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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ささやかな非日常

(完全第三者視点)
※『黒き台風』以後の話です。


+ + + + + + + + + +
毎日、毎日、同じ事の繰り返し。
朝起きて、お化粧して着替えて仕事に行って。
誰でも出来るような仕事を必死にこなして、ぐったりと疲れた気分で電車に乗る。
空席を見つけ、すとんと腰を下ろす。
よかった、今日は座れた。
丁度座席が全部埋まるくらいの乗客数。
ああ、これなら最寄り駅まで眠っていけるなー・・・と思ったら。
「ギャハハハ!! テメェそれバッカじゃねぇの!?」
「あー?! バカにバカ言われるのはムカツクぜ!!」
突如として騒ぎ出した青年が二人。
同じ列に座っているけど端と端なので顔はよく見えない。
けれどちらりと見えた痛んだ茶髪におおよそまともな人ではなさそうだと見当を付ける。
騒ぐ声は大きく、足を前に投げ出し、いかにも悪ぶっています、というような。
隣に座る女性も不安そうに肩を揺らした。
嫌だな。
せっかく座れたのに、煩くて眠れそうにない。
内心嘆息しつつ、でも車両を移動するのも面倒で、じっと座る。
出来ることなら自分よりも手前で降りてくれないか、と。
けれど一駅二駅過ぎても全然彼らが動く気配はなく、騒ぎは大きくなるばかり。
他が水を打ったように静かなのに、彼らは全く気にしていないようだった。
仕事の疲れにささくれた心に響いて、ひどく気分が悪い。
と。
視界の端に、誰かが動いた。
背の高い、茶色い髪の男性と、黒髪で眼鏡をかけた男性。
騒ぐ青年たちよりは多少年かさだろうか。二人とも同じくらいの年齢に見える。
茶色の髪は痛む様子もなくごく自然な色合いだから、染めていない地毛なのかもしれない。
なんとなく見守っていると、彼らは悠然と青年達の前に立った。
相変わらず下品な笑い声を上げていた彼らは、不意に目の前に現れた男性達に気が付いたようだった。
けれど頓着せず声を上げる彼らを、つり革に腕を掛けて覗き込むような姿勢は、彼らに威圧感を与えたらしい。
故意か偶然かは判らないが、青年の一人が足を上げた。
投げ出していた足を引き寄せる際に、茶髪の男性の膝に靴の裏が当たった。
男性はゆるく笑みを浮かべる。
遠目から見ても、随分と威圧感のある笑みだった。
つり上がった眦と口角は鋭利な印象だ。きっと表情がなければもっと怖いだろう。
ぎょっと目を見開く他の乗客の前で、彼は悠然と自らの膝を払う。
「―――楽しそうだね」
低められた声が、こちらにも聞こえてくる。
顔は笑っているのに、声は平坦なのに、妙に威圧感がある。
青年達の声が、ぴたりと止んだ。
そのまま二駅程、妙な沈黙が車両を満たす。
けれどその次の駅で、男性二人組は動いた。
すい、と青年達から身体を離し、男性達はホームへと向かう。
「チッ!」
途端、青年の一人が舌打ちした。ああ、また騒ぐのだろうか。
けれどそれを見越したように、背の高い方の男性が踵を返して青年達の前に再び立つ。
「・・・何なら、もっと乗っていようか?」
それからぼそりと彼はもっと低い声で何か一言囁いた。
途端、青年達はビタリと動きを止める。
薄い笑みを浮かべた男性は、先にホームに降りていた眼鏡の男性の方へと歩いていく。
眼鏡の男性の傍らにちらりと見えたのは、小柄な人影が二つ。
その一人は長い黒髪を揺らして茶髪の男性の傍らに寄り添った。
電車は車内のささやかな騒動など知らぬ振りで出発し、車内は静かなまま進んでいく。
大きな乗換駅で青年達も降りる。
神妙な顔つきで降りる彼らに、先ほどの騒いでいた様子はない。
「・・・なんで」
ただ、こちらの脇を通り過ぎ、ドアから出るときに。
「名前、知って―――」
ぼそぼそと囁かれる声。
薄気味悪そうに肩をすくめる様子は、まるで幽霊でも見た後のようだった。
やがて、再び走り出した電車の中。
日頃の疲れと、ようやく騒動の種が失せた反動で意識が眠りに吸い寄せられる。

かくんと揺れる頭の中で。
ささやかだけど胸の空くような一幕に、明日も頑張ろうと、なんとなく思えた。

***
茶髪の男性は妖介、黒髪の男性は猪野先輩、小柄な人影は一人が椿で一人が小夏です。
解説がいる話を書くのはどうかと思ったんですが・・・。実は私の体験談だったりします。
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