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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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風が吹けば

(ヒルまも)

+ + + + + + + + + +
今日は風が強い。
それは乾いて細かくなったグラウンドの土埃を巻き上げて、その上に立っていたアメフト部員達を襲った。
「うわっ!」
「げっほ!」
まともにくらって噎せる者、瞼を閉じて避ける者、様々に動きを止め、突発的なそれから逃れる。
「ヤー、大丈夫?」
本日はチアの練習がない鈴音が次々とうずくまる部員達にローラーブレードであっという間に近寄る。
「僕はコレがあるから平気だけど、他のみんなは辛そうだね」
セナがコツ、と自らのアイシールドを叩く。
他の者たちは顔に張り付いた土埃に顔を顰めたりしつつも大事ないようだ。
「風ごときで竦んでんじゃねぇ! おら次行くぞ!」
強風にも負けないヒル魔の声が飛んできて、セナは慌てて自らの定位置についた。
ところが。
「・・・?」
練習が再開しない。
声を掛けておきながらボールを手に視線を遠くに投げて立つヒル魔に、セナとその近くにいた鈴音は首を傾げる。わらわらと他のバックス面子も集まってきた。
「ヒル魔さん?」
「ちょっと待ってろ」
一言言い置いてそのまますたすたと歩いていってしまった。その先にいるのはうずくまったまもりの姿。
「やー?! まも姐どうしたの!?」
鈴音が声を上げる。見れば俯きしゃがみ込んでいる。足下には取り落としたらしい救急箱。
「すすす鈴音! ちょっと待って!」
「ムキャ?! まもりさんが・・・!」
「もももモン太! ちょ・・・」
まもりに駆け寄ろうとする二人を押しとどめるセナの後ろで、ヒル魔がまもりに手を伸ばした。

「おい糞マネ」
「・・・ヒル魔くん?」
しゃがみ込んでぼろぼろと涙を零して俯くまもりは、声の方に幽かに頭を動かした。
だが、目が痛くて動きが鈍い。
その顎をぐい、と掴まれた。
「ゴミが入ったのか」
「そうみたい」
「どっちだ」
「右・・・」
「そっちの目ェ開けろ」
「・・・無理」
涙が溢れて止まらない。いつもは容易く持ち上げる瞼は今日に限ってひどく重い。
これだけ泣いていればゴミくらいとれそうなものなのにゴロゴロする痛みは消えない。
と、強引にヒル魔の指が彼女の瞼を押し上げる。
「イタタタ!」
「目ェ閉じっぱなしじゃ取れるわけねぇだろうが」
「だって、痛いんだもの」
ず、と鼻を啜って文句を言うまもりの瞳のゴミは見て取れない。
水で洗い流すのが一番なのだろうが、なぜだかヒル魔はにやりと笑った。
幸か不幸か痛みに視界不良のまもりには見えなかったけれども。
そうして更にかがみ込んで彼女の顔に己のそれを寄せたヒル魔は、おもむろにまもりの瞳をぺろりと舐めた。
「――――――――~~~?!」
異様な感触にまもりは声もなく飛び上がる。
けれど暴れる彼女に構わず、ヒル魔はなおも数度舌を這わせるとその耳に低く囁いた。
「取れたか?」
「え?」
「ゴミ」
まもりはぱちぱちと瞬きする。痛みはなくなっていた。
「・・・取れたみたい」
「それは重畳」
にやりと笑われて、呆然としていたまもりははっと我に返る。
「でも! お礼は言いません!!」
「オヤ? 糞風紀委員ともあろう人が感謝の言葉一つないんデスカ?」
「いやいや! これ、お礼言うとかそういうことじゃないわよ!」
「ゴミ取ってやっただろうが」
「あんな取り方ないでしょ!」
普通は水で流すのよ! と憤慨するまもりにヒル魔は楽しそうに笑うばかり。
「水道まで結構距離あったからナァ。あの状態じゃ一人で歩けなかっただろ」
「でも! だったら肩貸すとか!」
「アー、それは気づきませんデシタ。糞マネはお姫様抱っこをご所望デシタカ」
「なんでそうなるの!?」
「肩貸して歩くなんて効率悪いことするくらいなら抱えて行った方が早いだろ」
「いやいやいやいや! 何その発想! ありえないでしょ!」
「結果的にゴミ取れたんだからいいだろうが。謝礼寄こせ」
「なんで更に謝礼まで要求するのよー!!」

ぎゃーぎゃーと騒ぐ二人の様子に、風に吹かれたまま部員達は脱力する。
なんでもいいから早く練習再開してくれないかな、と皆の心が一致した。

***
目の前でいちゃつかれて皆が石化したらいい、という初期の自己設定を思い出して書いてみました。
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