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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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サイレント・ストロベリー(下)

※18禁部分は裏に掲載しました

 


+ + + + + + + + + +
未成年なので、とまもりが固辞したのでその店で酒を口にすることはなかった。
ヒル魔も弱くはないが、車の運転があるので手を出さなかったのだ。
しっかりとデザートまで口にして、まもりは軽い足取りで扉をくぐった。
「美味しかったー! ありがとう、ヒル魔くん!」
「おー」
酒も飲んでいないのにハイテンションなまもりの隣で、ヒル魔はおもむろにその手を掴む。
「なに?」
「危なっかしいんだよ。掴まってろ」
たかだか数時間でヒールに慣れるはずもない。
大丈夫、と言おうとした矢先にまもりの足がふらついて彼の腕にしがみつく。
「ありがと・・・」
「ったく、言ったそばから・・・」
「お、お酒飲んでないから平気だと思ったの!」
「ここに来る前からふらついてただろうが。なんだその根拠のない自信」
「う」
赤くなり黙る彼女にヒル魔は苦笑を深める。
差し出された左腕に、まもりは大人しく掴まったのだった。


帰宅して着替えようとしたまもりは、ふと昼間に友人達とした会話を思い出した。
「どうした?」
「ん、ちょっと」
まもりは着替えるのをやめ、冷蔵庫へ向かう。
取り出したあの苺のスパークリングワインに、ヒル魔の眉が上がった。
「未成年だから飲まないんじゃなかったんデスカ?」
「うん、そう言って断ったんだけど・・・みんなは家でも外でももう飲んでるって言うのよね」
「そりゃそうだろうナァ」
まもりは瓶を手に、何かを思案しているようだ。
それにヒル魔はピンと片眉を上げる。
「実はちょっと飲みてぇんだろ、テメェ」
ヒル魔に指摘されて、まもりはいたずらっぽく笑う。
「うん。だからヒル魔くんも一緒に飲みましょう?」
「ア? 俺はイラネ」
「えー、一人で飲むの?」
それはちょっと、と眉を寄せるまもりにヒル魔は嘆息し、冷蔵庫からビールを取り出す。
「俺はこっちにする。テメェはそれ飲め」
「え、なんで?」
「テメェなあ、俺がンな糞甘臭ェモン飲むわけねぇだろ」
「んー・・・飲みきれるかなあ」
720mlの瓶。スパークリングワインだけに一度蓋を開けたら飲みきらないとならない。
「平気だろ。明日は日曜だ」
万一酔いつぶれて寝過ごしても、とりあえず問題ないだろう。
栓を抜こうとするまもりを制して、ヒル魔が瓶を持つ。
いつのまに買ったのか、ソムリエナイフを手にくるりと栓を抜く仕草は嫌味なくらい似合っている。
つくづく、動作の滑らかな男なのだ。
まもりは感嘆の声を上げる。
「わー・・・」
テーブルに用意したシャンパングラスに軽やかな音を立てて薄桃色の液体が流し込まれた。

