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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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3/28にアップしたヒルまもパロ小説の続きを書いてみました。

・まもりが子供
・ヒル魔が人外
・まだまだ続くらしい
・しかも今回は前回との前後編になってたり…

というのが許せる方は『つづきはこちら』からどうぞ。

+ + + + + + + + + +
気が付くと、そこは森の中だった。
あの時と同じ、雪の中。
違ったのは、暖かな上着を纏っていないことと今が夜であるということ。
打ち付けた身体が痛いけれどどうにか動ける。このままでいたら凍死してしまうかもしれない。
そして起きあがったまもりの目に見覚えのある木々の並びが見えた。
「ここは・・・」
村のはずれ、『おきつねさま』が出るのとは違う森。
よくセナと遊びに来た場所だ。ここからまもりの家は近い。
まもりはふらふらと家の方向へと歩き出した。
やがてほどなく、まもりの家が見えてきた。
とうに光は消えて家人は寝静まっているようだけれど、まもりは引き寄せられるように家の扉へと近寄った。
と。
「誰ッ?!」
はっと振り返ると、そこには懐かしい母の顔があった。
「あ・・・」
その手を繋いでいるのは、愛しい弟の姿。
出掛けていたのか、二人ともしっかりと厚着している。父の姿はなかった。
「お母さん、セナ」
「まもり・・・?」
「そうよ、お母さん、私よ、まもりよ」
身体が痛くて辛かったけれど、それよりも二人の側に行きたいという気持ちが勝って、まもりは一歩そちらへと足を進めた。
だが。
「来ないでッ!!」
「え・・・」
「なんで生きてるの・・・!?」
「おかあ、さん・・・?」
母親は、まるでまもりを化け物でも見るかのように、叫ぶ。
「まもりは死んだわ! おきつねさまの生け贄になったのよ!」
「違っ・・・、私は、生きて」
「お前は何?! なんであの子の格好をしているの?!」
けれど恐怖の表情から一転して急に歪んだ笑みを浮かべた母が言いはなったのは。
「脅しのつもりでそんな格好をしているのなら意味無いわ。あの子は孤児だったのよ! 愛情なんて感じたことはないわ!」
「―――――――ッ!!」
目を見開き言葉もないまもりに、母の後ろにいたセナが恐る恐る顔を出す。
「セナ」
「セナを見ないで!!」
最早金切り声となった母の声に、二人はびくりと身をすくませる。
「この子はやっと授かった私たち夫婦の子供よ!! 狐なんかには渡すものですか・・・!!」
「・・・ッ」
セナはこちらを見ているが、姉を慕う目ではなかった。
母親もそう。
まるで化け物を見るかのような。
化け物。
もしかしたら私、化け物なのかしら。
今までふつうの子だと思っていたけれど、違うのかしら。
まもりは呆然としながら、二歩戻った。
「さっさとどこかへ行って!! 消えて!! 消えなさいよぉおお!!!」
まもりは踵を返し、駆けだした。
いつまでも背後から母親だと信じていた人の声がつきまとってくるかのようで、目を閉じて耳を塞いで闇雲に走る。

やがて再び雪の中。
「・・・私、死ぬのかな」
ぼろぼろと涙がこぼれてくる。
全身はとうに冷え切って、落ちていく涙だけが熱いけれど、もうどうでもよかった。
「ヒァ」
胸元から小さな声。
まもりがそこから毛玉を出すと、それはまもりの両手の手のひらの上でふるふると震えた。
「さむいね」
「ヒァ」
「でもごめんね。もうお家、ないの・・・」
地上の家には居場所がなく。
天空の楼閣には帰る手だてがない。
「どうしよう」
空腹よりも寒さよりも虚無感が酷くて、もう一歩も動けない。
「・・・・・・ヒル魔さま」
あの時はこの森で、たまたま拾って貰えたけれど、そんな偶然はもうあり得ない。
身体が痛みを思い出してきて、まもりはその場にうずくまる。
雪がいつの間にか音もなく降り出していた。
寒い。
寒い。
けれど動くことも出来なくて、まもりはいつの間にか睡魔に襲われていた。
うつらうつらしながら、手の中の毛玉を出来る限り温めてあげようと無意識に抱き込んだ。
生まれてすぐにこんな目に遭わせてしまってごめんなさい、と心の中で謝る。
ヒァ、と小さく鳴く毛玉の声ももう遠い。



蹄の音が聞こえる。
雪がこんなに積もっているのに、鮮明に。
ああ夢だ。
天国へのお迎えかな。そこは天空みたいに暖かいのかな。
それとも私は化け物だから、地獄に行くのかしら。
鈍色の馬に跨った人が降りてきて、抱き上げられる。
まもりの意識はそこで完全に途絶えた。


