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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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イヤーロブ

(ヒルまも)

※3/15アップ『全身が震える程の(2)』の続きにあたります。

+ + + + + + + + + +
大学のキャンパスで、まもりは新しくこの地で出来た友人たちと次の講義を聴くために教室へと向かう。
時折遠くに響く銃声には気づかないふりで。
最初こそ皆恐怖におののき青ざめたものだが、一ヶ月も経つととりあえず彼に関しては触らぬ神に祟りなし、という方向に収まったようだ。
あの黒い手帳は今も健在である。
「あ、そのピアスかわいい!」
「でしょ~、やっぱ穴開けると便利よ」
友人の一人がきらきらと光るピアスをこれみよがしに見せる。
ちょっと芝居がかったそれは嫌味ではなく、皆がけらけらと笑う。
まもりはそんな中、曖昧に笑う。
「んー? まもりは嫌なの?」
「うん・・・とりあえず今はいいかな、と思う」
「えー?! ピアスの方がかわいいのいっぱいあるし、選びやすいじゃない。イヤリングみたいに痛くないし落ちないし」
「だって穴開けるのだって痛いじゃない」
「開けちゃえば平気だって~」
「そうそう、今のうちに開けた方がいいよ。夏になると膿みやすいって言うし」
わいわいと言いつのる皆の耳には色とりどりのピアス。
羨ましいと言うより、ピアスと聞いて思い出すのはあの二連のリングなのだ。
大体自分の身体を傷つけてするおしゃれには甚だ疑問がある。
まもりはそう素直に口にすると。
「・・・いつの時代の生まれなのよ、まもりってば」
かなり呆れられてしまったのだけれど、性分なんだからしょうがない。


講義が終わり、まもりは教科書をまとめて立ち上がる。
「まもりー、ご飯どうする?」
「私お弁当持って来てるから外で食べるわ」
「ふーん? じゃあうちらは食堂行くね~」
皆と別れ、お弁当が入った鞄を手に、屋上に上がる。
入学初日から彼が自らの領土としてしまった敷地に足を踏み入れる者はまもりくらいなものだ。
「遅ェ」
「だから自分で持って行ってって言ってるじゃない」
むくりと起きあがったのは、傍若無人な金髪悪魔。
「ヒル魔くんのその格好、本当に変わらないのねー。アメフトやらないなら意味ないんじゃない?」
はい、とお弁当を渡しながらそう言ってはみるが、まもりにだって今更黒髪ピアスなし大人しい姿のヒル魔なんて想像できない。
「アメフトの為だけの格好じゃねえよ」
ケ、と言いながらまもりが出した弁当を受け取り、代わりに紅茶の缶を押しつける。
「ふーん?」
まもりはそれを受け取りプルトップをぱしんと引き上げる。
彼氏と二人、屋上で弁当デート。
・・・と表現すると一見爽やかなようだが、相手がヒル魔ではどこかに黒い影が潜んでいそうで素直にそう思えない。
意外に綺麗な箸使いで弁当を食べるヒル魔の耳に自然と目が行く。
ピアスの話なんてしたからだ。
リングといっても小さなモノだから、揺れるタイプではない。隣り合っていてもぶつかって音を立てることはないのだろう。
重そうだと思ったこともあるが、耳朶が下がることはないので軽いらしい。
「・・・ア?」
その視線に気づいたのか、ヒル魔が缶コーヒーに口を付けてまもりの方へと顔を向ける。
「な、なんでもない」
「ホー?」
それに眉をぴんと上げるも、特に言及せず食事を続ける。そんな彼の様子に内心胸をなで下ろしながらまもりは紅茶の缶に口を付けた。


午後の授業も終わり、サークル活動もない日とあって、まもりは意気揚々と帰宅の準備を始める。
「あー! ちょっと待って、まもり!」
「え?」
「よかった、間に合った~」
午前中にピアスの話をした面々がぱたぱたと駆け寄って来て、訝しげなまもりに雑貨屋の袋を押しつけてくる。 「これ、うちらからのプレゼント!」
「受け取ってね」
「え? え? なんで?」
「いーからいーから!」
「じゃあ私らバイト行くからー!」
来たときのように唐突に友人たちは去っていく。
まもりは勢いに飲まれて受け取った雑貨屋の袋を覗き込む。
・・・あまりに予想通りの代物に、まもりの眉がハの字になった。


