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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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それは未来のお楽しみ

(ヒルまも)

+ + + + + + + + + +
それはとある一日。
体育の授業から戻る途中、吹き付ける風に隣にいたアコが首をすくめた。
「今日は寒いねー」
「そうね、ちょっと辛いわね」
嘘だ。ちょっとどころじゃない。今日はなんとなく嫌な予感がしてちゃんと薬を飲んできたのに、全然効かない。
「・・・まも、顔色悪いよ?」
「そう? 急に日陰に入ったからじゃない?」
不自然にならない程度に笑顔を繕う。不調を感じ取った咲蘭の一言をやんわりと否定。
「まもが平気ならいいんだけどさ」
「あんまり無理しちゃダメよ」
「ありがとう。大丈夫よ」
あっさりと引いてくれる二人の前に立ち、運動靴から上履きへと履き替える。
かがみ込んでいたら、目の前が一瞬暗くなる。
まずい。
せっかく二人を誤魔化したのに、このままじゃ倒れるかも。
そう思っていたら、肩に手が触れた。
これは。
「ヒッ、ヒル魔?!」
「なんであんたがここに!?」
「あー? そんなの決まってるだろ」
ぞろぞろと他の生徒も通る気配。
「・・・ヒル魔くん、生物だったっけ」
「おー」
頭が上げられない。肩を支えて貰ってるから倒れはしないけど、もう少し休まないと。
「ちょっと! ヒル魔、なにまもに触ってるのよ!」
「まもも! ちょっと離れなさいよ!」
怯えつつも焦る二人に、私からは見えなくても判る、にやりと笑った声で言った。
「糞マネに用事がある」
次の瞬間、私は遠慮無くその肩に担がれた。残念ながらお姫様抱っことはいかなかったけれど。
・・・残念?
「ちょっと! 放してよ!!」
一瞬でもそう思った私自身に驚いて思わずわめくと、騒ぐなと一喝された。
「こいつは保健室に行ったとでも言っておけ。じゃーな」
「まもに何するつもりよ!」
「こいつはデビルバッツの戦力なんでな、テイチョーに扱わせてイタダキマス」
私からは彼の背中しか見えないけど、担いでくれている手はあたたかくやさしい。
「大丈夫よ、いざとなったらダッシュで逃げるから!」
二人に心配させないよう声だけは元気に聞こえるようにそう言うと。
「う~~まもがそう言うなら・・・」
「本当に丁重に扱いなさいよ!!」
「へーへー」
予鈴が鳴った。次の授業に遅れないようにアコと咲蘭は早足で教室へと向かっていった。
面倒そうにそれにひらひらと手を振って見せて、ヒル魔くんの足は重さを感じさせることなく動き出す。
「調子が悪いなら体育くらい見学しろよ」
「・・・授業が始まる前までは平気だったの」
頭に血が上ってきて苦しい。そう素直に言うと、体勢が変わった。
「お姫様抱っこの方がヨロシカッタデスカ?」
ケケケ、と笑われてむっと唇を尖らせる。
「なんで子供抱っこなの?」
「扉が開けられねぇだろ」
気が付けばもう保健室だ。
突然開いた扉の先に保健医は私とヒル魔くんを見て、さあっと青ざめてオロオロしだした。
「あの、ここは保健室です、け、ど」
「それ以外に変わったとは聞いてねぇ」
「で、すよね」
焦る先生に私が言う。
「すみません、私が気分悪かったので運んで貰ったんです」
「あ、そ、・・・なの?」
「他になんだっつーんだ、糞保健医」
「いいええ!! 別に! 何も!!」
ぶんぶん、と首が抜けそうな程振る教師に構わず、ヒル魔くんは私を空いているベッドへと運んでくれた。
「薬は飲んだのか」
「いや! 単なる貧血だから!」
「定期的な、か。狂わねぇのに準備がなってねぇな糞マネ」
図星。う、いや、そう言われちゃうと本当に恥ずかしくてたまらない。
「・・・・・・その何でも知ってるって口調、本当に恥ずかしい!!」
「女なら仕方ねぇだろーが」
「・・・・・・・・・」
あっさりと流された。
うう、そりゃ辛かったし薬も効かないわで困ったけれど、こんな状態なの見つかるなんて情けない。
「おら、寝ろ」
薬は、ともう一度問われて小さく朝に飲んだけど、と答えた。
もそりとベッドに横たわる。消毒液のつんとする匂い。保健室にいるヒル魔くんっていうのがそぐわない。
「ヒル魔くん、保健室って似合わないね」
「前は割と通ってたぞ」
「なんで?」
「怪我の手当」
「あ・・・」
そうか。私が入ってからはほとんど私が手当てしてたけど、その前だってヒル魔くんは怪我をしてたわけで。
「むしろお前の方が似合わねぇな、糞マネ」
「そう、かな」
「お前はいつもどおり糞赤犬みたいに吠えてりゃいいんだよ」
「あかいぬ…?!」
なによそれ、と言いかけたのを遮ったのは、額に触れた手だった。
「熱はあんましねぇみたいだが、今日お前は部活禁止な。キャプテン命令」
「でも・・・」
「そんな青白いツラで出てきてみやがれ。糞ガキどもの気が散って今度こそ保健室の住人になるやつらが続出だぞ。そんなのの面倒を一人で見ろっつーんなら俺は御免だ」
一気に言われた言葉は随分と甘い内容で。
「・・・・・・わかりました、キャプテンの命令に従います」
「よし」
尊大に言いはなった悪魔がおもむろに身体を起こす。
「お前の身体はお前だけのもんじゃねぇからな」
やれやれ、と言わんばかりにヒル魔くんは保健室を出て行った。
今から授業に戻るのかしら。それとも一足早く部活に顔を出してしまうのかしら。
彼がいなくなって、急激に身体がだるくなる。
気が張っていたのだろう、今は身体が腰を中心に熱くて重くて、もう目を開けていられない。
眠りは比較的すぐ訪れた。


