旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
僕たちはとっぷりと暗くなった道を、三人で歩いている。
話題はいつの間にかヒル魔さんと初めて会ったときのことになった。
「最初はいきなりボール投げつけられるわ拉致られるわ騙されるわで散々な印象だったぜ」
モン太がバナナを食べながらそう言う。
「そうだね。僕も最初は縛られるわ吊されるわ撃たれるわだったなぁ」
思い返せばパシリでしかなかった僕をそうやって無理矢理アメフトの世界に引きずり込んだんだっけ。
「なあんだ、最初からみんなやりたくて始めたアメフトじゃなかったの?」
「始めはすっごく怖かったし、今も怖いけど、それでもただ怖いのとはちょっと違うよ」
「俺はあんまり怖いっていう印象ねぇなあ。野球やってたからかな?」
さほど身長が変わらない僕らのちょっと下に鈴音の視線。
鈴音は僕たちがアメフトに熱中しているときからしか知らないから、意外だったみたい。
「あたしには最初から威嚇とか銃弾とかなかったけど、まも姐の時は?」
「えーと・・・騙されてたね」
「あ、やっぱり」
「でも銃弾は・・・あ、でも後になって撃ってたかも。まもり姉ちゃんもモップで応戦してた」
「やー? そういえばラスベガスでもモップ持ってた! どっから出してたんだろ」
「へえ、俺たち潰れてたから覚えてねぇよ」
「あはは・・・」
僕は曖昧に笑うしかない。まもり姉ちゃんのモップやホウキは長年側にいた僕にとっても謎が多い。
なにしろそれを使うようになったのは、アメフト部に入ってからだから。
「まもりさん、大丈夫かな」
モン太は部室に今も残るまもり姉ちゃんを心配する。練習がどんなに遅くなっても、まもり姉ちゃんは片づけをしてから帰る。普段ならまもり姉ちゃんの作業が終わるまで待って一緒に帰るのだけれど、今日は瀧くんが急用とかで鈴音を置いて帰ってしまったのだ。いくら鈴音が何かあったらインラインスケートで逃げるから、と言ってもまもり姉ちゃんは一人で帰るのを許さなかった。
「大丈夫でしょ。妖兄がいるんだから」
「送ったりするのか? うーん、想像出来ねぇ」
「意外と面倒見がいいから、ちゃんと駅まで送ってくれるってまもり姉ちゃんは言ってた」
へーえ、と二人が相槌を打つ。モン太は納得、鈴音は怪しい、という顔で。
モン太がいるからあまり騒がないけど、鈴音は本気でまもり姉ちゃんとヒル魔さんが付き合っているんじゃないか、と疑っている。
僕と二人だけになったりすると、二言目には『だってね!』と騒ぐのだ。
『しょっちゅう二人で残ってるし、サインとかで分かり合ってるし、あれとかこれとかそれとかで二人だけで理解しちゃうし、絶対怪しいって!』
そんな風に一生懸命言いつのる鈴音に、僕はなんとなくちゃんと言えなくて困ることが多い。
まもり姉ちゃんのことなら結構判ってるところがある。
自惚れでもなんでもなく、まもり姉ちゃんの一番長く側にいた他人は僕なのだ。
だから判る。
まもり姉ちゃんはヒル魔さんの中に迷い込んでしまっている。
あまりに真っ暗なヒル魔さんの中で出口を見失って、どうしたらいいのか判らなくて。
それでも律儀なまもり姉ちゃんのこと、仕事はやるし全てに完璧でそつがないように振る舞っている。
出られなくて困っているということをおくびにも出さず、誰にも助けを求めたりもしない。
あの二人は付き合っているとかじゃない。
まもり姉ちゃんの完全な片思い、しかも無自覚。
質が悪ィよな、と言ったのは十文字くんだった。
マネージャーの無自覚は、もう犯罪の域だ、とも。
そうだね、うん、僕もそう思う。
僕はその時の会話を思い出し、右手を握る。
昔この手を繋いだ相手は、別の人に迷い込んでしまっている。
あの青く美しい目が見る相手が僕ではなくなっている。
それを望んでいたのだろう、とヒル魔さんは言った。
それも望みの一部だったけど、それだけじゃないんです、と僕は言った。
僕はずっと、幼なじみで弟みたいなもので、男として見てもらうには小さすぎた。
あの手を引いてみたかった。
優しくて美しいまもり姉ちゃんを違う位置に据え置きたかった。
その可能性はまだゼロじゃないけれど、限りなく低くて僕はその事実に時折泣きそうになる。
僕はヒル魔さんの中からまもり姉ちゃんを連れ戻すことさえできやしない。
暗く暗く、何もかも飲み込む彼の前では、光はあまりに無力だ。
「セナ! もう、どうしたの、ぼーっとして」
「え? うん、なんでもない」
へら、と笑って言うと鈴音はそう? と小首を傾げた。
ねえ、まもり姉ちゃん。
もしヒル魔さんがまもり姉ちゃんを何とも思っていなかったら、中に入ることも出来なかったんだよ?
それに気づいたら、まもり姉ちゃんは出口を見つけるだろう。
そこはどんな場所なんだろう。
僕の足でもたどり着けないところだろうか。
何気なく振り返った背後の道は暗くて、僕とまもり姉ちゃんとの距離を思わせた。
***
ヒルまも←セナという図式、書いてみたかったんです。これだとヒル→まも←セナみたいですね。
セナだと頭の中で色々考えるので書きやすいです。実はモン太ちゃんと書いたの初めてです。難しい!
