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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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とある会社の風景

(ヒル魔+αの微妙なパラレルギャグ)

+ + + + + + + + + +
ここは泥門デビルバッツカンパニー。

山積みの書類を目の前に、恐ろしい勢いでパソコンを叩く男が一人。
「糞ッ!!」
ヒル魔は最早山を越えて海と表現してもいいくらい広がった書類に埋もれながら仕事をしていた。
電話は鳴り響き、社員が書類やファイルを積み上げドタバタと駆け回る。
「ヒル魔さ-ん××会社からご指名で電話入ってまーす」
「内線6666!」
「はーい」
パソコンを打ちながら電話に出て指定の仕事の説明をし、最後に丁寧に挨拶しつつ、受話器を置いた途端。
「糞無能どもが余計な手間取らせやがって!! いい加減そのデータ処理は時間が掛かるっつーことを覚えろ!!」
先ほどの営業用の声とは打って変わって、独り言にしてはデカイ怒鳴り声を上げる。
「あの、ヒル魔くんね、一応会社ですからあんまりそういう言葉遣いは…」
「あぁ?!」
上司も忙しさにキレ気味のヒル魔相手では強く出られない。なにしろ彼が扱っている部署は忙しさが会社内でも随一なのに、ここ数日社員が相次いで倒れたり入院したりと人手が足りず散々なのだ。
ここでヒル魔が手を止めたら、今でこそ減りもしないが増えもしない書類が一挙に雪崩を起こすのは目に見えている。
「手は止めてねぇだろーがッ!! てめぇもそんな無駄口叩くヒマがあるなら仕事しろ仕事!!」
「ひ!! すみません!!」
「チッ!」

ぎゃーぎゃー騒ぎながら終業時間後も残業し、しばらくしてから区切りがつきそうだと一息つきかけたところで。
「あのうヒル魔さん、○○会社の■■さんがいつもお世話になってますからってこれ持ってきてくださったんですけど・・・」
ヒル魔の後輩であるセナがおずおずと紙袋を持ってきた。その様にヒル魔の血管が切れる。
「そーいうもんは受け取ると後が面倒だからつっかえせっつったろ糞チビ!!」
「ヒィィイイイ!! 僕だっていらないって返したんですけど・・・」
「叩き返せ!!」
「ダメですよお得意様なんですからー!」
「まあまあ、いいじゃないヒル魔。中に札束とか入ってたら僕が返しに行くよ」
同僚の栗田がその紙袋を受け取って中身を確認する。
「なんだぁ、お菓子だよ。いいじゃないこれくらい。ちょっと休憩してさ、みんなで食べようよ~」
その言葉を聞いてセナがコーヒーを淹れに行く。さすがに疲れを感じていた皆は仕事の残りをこのときばかりは忘れて手を止めた。
一人を除いて。
「ヒル魔も手、止めようよ~」
栗田の忠告を無視してヒル魔はまだパソコンに向かっている。こういうときに無理に中断させると周囲の被害が甚大なので、栗田も強くは出られない。
さほど待たずセナが人数分のコーヒーを持ってきた。
「はいどうぞ、ヒル魔さん」
「おー」
ブラックのそれを渡され、やっとヒル魔も手を止めて振り向く。
と。
「・・・なんだ、それ」
「あー、さっきのお菓子はチョコレートだったの。ヒル魔も食べる?」
「イラネ。なんで疲れてるときにそんな甘臭ぇもん喰わねぇといけねぇんだよ」
「フツーの人は疲れには甘いものがいいっていうよ」
「俺にそのフツーっつう曖昧な定義を押しつけるな糞デブ」
と、そこにイタズラ好きな女性事務員鈴音の姿。
「ねえ、妖兄」
「あ?」
声を掛けられ、そちらを向く。
やはり疲れていて油断していたのか、「あ」の形で開いた口に。
「・・・・・・・・・ッ!!!」
「やったー成功!」
なんとなんと、チョコレートを一欠片、入れてしまった。
「な、なんつー命知らずな・・・!」
「死人が出るぞ・・・!」
ざわざわざわざわ。
漣のように周囲に波紋が広がっていく。
ぴくりとも動かないヒル魔の姿を固唾を呑んで見守っていると、それを吐き出すこともせずヒル魔はそれを咀嚼して手にしていたコーヒーで一気に流し込んだ。
「コーヒー!」
「ハイッ!!」
セナが素早くカップを受け取って走っていく。
「・・・・・・糞事務、てめぇ覚えてろよ・・・・・・」
「え、えへへ…」
「ヒル魔、大丈夫?」
「甘ェ」
これ以上ないくらいのしかめっ面でヒル魔はコーヒーの到着を待つ。
「でも食べられるんだね、甘いものも。知らなかったなぁ」
「嫌いなもんと喰えねぇもんとは違うんだよ。ここが書類の山じゃなけりゃ吐き出したがな」
程なくして届いたコーヒーのおかわりで口直しをすると、ヒル魔はおもむろにパソコンに向かう。
「・・・・・・○○会社の■■からっつってたな?」
ケケケ、と響く悪魔の笑い声。
「ひ、ヒル魔? あのね、そこはお得意様だからね…?」
妖気を感じ取った栗田が恐る恐る声を掛けるが、怒りにブチ切れたヒル魔には全く効かない。
「俺にあんな甘いモン寄越す奴らなんぞ得意先なんかじゃねぇ! 地獄を見せてやらぁああ!!」
「わー誰かヒル魔を止めてー!」
「やめてヒル魔さーん!」
「先方はご好意で下さったんですよー!」
パソコンに浮かぶのは仕事の処理画面などではなく、悪魔のコウモリが飛び交う怪しいサイト。


その後○○会社の■■さんがどうなったかは、誰も知らないことになっている。

***
差し入れを貰ったんですが、ものすごく甘いチョコレートで正直嫌がらせかと思うほどでした。
私はヒル魔さんほどじゃないのですが甘いものが苦手なのでコーヒー片手に食べたのです。
ヒル魔さんは甘いものが嫌いだけど食べることはできるんじゃないかな、ということで。
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