旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
まもりが鬱々とした気分で洗濯を畳んでいた日の午後。
遥か上空から爆音が近づいてくる。
異様なほど大きく聞こえるそれに、まもりは不信感も露わに部室から顔を出し、天を望む。
「?!」
徐々に姿を現したのは、巨大な戦闘機。
いかにも狭いだろうこのグラウンドに、躊躇うことなく降り立ったそれに誰もが言葉を失った。
「な・・・どうしたの!?」
慌てて駆け寄ると、かぱりと開いたコクピットから立ち上がる細い姿。
逆光になり、姿は黒々と、けれど髪だけは金色に煌めくその姿に、まもりは一瞬足を止めた。
「糞マネ」
呼ばれて、ひょいと投げられたのはビデオ。
「編集しておけ」
まもりがさもそれをやるのが当たり前、といわんばかりのぞんざいな口調。
けれど彼が、いつも通り笑っていたから。
鬱々とした気分がすこんと抜け落ちて、なんだか落ち着く。
まもりはビデオを胸に一つ頷くと、部室へと足を運ぶ。
背後では司令塔の帰還にセナを始めとした面々の賑やかな声が聞こえていて。
それに高笑いが混ざって響くのが、何となく嬉しくなって、自然と足取りも軽くなった。
照明を落とした部室のスクリーンに映し出される光景に、まもりは息を呑む。
あからさまに不必要だと思われる部分は削り落としながら、彼が得てきた『最強』アメリカの情報を纏めていく。
画面はほとんどパンサーの走り一色だった。
あの短い期間中に動く彼を捉えられたのは僥倖だと言えよう。
「・・・すごい」
思わず呟いてしまう。
バネが違うとは知っていたし、ほんの一瞬ならセナと戦う彼を目の前で見た。
けれど、あの時にはなかった『経験』が彼の実力をより押し上げている。
更にペンタゴンと呼ばれる最強メンバーがいるのだと映像の中で誰かが喋っていた。
とすれば、その一角がパンサーであって、それ以外にも相当な実力者がいるのだと思われる。
まもりは映像を前に、ただ立ちつくす。
「出来たか」
突然、背後から伸びてきた腕がまもりの肩を掴んだ。
「きゃん!」
悲鳴を上げて飛び上がったまもりは、勢いよく背後を伺う。
「おーおー、随分と・・・」
そこにいたのは、勿体ぶった声で含みを持たせ、言葉を切って見下ろすヒル魔。
いつものようににやにやと笑っている。
「んもう! 驚かせないでよ!」
「ア? 驚かせたつもりはねぇなァ」
俺はフツーに部室の扉開けて入って来たんだぜ、と言われてまもりは眉を寄せる。
照明を落とした室内だから、扉を開けば明るくなってすぐ知れるはずなのに。
「夢中になって画面見てて気づかなかっただけだろ」
「そ、んなことは!」
「あるなァ」
不意に伸びてきた指がまもりの頬を突く。
「なに?!」
「エロい顔」
「えぇええ!?」
とんでもない表現にまもりは赤くなる。
慌てて否定しようとするまもりに、ヒル魔は笑いながら更に一歩近寄った。
「こ、来ないでよ!」
「何焦ってんだ?」
どん、と音を立ててまもりはカジノのテーブルの縁に背中をぶつけてよろける。
「だって、そんな顔してないって」
「ホー?」
不安定なまもりの身体の両脇に、腕が伸びて。
まるで籠のようにまもりを閉じこめる。
「興奮したんだろ?」
にたあ、と笑うヒル魔の顔は、悪魔じみているというよりは、むしろ。
「こんなに強い奴と戦うんだってナァ」
悪戯っ子のような、新しい遊びを見つけた子のような、そんな笑みで。
けれど、すぐにその眸は剣呑に眇められた。
「テメェは悪魔の一員だ。そう思うのは当然だろ?」
まもりは目を見開き、ヒル魔を見上げた。
「そういえば―――俺がいない間に、大和達が来たんだってなァ?」
「っ」
びく、とまもりは肩を震わせる。
「出せ」
「何、を?」
「携帯」
ひら、と手を差し出されてまもりはぎこちなく首を振った。
「嫌。・・・なんで、ヒル魔くんに見せないといけないの」
「大和の連絡先、寄越されたんだろ」
「!!」
驚き硬直するまもりの顎を掴み、その瞳を覗き込む。
「あの糞クセ毛野郎、随分とテメェにご執心だったからなァ」