「ご苦労、ゲジ眉毛」
「相変わらず人使いが荒いよね。この貸しは高いよ」
「今度ジジイを貸してやる」
「そりゃどうも。でもいいの? 彼だってご多忙な風神様でしょ」
「今回の面倒ごとの原因だからな。文句は言わせねー」
「ふーん。じゃあ牧場の柵を直して貰おうかな。酷いんだよねえ、うちのメンバーがすぐぼろぼろにしちゃうからさあ」
「相変わらず大人数だからだろ。いい加減放り出せ」
「牧場やるにはそれくらい必要なんだって知ってるでしょ」
のんきな男の声と聞き慣れたヒル魔の声。
それを夢うつつに聞いて、まもりは幽かに意識を取り戻した。
「あ、気が付いた?」
「鈴音、ちゃん・・・?」
「そうよ。今はまだ寝ていて。熱が高いから」
「・・・・・・ごめんなさい、服、だめになっちゃった…」
「服なんていくらでも作れるからいいのよ。また沢山シュークリーム食べようね」
「うん…」
そっと頭を撫でられて、まもりの意識は再び沈み込む。

そしてもう一度、今度は完全に目を覚ますと、寝台の隣にヒル魔がいた。
「ヒル魔さま・・・」
「起きたか」
人差し指がまもりの頬に触れる。
「まだ熱あるな。今日は一日寝てろ」
「でもご飯、食べますよね」
「俺は喰わなくてもいい。いいから寝てろ」
お前の分は後で用意する、と言われてまもりは不意に泣き出した。
「なんだガキ、俺の親切な言葉の後に突然泣き出すたぁいい了見だ」
「・・・・・・ッ、わ、たし、ご迷惑・・・・・・っかけて・・・」
「あー迷惑迷惑。突然消えて探してみりゃ凍死寸前だし目は覚まさないし覚めたら覚めたで突然泣かれて本当にいい迷惑だからさっさと治せこのバカ弟子が」
ぼふ、と柔らかい布を顔に押しつけられ、そして頭をぐしゃぐしゃと撫でられる。
大変迷惑だという口調でありながら、言うことは優しいし態度も優しい。
それが母親だと思っていた人の手酷い裏切りに傷ついた心に沁みてまた泣ける。
「私っ・・・、孤児だったって・・・そう言われてっ・・・セナ、も、私を怖がって・・・」
「夜中に突然、死んだと思ったヤツがそんな薄着で現れたら幽霊か化け物か間違われても仕方ないだろ」
「お母さ・・・んも、あ、愛情なんて感じたこと、なかった、って・・・」
「本当にそうだったら、お前はもっと早くに死んでただろーが」
「・・・っ、でも・・・」
「いーから黙れ! 昔から怪我人病人が熱に浮かされて言うことは譫言っつーんだよ!」
最初はまもりの泣き言に一応言葉を返していたヒル魔だが、このまま話していても埒が明かないと判断したらしい。
「後で飯持ってくるからもう一回寝ろ。寝たくねぇっつーなら強制的に眠りの術でも掛けてやるが目覚めは最悪だという保証付きだ」
「・・・自力で寝ます」
「よし」
「でも、手、握っていて欲しいです」
おず、と出された手をヒル魔はそれはそれは面倒そうな顔をしながらも、そっと握った。
「ありがとうございます・・・」
「チッ」
その手はひんやりと冷たく気持ちよくて、まもりは舌打ちも気にせず再び眠りへと沈み込んだ。


