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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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プシュミ・プルシュ

(ヒルまも)
※『欺瞞と真実』の続きです。



+ + + + + + + + + +
部室に顔を出したヒル魔を見て、まもりは眉を寄せた。
彼が常と変わらず椅子に座ってパソコンを立ち上げようとするのを、派手な音を立てて蓋を閉じ、阻止する。
突然の暴挙に、部室内がしんと静まりかえった。
「ア?! テメェ何しやがる!」
ヒル魔は怒声と共にきつい視線を向けるが、まもりは負けず劣らず厳しい顔をして彼を見下ろしている。
「帰りなさい」
「アア?!」
更に耳を疑うような言葉。部活の鬼、ヒル魔に帰れと言う。
しかも命令形。
いかに二人が恋人同士であるのは部内全員周知していることだとしても、この殺伐とした空気の中ではさすがの瀧ですら口を挟めない。
「何、巫山戯た事抜かすか!」
「巫山戯てるのはそっちでしょう。ヒル魔くん」
するりとまもりの手がヒル魔の額に触れた。
「ほら、けっこう熱ある。体調が悪いんでしょう?」
「え!」
「ヒル魔さん、熱あるんですか?!」
見た目には全く平素通り、顔色が悪くも身体のふらつきもない。
一応人間のカテゴリーであるはずのヒル魔が熱を出す事に不思議はないけれど。
ざわつく部室内の空気に、ヒル魔は不機嫌そうに眉を寄せ、舌打ちする。
「問題ネェ。おらさっさと準備しやがれ!」
部員達は皆戸惑ったように顔を見合わせる。
そんな彼らに、まもりは淡々とヒル魔の発言を補足した。
「みんなはね。ヒル魔くんは帰宅よ」
「平気だ、っつったろ」
「駄目です。そんな高熱で運動なんてとんでもない」
唸るヒル魔に対してまもりは一歩も引かない。
ヒル魔は一言も熱がある事を否定していない。
否定しても無駄なのだ。
大体あっさりと彼女の手が触れるのを許した段階で相当判断能力は鈍っている。
部員達が心配そうに見つめるのを受け、ヒル魔はふと何かを思いついたかのようにがらりと表情を変えた。
凶悪そうな、何か悪巧みを思いついたときの顔だ。
「そうだナァ。テメェが今これから一緒に俺の部屋に来るならいいぜ」
「・・・・ッ!!!」
ざざーっ、と音を立ててまもり以外の部員達が後ずさった。
皆健全な身体の男子高校生。
さらには日頃部活ばかりで女の子との甘い恋物語など無縁な連中ばかりである。
その意味がわからないようなお子様はいない。
深読みして赤面したり青ざめたりする者の方が圧倒的に多い。
「オラ、どうすんだ?」
お前には無理だろう、と意地悪く笑うヒル魔に、まもりは表情を強ばらせたまま。
言葉もなく立ちつくす彼女の隣を首尾良くすり抜けようとしたが。
彼の腕をまもりは躊躇いなく捕らえた。
「いい、わよ」
堅い声音で応じたまもりに、ヒル魔は勿論、全員の目が見開かれる。
あからさまに青ざめたモン太を始めとした面々が驚愕に固まっている。
まもりの表情は強ばったまま、けれど頬に朱が差している。
ヒル魔はマジマジと彼女を見つめ、それから。
「・・・バカだ。バカがここにいるぞ」
「なっ?!」
呆れたような口調をそのままに、まもりの腕を振り払う。
見上げるまもりの前でヒル魔は鞄を持ち上げた。
「帰る。テメェらはさっさと出て練習に行け!!」
同時にガシャン、とサブマシンガンを構えた彼に、はっと我に返った部員達は慌てて我先にと飛び出す。
「わ、ちょっと! 私はまだ荷物が・・・」
まもりも他の部員に押され、勢いで外に出てしまう。
全員が部室から飛び出した後、硬直していたまもりの前に少し部室の扉が開いて。
「あ」
部活に使う物一式が入った籠がぽいっと投げ出されて再び扉は閉まる。
ご丁寧に鍵まで掛けられた音がした。
まもりはようやく我に返り、その籠を持ち上げる。
「・・・何よ」
まもりは籠をぎゅっと抱きしめ、扉に向かって声を荒げた。
「ヒル魔くんのバカ!!」
けれど扉の向こうは沈黙している。
帰るところを捕まえて、彼の顔を見て直接文句を言おうとするまもりの肩を、ぽんと叩く人がいる。
「姉崎さん」
振り返ると、そこにはヒル魔とは全く逆の穏和な笑顔。
「栗田くん・・・」
「行こう。僕らがここにいると、ヒル魔は帰らないだろうから」
気配に聡い彼の事、きっと出て行くに出て行けず、体調を悪化させてしまうだろう。
せっかく彼の口から自主的に帰ると言わせた以上、それを邪魔してはだめだ。
渋々とまもりは踵を返す。
「せっかく・・・」
「うん?」
「せっかく、人が覚悟したのに・・・」
しかもあんなみんなの前で言うなんて恥ずかしかったのに、と顔を真っ赤にしてむくれるまもりに栗田はちらりと背後を伺う。
未だ沈黙する部室の中、そこにはヒル魔の他にムサシも残っているはずだ。
「こんな自分の意地だけでする駆け引きで、姉崎さんに手出ししたくなかったんだよ」
まもりはますます眉を寄せて口の中で呟く。
(だって、普段の時は、むしろ―――)
未だ二人の間には何もない。
ヒル魔から女の影は綺麗に消え、唇や手が触れ合う事はあるが、それ以上には進まないのだ。
欲があるとは彼自身も言っていた。
だから今回の事は彼にとって願ってもないチャンスになるだろうと思っていたのに。
「ヒル魔は姉崎さんが大事なだけなんだよ。軽々しく手出しできないくらい、ね」
「そうかしら」
すっかり拗ねたまもりの声音にも、栗田は柔らかく苦笑するに止めたのだった。