「ただいまー」
長年の習慣で、鍵を開けて入ってもつい言ってしまう。
誰もいないのは判っているから、返事がないからといって寂しくなることはない。
帰りに買い込んできた食材をひとまずキッチンに運び込む。
手早く着替え、髪の毛をクリップでまとめると、食材を取り出し夕食の準備を始める。
買い込んだ食材の一部は冷凍して保存するが、その下拵えもしながら手際よく。
手慣れた一連の動作に没頭するうちに、まもりの頭の中はピアスのことになっていった。
(ピアス、かあ)
(開けるの怖いなあ)
(血も出るんだろうし、消毒ってどうやるんだろう)
(引っかけたら痛そうだし・・・)
ぐつぐつと美味しそうに煮える鍋を前に、まもりはうーん、と唸る。
「なんだ、それ」
「キャ!」
まもりは背後から唐突に掛けられた声にびくりと背を強ばらせた。
振り返れば不審そうな顔のヒル魔。
「あ、おかえりなさい」
「タダイマ」
当初は挨拶しなかったのだが、散々文句を言い続けた結果、義理のように言うようになった。
「で、ソレはなんだ」
「これ? これは明日の夕飯の下拵え」
「ア? 今夜のは?」
「それはこれから作るのよ」
ふーん? と鍋を見るヒル魔の耳にやっぱり視線が向いてしまう。
「ピアスかあ・・・」
ついうっかり考えていたことがぽろりとこぼれてしまった。しまった、と思ってももう遅い。
「ア? とうとう開ける気になったか?」
「え、いや、その」
「糞友人どもにピアッサーも渡されたようだしナァ」
「・・・やっぱり知ってるのね」
今更驚く事じゃないが、相変わらずの情報収集能力。いったい誰が報告したのだろう。
にやにや笑う彼にさらりと髪を掻き上げられる。むき出しになった耳はまだ無傷だ。
「ちょっと、触らないで」
くすぐったくて首をすくめるまもりを余所に、ヒル魔は耳朶をつまむ。
「特に厚みがある訳じゃなし、フツーので一発だな」
「いやよ、開けたくないわ」
「ナンデ」
「・・・だって、親から貰った身体じゃない? なんでわざわざ傷つけてまでオシャレしようとするのかなあ、って」
「アァ? テメェいつの生まれだ? 年偽ってるんじゃねぇだろうな?」
「それ、友達にも言われた」
ぷう、と膨れてみせると、彼はケケケと笑う。
「いいじゃねぇか、穴ならもう開けただろ」
「はい? いやいや、まだ開けてないわよホラ」
「ここじゃねぇよ」
笑いながらヒル魔は首筋に不意打ちのキスを落とす。
「なっ!」
「とっくにお前はキズもんだ。今更耳に一つや二つ穴が増えたところで大して変わりゃしねぇよ」
くっくっ、と耳元で笑われて、まもりはちょっと考えてからヒル魔の発言の意味を理解し、じわじわと赤くなった。
その色の変化を間近で見て、更にヒル魔の笑いが深くなる。
「そ、そんな言い方・・・!」
「事実だろ」
さらりと返されてまもりは絶句する。
「・・・だ、誰のせいだと・・・」
「誰のせいでもねぇよなあ。お互い同意の上だったし?」
「いやー! 言わないでっ!!」
真っ赤な顔でまもりは悲鳴を上げて逃げようとするが、いつの間にやらがっちりとヒル魔の腕に捕まっていて逃れられない。
「まあまあ。こちらの穴も開けるなら手伝わせてイタダキマスヨ?」
「そんな言い方しないでよ!」
赤い顔のまま涙目で睨んでも、効果は微塵もないのだと彼は笑うばかり。
その手はちゃっかり鍋の火を消している。


そのまままもりは本日の夕食の準備もできないままキッチンから連れ出されて。

結果、夕食は宅配ピザと相成った。



翌朝、まもりはけだるい身体を無理矢理ベッドから引きはがして洗面台へと向かった。
顔を洗って鏡を覗き込む。
昨日の夜どさくさ紛れにヒル魔によって手際よく開けられたピアスが目に入る。
まだ違和感がある耳朶には怖くて触れないし、穴が開いたという実感もない。
こんなものに慣れるのだろうか。
ため息をつくまもりに、後ろからやって来たヒル魔はにやりと笑って一言。
「そのうちに慣れる。前例があるから判ってるだろ、姉崎」
まーしばらく消毒は手伝ってやるよ、と楽しげに笑うヒル魔の隣で、まもりは思いっきり顔を顰めた。


*** 
何の違和感もなく同棲している二人でした。大学では学部もサークルもゼミも違うので基本的に一緒ではない二人。ヒル魔さんアメフトはやってないという設定です。まもりがピアスについて否定的な意見を言ってますが、これは私がピアスを開けたときに弟たちに言われた台詞です。なぜ父ではなく弟・・・。これを書くのにwikiのピアスの項を読んでたのですが、読むだけで全身がぞわぞわしました。ヒー。
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