旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
ムサシはすっかり馴染みとなった喫茶店でコーヒーを飲んでいた。
その向かいに座るのは、妖介と護。
「アヤとムサシさんが結婚したら、僕たち義兄弟なんですよねー」
本日のオススメケーキであるモンブランを突く妖介。
「お義兄さんって呼んだ方がいい?」
そう尋ねるのは護だ。
「やめろ、気色悪い」
それに眉を寄せるムサシに、護はじゃあやめる、とあっさり取り下げ、手元のコーヒーに口を付けた。
この場にアヤはいない。
ムサシがこっそりとこの兄弟二人だけを呼び出したのだ。
「アヤに何かドッキリでもしかけるの?」
「それだったらウチの両親巻き込んだ方が・・・」
「いや、そうじゃない」
ムサシは手を振り、それから耳に指を突っ込んだ。
「・・・アヤが好きな場所がどこかお前達に聞きたいんだ」
「アヤの好きな、場所?」
「姉ちゃんの好きな場所・・・そりゃ」
兄弟は顔を見合わせ、ムサシに向き直る。
「「ムサシさんの隣」」
「お前らまでアヤと同じ事言うな」
僅かにムサシは眉を寄せる。
「だって、それは本心だもの」
「何か不味いことでもあるの?」
「不味い・・・ということじゃないんだが・・・」
言いよどむ彼に、察しのいい兄弟も首を捻る。
ムサシは雄弁ではなく、言葉は端的だ。
言わんとする事を汲み取ろうと、二人は頭をフル回転させる。
ふと、護は一つのイベントに思い当たった。
「あ」
「何?」
護は携帯を取り出し、スケジュール帳を開く。
「うわ、なんだよこの予定表! びっしり入ってるのは・・・全部デート? 誰と?」
「さあね。それよりも、ココ」
さらりと妖介の言葉を流し、護が示したのは。
「あー・・・ホワイトデーかあ」
二人はそれで納得する。
ムサシはバレンタインデーのお返しをしたいのだ。
バレンタインデーには、アヤがまもりの実家でマスクをしてそれこそ手術でもするんじゃないか、という重装備でキッチンに立ったと聞いた。
一体何が始まるのだろうかと祖父母はハラハラしたそうだが、蓋を開けたらそれはそれは美味しそうなクッキーやケーキ、ガトーショコラに生チョコ、トリュフがずらりと並んだ。
初めて作ったからよく判らないんだけど、と言いながら祖父母に試食させてくれたそれらは絶品。
ついでにそのあまりは妖介とまもりにも回ってきて、二人は心底アヤが甘いもの嫌いなのを残念に思ったという経緯がある。
「ムサシさん食べたんでしょ?」
「美味しかった?」
「ああ。俺はあんまり甘い物は喰わないんだが、アレは美味かったな」
ちなみに彼が食べたのは洋酒のタップリ利いたガトーショコラだった。
「だからお礼に何か、と思ったんだが・・・」
「アヤは物欲薄いからなあ」
「執着するのって言ったら・・・」
二人の視線は再びムサシに集まる。
結局の所、何よりアヤを喜ばせるのはムサシが一緒にいることなのだ。
「一応本人には何が欲しいか聞いたんだが、別にないの一点張りでな」
困り果てた彼は、一番彼女をよく知っていて、ついでに銃弾を寄越さないアヤの兄弟に助けを求めたのだ。
「だからまあ、出掛けようかと思ったんだが」
「うーん、そうですねえ。・・・アメフト観戦とかかなあ」
「それじゃひねりがないよねえ」
兄弟もうんうん唸り出す。
温泉旅館にでも泊まったら、と言いたいところだが、まずヒル魔が許さない。
かといって家で二人きり、はいつもの通りだし。
アヤは買い物好きでもないし、ムサシも同様だ。
「アヤはあんまり人混みも好きじゃないんですよ」
「テーマパークとか遊園地とかは好きじゃないし、動物が特に好きでもないし」
「そうか・・・」
そうして沈黙の後、妖介はムサシに尋ねた。
「ムサシさんは、アヤと手を繋いで歩いたりします?」
「いや、ないな」
「二人きりの時でも、くっついたりしないの?」
護が不思議そうに尋ねる。決まり悪そうにムサシは耳を掻いた。
「あまりないな」
「・・・ふーん」
「・・・そっか」
兄弟は目配せする。おもむろに護が鞄からノートPCを取り出した。
<続>
その向かいに座るのは、妖介と護。
