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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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涙に満ちる

(ヒルまも)

※ヒル魔の方が一つ年上です。
※30000HIT御礼企画作品

+ + + + + + + + + +
まもりは歓喜に沸き立つグラウンドで皆ともみくちゃになって大いに笑って泣いていた。
二年生が四人、その他は一年生が占める弱小アメフト部が、一つ一つ難関を乗り越えてとうとう頂点までたどり着いたのだ。まるでおもちゃ箱をぶちまけたような幸せな騒動の中で、まもりは一人の男を見つけ出す。
この舞台に立つためのありとあらゆる謀略策略そして努力を惜しまなかった悪魔。
派手な外見と話術にはぐらかされるその実態は、判りにくく優しいところもあるごく普通の男子高校生だった。
そうして、まもりが心密かに想う人。
「ヒル魔! 先輩!」
「おー糞マネ」
どうにか歓喜の輪から抜け出し、まもりはヒル魔の元に歩み寄る。
「優勝、しました、ね!」
「おー。なんだテメェ、どっか栓壊れたか?」
ぼろぼろとまもりの碧い瞳から溢れる涙を見て、ヒル魔はにやりと笑った。
「あんまり泣いてっとあそこの渦に投げ込むぞオラ」
未だ歓喜に沸き立つ人の渦の圧力を先ほどまで味わっていたまもりは、それは勘弁願いたいと笑おうとした。
したのだけれど。
「・・おい?」
まもりの顔がくしゃりと歪む。それが喜びの色だけではない事を、この人の機敏に聡い男は気がついたようだ。
「うー・・・」
まもりはヒル魔に渡そうと用意していたタオルを握って、その場に俯いてしまう。
「なんで泣く。喜べ。むしろ笑え」
面倒そうな声に紛れ込ませた心配に、まもりはとうとうタオルを顔に当てて本気で泣き出してしまった。
「・・・っ、・・・ぅう・・」
「・・・どーしろっつーんだ・・・」
困ったようなヒル魔の声に、まもりは必死で涙を堪えようと思うのだが、涙は溢れて止まらないし、しゃくり上げるたびに肩が跳ねて喉が痛くてたまらない。こんなに泣けてしまうのは、優勝が嬉しい事以上に、これ以上ヒル魔と部活が続けられないという事実に打ちのめされたからだ。
諾々と胴上げされるヒル魔なんて見てしまったから。
嬉しそうにみんなに紛れて笑い合っているのを見るのは嬉しかったけれど。
もうこれで終わってしまう。ヒル魔と共に過ごしてきた八ヶ月が。
ぽす、とまもりの頭に手が乗る。
ヒル魔の手のひらだ。普段人を褒めるときも貶すときも基本手を使わず足を使い続けてきた彼の珍しい行動に、まもりはひゅっと息を呑んだ。
これ、いわゆる『いいこいいこ』でしょうか。
ぐずる子を宥めるように触れる手に、まもりは思わず顔を上げた。
そこには予想通り渋面のヒル魔の顔。
けれどまもりと視線が合うと、ふっと苦笑いされる。
「なんだか捨てられた猫みてぇな顔してんな」
「ね・・・」
猫なんかじゃない、と言い返す前にもう一度言葉が重なる。
「なんで泣く?」
手もそのままに、彼が発したと思えぬ程優しい声音に、まもりは再び涙を零す。
けれどその言葉に後押しされるようにして口を開いた。
「・・・もう・・・一緒に、部活、出来ないんだと思って」
「ア?」
「ぶ、部活くらいでしか、会えないのに・・・っ」
そこまで発して、まもりの涙腺は再び決壊した。大粒の涙がぼろぼろと溢れては滴る。
唖然としたようなヒル魔の顔に、どこか冷静なまもりの一部が珍しいものみちゃった、なんて考えている。
「・・・あのなあ・・・」
更に被せるように掛けられた呆れたような声に、まもりは堪えきれず声を上げて泣き出した。
「う、うえー・・・」
背後では他の部員達が異変に気づいて遠巻きに二人を眺めている。
