旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
生きてさえいれば、同じ大地の上だと言われても。
『このお電話はお客様の都合により―――』
聞き慣れたアナウンスに、まもりはとうとう電話を持つ手を下ろした。
これで彼に繋がる携帯電話の番号は、全てあたり尽くしたことになる。
嘆息して、携帯電話をベッドの上に放り投げる。
どちらかといえば行儀の悪いその行為は、彼がよくやったことだった。
QBというポジションのせいか、それとも生来の無精さ故か、しょっちゅう彼はモノを放った。
それは携帯だったり、本だったり、ボールだったり、・・・まもりだったりした。
ほとんどは思った通りの場所に、思った通りに落ちる。
けれど。
まもりだけは、彼の意図するところに落ちなかったということだろうか。
繋がらなくなった電話を意識から離そうとして、ぺらりと手元の本を開く。
けれど、意識はいつの間にか過去を辿った。
高校を卒業すると同時に、彼は周囲の予想通り、アメリカへと渡った。
アメフトの道を進むのか。
それとも、資格取得でもするのか。
もしや悪巧みのために活動の場を世界に広げようとしていて、その第一の足がかりとして向かったのか。
いずれも憶測に過ぎず、まもりも詳細を知らされぬまま。
彼は、姿を消した。
最初はそれでもよかった。
電話をすれば通じたし、メールや手紙を送れば届いた。
それがどんな経路を通じていたかは知らないけれど、彼の手元には過たず届いたし、彼も返事をくれていた。
素っ気ないメール一つでも、彼との繋がりがあった。
それが時を経るに連れ、手紙を送っても返事もなく、メールを打っても宛先に尋ね当たらずエラーメッセージが続くばかり。
顔が見たい。
声が聞きたい。
せめて、安否を知りたい。
けれどいずれの返事もなく、全てが過ぎていく。
最後に彼の声を聞いたのはいつだっただろうか。
ほとんど写真に写らなかった彼の、まともな顔写真は一枚だってまもりの手元には残っていない。
彼の声はおろか、顔さえ何一つ思い出せなくなる恐怖に、当初は怯えた。
あれほどに側にいたのに。視線を、手を、身体を繋げていたのに。
―――・・・心まで繋がっていると思ったのは、思い上がりだったのだろうか。
ぽたりと落ちたのが、涙だと気づくのに時間が掛かった。
一点に留まったままだった視線が、じわりと滲んでふやける文字列に戻る。
『失恋を忘れるには、新しい恋愛をするのが一番だ』
そんなありきたりな一文に、まもりの胸は軋んだ。
まもりは涙を零しながら、携帯電話に手を伸ばす。
今は新しい恋愛に踏み出すなんて、到底無理。
けれど、忘れるだけなら。
忘れて、この苦しさから逃げられるなら。
ほどなく。
まもりの携帯電話のメモリーから、『蛭魔妖一』の名が消えた。
それは恋の終焉と呼ぶにはあまりに稚拙で。
そうして、いつまでも後ろ髪を引かれるような、そんな幕引きだった。
***
これは微妙に続く予定です。
『このお電話はお客様の都合により―――』
聞き慣れたアナウンスに、まもりはとうとう電話を持つ手を下ろした。
これで彼に繋がる携帯電話の番号は、全てあたり尽くしたことになる。
嘆息して、携帯電話をベッドの上に放り投げる。
どちらかといえば行儀の悪いその行為は、彼がよくやったことだった。
QBというポジションのせいか、それとも生来の無精さ故か、しょっちゅう彼はモノを放った。
それは携帯だったり、本だったり、ボールだったり、・・・まもりだったりした。
ほとんどは思った通りの場所に、思った通りに落ちる。
けれど。
まもりだけは、彼の意図するところに落ちなかったということだろうか。
繋がらなくなった電話を意識から離そうとして、ぺらりと手元の本を開く。
けれど、意識はいつの間にか過去を辿った。
高校を卒業すると同時に、彼は周囲の予想通り、アメリカへと渡った。
アメフトの道を進むのか。
それとも、資格取得でもするのか。
もしや悪巧みのために活動の場を世界に広げようとしていて、その第一の足がかりとして向かったのか。
いずれも憶測に過ぎず、まもりも詳細を知らされぬまま。
彼は、姿を消した。
最初はそれでもよかった。
電話をすれば通じたし、メールや手紙を送れば届いた。
それがどんな経路を通じていたかは知らないけれど、彼の手元には過たず届いたし、彼も返事をくれていた。
素っ気ないメール一つでも、彼との繋がりがあった。
それが時を経るに連れ、手紙を送っても返事もなく、メールを打っても宛先に尋ね当たらずエラーメッセージが続くばかり。
顔が見たい。
声が聞きたい。
せめて、安否を知りたい。
けれどいずれの返事もなく、全てが過ぎていく。
最後に彼の声を聞いたのはいつだっただろうか。
ほとんど写真に写らなかった彼の、まともな顔写真は一枚だってまもりの手元には残っていない。
彼の声はおろか、顔さえ何一つ思い出せなくなる恐怖に、当初は怯えた。
あれほどに側にいたのに。視線を、手を、身体を繋げていたのに。
―――・・・心まで繋がっていると思ったのは、思い上がりだったのだろうか。
ぽたりと落ちたのが、涙だと気づくのに時間が掛かった。
一点に留まったままだった視線が、じわりと滲んでふやける文字列に戻る。
『失恋を忘れるには、新しい恋愛をするのが一番だ』
そんなありきたりな一文に、まもりの胸は軋んだ。
まもりは涙を零しながら、携帯電話に手を伸ばす。
今は新しい恋愛に踏み出すなんて、到底無理。
けれど、忘れるだけなら。
忘れて、この苦しさから逃げられるなら。
ほどなく。
まもりの携帯電話のメモリーから、『蛭魔妖一』の名が消えた。
それは恋の終焉と呼ぶにはあまりに稚拙で。
そうして、いつまでも後ろ髪を引かれるような、そんな幕引きだった。
***
これは微妙に続く予定です。
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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