旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
穏やかな高校生活。
中学校から持ち上がりの面々は当然ながら女子ばかり。
華やいだ会話をしながら学校帰り、アイスをみんなで食べながら帰って。
不意に視界に入った緑のジャケット、そして逆立った金髪。
「え」
「なに、あれ・・・すっごい髪型」
「どうやって立ててるんだろ、あれ」
みんなで顔を寄せ合いひそひそと内緒話。
と。
その髪の持ち主が振り返る。
鋭い視線に射抜かれて、私の呼吸が一瞬止まった。
知ってる。
私、彼を知ってる。
そう思った瞬間にぱちりとスイッチが入った。
幼なじみのセナと同じ高校に行きたくて外部受験した。
泥門学校は可もなく不可もなし、平和な校風で毎日が楽しい。
今日はセナと一緒に帰るんだ。
委員会もそこそこに学校を出て、帰り慣れた道を歩いていたら変な男の人たちに絡まれる。
セナを守らなきゃ。
背後に小さくなるセナを庇って立ちはだかった私に男の人たちの手が伸びてくる。
一生懸命払ったり声を上げたりしても、誰も助けてくれない。
泣きそうになった私の前に、不意に飛んできたのは、銃弾。
「?!」
「な、ここ、日本なのに・・・!」
「ケケケ、日本だろうが外国だろうがあるところにはあるんだよ!」
特徴的な笑い声、天を突く金髪、こちらを見抜く視線。
着ているのはこの辺じゃない学校の制服。あれは神奈川の―――
だめ。
私、知ってる。
彼を知ってるけど―――
スイッチが入る。
『私は別の高校。セナが泥門高校入試の日、付き添いで行ったら姿を見た』
スイッチ。
『私は王城高校に所属。たまたま練習試合をした泥門高校の中に彼の姿』
スイッチ。
『私はアメリカのおばあちゃんの家に遊びに行く途中で、天を突く金髪が道路を駆け抜けている』
スイッチ。
薄暗い闇の中、一つだけ存在するスイッチ。
何度も何度もスイッチを入れては違う選択肢を選び続ける。
けれどどこを選んでも、どの時点であっても、私は彼と出会ってしまう。
その姿を見つけてしまう。
「諦めろ」
振り返ればそこには、幾度となく出会い続けた金髪の彼が立っている。
「どうあっても、俺とテメェは出会う」
「望んでないわ」
「望む望まないに関わらず、この世界にいる限り、俺たちは必ず出会う」
歌うように彼は告げる。
「そういう運命だ」
「あなたはそんな言葉、軽々しく口にする人だったかしら」
再びスイッチ。
彼の姿は消える。
『もしも』
『たとえばこれが』
『偶然の重なった結果で』
『あの時選択肢を変えていたら』
『こんな事にはならなかったかも、しれない』
目が覚める。
左手にぬくもりがあって、そちらに視線を向ける。
そこには彼がいて、私の手を握っていた。
声を出そうとして、思うように身体が動かないことに気づく。
「バカが」
静かで苦々しい声に、私は瞬いた。
「他人のガキ庇ってテメェが轢かれてりゃ世話ねぇな」
「私・・・」
「記憶が飛んでるのか? テメェは本日午後三時四十二分、近所の公園から飛び出した見知らぬガキを庇って乗用車に接触、ついさっきまで意識不明だった」
「・・・あぁ・・・」
不意に蘇る記憶。
飛び出した少年、それを止めようとする母親の悲鳴。
近くにいた私が咄嗟に手を伸ばして、引き戻したけれど勢いがついていて止まれなくて、私が車にぶつかったんだった。
そこからの記憶は全くない。
見回せば見慣れない天井。右手は動かない。
「怪我は・・・」
「右手首骨折、あと額を切ってる。命に別状はねぇがヒデェツラしてんぞテメェ。ある意味それが致命傷だ」
「・・・あの子の」
「大変残念なことに、無傷だ」
ふん、と忌々しそうに彼は鼻を鳴らす。
私は握られている左手に力を込めた。
「・・・ねえ、心配した?」
そこにはもう何年も前からとろけるような金色のリングが収まっている。
「そりゃ家で待ってる糞ガキ共のツラ見りゃ判んぞ」
「ヒル魔くんは?」
「わざわざ言わせるのか?」
左手に感じる熱はじっとりと汗ばんでいて、その顔は血の気がなく青ざめて見える。
指摘すれば薄暗い室内のせいだと言い張るだろうけれど。
相当心配していたのはそれだけでも判った。
私はほっと息をつき、ゆるく瞬く。
「夢、見てたの」
「ア?」
「私が泥門高校に行かなければ。ヒル魔くんが神龍寺高校に行っていたら」
ヒル魔くんはじっと私を見ている。
「そんないくつもの『もしも』の夢を見ていたわ」
「その中身、当ててやろう」
にたりと笑みを浮かべてヒル魔くんは囁く。
「何がどうあっても、俺とテメェは出会い続けた。違うか?」
「・・・驚いた。ヒル魔くんは私の夢まで見抜けるの?」
「そういう運命の相手は確かに存在するんだよ」
何もかもを知り尽くしたように、ヒル魔くんがにたりと笑う。
私は思わず手元にスイッチがないかどうか探ってしまった。
「俺とこうなったことを心底幸せだと思うのなら、俺と出会わない選択肢を選ぶわけがない」
***
ヒルまも薄暗い雰囲気と見せかけて結局一家の話。ヒル魔さんめっちゃくちゃ凹んでます。
絵チャで「なんでまもりは中学で女子校に行ったんだろうね」という会話からこの話が浮かびました。
ね、なんであの流れでこんな話が浮かんだか謎でしょ~昂さん鶉さん(笑)ありがとでしたー。
中学校から持ち上がりの面々は当然ながら女子ばかり。
華やいだ会話をしながら学校帰り、アイスをみんなで食べながら帰って。
