旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
日本から遥か遠く、アメリカの地で、二人は再会した。
会えなかった時間や言葉も長く交わしていなかったのが嘘のように、互いの手は躊躇いなく繋がった。
書類上の処理を全て済ませてヒル魔の運転する車に乗り、二人はこれから生活する場所へと移動する。
「それにしても、随分荷物小せぇな」
「うん、全部処分してきたから」
「ホー?」
「こっちで必要な物は必要になったときに買えばいいかと思って」
「テメェのことだ、大量に細々したモン持ってくるかと思ったんだがな」
用意周到なまもりの性質を考えれば、それこそ日用品から雑貨まで、店でも開くのかと聞きたくなるくらいの量を持ってきてもおかしくない。
「だって、一人で生活するのとは訳が違うもの」
「ということは、最初から俺の所に転がり込むつもりだったんだな?」
にやり、と意地悪く笑われても、まもりは怯むことなくむしろ嫣然と笑ってみせる。
「呼んだのはヒル魔くんでしょ?」
それにヒル魔はピンと片眉を上げる。
「それはヤメロ」
「それ?」
まもりは自らの格好を見下ろす。
飛行機での移動中は楽なようにワンピースに冷房よけのカーディガンを羽織って、貴重品は小さなポシェットに纏めて入れて肩から斜めがけにしてきた。
何か不味い格好なのか、と視線を向ければヒル魔は小さく舌打ちする。
「格好のことじゃねぇ。呼び方だ」
「ヒル魔くんって、呼ぶのはダメなの?」
慣れ親しんだ呼び方のどこがまずいのか、と小首を傾げるまもりにヒル魔は皆まで言わせるのか、という顔をした。
「テメェももうヒル魔だろうが」
「あ」
途端、まもりの顔がかーっと赤くなる。
そういえばさっき大使館に書類一式を提出してきたばかりだった。
それ以外にも事務的な手続きが多すぎてヒル魔と結婚したという感慨が全くなかったのだ。
「あ、そ、そうか。ええと・・・あの・・・」
「名前呼ぶ程度で随分と照れていらっしゃいマスネ」
からかわれ、まもりはわたわたと手を振る。
「だ、だって! もう何年も会ってなかったのに、いきなり名前で呼ぶのって、高校の時だって呼んだことないのに、その・・・」
「落ち着け、まもり」
「っ!!」
さらりと呼ばれて、まもりはぴょんと飛び上がった。
あまりに極端な驚き方に、ヒル魔は笑いながらガムを取り出し、口に入れる。
「それとも糞嫁の方がいいか?」
「それは嫌!」
すかさず拒否し、まもりは赤い顔のまま大きく深呼吸する。
ふわりと漂うのは、かつてと同じミントの匂い。
改めてまもりは隣で運転する男を見つめた。
コントロールと投力を両立させる筋力を拮抗させた腕は、高校の時から比べてかなり太くなった気がする。
肩も首も、がっしりとしたような気がする。
いや、どれも気のせいではない。たぶん、少し背も伸びている。
プロで切磋琢磨するうちに身体つきも随分変わったのだろう。
人を食ったような表情、ピアスの並ぶ尖った耳、天を突く金髪は変わらない。
「なんだ、見惚れたか?」
鋭利な牙を見せて笑う様も変わらない。
けれど、中身は変わったのだろうか。
成長したのだろうか。
「うん。ヒル魔くんは変わったかな、と思って見てたわ」
そんなまもりにヒル魔は簡潔に返す。
「テメェほどじゃねぇよ」
それと呼び方はそうじゃねぇ、と突っ込むヒル魔に構わずまもりは声を上げる。
「え? 私、そんなに変わった?」
それなりに年齢を重ねたから化粧の腕は上達したし、髪の毛も伸びたけれど。
綺麗になった、ということだろうか。
けれどそんなまもりの期待をあっさりとヒル魔は裏切る。
「年喰った」
まもりはむくれてぼす、とヒル魔の右腕に小さな平手をお見舞いする。
「・・・それはお互い様でしょう! もう!!」
もう知らない、と横を向くまもりに、ヒル魔はケケケと声を上げて笑った。
