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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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無自覚トラップ(中)


+ + + + + + + + + +
「フー。飲み方に音楽性が感じられないな」
「飲み方に音楽関係ないッスよ!」
「だったら音楽的な飲み方ってのを教えろよカス」
「いいだろう。まずコードを・・・」
「コード関係ねぇだろ!」
「ギター必要ないッス!」
ぎゃあぎゃあと神竜寺コンビの突っ込みを受ける赤羽はそれでも平然とビールを飲んでいる。
やっぱり彼も平然と飲んでいる。
「・・・大学生になったら、お酒もフツーに飲めないといけないんですね・・・」
「そういうわけじゃないが、野郎同士だと隠れて飲んだりすることが多いんだろうな」
番場が他の面子よりはやや遅れてジョッキを空にした。彼も誕生日によってはまだ未成年かもしれないが、彼の顔つきから突っ込む者はそうそういないだろうと感じられた。やはり身体が大きいとあまり年齢を若く見られる事もないのだろう。
かくいうまもりも、どちらかといえばクウォーター故かよく年上に見られる。
今回ばかりは外見に感謝かな、と。
次々に運ばれてくる居酒屋メニューに目を奪われつつそんなことを考える。
「あ、サラダ取り分けますね。何か苦手なものありますか?」
小皿と大皿料理が出てきたとき、ようやくまもりの調子が戻ってきた。
てきぱきと料理を取り分ける姿は甲斐甲斐しく、いつかのワールドカップの時のようだ。
「適当に取るからいいッスよ」
「いいえ! こういうところくらいしか活躍できませんから」
どうぞ、と皿を渡され一休がでれっと笑み崩れる。
「やっぱり女の人がいると違うッスね~」
「ンだぁ? 相変わらず童貞な発言してんじゃねぇか」
「どっ・・・! 止めて下さいよ、阿含さん!」
真っ赤になって阿含に食ってかかる一休を前に、まもりは笑みを絶やさない。
きっと意味が分かってないんだろうな、と番場と赤羽は互いに視線を交わしてそれ以上追求しなかった。


やがて。
徐々に酒が混じって宴席が崩れ始める頃合いになっても、この五人は席を譲らなかった。
先輩方もまもりと話がしたいらしく、次々にやってくるが阿含の口の悪さ、赤羽の意味不明さ、番場の頑固さに阻まれ長居は出来ない。
それでも皆がグラスを手にどうにか隙間に入り込もうとするのは。
「・・・姉崎、大丈夫か?」
すっかり酒が回って赤面したまもりの姿があまりに魅惑的だからだろう。
番場が心配してかけた声にも、こっくりと頷くだけで口を開かない。
彼女は特段賑々しいわけでもないが、無口でもない。
新しい料理が出てきても、先ほどのように率先して取り分けるということもしない。
ただ赤い顔をして上機嫌で座っているだけだ。
グラスを両手でもってにこにこと笑うその姿は、普段の大人びた雰囲気とは違って随分と幼く見えた。
暑いのだろう、胸元が緩められて赤く染まった胸元までがよく見える。
「無理しない方がいいッスよ。ウーロン茶でも頼みましょうか?」
まもりはのったりと首を動かすと、酔って僅かに焦点の合わない瞳で一休を見つめた。
「だいじょーぶ」
「・・・っ!」
舌っ足らずでゆっくりした口調。そんな風情で大丈夫もへったくれもないが、一休の意識は全く違う方向に向かってしまった。
「おーおー。何おっ勃ててんだ?」
「・・・ダメッス!!!」
がたん、と派手な音を立てて一休は走ってトイレへと向かってしまった。バック走で行けばいいのに、と爆笑して転がる阿含に番場は冷ややかだ。
「女性もいる席であんまり下品なこと言うんじゃない」
「元々品なんざ関係ないところだろーが」
番場にさほど臆することもなく阿含はもう何杯目とも知れないジョッキを空け、更に代わりを所望する。どうやら彼は才能の他に酒についても限界という文字を知らないようだった。

「一人脱落、っと」
小さく阿含が呟く。誰も拾わなかったが、不穏であることだけは番場には察知できた。
赤羽は顔色こそ変わらないが、どうやら相当に酔っているらしい。
ギターをしきりに触り、掻き鳴らしては他のテーブルから煩いとヤジが入っている。
これは大丈夫だろうか、と番場が少々不安を覚え始める。

<続>
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