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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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囚われの腕

(ヒルまも)


+ + + + + + + + + +
その日、まもりは朝から浮き足立ったような様子でいた。
明日は部活が休みだ。
そのためか他の部員も色々と用事を入れているようだが、彼女は遊びに誘われても首を振る。
「やー、まも姐、遊べないの?」
「うん、ごめんね。先約があるの」
申し訳なさそうに手を合わせるまもりに、鈴音はぴんとアンテナを立てた。
まもりの背後にはパソコンを打つヒル魔の姿。
「やー? ・・・もしかして、妖兄とデート?」
にま、と笑う鈴音に、まもりはきょとんとした顔で首を傾げた。
「なんで?」
それがあんまりにも普通に、ただ本当に『何故そういうふうに尋ねるのか』という疑問しかなくて。
「やー? 違うの?」
浮き足だったあの様子、誰に誘われても頷かない彼女に、きっと本当は付き合っているだろうヒル魔とデートなのだと考えたのだ。実際に付き合ってはいないと二人とも口を揃えているが、怪しいと鈴音は踏んでいる。
けれどまもりは嘘をつく様子もなく、首を振った。
「違うわよ。なんで休みの日にわざわざヒル魔くんと会う必要があるの?」
「だって・・・」
付き合ってるのなら毎日でも顔を合わせたいのではないか、と思っていたが、まもりは笑顔で手を振る。
「ヒル魔くんとは何にも関係ない用事よ」
鈴音は視線を背後のヒル魔へと飛ばす。けれど彼も特に反応することなくキーを叩いている。
結局は自分の穿ちすぎか、と肩をすくめ、鈴音はセナやモン太達と遊ぶための算段を立てるため、そちらへと移動した。


翌日。
まもりは化粧をするわけでも、オシャレをするわけでもなく、どちらかといえば野暮ったいような服を選んで手に取った。
「あら? どこに行くの?」
「うふふ」
母の追求にも口を割らず、まもりは笑顔で家を出た。
しばし歩き、未だ開発がさほど進んでいない地区へと足を踏み入れる。
そこの中の一件、広い農家の玄関先で箒を持つ老婆がいた。
「おはよう、おばあさん!」
「まもりちゃん。おはようさん」
顔をしわくちゃにして笑う老婆にまもりは駆け寄る。
「今日の部活はいいのかい?」
「今日はお休みなんです」
笑顔で応じるまもりの背後を、過ぎる人影。
と、その人影がぴたりと足を止める。それに気づいた老女が顔を上げた。
「おや? 何かご用事かね? それとも、まもりちゃんのお友達かい?」
「え」
振り返ると、そこには。
いつものように黒ずくめの格好をしたヒル魔の姿。
僅かに見開かれた眸に、どうやら彼がここにいるのは全くの偶然らしいと知る。
「ヒル魔くん?! どうしてここにいるの?!」
「そりゃこっちの台詞だ糞マネ。俺はこの先に用事があるんだよ」
この付近に銃の手入れをする店があるのだという。
こんなのどかな場所にそんな危険な場所があるなんて、と絶句する。
「テメェこそなんだ、そのナリ」
「あっ・・・と、その・・・」
どちらかといえばオシャレとはほど遠い格好。僅かに恥じ入るような彼女と、じろじろと遠慮無くそれを見るヒル魔に老婆が声を掛けた。
「二人とも、一緒に見るかい?」
「えっ!?」
「ア? なにがだ糞ババァ」
ヒル魔の悪い口の利き方に、思わずまもりがその足を踏む。
「ッテ!」
「なんて事言うの!」
「ほっほっ。せっかくだから兄さんも見ていけばいいよ」
気を悪くした雰囲気もなく老女はちょいちょいと二人を手招く。
結局二人は顔を見合わせ、その後に続いた。