セナとモン太が口々に告げる内容の影に出てきた彼の影。
ヒル魔の不在を狙ってやって来た―――それこそ彼が来なくても全く問題ない場面で現れた大和の狙いなんてすぐ判った。
「だとしても」
なぜだか震えそうになる声を抑えながら、まもりはヒル魔の眸を見つめ返す。
「ヒル魔くんが、私に干渉する理由がないわ」
まもりがヒル魔に干渉できないのと同じように、ヒル魔だってまもりに干渉できない。
けれど彼は笑うのだ。
「俺が俺のモノ見るのに糞面倒臭ェ理由こねくり回す必要があるか」
テメェのモノは俺のモノだ、と堂々と言い放たれてまもりは絶句する。
「・・・何その横暴な発言!」
しばし遅れてやっと声が出せた。けれどヒル魔はしれっと応じるばかり。
「当然の権利を主張しただけだ」
「何をもって当然と言うの!?」
「だからさっき言っただろ。テメェのモノは俺のモノだっつってんだよ。ついでに言えばテメェは俺のモノだ」
「ついで?! 今、ついでで何か大切なこと言った?!」
横暴にも程がある、と怒鳴ろうとした口を、ヒル魔が塞いだ。
彼らしくもなく優しいキスで。
「姉崎」
低く、吐息混じりの声で名を囁かれる。
「テメェだってそのつもりだっただろ?」
「どの・・・」
つもりよ、と言う前に再び唇を塞がれる。今度は声も息も全て奪われる激しさで、魂までも奪い尽くすように。
みっともないくらいに濡れて震える唇を撫でてヒル魔はもう一度笑った。
「テメェは自他共に認める悪魔の女って奴だ」
「・・・わたしは、まじょ、じゃないわ」
眉を顰めて舌っ足らずになってしまった声ごと再びすくい取る合間。
飲み込み悪いな糞マネ、と酷く楽しそうな声が口早に囁かれた。
大和の携帯に、まもりからのメールを装った質の悪いウイルスが送られたのは、その翌日の事だった。
***
唐突にやってきたヒルまも大和妄想でした。大和はどう書いても腹黒さがある気がしてなりませぬ。
遥か上空から爆音が近づいてくる。
異様なほど大きく聞こえるそれに、まもりは不信感も露わに部室から顔を出し、天を望む。
「?!」
徐々に姿を現したのは、巨大な戦闘機。
いかにも狭いだろうこのグラウンドに、躊躇うことなく降り立ったそれに誰もが言葉を失った。
「な・・・どうしたの!?」
慌てて駆け寄ると、かぱりと開いたコクピットから立ち上がる細い姿。
逆光になり、姿は黒々と、けれど髪だけは金色に煌めくその姿に、まもりは一瞬足を止めた。
「糞マネ」
呼ばれて、ひょいと投げられたのはビデオ。
「編集しておけ」
まもりがさもそれをやるのが当たり前、といわんばかりのぞんざいな口調。
けれど彼が、いつも通り笑っていたから。
鬱々とした気分がすこんと抜け落ちて、なんだか落ち着く。
まもりはビデオを胸に一つ頷くと、部室へと足を運ぶ。
背後では司令塔の帰還にセナを始めとした面々の賑やかな声が聞こえていて。
それに高笑いが混ざって響くのが、何となく嬉しくなって、自然と足取りも軽くなった。
照明を落とした部室のスクリーンに映し出される光景に、まもりは息を呑む。
あからさまに不必要だと思われる部分は削り落としながら、彼が得てきた『最強』アメリカの情報を纏めていく。
画面はほとんどパンサーの走り一色だった。
あの短い期間中に動く彼を捉えられたのは僥倖だと言えよう。
「・・・すごい」
思わず呟いてしまう。
バネが違うとは知っていたし、ほんの一瞬ならセナと戦う彼を目の前で見た。
けれど、あの時にはなかった『経験』が彼の実力をより押し上げている。
更にペンタゴンと呼ばれる最強メンバーがいるのだと映像の中で誰かが喋っていた。
とすれば、その一角がパンサーであって、それ以外にも相当な実力者がいるのだと思われる。
まもりは映像を前に、ただ立ちつくす。
「出来たか」
突然、背後から伸びてきた腕がまもりの肩を掴んだ。
「きゃん!」
悲鳴を上げて飛び上がったまもりは、勢いよく背後を伺う。
「おーおー、随分と・・・」
そこにいたのは、勿体ぶった声で含みを持たせ、言葉を切って見下ろすヒル魔。
いつものようににやにやと笑っている。
「んもう! 驚かせないでよ!」