黒木や鈴音はどこから出したのかカメラを構えているし、仲裁に入ろうとするモン太は小結に止められているし、栗田は泡を食っているしムサシとどぶろくはにやりと楽しげに笑みを浮かべている。
石丸やセナや戸叶、十文字は気遣わしげに眺めているし、瀧は関係なく回っている。
全ての視線を受け止めて居心地が悪くなり、まもりはますますいたたまれなくなった。涙が止まらない。
「誰が部活止めるって?」
「ふぇ・・・っきゃあ!?」
がっとヒル魔の手がまもりの頭をがっちりと掴んだ。
いわゆるアイアンクロー。その痛みにまもりは悲鳴を上げて、その拍子に涙も止まった。
「テメェなあ、確かにクリスマスボウルは今終わったが、まだまだまだまだテメェら糞ガキ共はやる事山積みだろうが!」
「イタタタタ!!」
ぎぎぎぎ、と音がしそうな程掴まれてまもりはもがく。周囲は年下の女の子相手に大人げない! とざわめいている反面まあヒル魔だし、と訳のわからない納得もしている。
「何を一人嘆いてるか知らねぇが、俺の支配から早々逃れられるとは思うなよ!!」
「イター!!」
まもりが痛みに本気で涙を零したのを見て、ヒル魔はやっと手を放した。
くらくらする頭を抑えながらまもりは呻く。
「ひどいですっ」
「ヒデェのはどっちだ。勝手に人を引退させやがって!」
「だって・・・」
「だっても明後日もねぇ! ったく!」
結局なんだかいつもの言い合いで終わりそうな気配を感じて、皆が拍子抜けしつつ思い出したかのようにコーチをしてくれた関東勢の所に走っていく。
「ありがとーございましたーっ!」
「したーっ!」
「ありがとうございまッス!」
わあわあと客席に向かって騒ぐメンバーにのんびりとした足取りでついていくヒル魔の後を、まもりはゆっくりとついていく。いつもはかなりの早足で歩く彼が、今日ばかりは随分とゆっくりだ。
もしかしたら膝が痛いのかも、と思案するまもりの前で、ヒル魔はくるりと方向転換した。
「オイ」
「はい?」
まもりの視界に金色が入った、と思った途端に頬にあたたかい感触。
「随分冷えてんな」
「・・・なっ?!」
頬にキスされたのだと気がついて、まもりの顔が真っ赤になる。
「ええ?!」
「今までの労働にゴホウビだ」
「ごっ・・・え?! え、これご褒美?! ってええ?!」
慌てるまもりにニヤニヤと質の悪い笑みを浮かべてヒル魔は彼女の頭を再び撫でる。
「クリスマスボウルが終わったから、自分へのゴホウビも兼ねてな」
「え? ・・・えええ?!」
理解してまもりはぷしゅう、と湯気が出そうな程に真っ赤になる。
「不満か?」
「いいえ!!」
そこでめいっぱい首を振ってしまって、はっと気がついても後の祭り。
「YA――――HA――――!!」
「ってええええー!?」
喧噪に包まれているフィールドで声を限りに叫んでも誰も気に留めない。
ニヤニヤ笑うヒル魔に真っ赤になって食ってかかるまもりの姿、そんないつもの二人がオーロラビジョンに派手に映し出されていて。後日、まもりは校内外問わず派手に皆に冷やかされたのだった。

***
唯様リクエスト『ヒルマの方が1つぐらい年上で、まもりが新入生で泥門に入学。セナと同級生で二人でデビルバッツに入部させられるとか・・・・』でした。すみませんその間全部すっ飛ばしてクリスマスボウルにまで行ってしまいました・・・! いやホラもう一個の幼なじみと被りそうだったので! ここのところヒル魔からまもりへのベクトルが強い話ばかりだったので、逆にしてみました。いじらしく惚れるまもりちゃんを書こうとしていたのにすっ飛ばしすぎました・・・! しかし楽しかったです! 原作でもこうやってくっつかないかなあ(夢見すぎ?)
リクエストありがとうございましたー!!

唯様のみお持ち帰り可。
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