通されたのは、農家らしく広い家だった。
まだ築浅のそこは、数年前老婆と同居する長男夫婦が立て替えた自慢の家らしい。
その中の一室、和室の片隅に、段ボール箱に老婆が近づいた。
周囲に新聞紙とタオルが敷かれたそこに、まもりも瞳を輝かせて近寄る。
ヒル魔も一体何が、と首を傾げながらその後に続く。
と、老婆が箱に手を入れ、何かを差し出した。
「ほうら」
「うわぁ・・・!!」
まもりが歓声を上げる。
それは、まだ目も開かない小さな小さな子猫だった。
「ちっちゃ~~~~い!!」
声を上げ、歓喜に震えるまもりは手を握りしめる。
それでも興奮を押さえられないようで、同じように覗き込んでいたヒル魔の腕をぎゅっと握った。
「!」
ヒル魔は驚き腕を振り払おうとしたが、まもりは全く頓着していなかった。
「まだ生まれて一週間も経ってないよ」
「かわいい・・・!!」
ヒル魔の腕にしがみつくまもりは、頬を上気させて瞳を輝かせている。
そのあまりのかわいらしさに、さしものヒル魔も動きを止める。
「テメェが飼うのか?」
「ううん、ウチはお父さんがアレルギーだから飼えないの」
残念そうにまもりは口にする。
いつもこの家の前を通って学校に通っているのだが、たまたま猫を見かけて構っているうちに、この老婆と仲良くなったという。飼えないけれど猫は好き、という言葉に、先日生まれたばかりの子猫を見せてあげるという誘いに、まもりは喜んでここへ向かったのだ。
猫と遊ぶ気満々で、毛がついても気にならない格好で。
それでそんな格好でこんな場所にいたのか、と腑に落ちたヒル魔は、まもりから漂う香りに気づく。
腕に触れる手は温かく、ふわりと柔らかい髪がヒル魔の鼻先を擽る。
思わずそちらに気を取られるヒル魔は、視線を感じてちろりとそちらを見る。
と、全て見透かしたような老婆の笑顔。
思わず顔を顰めたヒル魔に構わず、老婆は口を開いた。
「この子は抱っこさせてあげられんがね、他にも猫がおるよ」
そっちなら人が好きだし抱かせてあげられる、という言葉にまもりはぱっと顔をほころばせた。
「ホントですか? チビちゃんじゃなくて?」
「チビは今散歩しとるよ。モモっちゅう白いのがおる」
子猫を戻し、その名を呼ぶと、どこからともなく白い猫が顔を出した。
すり、とまもりにすり寄る愛想の良さに、まもりは笑顔で声を上げた。
「かわいい!」
「テメェさっきからそればっかりじゃねぇか」
「だってかわいいんだもん! ・・・あ」
しがみついていたことにやっと気づいたまもりは、ぱっと手を放す。
ぎこちなく視線を逸らす彼女とヒル魔との沈黙を察したのか、白い猫は一声鳴いてヒル魔の足にもすり寄った。
「っ?! 糞ッ!」
「あ」
ヒル魔の黒い服に白の毛。
舌打ちする彼の前に、老婆がお茶を持ってくる。
「ぼた餅を作ったんだよ。食べるかい?」
「俺はもう行く」
踵を返そうとするヒル魔の腕をまもりが再び掴んだ。
「お茶くらい飲んでいきなさい」
「そうよ。それにその毛、ガムテープとか借りて取ろうよ」
今度は、意図を持って引き留める形で。
「この人甘い物ダメなんです」
「じゃあ煎餅を出してやろうかね」
「ありがとうございます! お煎餅なら食べられるよね?」
女二人が着々とお茶の準備に取りかかるのに、ヒル魔は声を上げる。
「つーか、人の話を聞け! 俺は行くっつってんだ!」
「いいじゃない、そんなに急がないんでしょ?」
まもりがぎゅ、とヒル魔の腕に抱きついた。
色気もない格好、全く深い意図のない行動。
けれど、その身体の柔らかさに思わずヒル魔は動きを止める。
「たまの休みならゆっくりしなさい」
にこにこと笑みを浮かべて湯飲みと茶菓子とを持ってくる老婆の視線がどこか生ぬるいような気がして、ヒル魔は盛大に舌打ちする。
けれど囚われた腕を結局は取り戻せず、渋々と卓袱台を囲む形になるのだった。



結局、この日は猫談義とで一日が潰れ、ヒル魔は銃の手入れに行くことが出来なかった。
その後二人で喧嘩しつつ歩いているところをたまたますれ違った鈴音たちに目撃されたため、やっぱりデートだったんじゃないかと散々騒がれることとなったのだった。

***
子猫を見て「かわいい」と騒ぐまもりちゃんの方が可愛く見えました、というのを書きたかっただけの話。
しょっちゅう猫を題材にしてますが、私はどちらかというと犬派であり、更に言えば鳥派です。
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