ヒル魔が用意した薬が効いたのか、次の日にはまもりの怪我と熱は消えた。
そして忙しい仕事の合間を縫ってムサシが顔を覗かせた。ヒル魔から聞いていたのだろう、見舞いのシュークリームをちゃんと持って。
「すまなかったな、まもり嬢ちゃん」
「いえいえ! ムサシさまのせいじゃありませんから」
「だが・・・」
自分の忠告のつもりの一言で、余計な辛い思いをさせたとあっては、ムサシも気まずい。悪気があったわけではないとまもりだって判っている。
「ジジイ、罪滅ぼしならこいつを迎えに行ったキッドのところで働いてこい」
「ん? キッドが探しに行ったのか?」
「あの毛玉が鉄馬呼んだんだよ。でもあいつは主人の命令に忠実だからキッドに伺いを立てたらしい」
「で、お前の所に連絡が来て逆に迎えに行かせた、と」
「そういうことだ」
なるほど、と言うのはムサシだけで、まもりにはさっぱり判らない。
こないだ習得したコーヒーを運びながらそう素直に問うと。
「まもり嬢ちゃんが持たされてた卵は、キッドという仙人の仙獣、鉄馬が生み出したやつだ」
「仙獣って全部メスなんですか? ケルベロスも?!」
違う、とヒル魔は首を振る。
「性別はねぇんだよ。こいつらはある程度時間が経つと卵を作り出すんだが、師匠の仙人から弟子に卵を渡すときは別の仙人に貰わなきゃなんねぇんだ」
「なぜですか?」
それにはムサシが答えた。
「自分の子供が孵化しないのを隣で目の当たりにさせるのは酷だからな」
「あ・・・」
仙人の第一試験、仙獣の孵化。言葉程簡単ではないから、ヒル魔もそれが卵だと最初に言わなかった。
足下でちょろちょろしている毛玉が改めて愛おしい。
「そうか・・・。無事生まれてくれてありがとうね」
「ヒァ」
「仙獣は命の危機が迫ると救難信号を発するが、それを一番拾いやすいのが親子間。毛玉の親が鉄馬だったからそっから連絡が来た」
で、距離がより近かったキッドが鉄馬と共にまもりを迎えに行ったのだ。
「そうだったんですか」
「さて、まもり嬢ちゃんの疑問が解けたところで俺はキッドのところに行ってくる」
「え!? じゃ、じゃあ私が働きに行きます!」
「お前にはこれから見せるもんがあるからダメだ。ジジイ、せいぜい働いてこいよ」
「ああ、判った。じゃあなまもり嬢ちゃん。病み上がりは無理するなよ」
「え、あ、う~~~・・・判りました、お気を付けて行ってらっしゃいませ!」
ひらひらと手を振って雲に乗ってムサシは去っていった。まもりはその様子を見えなくなるまで眺めていたが、突然目の前に出てきた封筒に視界を遮られた。
「なんですか、これ」
「開ければわかる」
封のされていない封筒。表には見慣れた字があった。
「・・・おかあさん」
そう呼んでいいのか判らないけれど、それ以外の呼び方が判らない。
呟いて、まもりはあわててその中身を取り出した。
そこにも母親の字が並んでいた。
『昨日、まもりの姿をしたものを見ました。咄嗟に幽霊か化け物だと決めつけて叫びましたが、セナはまもりだったと言って譲りません。だとしたら、私は相当酷いことを言ったと思います。お父さんにはまもりを見たことは内緒にしてあります。お父さんは本当にまもりを大事にしていたから、それを口にしたら許して貰えないと思って。弱い私でごめんなさい。私がこの先死んでもまもりと同じ所に行けるかわかりませんが、恨み言はそのときにお父さんの分とセナの分と三人分、たっぷり聞きたいと思います。だからそれまでは、どうか私を許さないでください―――』
身勝手な母の言葉に、まもりはただ手紙を抱きしめる。
あの時の言葉は酷く痛くて辛くて、でもこの言葉も別の意味で辛い。
じわりと涙が滲むが、なんとなくヒル魔の前で泣くべきではないだろうとぐっと堪える。
黙ってその様子を眺めていたヒル魔は、口を開いた。
「熱も下がって譫言じゃ無くなっただろうから、お前の言い分を聞いてやろう」
まもりは少し考えて、あの時泣きながら言いつのるつもりだった言葉をやめ、別の質問をした。
「私が村に落ちた時、ヒル魔さまはそれに気づいていたけれど迎えに来なかったのではないですか?」
質問と言うよりは確認だった。水瓶で位置を把握できる術を使えば、まもりがどこにいるかはすぐ判っただろう。
「なんでそう思う」
「雲の呼び方を私に教えなかったからです」
「ほう?」
ぴく、とヒル魔の片方の眉が上がる。
「無事に地上で家族に迎えられたなら、もうここに戻ってくる必要はないとお考えだったのではないですか?」
雲に乗れても呼び方を知らないなら地上で生活する他はない。
そして仙人の一般知識など無用の長物に過ぎなくなるから最初から教えなかった。
難しい本はまもりが仙人になるのを諦めさせるつもりだったから読ませただけで。
「だったら俺がそもそも最初からここにお前を連れてくる必要がなかったよなぁ」
「そんなに長く置くつもりはなかったのでしょう? 気まぐれを装って少なくとも春くらいまで待って、それから様子見がてら地上に落とすつもりだったとか」
今回はたまたま事故で落ちましたけどね、と呟く。
「なんでそう思う」
「春になって雪が解けたら、干ばつも収まるでしょう。食糧難もなくなって、余裕が出た頃にひょっこり娘が帰ってきたら迎えるんじゃないか、と考えられたかと」
「・・・はっ! 子供の浅知恵だな」
「そうですか?」
「まあ、俺の弟子ならそれくらいは読めなきゃ困る」
にやにやと楽しそうなヒル魔を見て、まもりも笑う。
落ちる瞬間、そして寒さに意識が遠のいた時。
いずれの時にも一番悲しいと思ったのは、ヒル魔の側にいられなくなるという事実だった。
あの気持ちはなんというのかわからないけれど、とても大事な気持ちだと思った。
なんとなく、ヒル魔には言えないけれど。
「母親を恨むか?」
「いいえ。孤児だった私を育ててくれたことには変わりはありませんし、おかげでヒル魔さまにも会うことが出来ましたから」
「ほー、一人前の口を利きやがる」
わしゃわしゃと髪の毛を混ぜられ、まもりは笑う。
「毛玉に名前つけとけよ」
その言葉にまもりはぱっと笑った。
「あ、もう決めました!」
「ほー?」
「ぽよぽよしてるから『ポヨ』!」
途端にヒル魔の眉間に盛大に皺が寄った。
「・・・お前に名付けのセンスが無いことがよく判った」
「えー?! かわいいのに!」
ねえポヨ、と問われてポヨはただヒァーと啼いた。

***
というわけで前後編終了です。やっぱりまもりには甘いヒル魔さんですよ。
次回以降も活躍が期待したい西部仙人組。鉄馬やポヨについてはまた後日。
なんかやっとヒルまもっぽくなった・・・?
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