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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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愚か者に注ぐ

(ヒルまも)

+ + + + + + + + + +
※死にネタです。気になさらない方のみ下へどうぞ。















まもりは延々とコーヒーを淹れ続けている。
そして黙々と飲んでいる。
しかもブラックだ。
もう何杯目か忘れたが、飲み過ぎて頭痛がする。
でもやめられない。
座り込んで再びカップに口を付ける。
「・・・俺が言うのも何だが、腹壊すぞ」
「うるさい」
傍らから聞こえた声に、振り返りもせず切り返す。
口調は聞き覚えがあったけれど、声は随分と高い。
「これはね、悪魔みたいな男の人のために私が買ったコーヒー豆なの」
「そうか」
「美味しくない飲み物だとずっと思ってたけど、その通りだわ」
「だからやめればいいじゃねぇか」
「これは今日中に消費しないといけないのよ。飲む人が死んじゃったから」
「辛気くせぇな。俺なら祝砲でも上げるぞ」
「生憎私は貴方みたいに非常識じゃないから」
そこまで答えて、振り返る。そして眉を顰めた。
「どうしてそんな格好なの」
「あ?」
視線の先には漆黒の髪の男の子。
逆立った髪の毛はいつも固めているのとは違う、けれど似たような雰囲気で。
「お前、俺の頭のことしょっちゅう言ってただろ。ピアスも」
「そうね」
「生憎とこの年以降はあの格好なんでな」
「へえ」
見せてあげたいと思ってくれたのかしら。
知りたがっても見せてくれなかった過去を。
自らの幼い頃を。
「・・・最後だから?」
「あ? お前だってそのうち来るだろ」
「待ってるって言うの?」
「アホか。俺はそんな悠長じゃねぇ」
「だったら後追いしろっていうの」
「そんなことしたら地獄で殺してやる」
「地獄なんだ」
くす、と笑うと彼はほっとしたように頬をゆるめた。
心配性ね。
本当に面倒見のいい人だった。
だからそんな目に遭っちゃうのよ。
でも、不思議と私の声は静かだった。
「子供庇って車に轢かれるなんて、らしくないわ」
「そうだな」
「私を置いていくなんて、ひどいわ」
「そうだな」
「せいぜい貴方がここにいないことを後悔するくらい素敵に生きてやるんだから」
そう言って笑ってみせると、彼はその意気だ、とにやりと笑い。
その手を私の頭に触れさせて、ぽん、ぽんと二度軽く叩く。
「じゃーな」
まるで犬に挨拶するみたいに軽く言って。


消えた。

「どこまでも勝手なんだから。・・・だからこれくらい言わせてよ」
握りしめたコーヒーに一つ二つと雫が落ちる。
けれど黒い水面が歪んでしまうのはそれだけじゃない。
「・・・ヒル魔くんの、バカ!」


やっと、泣けた。



***
あんまり非科学的なことは信じない二人だけれど、こういうのもアリかな、と。
ヒル魔さんなら殺しても死なないと思ってしまいがちですが一応人ですものね。
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