旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
頭の中はぼんやりとまとまりが無くて、手だけがいつもの手順でドリンクを作っていく。
まるで機械仕掛けみたいに、正確に同じ手順を繰り返す。
最初はいちいち計量していたスポーツドリンクの粉末も、今じゃ目分量で同じだけボトルに入れられる。
お湯を少し入れて、粉を溶かして水を入れて。
ボトルのキャップを閉めて並べていく。
ひとつひとつは全て同じで、どれを誰が飲むかなんて判らない。
判っていれば一つには液体と固体紙一重くらいの濃度で作って渡してやるのに。
特別に嫌がらせをしてやれるのに。
できあがったドリンクを箱に入れて運ぶ。最初は往復せずに運べた量も、今は二往復。
はちみつレモンも一緒に持って、二回目にはタオルも持って。
そのどれにも特別はなくて。
休憩の一声で皆が一斉にベンチにやってくる。
みんな同じ物を手にする。
私は平等で優しいみんなのマネージャー。
そんな肩書きが、時折とても嫌でたまらなくなるなんて、笑顔でお礼を言う皆には申し訳ないことを考える。
このみんなと私の間は時折透明な硝子があって、そこで止まっているような気さえする。
でも。
硝子ならいい。その気になったら割れる。
「おい、寄こせ」
「はい、どうぞ」
手渡しするドリンク、文句を言いながらも一枚は口にするはちみつレモン。
目に見える、作ったモノは滞りなく渡されるのに、目に見えないモノは一つとして届かない。
彼にはなにひとつ。
とても厚いアクリル水槽の話を思い出した。
透明度のとても高いそれは、世界各国の水族館に使用され、強固にその水を湛えている。
もしかしたら、彼はそんなアクリルの水槽に棲んでいるのかもしれない。
それを割ろうと足掻く私を嘲笑っているのかもしれない。
側に行きたい。
隣にいたい。
もしかしたらそれを耳にした誰もが酔狂だと呆れかえる気持ちを、私が抱いているなんて、彼は知らない。
目に見えないモノは届いていないから。
休憩時間が終わり、皆がボトルを戻し、タオルを置いて再びグラウンドに向かっていく。
消費されたボトルとタオルをまとめて抱えて、真っ先に戻っていった彼の姿を探す。
日の落ちかけたグラウンドに、長く長く影が伸びる。
特徴的な髪の影が、私の足下までやってきた。
それをそっと踏んでやる。
せめて、と思って影に触れる。
と、それを見たかのように彼はこちらを見ていて、人を小馬鹿にした笑みを浮かべていた。
私は素知らぬふりで肩をすくめ、荷物を抱えて部室へと戻る。
たぷんと揺れた水槽から溢れた水は、すぐにタオルの山に吸い込まれて判らなくなった。
***
水族館が好きです。海が目の前にあってダイビングしたらすごいよ、と誘われたとしても水族館です。
・・・あんまり泳げないんです、私。
拙作『戀』みたいな雰囲気が書きたくて書いてみました。
まるで機械仕掛けみたいに、正確に同じ手順を繰り返す。
最初はいちいち計量していたスポーツドリンクの粉末も、今じゃ目分量で同じだけボトルに入れられる。
お湯を少し入れて、粉を溶かして水を入れて。
ボトルのキャップを閉めて並べていく。
ひとつひとつは全て同じで、どれを誰が飲むかなんて判らない。
判っていれば一つには液体と固体紙一重くらいの濃度で作って渡してやるのに。
特別に嫌がらせをしてやれるのに。
できあがったドリンクを箱に入れて運ぶ。最初は往復せずに運べた量も、今は二往復。
はちみつレモンも一緒に持って、二回目にはタオルも持って。
そのどれにも特別はなくて。
休憩の一声で皆が一斉にベンチにやってくる。
みんな同じ物を手にする。
私は平等で優しいみんなのマネージャー。
そんな肩書きが、時折とても嫌でたまらなくなるなんて、笑顔でお礼を言う皆には申し訳ないことを考える。
このみんなと私の間は時折透明な硝子があって、そこで止まっているような気さえする。
でも。
硝子ならいい。その気になったら割れる。
「おい、寄こせ」
「はい、どうぞ」
手渡しするドリンク、文句を言いながらも一枚は口にするはちみつレモン。
目に見える、作ったモノは滞りなく渡されるのに、目に見えないモノは一つとして届かない。
彼にはなにひとつ。
とても厚いアクリル水槽の話を思い出した。
透明度のとても高いそれは、世界各国の水族館に使用され、強固にその水を湛えている。
もしかしたら、彼はそんなアクリルの水槽に棲んでいるのかもしれない。
それを割ろうと足掻く私を嘲笑っているのかもしれない。
側に行きたい。
隣にいたい。
もしかしたらそれを耳にした誰もが酔狂だと呆れかえる気持ちを、私が抱いているなんて、彼は知らない。
目に見えないモノは届いていないから。
休憩時間が終わり、皆がボトルを戻し、タオルを置いて再びグラウンドに向かっていく。
消費されたボトルとタオルをまとめて抱えて、真っ先に戻っていった彼の姿を探す。
日の落ちかけたグラウンドに、長く長く影が伸びる。
特徴的な髪の影が、私の足下までやってきた。
それをそっと踏んでやる。
せめて、と思って影に触れる。
と、それを見たかのように彼はこちらを見ていて、人を小馬鹿にした笑みを浮かべていた。
私は素知らぬふりで肩をすくめ、荷物を抱えて部室へと戻る。
たぷんと揺れた水槽から溢れた水は、すぐにタオルの山に吸い込まれて判らなくなった。
***
水族館が好きです。海が目の前にあってダイビングしたらすごいよ、と誘われたとしても水族館です。
・・・あんまり泳げないんです、私。
拙作『戀』みたいな雰囲気が書きたくて書いてみました。
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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現在のところ復活の予定はありません。
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