属・・・眷属って従者とかっていう意味なんだけど、それはいるけど、ヒル兄みたいな立派な妖怪になるのは相当掛かるんだよ」
「そうなの・・・」
「だから昔から人の世に混じったりもしてみたみたいだけど、やっぱり面白くないってすぐ帰ってきてたの。まも姐、ヒル兄はきっと対等に一緒に生きていける相手をずっと、ずーっと待ってたんだよ」
間違いないよ、と言われて、まもりは微笑む。
一生懸命小さな身体全体を使って伝えてくれる鈴音にとても慰められた。
「あ、そうだ」
「やー? なに?」
「あのね、鈴音ちゃん、恥ずかしいこと聞いてもいい?」
「は、はずかしいこと!?」
「え、ええとね、あのね・・・」
まもりはしどろもどろに聞きたいことを口にする。
「その、おとこのひと、の、身体のこと・・・なんだけど・・・」
「え、え・・・え?!」
「あのね、ヒル魔くんがどうなのかっていうんじゃなくて、その、妖怪と人の違いっていうか・・・」
真っ赤になるまもりにつられて鈴音も真っ赤になってしまう。二人で赤い顔をして、鈴音はまもりの言わんとすることを大体把握したが、それも上手く説明できる自信がない。
「・・・やっぱ、ここはメグ姐かな」
「メグさん?」
きょとん、とするまもりに鈴音はその手の手紙を指さす。
「これから行く雪女さんの名前。メグ姐は人と子供作ったことがあるって言ってたから、きっと私より知ってるよ」
私、ほら、猫だったから・・・とはにかまれてまもりはそうか、と苦笑する。
「そうと決まったら早く行こう! もうすぐだよ」
「そうね」
二人は気持ち足を速めて、メグがいるという山頂へと急いだ。
 
 
山頂にはヒル魔のところと同じく横穴が掘られていて、そこに一人の女性が座っていた。
「・・・なんだい? 客かい?」
けだるげな雰囲気、全身が真っ白。髪も肌も抜けるように白い。そしてその中にあって唇だけは深紅。眸は深い青だが、まもりのよりもっと濃い色だ。
「メグ姐、こんにちはー!」
「おや鈴音じゃないかい。今日はどうしたんだい?」
色っぽい唇を歪め、口にキセルをくわえる。ふう、と吹き上げられた煙はしゃりしゃりと音を立てて地に積もる。
雪女というだけあって、室内はひどく寒い。けれど鈴音の声で気を遣ったのか、周囲の温度は入ったときより気持ち暖かく感じる。
「こんにちは」
「・・・ヒル魔かい!?」
メグは一瞬身体を強ばらせたが、まもりの顔を見ると力を抜いた。
「なんだ、とうとうあの狐野郎も嫁取ったのかい。やれやれ、匂いに反応しちゃったよ」
「匂い? しますか?」
すんすんと袖口を嗅ぐまもりに、メグは苦笑を浮かべる。
「お前さんや下で住む連中はそうでもないかもしれないがね・・・普段匂いなんざ嗅がないこちらとしちゃすぐ判る程度には匂うよ」
「そう、ですか」
まもりは小首を傾げて、それからはたと気づく。
「あ! 挨拶もしないですみません! 私はまもりといいます」
「へえ、面白い嬢ちゃんだね」
くすくすと笑う彼女は、それで? と促した。
「ヒル魔くんから手紙を預かってきました」
「・・・・くん・・・・」
メグは思わず吹き出すと、きょとんとするまもりの手から手紙を抜き取る。
「ああ、貯蔵庫から少し肉を回せっていう話だね」
「そうですか」
「用意させるよ」
ぱちん、と指を鳴らすと、白い影がすうっと立ち上がって洞窟の奥へと進んでいく。
「あれはメグ姐の使い魔みたいなものだよ」
鈴音に耳打ちされて、なるほど、と思う。
やはりそれぞれ力は色々違うらしい。彼女も若い外見だが、きっと相当年を経ているのだろう。ヒル魔を呼び捨てにしていたし。
「やー、ほら、まも姐」
「え?」
鈴音に背中を押され、まもりはきょとんと鈴音を見上げる。
何の話だろう。
「忘れたの? 聞きたいって言ってたじゃない」
「あ」
「ん? なんだい?」
こそこそと二人で顔を寄せ合うのにメグも気づいて水を向ける。まもりはどうしようかと躊躇うが、鈴音が気を利かせてその場から消えたので、意を決して聞いてみることにした。
「あの、ですね、私、ヒル魔くんのお嫁さんっていうことなんですが、男の人って、あの、女の人と何が違うんですか?」
「はぁ?!」
呆れた顔のメグに、まもりは焦りながら説明する。
「あ、あのですね、私、父が生まれてすぐいなくなってしまって、事情があって母と生活していたのですが、その他の男の人と会ったのはヒル魔くんが初めてで、でもヒル魔くんは妖怪だっていうから、その、人と違うのかな、って」
メグはその話を聞いてふうんと呟き、少し考える。
「じゃあ教えてあげようかね」
ふうっとメグは息を壁に吹きかける。一面がたちまち凍って平らになった。
メグの白い指がそこに絵を描き出す。まもりは真剣にそれを見つめていた。