ヒル魔がまもりを連れ込んだのは、公園の隣に立つ大きなアパートだった。
日本風に言うのならマンションだが、こちらではアパートと呼ぶのが正式な作り。
「ここが家?」
「おー」
エレベーターに乗って半ばよりやや上くらいの位置で止まる。
なんとなく最上階に住んでいるのかと思っていたが、そうではないらしい。
いくつか並ぶ扉の前を通り過ぎ、一つの扉に足を止める。
「ここだ」
鍵を開き、さっさと入るのに続く。
靴を脱ごうとして、そうだここは日本ではないのだった、と思い直してヒル魔の後をついていく。
「わー・・・!」
リビングに足を踏み入れ、その正面の景色にまもりは感嘆する。
壁一面ほぼ全てが窓、というその向こう側には先ほど横を通り過ぎた公園の緑が見える。
広々とした青空。日本のようなせせこましい感じはしない。
「隣がベッドルーム、トイレは戻って右、バスルームはその向かいだ」
簡潔な説明。ゆったりと取られた空間は二部屋だけ存在するらしい。
ヒル魔の部屋なんだからもっと汚れているだろうと思ったまもりの考えは覆された。
「そんなに汚れてないのね」
感心するように呟くまもりに、にやり、とヒル魔は笑う。
「汚す程ここで生活してねぇんだよ」
「え?」
「新婚早々部屋の片づけじゃテメェに一生愚痴言われそうだからナァ」
「なっ!」
ヒル魔の物言いにまもりは目を見開いて彼をマジマジと見つめる。
なんだか・・・妙に優しい、ような。
「必要な物買い出ししねぇとな」
ヒル魔の声にまもりは現実に引き戻される。
「あ、うん。そうだ、着替えも買わないと」
「アァ? テメェ服も全然持ってきてねぇのか?」
「その鞄見ればわかるでしょ。全然持って来てません。お金は持ってきたけどね」
「ソウデスカ。じゃあ早速行くぞ」
ぐい、とヒル魔がまもりの手を引く。
そのあたたかさに、まもりはふわりと笑って手を握り返した。
<続>
会えなかった時間や言葉も長く交わしていなかったのが嘘のように、互いの手は躊躇いなく繋がった。
書類上の処理を全て済ませてヒル魔の運転する車に乗り、二人はこれから生活する場所へと移動する。
「それにしても、随分荷物小せぇな」
「うん、全部処分してきたから」
「ホー?」
「こっちで必要な物は必要になったときに買えばいいかと思って」
「テメェのことだ、大量に細々したモン持ってくるかと思ったんだがな」
用意周到なまもりの性質を考えれば、それこそ日用品から雑貨まで、店でも開くのかと聞きたくなるくらいの量を持ってきてもおかしくない。
「だって、一人で生活するのとは訳が違うもの」
「ということは、最初から俺の所に転がり込むつもりだったんだな?」
にやり、と意地悪く笑われても、まもりは怯むことなくむしろ嫣然と笑ってみせる。
「呼んだのはヒル魔くんでしょ?」
それにヒル魔はピンと片眉を上げる。
「それはヤメロ」
「それ?」
まもりは自らの格好を見下ろす。
飛行機での移動中は楽なようにワンピースに冷房よけのカーディガンを羽織って、貴重品は小さなポシェットに纏めて入れて肩から斜めがけにしてきた。
何か不味い格好なのか、と視線を向ければヒル魔は小さく舌打ちする。
「格好のことじゃねぇ。呼び方だ」
「ヒル魔くんって、呼ぶのはダメなの?」
慣れ親しんだ呼び方のどこがまずいのか、と小首を傾げるまもりにヒル魔は皆まで言わせるのか、という顔をした。
「テメェももうヒル魔だろうが」
「あ」
途端、まもりの顔がかーっと赤くなる。
そういえばさっき大使館に書類一式を提出してきたばかりだった。
それ以外にも事務的な手続きが多すぎてヒル魔と結婚したという感慨が全くなかったのだ。
「あ、そ、そうか。ええと・・・あの・・・」
「名前呼ぶ程度で随分と照れていらっしゃいマスネ」
からかわれ、まもりはわたわたと手を振る。
「だ、だって! もう何年も会ってなかったのに、いきなり名前で呼ぶのって、高校の時だって呼んだことないのに、その・・・」
