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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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足音かくれんぼ(下)



+ + + + + + + + + +
翌朝。
目覚めたときからなぜだかものすごく不機嫌なヒル魔は、アメフトの練習と称し、妖介がズタボロになるまで徹底的に追いかけ回した。
アヤもそれを止められず、母に仲裁を願ってようやく夕方には落ち着いた。
ヒル魔に食ってかかるまもりの背後でぐしぐしと泣く妖介に、アヤが近寄る。
「どうしてお父さん怒ってるの?」
「ぼ、ぼくが、知りたい」
ずずーっと鼻を啜る妖介の手を引き、アヤは騒がしい両親から離れ、リビングのソファに落ち着く。
タオルを渡され、それで涙を拭う妖介にチョコレートが差し出される。
「食べて」
「・・・でも、おやつの時間、じゃ・・・」
「当分夕飯は出てこない。いいから」
滅多にない時間外のおやつに、妖介の涙も止まる。
チョコレートをちびちびと食べる妖介が落ち着いたのを見計らって、アヤが問いかける。
「昨日、何かあった?」
「・・・夜、目がさめた」
「それで?」
「何か飲もうと思って、リビングに行ったら・・・お母さんの声がして」
「泣いてるみたいな声だった?」
「! そう、それ!」
それにアヤは半目になる。
「・・・そうか、お前も当たったのか」
「当たった?」
何が? と小首を傾げる妖介に、アヤはため息をつく。
「お父さんが言うには、あれは『お父さんとお母さんが仲良くしてる時間』なんだって」
「ええ?! だって仲良く、っていう声じゃなかったよ?」
「・・・まあ、大人には色々あるらしいから」
「なにそれ」
ぷー、とむくれる妖介のチョコで汚れた口元を、さっき涙を拭いたタオルで拭いながら、アヤは続ける。
「わたしたちがあれに出くわすと、お母さんはしばらくお父さんと『仲良く』してくれないんだって」
「そうかも」
外ではまだまもりが怒っている。
「だからもし夜に目がさめても、ぜったいにふたりに見つかっちゃダメなんだよ」
「でも・・・足音が」
「しないように練習しよう」
「しないように?」
「お父さんは足音がしないんだよ。後で教えてくれって言えばだいじょうぶ」
「で、でも、ぼく、すごく怒られて・・・」
「わたしも一緒だし、だいじょうぶだから!」
自信たっぷりのアヤに、妖介は頷いて。
そして後日願うと、ヒル魔はどちらかというと嬉々として足音のしない歩き方を伝授してくれた。

「・・・で、今に至ると」
「・・・はあ・・・」
「くだらないだろう?」
食事を終えた三人の前にはそれぞれデザートが来ている。
繊細な飾りの施されたドルチェはアヤが押しつけたので二つが妖介の腹に収まる。
椿は残り一つのドルチェを突きながらエスプレッソを飲むアヤに視線を向けた。
「でも、最近は必要ないんやないの?」
「甘い」
アヤがエスプレッソを飲み干してそんなことを言うから、妖介が目を丸くする。
「まさか、砂糖入れたの?!」
「そんなモノ口なんかつけるか」
「私の認識が、やろ?」
苦笑して補足する椿に、アヤはちらりと視線を向ける。
「最初、うちの母親を見てどう思った?」
「どう?」
椿はまもりと初めて会った日のことを思い出す。
あの日は椿が、両親も遅いし夕飯はコンビニ弁当やな、と呟いたのを聞きつけた二人に半ば強制的に連行されたのだったか。
連れて行かれた先の思ったよりも普通の門構えにきょとんとしていたら、扉が開いて。
そこに立っていたのは、椿の両親よりももっとずっと若く綺麗なまもりだった。
ふわりと笑うその顔は、とても高校生の子供がいるようには思えないと衝撃でさえあった。
「・・・こんな綺麗なお母さんっておるんやな、と思った」
「そうでしょ?」
心持ち胸を張るような妖介にアヤはぴんと片眉を上げる。
「第三者がそう思うのなら、身内なら尚更だな?」
「・・・え」
「あの悪魔コーチは年を追うごとに妻への執着心が増してるって専らの噂でねー」
妖介の言葉に、椿は口に運んでいたフォークにガチンと歯を立ててしまった。
「・・・そ、そうなん!?」
「お陰様で護も足音しないんだよ」
いや、それはお陰様とは違うんじゃ、と内心思いつつ椿は尋ねる。
「それは・・・お母さんは知っとるん?」
「知ってる・・・とは思うけど、どうだろう。何しろ天然だから」
「お前に言われるようじゃおしまいだ」
「だってそうでしょ?」
「まあな」
椿は気の抜けた声で、はあ、と吐息混じりに相槌を打つのが精一杯だ。
「ま、両親の仲がいいのはいいことだからね」
「足音くらいいくらでも消すさ」
達観したような二人の言葉に椿は人目のないところの彼らの両親はどうなのかと興味が湧いたのだが、その後の悪魔コーチの報復を考えてすぐさまそれを打ち消した。
「ところでなんでこんな高そうな店選んだん?」
「ん? せっかくなら美味しいモノ食べたいから」
「ここは両親の知り合いの店だ」
「へえ。さっきの『マリア』さん?」
「そう。旦那さんがイタリア人とのハーフなんだってさ」
「ナルホド」
道理でこの二人は慣れた様子なんだな、と疑問をまた一つ解消し、納得したのだった。


「「ただいまー」」
アヤと妖介が帰宅すると、普段なら顔を出すなり声を掛けるなりするまもりの姿がない。
顔を見合わせるが、特に変わった匂いも漂っていない。
護からの返事も、あかりの声もしない。
さて母はどうしたのか、と玄関を上がった二人は、リビングへの扉を開こうとしてぴたりと動きを止めた。
漏れていたのは、聞き覚えのあるまもりの、声。
途端にアヤと妖介は足音も気配も全て殺して素早く二階へと上がる。
「・・・仕方のない」
「まったくだ」
二人は再び顔を見合わせ、深々と嘆息し。
仲の良い二人に対し、せめて寝室でしてくれないかな、と静かに苦笑を浮かべたのだった。


***
雫様リクエスト『子供達が高校生になってもイチャイチャするヒルまも』でした。予想を大幅に裏切った自覚はございます! ・・・すみませんごめんなさい。なんだかストレートにイチャイチャしているところを書くよりも子供達がいたたまれなくなって足音させないように気を遣うくらいラブラブなんですよ、というのが書きたくなりまして。色々また楽しく書かせていただきました! リクエストありがとうございましたー!

雫様のみお持ち帰り可。
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