不意に視界に入った緑のジャケット、そして逆立った金髪。
「え」
「なに、あれ・・・すっごい髪型」
「どうやって立ててるんだろ、あれ」
みんなで顔を寄せ合いひそひそと内緒話。
と。
その髪の持ち主が振り返る。
鋭い視線に射抜かれて、私の呼吸が一瞬止まった。
知ってる。
私、彼を知ってる。
そう思った瞬間にぱちりとスイッチが入った。
幼なじみのセナと同じ高校に行きたくて外部受験した。
泥門学校は可もなく不可もなし、平和な校風で毎日が楽しい。
今日はセナと一緒に帰るんだ。
委員会もそこそこに学校を出て、帰り慣れた道を歩いていたら変な男の人たちに絡まれる。
セナを守らなきゃ。
背後に小さくなるセナを庇って立ちはだかった私に男の人たちの手が伸びてくる。
一生懸命払ったり声を上げたりしても、誰も助けてくれない。
泣きそうになった私の前に、不意に飛んできたのは、銃弾。
「?!」
「な、ここ、日本なのに・・・!」
「ケケケ、日本だろうが外国だろうがあるところにはあるんだよ!」
特徴的な笑い声、天を突く金髪、こちらを見抜く視線。
着ているのはこの辺じゃない学校の制服。あれは神奈川の―――
だめ。
私、知ってる。
彼を知ってるけど―――
スイッチが入る。
『私は別の高校。セナが泥門高校入試の日、付き添いで行ったら姿を見た』
スイッチ。
『私は王城高校に所属。たまたま練習試合をした泥門高校の中に彼の姿』
スイッチ。
『私はアメリカのおばあちゃんの家に遊びに行く途中で、天を突く金髪が道路を駆け抜けている』
スイッチ。
薄暗い闇の中、一つだけ存在するスイッチ。
何度も何度もスイッチを入れては違う選択肢を選び続ける。
けれどどこを選んでも、どの時点であっても、私は彼と出会ってしまう。
その姿を見つけてしまう。
「諦めろ」
振り返ればそこには、幾度となく出会い続けた金髪の彼が立っている。
「どうあっても、俺とテメェは出会う」
「望んでないわ」
「望む望まないに関わらず、この世界にいる限り、俺たちは必ず出会う」
歌うように彼は告げる。
「そういう運命だ」
「あなたはそんな言葉、軽々しく口にする人だったかしら」
再びスイッチ。
彼の姿は消える。
『もしも』
『たとえばこれが』
『偶然の重なった結果で』
『あの時選択肢を変えていたら』
『こんな事にはならなかったかも、しれない』
目が覚める。
左手にぬくもりがあって、そちらに視線を向ける。
そこには彼がいて、私の手を握っていた。
声を出そうとして、思うように身体が動かないことに気づく。
「バカが」
静かで苦々しい声に、私は瞬いた。
「他人のガキ庇ってテメェが轢かれてりゃ世話ねぇな」
「私・・・」
「記憶が飛んでるのか? テメェは本日午後三時四十二分、近所の公園から飛び出した見知らぬガキを庇って乗用車に接触、ついさっきまで意識不明だった」
「・・・あぁ・・・」
不意に蘇る記憶。
飛び出した少年、それを止めようとする母親の悲鳴。
近くにいた私が咄嗟に手を伸ばして、引き戻したけれど勢いがついていて止まれなくて、私が車にぶつかったんだった。
そこからの記憶は全くない。
見回せば見慣れない天井。右手は動かない。
「怪我は・・・」
「右手首骨折、あと額を切ってる。命に別状はねぇがヒデェツラしてんぞテメェ。ある意味それが致命傷だ」
「・・・あの子の」
「大変残念なことに、無傷だ」
ふん、と忌々しそうに彼は鼻を鳴らす。
私は握られている左手に力を込めた。
「・・・ねえ、心配した?」
そこにはもう何年も前からとろけるような金色のリングが収まっている。
「そりゃ家で待ってる糞ガキ共のツラ見りゃ判んぞ」
「ヒル魔くんは?」
「わざわざ言わせるのか?」
左手に感じる熱はじっとりと汗ばんでいて、その顔は血の気がなく青ざめて見える。
指摘すれば薄暗い室内のせいだと言い張るだろうけれど。
相当心配していたのはそれだけでも判った。
私はほっと息をつき、ゆるく瞬く。
「夢、見てたの」
「ア?」
「私が泥門高校に行かなければ。ヒル魔くんが神龍寺高校に行っていたら」
ヒル魔くんはじっと私を見ている。
「そんないくつもの『もしも』の夢を見ていたわ」
「その中身、当ててやろう」
にたりと笑みを浮かべてヒル魔くんは囁く。
「何がどうあっても、俺とテメェは出会い続けた。違うか?」
「・・・驚いた。ヒル魔くんは私の夢まで見抜けるの?」
「そういう運命の相手は確かに存在するんだよ」
何もかもを知り尽くしたように、ヒル魔くんがにたりと笑う。
私は思わず手元にスイッチがないかどうか探ってしまった。
「俺とこうなったことを心底幸せだと思うのなら、俺と出会わない選択肢を選ぶわけがない」
***
ヒルまも薄暗い雰囲気と見せかけて結局一家の話。ヒル魔さんめっちゃくちゃ凹んでます。
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ね、なんであの流れでこんな話が浮かんだか謎でしょ~昂さん鶉さん(笑)ありがとでしたー。
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HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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