話題はいつの間にかヒル魔さんと初めて会ったときのことになった。
「最初はいきなりボール投げつけられるわ拉致られるわ騙されるわで散々な印象だったぜ」
モン太がバナナを食べながらそう言う。
「そうだね。僕も最初は縛られるわ吊されるわ撃たれるわだったなぁ」
思い返せばパシリでしかなかった僕をそうやって無理矢理アメフトの世界に引きずり込んだんだっけ。
「なあんだ、最初からみんなやりたくて始めたアメフトじゃなかったの?」
「始めはすっごく怖かったし、今も怖いけど、それでもただ怖いのとはちょっと違うよ」
「俺はあんまり怖いっていう印象ねぇなあ。野球やってたからかな?」
さほど身長が変わらない僕らのちょっと下に鈴音の視線。
鈴音は僕たちがアメフトに熱中しているときからしか知らないから、意外だったみたい。
「あたしには最初から威嚇とか銃弾とかなかったけど、まも姐の時は?」
「えーと・・・騙されてたね」
「あ、やっぱり」
「でも銃弾は・・・あ、でも後になって撃ってたかも。まもり姉ちゃんもモップで応戦してた」
「やー? そういえばラスベガスでもモップ持ってた! どっから出してたんだろ」
「へえ、俺たち潰れてたから覚えてねぇよ」
「あはは・・・」
僕は曖昧に笑うしかない。まもり姉ちゃんのモップやホウキは長年側にいた僕にとっても謎が多い。
なにしろそれを使うようになったのは、アメフト部に入ってからだから。
「まもりさん、大丈夫かな」
モン太は部室に今も残るまもり姉ちゃんを心配する。練習がどんなに遅くなっても、まもり姉ちゃんは片づけをしてから帰る。普段ならまもり姉ちゃんの作業が終わるまで待って一緒に帰るのだけれど、今日は瀧くんが急用とかで鈴音を置いて帰ってしまったのだ。いくら鈴音が何かあったらインラインスケートで逃げるから、と言ってもまもり姉ちゃんは一人で帰るのを許さなかった。
「大丈夫でしょ。妖兄がいるんだから」
「送ったりするのか? うーん、想像出来ねぇ」
「意外と面倒見がいいから、ちゃんと駅まで送ってくれるってまもり姉ちゃんは言ってた」
へーえ、と二人が相槌を打つ。モン太は納得、鈴音は怪しい、という顔で。
モン太がいるからあまり騒がないけど、鈴音は本気でまもり姉ちゃんとヒル魔さんが付き合っているんじゃないか、と疑っている。
僕と二人だけになったりすると、二言目には『だってね!』と騒ぐのだ。
『しょっちゅう二人で残ってるし、サインとかで分かり合ってるし、あれとかこれとかそれとかで二人だけで理解しちゃうし、絶対怪しいって!』
そんな風に一生懸命言いつのる鈴音に、僕はなんとなくちゃんと言えなくて困ることが多い。
まもり姉ちゃんのことなら結構判ってるところがある。
自惚れでもなんでもなく、まもり姉ちゃんの一番長く側にいた他人は僕なのだ。
だから判る。
まもり姉ちゃんはヒル魔さんの中に迷い込んでしまっている。
あまりに真っ暗なヒル魔さんの中で出口を見失って、どうしたらいいのか判らなくて。
それでも律儀なまもり姉ちゃんのこと、仕事はやるし全てに完璧でそつがないように振る舞っている。
出られなくて困っているということをおくびにも出さず、誰にも助けを求めたりもしない。
あの二人は付き合っているとかじゃない。
まもり姉ちゃんの完全な片思い、しかも無自覚。
質が悪ィよな、と言ったのは十文字くんだった。
マネージャーの無自覚は、もう犯罪の域だ、とも。
そうだね、うん、僕もそう思う。
僕はその時の会話を思い出し、右手を握る。
昔この手を繋いだ相手は、別の人に迷い込んでしまっている。
あの青く美しい目が見る相手が僕ではなくなっている。
それを望んでいたのだろう、とヒル魔さんは言った。
それも望みの一部だったけど、それだけじゃないんです、と僕は言った。
僕はずっと、幼なじみで弟みたいなもので、男として見てもらうには小さすぎた。
あの手を引いてみたかった。
優しくて美しいまもり姉ちゃんを違う位置に据え置きたかった。
その可能性はまだゼロじゃないけれど、限りなく低くて僕はその事実に時折泣きそうになる。
僕はヒル魔さんの中からまもり姉ちゃんを連れ戻すことさえできやしない。
暗く暗く、何もかも飲み込む彼の前では、光はあまりに無力だ。
「セナ! もう、どうしたの、ぼーっとして」
「え? うん、なんでもない」
へら、と笑って言うと鈴音はそう? と小首を傾げた。
ねえ、まもり姉ちゃん。
もしヒル魔さんがまもり姉ちゃんを何とも思っていなかったら、中に入ることも出来なかったんだよ?
それに気づいたら、まもり姉ちゃんは出口を見つけるだろう。
そこはどんな場所なんだろう。
僕の足でもたどり着けないところだろうか。
何気なく振り返った背後の道は暗くて、僕とまもり姉ちゃんとの距離を思わせた。
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ヒルまも←セナという図式、書いてみたかったんです。これだとヒル→まも←セナみたいですね。
セナだと頭の中で色々考えるので書きやすいです。実はモン太ちゃんと書いたの初めてです。難しい!
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鳥(とり)
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性別:
女性
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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