「ア? 驚かせたつもりはねぇなァ」
俺はフツーに部室の扉開けて入って来たんだぜ、と言われてまもりは眉を寄せる。
照明を落とした室内だから、扉を開けば明るくなってすぐ知れるはずなのに。
「夢中になって画面見てて気づかなかっただけだろ」
「そ、んなことは!」
「あるなァ」
不意に伸びてきた指がまもりの頬を突く。
「なに?!」
「エロい顔」
「えぇええ!?」
とんでもない表現にまもりは赤くなる。
慌てて否定しようとするまもりに、ヒル魔は笑いながら更に一歩近寄った。
「こ、来ないでよ!」
「何焦ってんだ?」
どん、と音を立ててまもりはカジノのテーブルの縁に背中をぶつけてよろける。
「だって、そんな顔してないって」
「ホー?」
不安定なまもりの身体の両脇に、腕が伸びて。
まるで籠のようにまもりを閉じこめる。
「興奮したんだろ?」
にたあ、と笑うヒル魔の顔は、悪魔じみているというよりは、むしろ。
「こんなに強い奴と戦うんだってナァ」
悪戯っ子のような、新しい遊びを見つけた子のような、そんな笑みで。
けれど、すぐにその眸は剣呑に眇められた。
「テメェは悪魔の一員だ。そう思うのは当然だろ?」
まもりは目を見開き、ヒル魔を見上げた。
「そういえば―――俺がいない間に、大和達が来たんだってなァ?」
「っ」
びく、とまもりは肩を震わせる。
「出せ」
「何、を?」
「携帯」
ひら、と手を差し出されてまもりはぎこちなく首を振った。
「嫌。・・・なんで、ヒル魔くんに見せないといけないの」
「大和の連絡先、寄越されたんだろ」
「!!」
驚き硬直するまもりの顎を掴み、その瞳を覗き込む。
「あの糞クセ毛野郎、随分とテメェにご執心だったからなァ」
セナとモン太が口々に告げる内容の影に出てきた彼の影。
ヒル魔の不在を狙ってやって来た―――それこそ彼が来なくても全く問題ない場面で現れた大和の狙いなんてすぐ判った。
「だとしても」
なぜだか震えそうになる声を抑えながら、まもりはヒル魔の眸を見つめ返す。
「ヒル魔くんが、私に干渉する理由がないわ」
まもりがヒル魔に干渉できないのと同じように、ヒル魔だってまもりに干渉できない。
けれど彼は笑うのだ。
「俺が俺のモノ見るのに糞面倒臭ェ理由こねくり回す必要があるか」
テメェのモノは俺のモノだ、と堂々と言い放たれてまもりは絶句する。
「・・・何その横暴な発言!」
しばし遅れてやっと声が出せた。けれどヒル魔はしれっと応じるばかり。
「当然の権利を主張しただけだ」
「何をもって当然と言うの!?」
「だからさっき言っただろ。テメェのモノは俺のモノだっつってんだよ。ついでに言えばテメェは俺のモノだ」
「ついで?! 今、ついでで何か大切なこと言った?!」
横暴にも程がある、と怒鳴ろうとした口を、ヒル魔が塞いだ。
彼らしくもなく優しいキスで。
「姉崎」
低く、吐息混じりの声で名を囁かれる。
「テメェだってそのつもりだっただろ?」
「どの・・・」
つもりよ、と言う前に再び唇を塞がれる。今度は声も息も全て奪われる激しさで、魂までも奪い尽くすように。
みっともないくらいに濡れて震える唇を撫でてヒル魔はもう一度笑った。
「テメェは自他共に認める悪魔の女って奴だ」
「・・・わたしは、まじょ、じゃないわ」
眉を顰めて舌っ足らずになってしまった声ごと再びすくい取る合間。
飲み込み悪いな糞マネ、と酷く楽しそうな声が口早に囁かれた。
大和の携帯に、まもりからのメールを装った質の悪いウイルスが送られたのは、その翌日の事だった。
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唐突にやってきたヒルまも大和妄想でした。大和はどう書いても腹黒さがある気がしてなりませぬ。
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HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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