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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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てのひらに世界(上)

(ヒルまも高校卒業後)


+ + + + + + + + + +
大学生生活。
授業にバイトにと慌ただしく過ごす予定、だったのだけれど。
「~~~んもう!」
まもりは懐いてくるヒル魔の腕から声を上げて抜け出した。
「やめてよ!」
「なにが」
対するヒル魔は不満げにまもりを見る。
「あのねえ、ヒル魔くん。今は何時?」
「16時22分17秒」
で? と視線を向けられて、まもりはきっと睨み付けた。
「こっ、こういうコトをする時間じゃないでしょ!?」
まもりはたくし上げられたカットソーをぐいっと引き戻した。

なんだかなし崩しに決まった同棲生活。
あれよあれよと肌を重ねてから、ヒル魔は隙さえあればまもりとシようとするようになった。
まもりの方も当初こそ痛かったけれど、まあ近頃はそればかりではない、という自覚はある。
だが、限度というモノがある。
高校の時からの付き合いだが、クリスマスボウルに執着していた時の彼は勝利以外の欲というものに無縁に見えた。
食べることも眠ることも、何もかもがアメフトに直結していた。それはもう、狂気の沙汰と呼べそうなほどの執着心だった。
けれど今、彼はアメフトから離れた。
そうして行き場がなかった欲の方向が・・・まもりの方へと向いたわけだ。
「ホー」
ヒル魔が表面上は飄々とした風情で口を開いた。
それがかなり危険な光景なのだとまもりは経験で知っている。
じりじりと距離を取りながら、まもりは彼から目を離さない。
「私はこれから夕飯の準備もあるし、明日の講義の予習もしたいの!」
「ホホー」
ヒル魔はじろじろとまもりを無遠慮に見つめる。
大概はその視線で居心地が悪くなるのだが、ここで弱気になると後々まで好きにされてしまうような妙な危機感がある。
長い沈黙。
普段と違って軟化しないまもりに、ヒル魔はふっと息をついた。
「つまり、理由なく触るな、っつーことだな?」
「え? ・・・うん」
あっさり引き下がったヒル魔に、まもりは拍子抜けする。
「判った」
呆気にとられるまもりを尻目に、ヒル魔はそう言うとするりと自室に戻る。
「・・・何、企んでるのかしら」
あっさりと引き下がられても、なんだか素直に喜べない。
とりあえず、彼が何か仕掛けてくる前に夕飯の準備だけでもしてしまおう、と。
まもりは意識を切り替えた。


ところが。
それから、一週間以上経ってもヒル魔はまもりに何一つ手出しをしなかった。
最初こそ楽だと鼻歌交じりだったまもりだが、それも長く続けば気になる。
ましてや同じ屋根の下、触れ合おうと思えば手を伸ばすだけで済んだ。
「何だ」
朝、食卓で顔を合わせた時にじっと見つめると、ヒル魔が訝しげに口を開く。
「え? うん・・・その、元気かな、って」
「見ての通りだ」
「うん・・・」
あれほどまもりに絡んでいたのが嘘のように、ヒル魔はぴたりと近寄らなくなった。
今だって、ふと気を抜けば彼がすぐに食卓を立ってしまう気がして、落ち着かない。
「ヒル魔くん、今日は一限目からよね?」
「おー」
「一緒に行こう?」
それにヒル魔はぴんと片眉を上げたが、断らなかった。
彼は肯定こそなかなかしないが、否定はすぐする。
断られなかったことに安堵して、まもりは食卓を片付け始める。
カチャカチャと音を立てて食器を下げるまもりの背を見て、ヒル魔の口角が静かに上がった。

<続>
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