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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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支え合う日常

(ヒルまも)
※6/21アップ『青い軌跡』の続きです。
※30000HIT御礼企画作品

+ + + + + + + + + +
NFLのスタジアムに立つヒル魔に、客席から見ているまもりは目を細める。
プロの集団に紛れてしまえばヒル魔はかなり小柄だ。
実際彼はその体躯故にプロへの道を危ぶまれつつも知略謀略の限りを尽くし、レギュラーの座へたどり着いた。実際に試合に出るようになれば、彼程度の肩を持つ者はそこらに溢れていたが、それ以上に繰り出されるトリックの数々は百戦錬磨のプロ達をも惑わせ、チームを勝利に導く事が多くなった。
だから単純なボールの飛距離を求められれば別だが、頭脳を求められるシーンで彼は重用されるようになる。
その分サックなどの攻撃に晒される危険性は格段に上がるため、まもりはベンチ入りこそしていないものの、客席で常に彼のプレーを見つめていた。何が起きても即座に対処できるように
「SET!」
響く声は高校から変わらない。
戦う舞台が日本からアメリカに移っても、彼は自らのスタンスを変えることなく戦い続けていた。
まもりはそんな彼を支えることに全力を注いでいる。
「HUT!」
ボールがスナップされ、試合が動く。
ライン同士がぶつかり合い、パスを受け取るレシーバー達が散る中にレーザーの如くボールが飛んでいく。
完全に相手の不意をついた動きでボールを進めていく手管はさすがの一言だ。
かつてデビルバッツ時代には選手達が両面通してギリギリのところで戦わなければならなかったが、今はそんなこともない。専門でそのポジションに着くために切磋琢磨している連中ばかりが集まったチームである。
それをヒル魔が練った作戦で巧みに操れば、攻撃力も上がろうというもの。
「・・・?」
フィールドを駆け抜けるヒル魔の姿を見て、まもりは眉を寄せた。
気のせいかも知れない。でも、おかしい。
試合はヒル魔の所属するチームが圧倒的な力の差で勝った。
まもりは試合終了のホイッスルが鳴ると同時にその場を離れ、選手用の通用口に向かう。
『お嬢ちゃん、ここは選手専用の出口だぜ! 誰が目当てか知らねぇが、連中は当分出てこねぇよ』
警備員に諭されるも、まもりはその場を動かず待つ。
そして程なくして着替えたヒル魔が現れた。
『ヒル魔じゃねぇか、アンタもう帰るのか?』
勝利チームの要であるヒル魔が早々に現れた事に警備員は驚き目を丸くするが。
『お疲れ様、妖一』
『愛妻のお迎えじゃ帰らないわけにはいかねぇな』
笑顔で彼を迎えたまもりに警備員は更に驚く。
『妻?! アンタ結婚してたのか?!』
『おー。じゃあな』
ケケケと笑いながらヒル魔はまもりを伴って駐車場に向かう。
そこにあった車の後部座席に二人して乗り込むと、まもりは笑みを引っ込め、問答無用でヒル魔のズボンの裾を捲り上げた。
「・・・やっぱり」
そこは赤く熱を持って腫れていた。
原因が他選手との接触か疲労かは判らないが、一刻も早く冷やさなければならない。
常備している救急箱から手早く保冷剤を脚にあてがい、固定する。
「気づいたのはテメェだけだ」
「そうかしら。判りやすく動きが鈍ったわよ」
「んなヘマしてねぇよ」
それでも痛みがあったのだろう、保冷剤をあてがわれてヒル魔は細く息をついた。
「もう癖になっちゃってるもんね、膝。次の試合まで絶対安静よ」
「ハイハイ」
救急箱をしまいながらまもりは眉を寄せる。
仲間にも弱みを見せないのは相変わらずで、きっとヒル魔は仲間にも適当な言い訳をして抜け出してきたに違いないのだ。かつてとは違い、自らの気分如何で練習を調節する程の立場にいない彼は、怪我をしていていも隠して練習に行ってしまう。それでは治りも遅いし、結果としてチームに迷惑が掛かるといくら言っても聞き入れない。我慢強いのは立派だが、我慢のしどころを間違えてはならないのに。
「スーパーボウルを目指すならもう少し自重してよ」
「してる」
「どこが!」
NFLの最高峰『スーパーボウル』に参加するのは多くのアメフト選手の夢だ。ましてや日本人として未だ叶えた事のない夢なら尚更だろう。
「もし妖一がちゃんと休まないなら私にも考えがあるわよ」
「ホー?」
どうするんだ、と片眉を上げたいつもの視線で問われて、まもりは嫣然と告げる。
「私が実家に帰るわ」
「アァ?!」
「自分一人で体調管理も怪我の手当もちゃんとしてね。私が居ないから、なんて言い訳聞かないし?」
「・・・」
にっこりと笑うまもりに、ヒル魔は顔を引きつらせる。
「勿論日本に来たってちゃんとシーズンオフになるまで顔も合わせないし、電話もメールもインターネットも接触不可。でも大丈夫でしょ? 私一人いなくったって」
「・・・テメェそれ本気で言ってるのか・・・」
「あら、難しい話じゃないわよ。ちゃんと怪我のケアしてくれるなら私だって実家に帰るなんて言わないわ」
「・・・くっ」
苦虫を噛み潰したような顔のヒル魔に、まもりは殊更笑みを深くする。
「自分を大事にして欲しいのよ」
ヒル魔を案ずる優しい顔に、彼は眉間に皺を寄せて渋々頷いた。
結局のところ、まもりのサポートなしにシーズンを勝ち抜くのは相当に辛い。
彼女が渡米するまでの間、どれだけ怪我や孤独に悩まされたか。
勿論口に出して言った事はないのだけれど、それくらいまもりはお見通しなのだ。
「妖一がやりたいことを止めないわ。精一杯フォローする。だからちゃんと頼ってね」
「ああ」
ヒル魔はまもりを抱き寄せ、キスをする。
その腕に彼女が居るときに一番気が休まるのだとまもりは気づいていないのか。
かつて高校生の時に抱いていた感情よりもっとずっとあたたかく深く優しいものに満たされる。
「じゃ、そろそろお家に帰りましょ。夕飯は何が食べたい?」
キーを片手に、まもりは運転席へと行こうとするが、それはヒル魔に奪われた。
「え?」
「俺が運転する」
「怪我!」
「煩ェな、運転くらいなら平気だろ」
すたすたと庇う様子無く車に乗り込み、エンジンを掛けるヒル魔に非難がましい視線を投げつつまもりは助手席に回る。
「飯は外で食うぞ」
「え? 私作るわよ?」
いいから、と制してヒル魔は手慣れた様子で車を操る。
当初運転するヒル魔にものすごく違和感を覚えたが、こちらで生活するのに車なくしては難しいから必要に迫られたと言われれば納得できた。
それでも彼なら脅迫手帳片手に誰かに運転させそうな気はしたのだけれど。
「どこに行くの?」
「アー、とりあえず肉」
「野菜もあるところにしてね?」
「アー、ハイハイ」
彼の運転する車は滑らかに街へと向かっていき、平和な一日が今日も終わる。


***
ルカ様リクエスト『クリスマスボウル優勝後、アメリカに渡る、どこまでもアメフトを追い続ける蛭魔と、どこまでも蛭魔を追い続けるまもり』でした。・・・すみません、どうにもあの二人でアメリカに行ってアメフトやって、となるとこの設定が強すぎて他に浮かびませんでした・・・。楽しく書かせていただいてしまいました。
リクエストありがとうございましたー!!

ルカ様のみお持ち帰り可。
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