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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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インフォメーション・ジェラシー

(ヒルまも)


+ + + + + + + + + +
時々、たまらなくなる。
目の前にいるこの男が、こちらをちらとも見ないで鼻歌交じりにキーボードを叩いていることが。
楽しげにページをめくり、黒い手帳を埋めることが。
「脅迫手帳収納~」
楽しげに声をあげ、ペンを走らせ指を走らせ。

徐々に、彼のデータベースの空白を埋めていく。

それは私の情報なのだろうけれど、『私』そのものじゃない。
私は今、目の前のここにいる。
人形とは違って血が通い、意思があり、動くことが出来るのに。
無味無臭で形すらない情報ばかりをかき集めるその姿に、息苦しささえ感じるのだ。

手を。
視線を。
意識を。

いずれかを一瞬でいい、投げかけてくれたら、それだけで私は囚われるのに。
意識ばかりがささくれ立って心に悲しみが広がっていく。



「姉崎」
不意に呼ばれた名に、私はびくりと肩を震わせた。
咄嗟に振り返れば怜悧な視線がたちまち私を射抜く。
その視線が、不意に温度を帯びる。
にやあ、と笑みに歪んで。

「般若は怒り狂う女の顔がモチーフなんだとよ」
あからさまにそんな顔をしているという指摘。
「・・・なにそれ。豆知識を披露してるつもり?」
そらとぼけて受け流すけれど、内心では盛大に切りつけられた格好の心が悲鳴を上げている。
じっとこちらを見つめる視線に耐えかねて、瞳を伏せる。
先ほどまではあんなに渇望した視線が、今は痛い。

「ケケケ」
特徴的な笑い声を上げて、彼は立ち上がる。
ゆったりとした足取りで、けれど足音を立てず彼は歩く。
そうして私の顎を捉えて持ち上げた。
「自分の情報に嫉妬か?」
射抜く視線は楽しげに歪んだまま、私を捉えて離さない。
言うつもりもなかった言葉が引きずり出される。
「・・・情報は『私』じゃないわ」
それに一層楽しげに彼は口角を引き上げた。
悪魔じみた顔がよりその印象を強くする。
「情報はテメェを知る手段にすぎねぇ」
安心しろ、と彼は囁いて唇を私のそれに寄せる。
「情報とはキス一つできねぇよ」

それでも。
キスして得るのは所詮私の情報なのでしょう、という一言は音にならず彼の唇に消えた。

***
恋する乙女は難しい。
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