旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
しばらくまもりは俯いていたが、不意に駆け出す。
「おい?」
唐突な行動にヒル魔は眉を寄せるが、まもりはさほども離れないうちに振り返って、言い放つ。
「死なないでね」
「ア!?」
今なんと言ったか、と立ち止まって声を上げたヒル魔にまもりは繰り返した。
「約束して。お願い、死なないで」
冗談を含まない、至って真面目な顔つきで、目つきで。
まもりはヒル魔を見つめている。
謎かけのような言葉にヒル魔はその頭脳をフル回転させるが思い当たることが何一つない。
「テメェは何が言いたい」
ヒル魔は眉を寄せたまま歩みを再開し、まもりに近づいて問うた。
東京ドームの関東大会決勝戦での骨折騒動の時ならいざ知らず、今の、秋大会にすら参加出来ない現状で何を言い出すのか、と。
「俺が死にそうに見えんのか」
「ううん。むしろ逆」
頑張って殺しても死にそうにないわ―――矛盾に満ちた言葉にヒル魔は更に困惑する。
「だから、怖いの」
まもりはぽつぽつと続けた。
「毎日が楽しくて、幸せで、目一杯頑張って、疲れてることを忘れちゃって」
それがヒル魔ではない誰かのことなのだと、彼にはすぐ知れた。
「そうして、ある日急に、死んじゃうの」
すうっとまもりの頬を伝った涙に、ヒル魔は口を開く。
「誰の話だ?」
「私の親類の、話。母の従弟なんだけど独身で、家族は側にいなかったの」
取り出したハンカチで目元を拭いながら続ける。
「ずっとアメリカで一人で仕事してたの。仕事が楽しくて仕方ないって言ってたから、誰も心配なんかしてなかった」
まだ四十代で大きなストレスもなく、毎日が充実していて楽しくて仕方ないと、本人は常々口にしていたし周囲もその通りだと知っていた。
けれど、疲労は蓄積していた。知らず知らず苦痛はなくともストレスで肉体は痛めつけられていた。それでも気力が充実していたから、同僚も上司も誰も、本人ですら、その危険に気づけなかった。
「ある日、彼が出社しなかったからって、同僚が見に行ったら、もう・・・」
ヒル魔は俯いて泣くまもりを少し見つめ、それから嘆息してその手を引いて歩き出す。
まもりも抵抗せず手を引かれるままとぼとぼと歩き出した。
「・・・ヒル魔くんも、身体が辛くても精神力で押し通しちゃうところあるし、痛いとか苦しいとかそういうこと言わないし、だからなんだか急にふっと死んじゃったらどうしよう、って思っちゃって」
「俺が今現在寝食忘れて練習なり作業なりしてんならともかく、現状でそんなことねぇだろうが」
去年の過酷な練習状況ならまだしも、今はそんなこともないのに心外だ、とヒル魔はぼやく。
「だって、ヒル魔くんは、何をしてても楽しそうなんだもの」
「そのどこが悪い」
「楽しそうだから、いつの間にか色々抱えてたりしないかな、とか」
ヒル魔はおとなしく付いてくるまもりをしげしげと眺めた。
「・・・糞アホだな」
その声にまもりは眉を寄せ顔を上げる。
心配しているのだ、という訴えなのにあまりな応じ方ではないか、とカチンと来たのだ。
「何に心配してやがんだ」
けれど思いがけず優しく苦笑する顔に、怒りも一瞬で霧散する。
引いてくれる手は大きくあたたかく、力強い。
「ンな余計な心配なんざするだけ無駄だろ」
「無駄、って・・・」
「大体俺がンな不味い状況になってたとして、気づかないテメェじゃねぇ」
まもりは夕日に輝く金髪を見つめる。
それは。
当たり前のようにまもりが側にいて、彼女がヒル魔の不調をすぐに気づける状況だろうと。
そしてそのままにしておく彼女ではないだろうと。
目を丸くしたまもりの手を強く引き寄せ、ヒル魔は彼女の耳元に囁いた。
「そうだろ? 姉崎」
にやにやと笑う声にまもりは瞬き、そうしてふわりと笑う。
「信頼、してくれてるのね」
嬉しい、と笑うまもりにヒル魔は僅かに眉を上げた。
「信頼ねぇ」
「え、違う?」
「ま、そういうことにしておいてやってもいいがなァ」
肩をすくめるヒル魔に、まもりはにわかに焦る。
「ええ!? 何、何か違うの!?」
何か余計なことを言ったか肝心な何かが足りないのだろうか、と見上げるが、ヒル魔は唇を歪めただけで、それ以上特に何を言うこともなかった。
***
油断すると書き方をすぐ失念します。
みぞれも降るくらい寒い日に何を書いてるんでしょう私(笑)
「おい?」
唐突な行動にヒル魔は眉を寄せるが、まもりはさほども離れないうちに振り返って、言い放つ。
「死なないでね」
「ア!?」
