旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
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ここ数日、周囲の妖怪たちは慌ただしく働いていた。
どうやら『屋敷』の修理らしい。
「みんな、お疲れ様」
「ああ・・・」
「死ぬ・・・」
ぐだぐだと床に伸びる皆にお茶を配る。見た目にも体力的に自信がありそうな面々が横たわっているのはある意味壮観だ。
「大丈夫? そんなに辛いの?」
まもりが心配そうに尋ねても、皆は曖昧な返事だけしてすぐ消えてしまう。
あんなにいた面々はあっという間に消えてしまった。
「・・・嫌われてるのかな・・・」
人(?)付き合いに慣れてないまもりはどうしてよいものか途方に暮れる。
「なに凹んでんだ」
「・・・だって」
しゅん、と俯くまもりを音もなく背後から現れたヒル魔が抱き上げた。
この唐突な出現、まもりも慣れてしまってもう特に驚かない。
そのまま抱えられながらまもりは言葉を続ける。
「みんな最近忙しそうだし疲れているし、だけど私は何も出来ないし・・・」
落ち込むまもりの首筋に軽く唇を落として、ヒル魔はあー、と言った。
「とりあえずあいつらの前じゃ笑ってればいい」
「なによそれ」
「そのうちわかる」
なによ、ともう一度文句を言おうとして、まもりは現状にやっと気が付いた。
なんで目の前に布団。後ろ手に引き戸閉めてるし!!
「や、ちょっと! ヒル魔くんお腹空いてるんじゃないの!?」
「確かに減ってんナァ」
そう言いながらまもりの帯を掴む手に躊躇いはない。
「ちょっとー!」
「煩ぇな、まずはお前から喰ってやる」
何度こうなっても慣れないまもりの悲鳴を聞く者は、幸か不幸か誰もいなかった。
よく晴れた朝。
まもりがいつものように洗濯でもしようかと桶を持ち上げようとしたら、それを隣から唐突に現れたモン太に奪われた。
「まもりさん、これからちょっと俺たちと来て欲しいッス」
「え?」
「こっちだよ」
後ろからちょい、と袖を引く者がいる。セナだ。
「え? え?」
「やー! こっちこっち!」
ぽん、と中空から現れた鈴音がその手を取って、まもりを誘う。
まもりの両手をとる二人と後ろから追いかけてくるモン太と、四人で向かった先は、山道を抜けていく見晴らしのよい高台。
「わ・・・!」
中腹に掘られた穴の住居もかなり広かったが、眼下に広がる光景はその何倍もすごかった。
「おーい、姐さん!」
「やっと出来たよー!」
わーわーと騒ぐ面々がいるのは、大きな屋敷の正面玄関。
まもりが文献だけで見たことがある、東の様式の平屋建てがそこにあった。
瓦葺きの立派なそれは遠目に見てもかなりの大きさであることが伺える。
その周囲には幾つも長屋や店が並んでいる。さしずめ一つの村のようだ。
「早く来いよー!」
「うん、今行くー!」
言うなり鈴音もセナもモン太も姿を消してしまう。
来い、と言われてもまもりには降りる手だてがなく、どうしようかと逡巡していたら、背後から現れる慣れた腕がまもりを抱き上げる。
「行くぞ」
「わ」
ふわりと二人の身体が宙を舞う。
かなりの高さから全く危なげなく二人は揃って下へと着地した。
「ひ、ひるまくん、なにここ?!」
「ア? 言ってただろ、屋敷だ。で、ここがこれからの俺らの家だ」
「ええー!?」
屋敷と聞いてはいたが、これは想定外の大きさだ。その扉が中からからりと開かれる。
顔を出したのは、ひょろりと背の高い青年だった。にこにこと笑みを浮かべて挨拶する。
「おかえりなさい、ヒル魔さん」
「おー」
「・・・え?」
「こいつはお倉坊主の雪光。屋敷の管理人だ」
「初めまして、こんにちは。奥様とお呼びしてもいいですか?」
「えっ!? いや、やめて! そんなのイヤッ!」
慌てふためくまもりに雪光はくすくすと笑いながら、あっさりと、ではまもりさんとお呼びさせて頂きます、と引き下がった。
「ほーう? 俺の嫁扱いがイヤだと?」
「えっ、いや、そうじゃなくて!」
玄関先でまったく動かない二人に後ろからムサシが声を掛ける。
「おーい、そこでいつまでも止まってないで、中入れよ」
「そうだよー、僕もうお腹空いたよ」
「あー、そうだな」
それに便乗するように声を掛けた栗田にヒル魔は思い出したように屋敷へと入った。
庭に面した広間に皆がどやどやと集まってくる。
見覚えのない面子も沢山いたが、全てを覚えるにはまだ掛かりそうだ。
「いろんな人がいるのね・・・覚えられるかしら」
「覚えるだろ。時間は沢山ある」
隣のヒル魔は琥珀色の液体が入ったグラスをまもりに押しつけた。
たくさんの妖怪が集まる中、音頭を押しつけられた酒呑童子のどぶろくが杯を手に立ち上がる。
「んじゃ、まあ、ちょっと遅くなったけども、ヒル魔の結婚祝いってことで! 乾杯!!」
かんぱーい!! という声が合わさって最早轟音だ。
誰もが笑って、誰もがヒル魔の結婚を祝っていて、驚きから覚めたまもりは嬉しくてただただ笑う。
ふと感じた水の匂いにまもりは縁側を向いた。
「あ、雨」
けれど陽光は明るく差し込んでいて、細かな雨粒だけが静かに降り注いでいる。
「狐の嫁入りって言うの」
お酌をしに来た鈴音がそっと教える。
「まも姐が正式にヒル兄のお嫁さんになりましたってことなんだよ」
さあさあと降る雨は、二人を祝福する天の拍手のようだった。
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楽しかった・・・!このシリーズは色々書きたい脇役も多いので、話作りに困りません。
いくつか表を作った後に裏を書くべく準備中です。
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楽しかった・・・!このシリーズは色々書きたい脇役も多いので、話作りに困りません。
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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