苺のスパークリングワインは、思ったよりもずっとすっきりとして甘すぎなかった。
「あんまり甘くないし、美味しいよ」
飲んでみる? とグラスを差し出してもヒル魔は嫌そうに眉を寄せるだけ。
「甘い酒なんざ願い下げだ」
「そんなに甘くないのに」
「テメェの『甘くない』は俺には糞ゲロ甘だ」
そして調子よくグラス二杯目を飲み干した後から、まもりのろれつが怪しくなってきた。
三杯目を空ける頃にはもう顔も真っ赤だ。
完全な下戸でもないが、さほど強くないのである。
「んもー・・・人間は甘い物が好きなように出来てるんだよー?」
甘い物は栄養になる、それは太古の昔から生物が得てきた知識だ。
「千差万別なんだから一括りにすんじゃねぇ」
ヒル魔はビールをぐびぐびと飲み干している。さっきから淡々と飲んでいるが、それはもう3本目。しかも500ml。
「そんな苦いの、そんなに沢山飲めないー」
「テメェと俺の舌は違うんだよ」
べ、と出された舌にまもりのふわふわした視線が絡む。
「味見してみるか?」
笑うヒル魔に、まもりはグラスを置いて立ち上がった。
ぺたぺたと覚束ない足取りで、ヒル魔の隣に立つと、おもむろに。
「・・・お?」
ヒル魔の膝の上に向かい合う形でちょこんと座った。
「あじみ、するの」
ほどよく力の抜けた柔らかい身体がヒル魔にしどけなく寄りかかり、甘い声でキスを強請る。
ぬるりと滑り込んでくる舌を触れ合わせ、角度を変えてキスを交わしていたが、不意にまもりは息苦しそうに顔を放した。
「・・・にがい」
「テメェのは甘ェ」
ビールの苦みと、苺の甘み。
眉を寄せるまもりは、ヒル魔から離れようとする。
「こら、どこに行く」
「あじみ終わったのー」
自席に戻ろうとするまもりを押さえ、口直しにとグラスを渡そうとする。
「おら、持て」
「んー・・・」
だが彼女の口からは半分眠っているような曖昧な返事しか出ず、グラスを持たない。
「飲むんだろ?」
「ん・・・」
口にグラスを押し当てると、そのひやりとした感触に僅かに唇を開く。
緩やかに薄桃色の液体を嚥下する喉元までもが、赤く染まっている。
「も、飲めない・・・」
「そーか」
それでも結構頑張って飲んだ甲斐あり、瓶の中身はほとんど残らずにすんだ。
まもりはしきりに目元を擦る仕草をする。
眠いのだ。
「テメェ、酒に弱ェのな」
「んー・・・」
まもりは緩んだ表情でぼんやりと視線を遠くに飛ばす。
「気分は?」
「んーん・・・」
このくらいであればアルコールはまもりの気分を悪くさせたりはしないようだ。
無防備にヒル魔に身体を預け、船をこぎ始める姿は頑是無い子供のようでもある。
けれど。
白いドレスに負けない程白い胸元は豊かに盛り上がり、谷間を見せつけている。
ドレスについているピンクのリボンはまもりの身体に絡みつき、まるで彼女自身が贈り物のように彩っている。
「姉崎」
「んー・・・?」
「もう寝るか?」
「うん・・・」
こっくり、と素直に頷いたまもりを、ヒル魔は軽々と抱き上げ。
まもりが正気の時に見たなら、絶対に逃げ出すような悪巧みの笑みを浮かべて自らの部屋へと移動した。

□■□■□

自室で目覚めたまもりは重い頭をゆっくりと持ち上げた。
「・・・?」
頭は重く、身体はだるく、腰が痛い。
けだるい気分で、おそらくこうなった原因がある昨夜のことを思い出そうとした。
けれど、ヒル魔と酒を飲んでいる途中からの記憶がない。
自分がこうやってパジャマを纏い、自室で眠っていたのなら、酔いつぶれた自分をヒル魔が介抱してくれたのだろう。
「悪いことしたなぁ」
「悪い目は見てねぇぞ」
独り言のつもりの呟きに返事がくる。
視線を向ければ、そこにはにやにやと楽しげに笑って立つヒル魔の姿。
「あ、おはよう」
「おー。おら、飲め」
「水?」
氷がたっぷり入った濡れたグラスを押しつけられ、口を付けるとすうっと喉を通る。
瞬間香ったのは、レモン。
「レモン絞ってくれたの?」
「テメェ昨日は散々飲んでたからナァ。フツーのよりこっちのが飲みやすいだろ」
「え、そんなに飲んだの? ・・・ごめん、あんまり記憶なくて」
「だろうナァ」
あっという間にグラスを空にし、おかわりを所望するとピッチャーを持ってきて注いでくれる。
「ありがとう」
三杯目に口を付けたあたりで、頭の重さが取れてきた気がする。
「目ェ醒めたか」
「うん、すっかり」
「それは重畳」
ヒル魔がひょいとグラスを取り上げる。
ピッチャーと共に室内のローテーブルにそれらを置くと、ヒル魔はベッドの上に乗り上がってきた。
「え?」
「じゃあ、早速」
「ええ?!」
覆い被さってくるヒル魔に、まもりは目を剥く。
「な、なによ朝っぱらから!」
「もう昼だ」
「尚悪いじゃない! そんな時間じゃ・・・ちょっと!」
「酔ってるテメェも悪くはねぇが―――」
まもりをベッドに縫い止めヒル魔はにやりと口角を上げる。
「素面の方がイイな」
「な―――」
絶句するまもりの唇を易々と塞ぎ、ヒル魔は喉の奥で笑った。


***
メジロ様リクエスト『お祝いヒルまも』でした。祝ってない・・・!! 実はこの話、メジロ様が絵チャの時に「じゃあブログ10万ヒットだしそれのお祝いで描きますよ!」と仰って下さって、速攻で下さったイラストを元に作成しております。サイトのpresentにイラストがございます♪しかし・・・早々に頂いていたのにこんなに遅くなってすみません! 裏部分に対になるムフフな裏イラストもございますので、そちらもぜひ御覧下さい!!
リクエストありがとうございましたー!

メジロ様のみお持ち帰り可。
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