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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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隣は何をする人ぞ

(ヒルまも一家)
※あかりが生まれて半年後。


+ + + + + + + + + +
ヒル魔はあかりを抱いた状態で目の前の惨状に立ち尽くすしかなかった。
「ねえ、ヒル魔くんはどれがいい!?」
なのに、テンションの上限を振り切ったらしいまもりはそんなことを言うのだ。
「選ぶわけねぇだろうが、ンなモン!!」
普段なら絶対そんなことを尋ねないのに、やはりタガが外れているらしい。
事実、普段なら言い争いの種となるヒル魔の悪い言葉遣いに一言だって突っ込んでこない。
それどころかものすッごくイイ表情なのだ。
出来ることなら逃げ出したい。
けれど、この騒ぎの元を持ち込んだのは他ならぬ彼で。
そうして、まもりにとっては待ちに待った、という時なのだ。
ヒル魔は諦念を滲ませたため息をつく。
「あー?」
意味などまだわからないだろうに、普段とはやや違う両親の雰囲気に、末娘は声を上げる。
「テメェはあんな糞甘臭ェ代物に狂喜乱舞するんじゃねぇぞ」
稚い青い視線を見下ろし、そう囁く。
ぱちぱちと瞬くあかりはむずかるように動き、ヒル魔は易々と彼女を抱きなおす。
そんな父娘のほのぼのした雰囲気を他所に。
リビングのテーブルの上はある意味すさまじい状態になりつつあった。

と、そこにチャイムの音。
平日の真昼間に来るのならセールスか新聞の勧誘と相場が決まっている。
けれどここはそういった類の訪問販売員は来ない。
来たとしても、鉄壁のヒル魔家特製セキュリティに阻まれる。
そうして運良く玄関までたどり着いても、そこから顔を出すのは悪魔の眷属ばかりなのだ。
引っ越してきて早々にそういう情報を植えつけた連中は手出しをしてこないはずだけれど、とヒル魔は玄関へ向かう。
確認ついでに外の空気が吸いたかった。
あかりを抱いたまま、外へ。
「ア?」
そうして、回覧板を抱いたまま硬直する隣人の姿を目撃した。
隣人は名を北沢絵里香という。
彼女は二ヶ月ほど前に引っ越してきて、ヒル魔の不在時にもう何度かこの家に出入りしていた。
いまやすっかりまもりの茶飲み友達として定着している。
今日もてっきりまもりが出るのだと思っていた彼女は、初めて見たヒル魔の姿に、心臓が止まりそうになるほど驚いたのだった。
「あ・・・の、か、回覧板、です・・・」
がたがたと震えながら差し出す回覧板を一瞥することなく、ヒル魔はじっと彼女を見分する。
「来い」
「え!?」
そうして、有無を言わさず彼女を室内に引きずり込んだのだった。


数分後、リビングには大量のシュークリームを喜色満面で食べるまもりと、その様子を呆然と見る北沢の姿があった。
そうして、その光景をあかりとともに少し離れた位置で眺めるのはヒル魔。
「あ、北沢さんも食べて食べてー! 美味しいのよ、雁屋のシュークリーム!」
「・・・え、ええ・・・」
まもりのあまりの食べっぷりに完全に気おされている北沢に、ヒル魔の声がかかる。
「とっとと喰え」
「は、はい!」
慌ててシュークリームに手を出した彼女は、一口食べてそれでもその美味しさにほっと息をついた。
いくら愛妻でいくら笑顔満面だとはいえ、今の状態のまもりの傍らにい続けるのはいかにヒル魔であっても拷問だった。けれど一人で食べるのもいかにも味気ない、と言われてしまえば逃げられず。
北沢が来たのは僥倖だった。

自らはブラックコーヒーをすすりながら、ヒル魔は今に至るまでの流れを思い浮かべる。

まもりは今日から母乳を断ちます、という宣言をしていた。
それはそれまであかりのためにまもりにあったある程度の食事制限がなくなるという意味で。
すなわち、甘いものを思う存分食べます、という宣言でもあったのだ。
授乳期間中はカフェイン・糖分・餅類等の制限がかかる。それらは摂取すると子供のみならず、授乳させる母体にも悪影響が出るのだ。
特に餅をうっかり食べた日には乳房ががちガチに腫れ、痛いわ苦しいわ熱を出すわで惨憺たる有様になる。
何人産んでもこればかりはだめね、と言いながら恨めしそうに甘いものの写真を見つめるまもりに絆され、授乳期間が終わったら死ぬほどシュークリームを食べさせてやるとうっかり約束してしまったのが運のつき。
宣言したまもりの期待に満ちた視線を受け、ヒル魔は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら、雁屋にありったけのシュークリームを運び込ませたのだった。

「・・・まもりさん、そのお腹のどこにシュークリームが入ってるんですか?」
恐る恐る、という風に北沢がまもりに尋ねる。
山積みのシュークリームが見る見る消えるのを見ては、確かめずにはいられないのだろう。
「うーん・・・どこかしら」
「そいつは糞シュークリームなら∞っつー糞バケモンだからなァ」
ケケケ、と茶々を入れるヒル魔に北沢は目を丸くするが、まもりは否定もせず肩をすくめるばかり。
「いくらなんでも一度にはそんなに食べないわよ? せいぜい二十個くらいで」
「に・・・」
絶句する北沢にヒル魔が更に追い討ちをかける。
「馬鹿言え、テメェが二十個ぽっちで満足したためしがあるかよ」
「あるわよ! たまには!」
「たまにじゃねぇか」
唖然とする北沢にもかまわず、まもりは手にしていた一つをあっという間に平らげ、もう一つを手に取る。
ヒル魔が数え間違えていなければ、現段階で二十個目だ。そうして一向に衰えない食欲のまま手の中の二十一個目にかぶりつく。
「・・・はぁ・・・」
北沢は壊れた人形のように気の抜けた相槌を繰り返すばかり。
ヒル魔はにやりと口角を上げる。
「ネタにしてもいいぞ」
「え!?」
飛び上がって驚く北沢に、ヒル魔は手帳をめくりながら口を開く。
「仕事のネタとしちゃ丁度いいんじゃねぇか?」
ケケケ、と笑うヒル魔に対し、まもりは目を丸くする。
「仕事? 北沢さん、何かお仕事してるの?」
「え!? え、えー・・・と」
目を泳がせるが、ヒル魔からの視線とまもりの期待に満ちた視線にしぶしぶ告白する。
「あんまり売れてないんですが・・・漫画、描いてるんです」
「えー!? 漫画家さんなの!?」
「や、漫画家って言っても、そんなちゃんとしてる訳じゃなくて! ほとんど趣味で!!」
しどろもどろになる彼女だが、なかなかどうしてその筋の作家としての評判は上々なのだ。
「迫力には欠けるが、十分話題性はあるだろ」
「え、迫力? ・・・ねえ、一体どんな種類のお話を書いてるの?」
ヒル魔の補足に加え、無邪気なまもりの追い討ちに北沢は追い詰められる。
「え・・・と・・・」



そうして、彼女が巷でちょっとした噂になるほどのホラー漫画家である『キタザワエリカ』なのだと知られるのはこのすぐ後で。
彼女の手により、あからさまにまもりやヒル魔がネタとなった話が描かれるのは、数ヶ月後の話なのだった。


***
回覧板を持ってきてまもりちゃんが出るかと思ったらヒル魔さんの衝撃。恐ろしいことこの上ないですよね!
・・・という某さまの妄想電波を受け取って書きました。
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