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16．鼻歌だってお手の物

（ヒルまも）
ホワイトＤＡＹの一幕。

 まもりがこれでもか、と両手に抱えた甘い物の山に、ヒル魔は自然と嫌そうな顔になる。
「部室では食べないわよ」
「喰ったら殺す」
「おいしいのに」
「その糖分とカロリー言ってやろうか目算で。その糞過保護な性格で糞チビども一日追いかけ回したって消費しきれねえぞ。んで身体に脂肪つきまくって糞寸胴まっしぐら。糞デブ女の称号を俺から拝命する日も近いなケケケ」
いつもの三割増しで機嫌が悪い。
「別にヒル魔くんに食べてって言ったわけじゃないのに」
ぷう、と膨れて見せてもヒル魔は嫌そうな顔を崩さない。
「あー嫌だ嫌だ。そんな糞甘臭ぇもんばっかり喰って太ろうっつー糞マネの心配なんざしちまう自分が嫌だ」
「ん？」
ヒル魔の言葉に首を傾げる。
「まあ、あの地獄の日に糞甘臭ぇもんを寄越さなかったのは賢明だ」
その日が何を指すのかまもりは即座に読み取る。話題は逸れたようでそうでもない。
「あの日を地獄って言い切るんだ」
「聖人の命日に恋人の祝いなんざ地獄以外のなにもんでもねぇ」
「ねえ、じゃあ今日は？」
嫌そうに甘ったるい両腕の荷物を一瞥し、その上にヒル魔が載せたのは薄い箱。
「何？」
途端ににやにや笑うその顔。まもりは悪意を感じもしたけれど、ヒル魔からお返しが貰えるなんて、と嬉しい気持ちが勝った。
「さっきの発言といい、このプレゼントといい、今日はいい日ね」
開けていい？　と尋ねられてヒル魔はドーゾ、と言う。
「俺にとっちゃいい日じゃねぇな」
鼻歌交じりで包装を解き、蓋を取ったまもりは、その中身に目を点にする。
「え」
「さっきまでは、な。受け取ったな？」
「ちょ、ちょっと、ヒル魔くん！？　なに、これ！」
「サイズはぴったりなハズだぜ」
まもりの耳元に更に一言囁き、ヒル魔は鼻歌交じりにさっさとその場を後にする。


後には真っ赤になってオロオロするまもりだけが取り残されたのだった。

＊＊＊
バレンタインデーの時にはまだブログを開設してなかったので、ホワイトデーには便乗してみました。
ヒル魔が渡した物は女性用下着（実用性皆無）（反転）だと思われます。
何を囁いたかはご自由に想像下さい。