部員達を全員たたき出した後、ヒル魔は不機嫌な表情のままパソコンをしまい始める。
「お前にしちゃ珍しく読み間違えたな。熱に浮かされたか」
「寝ぼけてるんじゃねぇぞ糞ジジイ」
不機嫌なヒル魔にも、ムサシはただ笑うだけだ。
この悪魔を気取った友人とは他の部員達よりほんの少し付き合いが長い。
だから彼の心情も多少は判るのだ。
「大事にしすぎて手出し出来ないとは傑作だな」
見られるだけで呪い殺されそうな視線を受け止めてなおムサシは笑う。
それを見てヒル魔は舌打ちした。
自分の身体とヒル魔の身体を秤に掛けて、後者を優先させたその気持ち。
一時ヒル魔を避ける程、身体を繋げる事を怖がっていたのに。
それだけ大事に想われていると考えるのが嬉しいような、単に病人を家に帰したいだけでそんなに簡単に許すんじゃねぇという苛立ちが勝るような。
複雑な気持ちはぐるぐると腹で蟠る。
「まあ、姉崎の発言も、お前を大事に想っての行動だ」
大目に見ろ、という苦笑混じりの声にヒル魔はピンと片眉を上げて銃を構えた。
「テメェもくだらねぇ事言ってないでさっさと部活に行け!」
さもないと撃ち殺す、という威嚇にも彼は笑って肩をすくめ、部室の扉を開く。
その先にはもう誰もいない。
先ほど放り出した籠もなくなっている。
「早く寝ろよ」
表情は未だ変わらず、不調とは思えないヒル魔に片手を上げてムサシはグラウンドへと走っていく。
「余計な世話だ」
部室を閉め、ヒル魔も家路へと向かう。


その口角が緩やかに上がっていたのを見る者は、誰もいなかった。


***
素人の皮をかぶった昂様が呟かれたのでちょいと書いてみました。
た・・・っ楽しかった・・・っ。一時間で書き上がりましたw
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