肉を食べるぞ、という身も蓋もないキャプテンの一言で、西部ワイルドガンマンズの面々は焼き肉屋に向かっている。
「大体なんでいきなり肉なんですか?」
もっともな陸の疑問に先輩たちは口々に言いつのった。
「何を言う! 成長期にはタンパク質だ!」
「そうそう、肉喰ってもっと背ぇ伸ばさないとな~」
「大丈夫! 走ってる分には横には伸びねぇよ!」
「ついでに米粒も縦に食べればOKだ!」
「先・輩・方~?」
からかわれた陸は引きつった笑顔で荷造り紐を鞄から取り出す。
「げっ!」
「やべっ、あれやられたらマジ困る!」
「陸! すまん勘弁してっ!!」
「大丈夫です、首は絞めませんからッ!!」
「わーっ!!!」
口々に騒ぎながら走っていく面子も、それを光速で追いかける陸も、楽しそうだ。
「楽しそうだねぇ」
コク、と隣で鉄馬が頷く。
「鉄馬もああいうのに紛れてくればいいのに」
フル、と横に振られてそう? と笑う。
彼は昔からこうだった。いくらやらなくてもいいと言っても命令したら忠実に動く。
気づかれないように内心で嘆息する。
命令なんてしたくないのに。
ただ友達が欲しかったのに。
そこに光速で追い立てられていた面子の一人、牛島が飛びかかってきた。
「キッド! お前だけアレ喰らわないのは不公平だっ!」
「いやいや・・・別に俺喰らいたくないから」
更に後ろから仁科まで突っ込んでくる。
「いいから喰らってこい! 鉄馬も!!」
「ええ!? いやいや・・・ってなんで鉄馬は駆けだしてるの・・・」
よく判らないうちに、キャプテンたちの身代わりよろしく陸の前に突き出される。
勢いよく突っ込んできた陸は、見事にキッドと鉄馬を紐でグルグル巻きにした後に逃げていた牛島と仁科も見事に捉えた。
「ああ~結局やられたー」
「その手の早さが嫌だよなー」
「その言い方は誤解を招くので止めて下さい!」
陸に最後に一度蹴られても牛島はブーブー言ってる。
「結果がわかっていてやるのはどうかと思うよ」
蓑虫よろしく転がりながら突っ込んでみたら。
「何言ってんだよ、やってみなきゃ判らねえだろ」
「そーそー」
「それに、こうやってバカやって、騒いで遊ぶのだって楽しいだろ」
隣で同じように蓑虫になる鉄馬。そういえば彼に命令はしていなかったけど、鉄馬は走っていった。
「バカやって、楽しかっただろ?」
先ほどまでの感傷とも呼べない小さなわだかまりを、その声に拾い上げられる。
これはそう。
一番を取るように言われ続けた時、車の外から眺めた同級生たちの楽しそうな声にそっくりだ。
「・・・格好つけたところで蓑虫だけどねぇ」
返事は、一拍遅れた。
「かわいくねぇの!」
それでも楽しそうに笑って牛島は他の部員に大声で助けを求める。
縛られて耳もふさげなくて、結局その声を間近で喰らってしまったキッドは、げんなりしつつも少しだけ楽しそうに、笑った。
***
・・・なぜか蓑虫みたいにグルグル巻きになってる西部の面々が脳裏に浮かんでしまったのでこんな話に・・・。
すみません西部ファンの皆様。愛はあります!
こんなノリですが、よろしければアイシー缶ののりちこ様に捧げたいと思います。お受け取り下さい!
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同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
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