メグの説明を聞いて、そうだったのか、とまもりは詰めていた息を吐く。
「よかった・・・」
「なにが?」
「いえ、あの・・・あの時の、しっぽとかなのかなあ、とか・・・なにか妖怪特有な何かがあったのかな、とか考えちゃってて、不安だったんです」
「し・・・」
「あの、メグさん?」
まもりの目の前で、メグが頽れる。焦って近寄ろうとするが、その冷気の強さに阻まれる。
少しの沈黙の後、メグは大笑いしながら身体を起こした。
「いや、まもりって言ったっけ? あんた大物だわ。ヒル魔とお似合いだよ」
くっくっくっ、と笑いながらメグはまもりの頭を撫でる。先ほどまで冷気が酷くて近寄れなかったのに、その手は少しひんやりする程度の冷たさだった。
「冷気って調節できるんですか?」
「そうだね。他の連中と喋るならこれくらいはしないと、みんな凍っちまうからね」
ただちょっと暑いよ、そう呟く彼女の額にはうっすら汗が見える。
「そ、そうですよね。長居しちゃいました。ありがとうございました! また何か判らないことがあったら教えて下さい」
焦るまもりが一気に礼を述べてその場を後にしようとすると、メグは引き留める。
「その足で下るのかい? 無理はおよしよ」
慣れない草履ですれた指の間。鈴音には気づかれなかったようだが、メグには隠せなかったらしい。
「でも・・・」
このままではメグが辛いのでは、と言いかけたところで入り口に誰かがやってくる。
「ほら、お迎えだ」
そこにはヒル魔が立っていた。
「ご所望の肉はそこだよ」
「ああ」
気づけば部屋の片隅に凍り漬けの肉の塊が置かれていた。それを見てヒル魔は頷く。
「帰るぞ、糞嫁」
ひょい、とその荷物と同じようにまもりも抱き上げる。
「や! ちょっと、歩けますー!」
「煩い糞怪我人め」
きゃーきゃー騒ぐまもりを頓着せず担ぐヒル魔に、背後からメグの声が掛かる。
「ヒル魔」
「ア?」
「いい嫁さん貰ったね。大事にしなよ」
それにヒル魔は唇を歪めて見せた。

***
メグ姐さん初書き。すごく書きやすいこの人・・・! ルイさんは出してみたいけど役を決めていないので出さずにすませてしまいました。実は中途半端に保健体育の先生みたいなメグ姐さんを書いてしまったので、まもりちゃんに丁寧に教えてる所は割愛しました。ご希望があれば裏に完全版でアップしたいです(笑)
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同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
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