「アヤとムサシさんが結婚したら、僕たち義兄弟なんですよねー」
本日のオススメケーキであるモンブランを突く妖介。
「お義兄さんって呼んだ方がいい?」
そう尋ねるのは護だ。
「やめろ、気色悪い」
それに眉を寄せるムサシに、護はじゃあやめる、とあっさり取り下げ、手元のコーヒーに口を付けた。
この場にアヤはいない。
ムサシがこっそりとこの兄弟二人だけを呼び出したのだ。
「アヤに何かドッキリでもしかけるの?」
「それだったらウチの両親巻き込んだ方が・・・」
「いや、そうじゃない」
ムサシは手を振り、それから耳に指を突っ込んだ。
「・・・アヤが好きな場所がどこかお前達に聞きたいんだ」
「アヤの好きな、場所?」
「姉ちゃんの好きな場所・・・そりゃ」
兄弟は顔を見合わせ、ムサシに向き直る。
「「ムサシさんの隣」」
「お前らまでアヤと同じ事言うな」
僅かにムサシは眉を寄せる。
「だって、それは本心だもの」
「何か不味いことでもあるの?」
「不味い・・・ということじゃないんだが・・・」
言いよどむ彼に、察しのいい兄弟も首を捻る。
ムサシは雄弁ではなく、言葉は端的だ。
言わんとする事を汲み取ろうと、二人は頭をフル回転させる。
ふと、護は一つのイベントに思い当たった。
「あ」
「何?」
護は携帯を取り出し、スケジュール帳を開く。
「うわ、なんだよこの予定表! びっしり入ってるのは・・・全部デート? 誰と?」
「さあね。それよりも、ココ」
さらりと妖介の言葉を流し、護が示したのは。
「あー・・・ホワイトデーかあ」
二人はそれで納得する。
ムサシはバレンタインデーのお返しをしたいのだ。
バレンタインデーには、アヤがまもりの実家でマスクをしてそれこそ手術でもするんじゃないか、という重装備でキッチンに立ったと聞いた。
一体何が始まるのだろうかと祖父母はハラハラしたそうだが、蓋を開けたらそれはそれは美味しそうなクッキーやケーキ、ガトーショコラに生チョコ、トリュフがずらりと並んだ。
初めて作ったからよく判らないんだけど、と言いながら祖父母に試食させてくれたそれらは絶品。
ついでにそのあまりは妖介とまもりにも回ってきて、二人は心底アヤが甘いもの嫌いなのを残念に思ったという経緯がある。
「ムサシさん食べたんでしょ?」
「美味しかった?」
「ああ。俺はあんまり甘い物は喰わないんだが、アレは美味かったな」
ちなみに彼が食べたのは洋酒のタップリ利いたガトーショコラだった。
「だからお礼に何か、と思ったんだが・・・」
「アヤは物欲薄いからなあ」
「執着するのって言ったら・・・」
二人の視線は再びムサシに集まる。
結局の所、何よりアヤを喜ばせるのはムサシが一緒にいることなのだ。
「一応本人には何が欲しいか聞いたんだが、別にないの一点張りでな」
困り果てた彼は、一番彼女をよく知っていて、ついでに銃弾を寄越さないアヤの兄弟に助けを求めたのだ。
「だからまあ、出掛けようかと思ったんだが」
「うーん、そうですねえ。・・・アメフト観戦とかかなあ」
「それじゃひねりがないよねえ」
兄弟もうんうん唸り出す。
温泉旅館にでも泊まったら、と言いたいところだが、まずヒル魔が許さない。
かといって家で二人きり、はいつもの通りだし。
アヤは買い物好きでもないし、ムサシも同様だ。
「アヤはあんまり人混みも好きじゃないんですよ」
「テーマパークとか遊園地とかは好きじゃないし、動物が特に好きでもないし」
「そうか・・・」
そうして沈黙の後、妖介はムサシに尋ねた。
「ムサシさんは、アヤと手を繋いで歩いたりします?」
「いや、ないな」
「二人きりの時でも、くっついたりしないの?」
護が不思議そうに尋ねる。決まり悪そうにムサシは耳を掻いた。
「あまりないな」
「・・・ふーん」
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<続>
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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