「落ち着け、まもり」
「っ!!」
さらりと呼ばれて、まもりはぴょんと飛び上がった。
あまりに極端な驚き方に、ヒル魔は笑いながらガムを取り出し、口に入れる。
「それとも糞嫁の方がいいか?」
「それは嫌!」
すかさず拒否し、まもりは赤い顔のまま大きく深呼吸する。
ふわりと漂うのは、かつてと同じミントの匂い。
改めてまもりは隣で運転する男を見つめた。
コントロールと投力を両立させる筋力を拮抗させた腕は、高校の時から比べてかなり太くなった気がする。
肩も首も、がっしりとしたような気がする。
いや、どれも気のせいではない。たぶん、少し背も伸びている。
プロで切磋琢磨するうちに身体つきも随分変わったのだろう。
人を食ったような表情、ピアスの並ぶ尖った耳、天を突く金髪は変わらない。
「なんだ、見惚れたか?」
鋭利な牙を見せて笑う様も変わらない。
けれど、中身は変わったのだろうか。
成長したのだろうか。
「うん。ヒル魔くんは変わったかな、と思って見てたわ」
そんなまもりにヒル魔は簡潔に返す。
「テメェほどじゃねぇよ」
それと呼び方はそうじゃねぇ、と突っ込むヒル魔に構わずまもりは声を上げる。
「え? 私、そんなに変わった?」
それなりに年齢を重ねたから化粧の腕は上達したし、髪の毛も伸びたけれど。
綺麗になった、ということだろうか。
けれどそんなまもりの期待をあっさりとヒル魔は裏切る。
「年喰った」
まもりはむくれてぼす、とヒル魔の右腕に小さな平手をお見舞いする。
「・・・それはお互い様でしょう! もう!!」
もう知らない、と横を向くまもりに、ヒル魔はケケケと声を上げて笑った。
ヒル魔がまもりを連れ込んだのは、公園の隣に立つ大きなアパートだった。
日本風に言うのならマンションだが、こちらではアパートと呼ぶのが正式な作り。
「ここが家?」
「おー」
エレベーターに乗って半ばよりやや上くらいの位置で止まる。
なんとなく最上階に住んでいるのかと思っていたが、そうではないらしい。
いくつか並ぶ扉の前を通り過ぎ、一つの扉に足を止める。
「ここだ」
鍵を開き、さっさと入るのに続く。
靴を脱ごうとして、そうだここは日本ではないのだった、と思い直してヒル魔の後をついていく。
「わー・・・!」
リビングに足を踏み入れ、その正面の景色にまもりは感嘆する。
壁一面ほぼ全てが窓、というその向こう側には先ほど横を通り過ぎた公園の緑が見える。
広々とした青空。日本のようなせせこましい感じはしない。
「隣がベッドルーム、トイレは戻って右、バスルームはその向かいだ」
簡潔な説明。ゆったりと取られた空間は二部屋だけ存在するらしい。
ヒル魔の部屋なんだからもっと汚れているだろうと思ったまもりの考えは覆された。
「そんなに汚れてないのね」
感心するように呟くまもりに、にやり、とヒル魔は笑う。
「汚す程ここで生活してねぇんだよ」
「え?」
「新婚早々部屋の片づけじゃテメェに一生愚痴言われそうだからナァ」
「なっ!」
ヒル魔の物言いにまもりは目を見開いて彼をマジマジと見つめる。
なんだか・・・妙に優しい、ような。
「必要な物買い出ししねぇとな」
ヒル魔の声にまもりは現実に引き戻される。
「あ、うん。そうだ、着替えも買わないと」
「アァ? テメェ服も全然持ってきてねぇのか?」
「その鞄見ればわかるでしょ。全然持って来てません。お金は持ってきたけどね」
「ソウデスカ。じゃあ早速行くぞ」
ぐい、とヒル魔がまもりの手を引く。
そのあたたかさに、まもりはふわりと笑って手を握り返した。
<続>
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鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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