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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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07.弱すぎた腕
(ヒルまも)


+ + + + + + + + + +
私が守れると思っていた少年は、いつの間にか私の腕をすり抜けて走り去ってしまった。
嘲笑う悪魔の元へ。

私、間違ってたのかな。
私の腕は、セナをダメにするためのものだったのかな。
こんな、弱くて、脆くて。
・・・なんだ、セナのこと散々言ってた私が最弱だったのね。

「ぼけっとしてねぇで歩け、糞マネ」
関東大会への出場切符を手に入れた帰り道、みな浮かれ気分なのに、どこか取り残された気持ちがまもりを思考の淵へ引きずり込む。
それを現実へと引き戻すのは全ての切っ掛けを与えた悪魔、もとい蛭魔妖一。
「・・・うん・・・」
いつもならそんな名で呼ぶなと怒るのだが、今日ばかりは返事も精彩を欠く。
「お前は俺に怒れ」
突然の言葉に、まもりの反応は遅れた。
「・・・え?」
ぼんやりとしたまま聞き返す。言葉の意味が掴みにくい。
「いつも通り俺に怒ればいい。『なんで私に秘密にしてたの!? ヒル魔くんの策略でしょう!!』ってな」
「・・・・・・だって・・・私が知ってたら、どんな状況でもセナに試合なんてさせないようにアメフト部を無理矢理やめさせただろうって思うわ」
いつの間にかみんなは先に行っていて、私たち二人だけがぽつんと取り残されている。
「だからセナの・・・ううん、みんなの邪魔になるって・・・ヒル魔くんが言うまでもなく、みんなも私には言えなかったんでしょう」
隠し事をされていた事実に怒りを覚えるよりも、気が付かなかった自己嫌悪の方が色濃い。そしてその事実を知った自分を改めて過去から見つめ直すと、なんと滑稽だったかと自嘲するしかないのだ。
言いながら、先ほどまでの歓喜の宴を思い返す。
宴の熱は、いつの間にか秋の夜風に奪い取られて、しんと冷えていた。
「ゴシャゴシャ考えやがって・・・」
面倒そうな様子だけど、私を置いて行くことはない。
この悪魔が意外と面倒見がいいということは、この数ヶ月で把握していた。
それに自分も含まれるのかと、ぼんやりと思った。
私の腕は何の役に立たないのに。そう思い知ったのに。
「お前はデビルバッツのマネージャー兼主務だ。それは今日改めて知っただろ」
入場の際のアナウンス。そこで名前を呼ばれたとき、涙は止まった。気持ちの整理はつかなかったけど、とりあえず目の前の仕事があった。
でも今は、もう。
何もない。
「・・・・・セナを守ろうっていう目的があったから、マネージャーになったのよ」
声がふるえた。喉元から熱い固まりがせり上がってきて、それを押さえつけようと胸元を掴む。
「セナを守ろうと、思ってたのに。この腕が・・・・・・セナを守るためのものじゃなかったって、思い知らされて・・・」

――――――――ねえ、私は何なの。何のために今ここにいるの。

言葉は続かなくて、私はぐっと奥歯を噛みしめた。
泣くのはお門違いだ。そんなの、私が一番判ってる。
「ああそうだな、それは糞チビを守るためのもんじゃねぇ」
私の言葉を遮り、ヒル魔くんは足音もなく近寄ってきて、左の二の腕を掴んだ。
「お前の腕は誰も守らなくていい」
瞬きをすると、堪えきれなかった涙がほろりと落ちる。
「お前の腕は俺たちを迎えるために使え」
セナも皆も、そしてこの悪魔も戻る場所を必要とするから。
腕を掴んだ手は大きく、骨張っている。掴まれたところが酷く熱い。
言葉以上にその手に求められているような気がして、やっと私は思考の淵から完全に脱却できた。

「行くぞ」
掴まれた腕を引かれ、歩き出すとその手はあっさりと離れた。
その熱が名残惜しくて、涙の余韻が残る声で話しかける。
「・・・ヒル魔くんの手、あったかいのね。もっと冷たいんだと思ってた」
「糞マネの腕が脂肪たっぷりで冷たいんだろ」
「なによもう! 失礼ね!」
ケケケ、と私のことを笑って怒らせる悪魔。おかげで、涙の余韻はすぐに消えた。

でもあの手のひらの熱の余韻は、いつまで経っても消えることがなかった、と。

そう告げる日は、まだ遠く。


***
時系列的に天候に纏わる5つのお題01台風が来る!の続きのようになりました。別にこれだけでもOKです。
ヒル魔さんの手はあたたかいとおもいます。男性だし筋肉質だから暑がりな気がする。
でもQBだから肩を冷やさないように絶対に半袖よりも短いのは着ないと思われます。
この後盛大に鈴音あたりにひやかされるとよいよ、二人とも。
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