「・・・まも、まも」
「やっぱり調子悪かったんじゃない。大丈夫?」
「・・・あれ?」
おはよう、と一応呟いて、覗き込んでくるアコと咲蘭を見上げる。
どうしたんだっけ、私。
あ、そうだ。
私今回アレの痛みが酷くて貧血起こしたんだった。
で、ヒル魔くんが運んでくれて…。
「あ」
「起きた? 今起きたのね、まも?」
んもー、と二人が苦笑する。
「調子が悪いならちゃんと言ってよ~」
「がんばるのはまものいいところだけど、我慢のしすぎもよくないんだから!」
「うん、ごめん。ありがとう」
「いいのいいの! でもまもが無事でよかったよ~」
「え? 何で?」
「だってヒル魔が!」
「そうそうヒル魔が! 酷いのよ、あの悪魔!」
二人が口々に言うには、授業が終わったと同時にヒル魔くんが自分の荷物を取りに教室へ戻って来るやいなや、アコと咲蘭に『あいつなら保健室に捨ててきた』と言ったらしい。
「だからまもの荷物と着替え持ってきたんだけどね」
はい、と渡されてそういえば体育の後だった、と思い出す。
「ああでもよかった~ホントによかったよ~」
「ねー。ウチら銃殺されるの覚悟で止めるべきかって本気で心配してたんだから」
「何が?」
「・・・・・・うわ、気づいてないの?」
「まもの貞操の危機だったって言ってるのよ!」
「え?」
二人が顔を赤くして口々にわめき立てる。
「あんなに悪魔だけど! 一応男じゃない、あれも!」
「アメフト部のことって言ってたけど、あんな風にまも連れてっちゃうし、本気でまもが食べられちゃうかと…!」
「え、あ? え? ・・・え」
男? 食べる? ヒル魔くんが、私を?
なんで?
・・・え?
あれ?!
「そ、そんな風に見えたんだ!? あああ違う違うわ、そんなことは断じてないわ!! あの後すぐ保健室に運ばれたし! 保健の先生だっていたんだし!!」
「だってヒル魔だし」
「ありえそうじゃない。保健医脅迫して追い出す、なんてやりそうだし」
「ええー?!」
焦る私は、それでもずっと引っかかっていたことに気が付いた。
「あれでも、かなり心配して来てくれてたのよ?」
「え?」
「なんで?」
「ヒル魔くん、生物だったって言ってたでしょ。生物室って窓からグラウンド見えるのよね」
「ああ、確かに」
「それがどうかしたの?」
「多分もうその時に私の気分が悪かったの気が付いてたのよ。じゃないと銃を持ってきてたはずだもの」
「「あ!」」
私を抱えるのには銃は余計だった。だからきっと誰かに・・・多分ムサシくんに預けたんだと思う。
でなきゃいつでも銃を持つ彼が手ぶらで来るなんてありえないんだから。
「・・・まもってヒル魔に愛されちゃってるのね」
「うんうん」
「え!? なんでそうなるの!?」
「えーだって、まものこと心配で銃置いて来ちゃうし」
「それって生物の授業中もまものこと見てたってことでしょ」
「うええ?!」
焦る私に二人は顔を見合わせて笑った。
「まあ、ヒル魔もまもには優しいって事が判ったから大丈夫かな」
「そうね。少なくとも体調の悪いまもに無理強いするほど悪魔じゃないってことは判ったわね」
「も~~、二人とも私たちのことをなんだと思ってるの?!」
いたたまれず声を上げた私に、二人はきょとんとした顔をして声を揃えた。
「なにって」
「ねえ」
「「悪魔と悪魔使い」」
「いやー!」