今なんと言ったか、と立ち止まって声を上げたヒル魔にまもりは繰り返した。
「約束して。お願い、死なないで」
冗談を含まない、至って真面目な顔つきで、目つきで。
まもりはヒル魔を見つめている。
謎かけのような言葉にヒル魔はその頭脳をフル回転させるが思い当たることが何一つない。
「テメェは何が言いたい」
ヒル魔は眉を寄せたまま歩みを再開し、まもりに近づいて問うた。
東京ドームの関東大会決勝戦での骨折騒動の時ならいざ知らず、今の、秋大会にすら参加出来ない現状で何を言い出すのか、と。
「俺が死にそうに見えんのか」
「ううん。むしろ逆」
頑張って殺しても死にそうにないわ―――矛盾に満ちた言葉にヒル魔は更に困惑する。
「だから、怖いの」
まもりはぽつぽつと続けた。
「毎日が楽しくて、幸せで、目一杯頑張って、疲れてることを忘れちゃって」
それがヒル魔ではない誰かのことなのだと、彼にはすぐ知れた。
「そうして、ある日急に、死んじゃうの」
すうっとまもりの頬を伝った涙に、ヒル魔は口を開く。
「誰の話だ?」
「私の親類の、話。母の従弟なんだけど独身で、家族は側にいなかったの」
取り出したハンカチで目元を拭いながら続ける。
「ずっとアメリカで一人で仕事してたの。仕事が楽しくて仕方ないって言ってたから、誰も心配なんかしてなかった」
まだ四十代で大きなストレスもなく、毎日が充実していて楽しくて仕方ないと、本人は常々口にしていたし周囲もその通りだと知っていた。
けれど、疲労は蓄積していた。知らず知らず苦痛はなくともストレスで肉体は痛めつけられていた。それでも気力が充実していたから、同僚も上司も誰も、本人ですら、その危険に気づけなかった。
「ある日、彼が出社しなかったからって、同僚が見に行ったら、もう・・・」
ヒル魔は俯いて泣くまもりを少し見つめ、それから嘆息してその手を引いて歩き出す。
まもりも抵抗せず手を引かれるままとぼとぼと歩き出した。
「・・・ヒル魔くんも、身体が辛くても精神力で押し通しちゃうところあるし、痛いとか苦しいとかそういうこと言わないし、だからなんだか急にふっと死んじゃったらどうしよう、って思っちゃって」
「俺が今現在寝食忘れて練習なり作業なりしてんならともかく、現状でそんなことねぇだろうが」
去年の過酷な練習状況ならまだしも、今はそんなこともないのに心外だ、とヒル魔はぼやく。
「だって、ヒル魔くんは、何をしてても楽しそうなんだもの」
「そのどこが悪い」
「楽しそうだから、いつの間にか色々抱えてたりしないかな、とか」
ヒル魔はおとなしく付いてくるまもりをしげしげと眺めた。
「・・・糞アホだな」
その声にまもりは眉を寄せ顔を上げる。
心配しているのだ、という訴えなのにあまりな応じ方ではないか、とカチンと来たのだ。
「何に心配してやがんだ」
けれど思いがけず優しく苦笑する顔に、怒りも一瞬で霧散する。
引いてくれる手は大きくあたたかく、力強い。
「ンな余計な心配なんざするだけ無駄だろ」
「無駄、って・・・」
「大体俺がンな不味い状況になってたとして、気づかないテメェじゃねぇ」
まもりは夕日に輝く金髪を見つめる。
それは。
当たり前のようにまもりが側にいて、彼女がヒル魔の不調をすぐに気づける状況だろうと。
そしてそのままにしておく彼女ではないだろうと。
目を丸くしたまもりの手を強く引き寄せ、ヒル魔は彼女の耳元に囁いた。
「そうだろ? 姉崎」
にやにやと笑う声にまもりは瞬き、そうしてふわりと笑う。
「信頼、してくれてるのね」
嬉しい、と笑うまもりにヒル魔は僅かに眉を上げた。
「信頼ねぇ」
「え、違う?」
「ま、そういうことにしておいてやってもいいがなァ」
肩をすくめるヒル魔に、まもりはにわかに焦る。
「ええ!? 何、何か違うの!?」
何か余計なことを言ったか肝心な何かが足りないのだろうか、と見上げるが、ヒル魔は唇を歪めただけで、それ以上特に何を言うこともなかった。
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油断すると書き方をすぐ失念します。
みぞれも降るくらい寒い日に何を書いてるんでしょう私(笑)
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HN:
鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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