そしてなんだか散々に疲れた私は、ちゃんとキャプテン命令に従って珍しく日のあるうちに帰路に就き、食事もそこそこに布団に入る。
痛みは大分引いてきている。きっと明日はちゃんと部活に行けるだろう。
そういえば。
「『お前の身体はお前だけのもんじゃねぇからな』って、随分頼りにして貰っちゃってるわね・・・」
それが嬉しい、と一人微笑んで私は眠りに落ちた。



「・・・って言われたのよ。普段あんまり労ってくれないじゃない、あの人。だから嬉しかったわ」
「そ、そう・・・」
翌日心配して迎えに来てくれたセナにそのことを言ったらひどく引きつられた。
どうしてそんな顔してるの?



朝練中。
僕はこそこそとヒル魔の側に寄った。
「あの、ヒル魔さん。一つお聞きしたいんですけど」
「あぁ?」
「まもり姉ちゃんのことで」
そう言うと、それだけでヒル魔さんは察したようでにやりと笑った。
「どういうつもりなんですか」
うっかり声が尖った。でもヒル魔さんはますます楽しそうに笑っただけだ。
そして言った。
「テメェのまもり姉ちゃんはもういねぇ」
言葉以上に雄弁に語る双眸がじっとこちらを見つめる。
それだけで充分だった。そしてきっとヒル魔さんはもう決めたんだろう。
「・・・泣かせないでくださいね」
「サアネ」
そう嘯きながらヒル魔さんはケケケと笑った。
僕も笑うしかない。

うん、まもり姉ちゃん、・・・ご愁傷様。

***
わかりやすく私物宣言かますヒル魔さん。ムサシもきっとまもりちゃんに合掌してるに違いない。
アコ・咲蘭がどうヒル魔さんを呼ぶのか判らなかったけれど、同級生であることから名字呼び捨てにしました。
ヒル魔さんにまもりちゃんを赤犬呼ばわりさせるというのを結構前から考えていたので、実現できて嬉しい。
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